佐野大助作の小鉢を総合的に鑑賞、鑑定してみます
中期の作品と推定され、ボディーは心山です
厳密に言うと大助と心山の合作の作品ということになります
やはり大助の鉢は絵の出来具合が評価の第一ポイントです
二面ともに橋をテーマにした雪景色です
静寂な雪の景色の中に橋を渡る人物を配しており
そのためにに生活観を漂わせた画面が構成されています
まことに巧みな絵です
二人の人物が橋を渡っており
前方は村の人、後方は旅人のように見えます
雪景色の寂寥感の中に、村落の影を配して温かみも感じます
奥行きも深みもたっぷりあります
花物実物の太幹盆栽などにピッタリの実用性にも優れた鉢です
山ほどの柴を背負ったじい様をばあ様の二人が家路を急いでいる絵柄です
全面雪景色の中にほほえましい雰囲気を感じます
落款は「大」の字です
側面にあります
ボディーの作者、心山の落款「心」
鉢裏にあります
ふつう鑑賞を兼ねた鑑定はこのあたりで終わるのです
しかし、傷のチェックを忘れてはいけません
外見をつぶさに検査してみればたいがいの傷はわかりますが
ここでは、ふつうではほとんど気がつかない「浮き」という
構造上の問題から出来やすい欠陥を勉強しましょう
鉢は、立ち上げた側(がわ)の上に縁の部分を後から付けてあるので
ときによりその接続部分に亀裂が入ることがあります
内側から見るとわかります
見えますか?
疑いはあるがよく見えないときには、その部分に水を少し付けてみます
亀裂に水が入り込みよく見えます
ほら、見えてきましたね(私は唾をつけました・きたないですね)
左右に一文字の亀裂が入っています
側(がわ)の上に外に向かった縁をのせて作るんです
その構造上の欠陥がこのような「浮き」となって表面に現れることがあります
この大助鉢には「浮き」があります
故に無欠点という評価は少々無理ですが
この「浮き」が外側の表面に出ていなければそれほどの欠点とはいえません
しかし、構造上の欠陥とはいえ、しっかり認識しておく必要はあります
「浮き」のある鉢は寒さで凍らせてはいけません
亀裂に含まれた水分が膨張すれば「浮き」がさらに深くなることもあります
プロも気がつかないことが多い「浮き」ですが
小鉢の収集を志す方はおぼえておいてください
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