2013年9月17日火曜日

防暑対策・寒冷紗

記録的な暑さの夏もようやくやわらいで、やっと秋の気配が感じられるようになりました
みなさんの盆栽たちはお元気ですか?

防寒と防暑対策は盆栽人にとってもっとも大切な年中作業なのですが
過去において関東あたりでは、防寒に比べて暑さ対策の方が軽視されがちな傾向にありました

夏は水切れさえおこさなければ、葉が萎れたらたっぷり水をやればなど
案外呑気にかまえている盆栽人が多かったようです

ところがこの数年の夏の気候は、水だけ間に合えばどうにか切り抜けられた一昔前のそれとは
ちょっとレベルが違ってきているようです

連日あの強烈な強い日差しに照らされては
たとえ水が間に合っても、葉っぱからの蒸発に根の活動が追いつかず、とても正常な生育は無理だと思われます

そこで今年は、昨年はじめて寒冷紗を用いて得た教訓(↓)をさらに徹底し
守りの培養ではなく、夏でも盆栽たちがすくすく育つような、攻めの培養をめざして寒冷紗の設置を行いました

もはや盆栽界では、寒冷紗を使わない人は
確実に少数派といえましょう

参考になるページ

「昨年の教訓」の要点

1 乾き方がゆっくりなので、急激な乾燥でうっかり葉焼けを起こすことがなくなった

2 夏の暑い盛りは、急激な乾燥を恐れて、ついつい前倒しで水やりを行いがちだったが 
  「乾いたらやる」という水やりの基本が守れた

3 そのため、過水に陥る鉢もなく、全体に適度な湿り気を保てた

4 おなじく、過湿の傾向がなくなったので、ナメクジが少なくなった

5 枝や幹を太らせるために徒長させている枝先の芽が、日に焼けずに寒冷紗の下ですくすくとよく伸びた 

などなど、水やり手間の軽減よりも
水の量が少なくてすむために生じる培養上の利点がたくさんありました


この方角から西日が入る

昨年は通風を考慮して、半分の長さの寒冷紗を前掛け状に垂らしたが
今年は下まで垂らして完全密封したので、西日が遮断されさらにいい結果が得られた


9月になって裾を少しばかりめくって通風を図っている
この場合に大いに役に立ったのが、寒冷紗の上から支柱にはめ込む小道具・パッカ(水色)でした


こんな感じ

ワンタッチで寒冷紗を支柱に張り付けることができる(ビニールハウス用)スグレモノ
針金などで留めるよりも楽に、しかも寒冷紗を傷つけないのがありがたい

右側の裾をまくった面も盛夏の間は西日を完全にシャットアウトしました


骨組の参考図

縦と横の組み合わせに斜めに筋交いを入れると、たちまち横揺れに強くなる
アルミの円管にビニールを被覆した棒、それらを結束しているのはビニール製の結束バンド(これが便利)


短めの筋交いでもかなり有効


最後になりましたが、土台(基礎)は鉄筋棒を1mくらいに切断して半分ほど土中に差し込み
それへ棒を垂直に添えて柱にします(掘立式)


土台部分の拡大図

この方式でも高さ2mくらいの日除けは十分可能
筋交いを多用すればそれ以上も可能で、かなりの強風にも耐えられます


格棟間の連絡通路の出入り口
寒冷紗の切り口がホツレないよう、ガムテープで両面から養生しておきます

以上が寒冷紗による日除け設備の要点です
それぞれの盆栽置き場の環境は異なりますから、さらに知恵を出してがんばりましょう

それでは
来年こそ寒冷紗!

2013年9月11日水曜日

舞姫の二代目親木

今回も舞姫もみじのお話で恐縮ですが

まあ、お聞きください

今年の春に私がつれづれ草でご紹介した舞姫もみじの太幹の種木は
山もみじの実生苗の中から発見された初代舞姫もみじの親木から生れたもので、つまり舞姫もみじの二代目にあたるんです

