2016年9月24日土曜日

初級・中級盆栽集中講座(10):出猩々もみじの取り木発根後

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。
  • 時期:7月下旬から(根が出てから)秋の彼岸ごろまで
  • 適用樹種:出猩々もみじ・山もみ・楓など取り木をかけて発根したもの
  • 道具:又枝切り・剪定ハサミ・針金切り・ピンセット・切り出しナイフ・やっとこ・ミューム針金(一mm~3mm)
  • レベル:超初心者から達人まで
  • ポイント
    • 発根の状態を見極める・親木からの取り外しの時期を選ぶ
    • その後の管理 発根の状態や時期の関係を考慮に入れて、取り外すか、養生をして来春まで我慢するかを決定する
    • 置き場は普通どおりが理想、水の管理によっては半日陰も可
    • ただし肥料はやりません(親木の鉢の中もダメ)
素材 出猩々もみじ


入梅前に環状剥皮で取り木をかけた出猩々もみじが発根しました
モヤシのような根がビニールに当たって下へ伸びています
初めのころ出た根は既に茶色になっています


ビニールを取り外してみます


根が網の目をくぐって外へ飛び出してきています
植物の生命力を感じる瞬間です

もうと親木から外しても大丈夫です
充分新しい根で生きていけます

また早く親木から切り離した方が自分の力で生きる力がついて
もっとたくさんの新しい根を出す刺激にもなります


ところが今年は例年にない真夏日が続いています
慎重を期して、根の養生をしておいて
取り外しは来春まで我慢することにしました


まず大き目の網を用意します


今までの網は取り外しません
新根を傷めるないようにするためです


やや荒めの赤玉土に桐生砂を一割ほど入れた用土を
外側と内側の網の間に入れます
均等に入れましょう


出来上がりの図です

こうすれば新根は内側の網をくぐってのびのびと活動できます
秋までには外側の目からも根が飛び出してくるでしょう
冬は凍らさにように管理します
来春、彼岸ごろに親木から取り外します

その場合の注意点は
取り木をかける際に皮を剥いた親木は完全に取り去ること
その場所にカットパスターなどの傷口癒合剤で保護しておきます
つまりお尻の部分をきれいに処置して、親木から取り外した傷口が完全にふさがるようにします
底の部分からの腐り込みを防ぐためです

初級・中級盆栽集中講座(9):出猩々もみじの本格ミニ盆栽改作

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:2月下旬(ムロで防寒が必要)~6月中旬(葉刈りと同時に行う)適用
  • 樹種:出猩々もみじ・山もみ・楓じなど
  • 道具:又枝切り・剪定ハサミ・針金切り・ピンセット・切り出しナイフ・やっとこ・ミュム針金(一mm~3mm)
  • レベル:超初心者から達人まで
  • ポイント
    • 素材の選び方(根張り・幹筋・枝順などの整ったもの)
    • その後の管理 作業後、葉水をタップリかけて冬なら室へ、春夏は棚の上で培養
教材:出猩々もみじの取り木素材(幹の直径2.7cm、頭を除く幹の高さ5.5センチ)
(完成予定樹高8~9cm、左右の幅11cm)


昨年入手しておいた出猩々もみじの取り木素材
枝は伸び放題で一見すると
こりゃまいったという感じですが
さにあらず!
木肌は古く、根張りも上々
枝順も見込みありです


まだ手をつける前の、足元から立ち上がりの幹筋
一の枝、二の枝までの拡大図
汚れているが、根張りのよさは分かりますね

まず全体をよく観察して構想を練る
この段階が一番大切です


さて、力のある一の枝から作業にかかる
枝元はすでに太くて針金でも下げることはできません
切り戻しで枝の曲を取るようにします

二又の上に立った枝を切り、下向きの枝を使います


ぶつ切りはコブのようで醜いので
切り口は斜めに削り、コケ順をよくしておきます


次は二の枝ですが、おなじところから2本の枝が出ています
どっちを使おうか?
思案のしどころです


手前の枝を使うことにしました
理由は、手前の方が幹からの枝の出方に無理がなく自然だったから
そして、節の間隔が詰まっていたからです
そのほうが間延びしない、つまったいい枝になります


さてと、頭の方は3本あります
これにはかなり迷いましたが、一番奥にあるのを使うことに決定
理由は、自然な仕上がりを期待できそうなのと
節間が詰まっている
また、元の左右に不定芽があり
これが将来、三~四の枝として使える見込みがあるからです