樹齢ははっきりわかりませんが、10年以上は間違いないようで、20年は過ぎていない感じ
つまり、15年前後と推定しています

初代の親木は見ておりませんが、とにかく樹麗や太さからいっても
とてつもない代物であることは確かですね

その大切な二代目親木が、子孫の繁殖用も兼ねて
ご覧のように大きい鉢での肥培管理のせいでしょう、今年になってから目に見えて太ってきました

予定樹高と太さのバランスなどを検証すると、太らすのはこのくらいにして
樹形作りに入ってもいい段階がやってきている感じです

そこで、以下は熟慮と観察を重ねて練り上げた
ボディーと枝の基本骨格を作り上げる3年計画です


現在の二代目舞姫もみじ種木

今年は遮光率50%の寒冷紗の下で、あの猛暑の日々を楽々と耐え抜き
樹勢はごらんのように順調そのもの

入梅ごろに10数本の取り木をかけたので、ガラはいくらか小さくなりましたが
入梅後にも徒長枝がよく走ったので、その枝先は1mを超えたようです


ボディーの高さは足元から赤点までが15cm、足元の間口が左右の赤点間で10cm
この寸法が基本になります


拡大して見ます

幹の上部の赤点あたりが切り戻す位置になります(高さ15cm)
足元の左右の赤点間は10cmです


後ろ姿


来年度の主な作業

ボディーの切り返し予定位置(頂上の茶点)と枝配りの予定位置
これらの枝は来春から入梅にかけて呼び接ぎにて整えます(不定芽が吹けばそれを利用します)


再来年度の主な作業

1 各枝の枝元を太らせ、各枝の表情の基本を作ります

2 新しく立てた芯の上部を切り返し肉巻きに努力します

3 中間の枝を切り、やや大きめに削り込んで幹のスマートさを演出する(傷痕の完治は最終年度)


最終年度の主な作業

1 各枝の枝分かれをさらに作り込んで、枝の基本形をおおよそ完成させる

2 切り返しの上部の幹筋を充実させて
  幹全体の模様の統一感を表現する

3 頭の切り返しの傷を治癒させる(この年度で完全治癒を目標にする)


基本の骨格完成予想図(予想樹高25cm以内)

1 幹模様のポイントは赤点で示した3点です
  特に上の2点はやや強い模様をつけます

2 枝は矢印で示した3本を強調し
  長短強弱の変化を演出したいと考えています

3 このように基本の骨格が完成するころには幹の太さもさらに促進し
  さらなる樹格の向上に向かって新しい課題(根張りや枝ほぐれなど)に挑戦していることでしょう

2013年9月7日土曜日

舞姫もみじ種木追加補充

このところ小葉性の舞姫もみじにはまっていて、置き場のスペースと管理から推し測って、現在すでにいっぱいいっぱいの数は所有しているのですが
質のいいのがが見つかったのでまたまた追加で手に入れました

やはり、健康で成長過程にある若々しいことがいい種木の条件で
根が傷んでいたり、枝先がいじけていると、樹勢を取り戻すのに数年かかってしまい、思いのほかの年月の浪費となってしまいます

元気のいい種木なら、これから秋肥えをみっちりやっておけば
早春に上等の挿し穂が採取できるし、取り木の発根率も格段にいいので、価格ではなく質に拘りべきですね

また、私が必要以上に数を望むのは、商売上の欲っけだけではありません
素材の数が少ないと、木作りの過程でどうしても安全策をとってしまい、思い切った施術がしにくいからです

やはり作るからには、思いどおりに個性的な樹形を目指したいので
制作中の冒険的な賭けをするには、やや多めに素材の数が必要になるんです

そんなわけで、今回の種木を購入したわけですが
ちょっとばかり特徴(クセ)があったので、つれづれ草で取り上げてみました、ご覧ください


幹の直径は1cmとちょっと、高さはなんと1mもあって、樹勢はご覧のように順調そのもの
種木の場合、樹高が高い方と扱い難いですが、なんといっても取り木する場合などは本数をゲットするのに有利ですね