新しい芯の左右に不定芽が吹いていますね
将来この芽がものをいってきますよ


荒切りが終了しました

枝先は摘み込みません、幹の太さとのバランスが考えて
1~2年太らせます
太らせたところで、また短く切り戻して小枝つくりにかかります
この辺がポイントです


一枝と二枝に針金をかけます
目的は枝に曲をつけるため
もう一つは、伸ばしっ放しにするので風などに吹かれて元から折れないようにするためです


たすきのように一本の針金で、同時に2本の枝にかけます
針金はニューム線です
雑木にかける場合はやや太目のものを使います

理由は太い方が食い込んで傷になる恐れが少ないからです
それに、しっかりとして風に吹かれても大丈夫
くれぐれも細目の針金は避けてくださいね

根元も掃除したので根張りがよく見えますね
けっこういい根張りでしょ
木裏の根もよく張ってます



拡大図です
芯にも掛けました
裏枝は2本残してあり、これにも針金は掛かっています


作業完了時の全体図
二の枝に注目して下さい
枝元の部分だけに曲がついて、その先は真っ直ぐですね
どうして?
将来(1~2年後)枝元の数センチを残して切ります
そのため先の方まで曲をつける必要がないからです
また、先まで曲をつけると弱って伸びと太りが悪くなります

今後の計画
  1. 最低今年いっぱいは芽先を伸ばして、枝と芯を太らすことに専念します(肥培)
  2. 針金は夏ごろ一度はずし(その頃には食い込んでくるから)、同じ様にもう一度掛けなおします
  3. 枝と芯の太りが充分であれば、来春に節の芽を確かめて数センチを残して切り戻します
  4. そして、来春の新芽に今年とおなじ作業を施します(枝は二又になるように)
  5. 順調であれば来年いっぱいで全体の基本樹形が出来上がります
  6. その先は応用編になりますが、おおまかにいうと、小枝を殖やし樹格を上げていく段階となります

初級・中級盆栽集中講座(8):取り木(獅子頭もみじ)

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:2月下旬から6月中旬まで(最適期は関東で2月下旬前後・それ以後も充分可能です)
  • 適用樹種:獅子頭もみじ・楓・山もみじなど(獅子頭もみじ以外は5月中旬が最適期)
  • 道具:ハサミ・ピンセット・切り出しナイフ・やっとこ・針金・ビニール網・水苔・用土
  • レベル:超初心者から達人まで
  • ここがポイント
    • 皮を剥く幅を怖がって狭くしない(幹の直径の1.5倍以上が目安)
    • 切れる刃物を使う
    • その後の管理 作業後、葉水をタップリかけて冬なら室へ、春夏は棚の上で培養
教材:獅子頭もみじ接木素材(取り木後完成予定樹高6cmの超ミニ)


取り木をかける個所を決めたら幹の直径の1.5倍を目安に
マジックで印しをつける


皮をむいた写真
ここでのポイントは形成層(アマカワ・上皮と木質部の間にあるん緑色のぬるぬるした部分)を
完全に削りとること


完全にアマカワを削り取って木質部が露出した状態
剥かれた上部の皮の部分から根が出てくるので
もう一度丁寧に削りなおす
この部分にカルスが形成されそこから発根する
(切り口が粗いとだめですよ)


1cm目のフルイでうらごしした水苔


赤玉土8対桐生砂2の割合の用土


ビニールの底網を円形に立て
用土を入れる準備


8分目ほど用土を入れたら
図のように針金で固定
これで新しい根の受け皿ができたというわけです


傷口が完全にもぐるまで用土を入れる


サット軽く水をやってから
水に30分ほどしたしておいた水苔を
丁寧に敷きつめる
用土の表面が荒れて削った部分が露出しないためと
常にある程度の湿り気を保つためです


完成図


完成図

その後の管理
  • 置き場所
    • 2月下旬から3月中旬に作業したものは冬囲いをする(凍らない程度でよし)
    • それ以後のものは、日当たりよく風当たりの強くない場所で管理する
  • 水やりと施肥
    • 普通どうり
    • 但し過度の乾燥は禁物
    • また取り木をかけた部分への施肥は禁物(根がない)
    • 鉢の部分へ施肥は普通どうりやってください
  • 発根
    • 山もみじなどは5月に施術すれば1ヶ月で発根しますが
    • 獅子頭もみじの場合は2月下旬の作業で早くとも5月頃の発根です
    • それ以降になっても諦めないでください
    • 一番の禁止事項は、取り木をかけた個所を、様子が見たくていじくってしまうことです。細胞分裂をおこしている柔らかい成長点を傷つけることになるからです。発根すれば網の目から細いもやしのような根が出てきます。気長に待ちましょう
  • 切り離し
    • 一応秋頃の予定ですが発根の程度によって違ってきますので、続編をいつか開講します。そして新たな技術もご披露し、より発根の状態のよいものを作っていきたいと思います

初級・中級盆栽集中講座(7):黒松・赤松の古葉取り

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:秋10月下旬から来春3月一杯(冬が鑑賞期、できれば年内にやろう)
  • 適用:樹種 黒松・赤松
  • 道具:ハサミ・ピンセット
  • レベル:超初心者から達人まで
  • ここがポイント
    • 基本的には古葉は全て取るが、今年の葉も全体のバランスを見て多すぎるところは、減らしようにする
    • 強い小枝に勢いが集中しないための作業である(古葉しかない芽は古葉を残す)
    • その後の管理 作業後、葉水をタップリかけてやるといい、金っけ(金物のあく)を取るため
教材:黒松懸崖


7月初旬に今春の新芽を全て摘んだ(短葉法・たんばほう)
その後に出た二番芽の葉と昨年の古葉が混じっている
鑑賞上も好ましくないし、葉の量が枝によって違うので
樹勢の均衡がとれないので、古葉を取って調整する


ピンセットで一芽づつ丁寧に古葉を取る
芽先は指を下からそっとあてがい、痛まないように押さえる


無理に引っ張ると痛むようなら、ハサミで切ってもイイ
ミニや小品はこの方が芽先を傷めない
過程で、混んだ芽は摘む(一箇所から二芽が理想)


大盆栽と違って小品はやはりハサミで切った方が
枝先を痛めない、こちらを勧めます


現在下半分の作業終了
懸崖の下垂した枝はどうしても上部に比べて勢いがつきにくいので
上部は新葉も少し取り除き、全体の均衡を取るようにする


作業終了
上部に比べて下部がやや弱いので
来年は、下部を徒長させて勢いをつけるようにする
また鉢は丸鉢にした方がいいだろう


取り木の素材も古葉の整理をしよう


作業終了、こんなにきれいになった


これは赤松、古葉がついていると鑑賞上もさっぱりしない


作業終了、上の写真と比べてみて下さい

初級・中級盆栽集中講座(6):長寿梅の 植え替え

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。
  • 時期:秋の彼岸前後(春の植え替えは根にコブのできる病気が発生しやすいから避けること)
  • 適用樹種:ボケ類全般
  • 道具:全て
  • レベル:超初心者から達人まで
  • ここがポイント
    • ボケ類は必ず秋の植え替えとすること(3年に一回)
    • 用土は赤玉土7:砂3の割合
    • 他の樹種の植え替えと違って、根を切るよりも用土の取り替えをするという心構えでやって下さい
    • 使用予定の鉢を数個は用意しておくこと(1個だけだと映らない場合にアウトです)
    • その後の管理 日当たりのよいところへ置く、水を切らさない、風を避ける(日陰に置くと過保護になって何時までも活着が遅れます、せめて半日陰です)
教材:長寿梅の小品(木の植え付け方と鉢の選定を心掛ける)


いきなり作業終了、完成の図
鉢は楕円の鋲うち太鼓胴(びょううちたいこどう)
鉢を思い切り小さくし、植付けも懸崖風にしてみました
根上がり状なので、そこも強調しました
この先2年の丹精で樹格が見違えるように向上するでしょう
楽しみな木です
樹高8cm(根元より) 左右13cm 超ミニです


作業前の図
植付けも鉢も気に食わないんです
根上がり状に立ち上がってからが、いけません
鉢と幹が水平になっていて面白みがないでしょ
なんとか木姿に動きを出して、変化と調和をねらいたいんです
とにかく鉢から抜いて、根をさばいてみよう


きれいな根です
根に病気はないので一安心
ボケ類には癌腫病といって、木の根元や根に癌状のコブができることがあります
見つけたら切り取ります


とりあえず植え付け方の構想を練りましょう
新しい図を模索するのは楽しいものです
このように立ち上げてみるのは?
根上がりなので不安定ですね


このように懸崖風にしたら?
んーとッ、けっこういけそうです
見方によっては欠点ともいえる根上がりも、長所として見られます
よし、決めた!


さっそく懸崖用の鉢に入れてみます
世の中けっこう困難はつき物ですね
下垂した幹が鉢の縁にぶつかって、うまくいきませーん!
こりゃまいった!
第一の挫折です
こんなときのために幾つかの鉢を用意しましょう


仕方ないので、第二候補の楕円の太鼓胴の鉢に入れてみます
おお、けっこう映るじゃんか!
木の相も大きく見える
やっぱり実物を試すのが一番です
よっしゃ、これでいこう!


鉢の準備
段取りだけは丁寧にしないと後で後悔しますよ
いいですか


ゴロ土を入れ、用土を少し入れてから,竹箸でよくつつきます
次に針金で根をしっかりと固定します
ここもポイントですね
グラグラしていると根付きが悪く、いつまでも元気が出ません
初心者の方が犯す、代表的な失敗の一つです



新しい植付けに準じて,全体の姿をハサミで整えます
当然切る枝もでてきます
そうすれば仕上げの一歩手前です
この常態に水苔を張ります
見栄えももちろんですが、根が露出しています、それを保護します
これで作業終了です
前に戻って完成の図へ行ってください、いかがですか?
以上です
簡単でしょ?
いいですか、ボケ類の植え替え適期は秋の彼岸前後ですよ、忘れないように!

ちなみに、この長寿梅は盆栽市場に売りに出されていたものです
鉢代等で¥5,000高くなってしまいましたが
それに充分見合って樹格が向上したことは、言うまでもありません