ところで、この種木の立ち上がりから20cmくらいのところがコブ状にふくらんでいて
そこから上の方が元よりも太くなっていますよね

これが↑で申し上げた特徴(クセ)です
これまでの所有者が、取り木の準備に針金で幹の周囲を結束しておいたためにできたコブなのです


針金で結束した箇所が低い位置のため上部の葉の量が圧倒的に多いので
葉で作られた大量の養分が針金でせき止められ、ご覧のように倍近いほどに太っています

強い風でも吹けばくびれた箇所からポッキリと折れてしまいそう
いつ頃結束したんでしょうね、おそらく1年は経っているでしょう

こうなると皮を傷めないで針金を取り除くのは、すでに無理
時期さえよければ普通(環状剥皮)に取り木すれば、2週間でばっちり発根すること請け合いですがね


鉢替え

植えられていたビニールポットから仕立鉢に植替える
ただし、根は崩さずにややサイズの大きな鉢に入れ、周囲にそっと細かい用土をいれるだけ

ビニール紐で揺れないように頑丈に固定する(重要)


くびれの箇所の養生

針金はそのままにして、取り木の要領でビニールで覆い水に浸した水苔を入れる
水苔がビニール内に行き渡るように、指でよく押し込むこと(重要)


ビニールの周囲を引っ張るようにホチキスで止めておく


支柱で固定

棒を鉢底まで突き刺し、それを支えにして
木が揺れないように数カ所固定する(重要)

これらの作業によって、くびれの部分が折れないよう
また、くびれの上部が衰弱することのないよう、万一の場合に具えた対策がなされました

この後、来春まで発根がなければ、来春に改めて環状に剥皮して
正式な取り木をやり直します

しかし、これからの残暑が厳しく気温の高い日が続くと、水苔で覆った箇所から発根する場合もあり得ますから
その場合は、越冬した来春に発根の状態を見極めてから上下の切り離しを行ないます


さて、同じような感じの種木を11本ばかり追加したんですが
いずれも幹のどこかに針金の結束した箇所が見られたので、その箇所の状態をお見せいたします

超ミニ盆栽を3箇所でゲットするねらいでいたようですね
あぶないあぶない、これだけくびれていると強く揺すると折れそうです!


これも針金で結束されていましたが、周囲の幹肌を傷めずに針金を取り外せました
ですから、水苔での養生はせず、このままで棒の支柱だけで固定しました

それでは、また

2013年9月2日月曜日

きんずを太らせる

培養3年目になるきんず、商品ながらかなり気に入っている一鉢なんですが
太らして全体にもっと力強さを出したくて、今年の春に仕立鉢におろして培養を続けています

葉刈り後に芽がチクチクと動くのを待ってから植え替えたあと
途中ちょっと芽の動きが鈍った時期もありましたが、現在は順調な作柄となっています

この項参照


現在の姿 j樹高14cm×左右18cm(足元の幹径5.0cm)

向かって左の利き枝の出芽が少々遅れましたが、きんずにはよくあることなので
培養法も変えることなく現在では全体の芽先の勢いがすっかり揃いました

肥料も多めにやっていますが、よく吸収しているようで
葉の色つやも順調です


8月になると小さな五弁の白い花が咲き始め
花弁が散ってしばらくすると、すでに子房がふくらんで実がみられます

実は最初は濃い緑色ですが、これが秋になり霜の降る時期になると
黄金色に輝いて盆栽人を楽しませてくれるわけですね


ところが、きんずは春の目覚めの遅いせいで、一年間のうちでも極端に活動期の短く
この実成りにかなりのエネルギーを費やしてしまうため、木を太らせる分まで手が回らないんですね

そこで、今回のように鑑賞本位ではなく、木の太りを目的としている時期などでは
蕾から開花の段階で、すべてそれらを摘み取ってしまいます

結実とそれらを維持するための体力はかなりのものなので
その分は木の充実に向かうので、目に見えるほどの結果が期待できます


蕾と花、またはやくも子房がふくらんで実になりかかっていたのひとつ残らず摘み取りました
これで今年はあの黄金色の実は見られないけれど、木が太ること必定です

この方法は、他の実成り花物盆栽樹種
すべてにいえることです

結実を鑑賞したい気持ちはわかりますが
木作り段階の実物花物盆栽では、我慢してぜひ実行してください、びっくりするくらいの好結果間違いなしです


参考資料

入手したときには直径が1.0cmくらいあったのが
数年の培養により順調に肉巻きして、傷の中心に1.0から1.5mmくらいを残すのみ

間もなく完治です
きんずは樹勢さえ維持できれば、傷は必ず完治しますよ

では