2009年10月24日土曜日

スクール速報・真柏素材

わがフリースクールには30代の若い愛好家が4人いるけれど
紅一点のマユちゃんのご主人・ベーくんが一番の年下(盆栽歴はわずかに2年くらい)

参照:マユちゃんのページへ

自分の息子よりも若い愛好家が盆栽と必死に格闘している姿を見ていると
盆栽屋.comとしては涙が出るほど”うれしい”

ところで、ベーくんと奥さんのマユちゃん、盆栽は好みの盆栽をおのおの別々に所有
ただし、水やりはご主人がやる(マユちゃんがやると過水になりがち)そうで、まことに微笑ましい光景です



9月中旬の撮影 足元を針金で結束して取り木の最中の真柏

今年の春に施術したばかりなので、発根までにはあと1年くらいかかるでしょうから
ベーくんは今年中に徒長させた枝に針金をかけて基本の骨格を作りにチャレンジしました



芯が後方に伸びたままだったのを、針金で手前にかぶせました



一の枝も上方に向って勢いよく伸びていました
赤点で示したジンを一方の支えにして一の枝に針金をかけ、思い切り下げます

枝にも曲をつけるために、捻じ曲げるようにしながらやるのがコツ
とくに真柏の場合は、幹の激しい模様と調和がとれるように心がけます(直線的な枝では表情がでません)



後ろから見る姿

この基本を作る段階では、芯と一の枝以外には針金をかけません
他の枝はまだまだ徒長させてから一気に施術にかかります



完成過程の予想図

現在の徒長枝の先端を摘み込むと姿が見えてきます



完成予想図

枝葉に足りない部分が繁れば、このような姿が見えてきますよ
遅くともあと二作(ふたさく)でこの姿が実現するでしょう

ベーくん、がんばれ!!

2009年10月23日金曜日

秋の水やりの要点

秋も徐々に深まってそろそろ雑木類の葉が色づいてきました
このごろになると鉢によって乾く速度が異なってきて、水やりの加減も難しくなってきます

それというのも、夏の間は乾くたびに何度水をやっても過水にはなりにくいのですが
棚に並べた鉢により隣同士であってもかなり乾く速度が違うので、かたや水不足、かたや過水、そんなことがおきやすいのです

おまけにこれから冬に向って湿度が下がる一方なのが日本の気候
この湿度の低下も乾きやすい鉢のとっては意外な大敵となるのです

あの暑い夏の水やりをやっと乗り切ってホッとしたこの頃があぶない
これから冬に向って知らぬ間に水切れや過水をおこし、盆栽を衰弱させるひとが多いのでご注意、ご注意です



今朝(23日)の午前9時の乾き具合の見本(盆栽屋.comの棚より)、左は楓、右は梅もどき
だいたい午前9時から10時ごろが水やりの時間ですが、この時点でもこれだけの差があります



梅もどきは鉢土の表面はおろか、水穴の下からのぞいても、これ、この通り底の用土もカラカラ
この程度に乾いているとサット一回やったくらいでは、とても底まで水は回りませんね

表面が濡れたように見えても乾いた表面にはじかれて、案外底までは届いていないのです
やった水が一応しみ込んだと思っても、再度しつこくしっかりとやらなければなりません



かたや楓の方は、表面にもかなりの湿気が残されていましたのが
水穴の下からのぞく鉢底の用土も半乾きの状態で、ちょうどいい感じ

ですからこのような盆栽に対しては、普通の量を一回やれば十分ですね
過度な量をやる必要はないのです

このように同じ棚の上で毎日同じ量の水をもらっていながら
植替え年数や鉢の大きさや形状、さらには盆栽の元気度などさまざまな条件によって乾く速度がまちまちです

ですからみなさんは

1 普段からの各鉢の乾き具合をチャックしておき、乾きの早い鉢には回数もしくは水の量で調節する
2 水やりの工夫で対処が不可能なときは、表面に水苔などを張って調節する
3 乾きの速い盆栽と遅い盆栽を区分けして置き換えるのも一策でしょう

などの工夫をします

今日の格言

秋から冬の水やりは案外難しい、水やりは盆栽の基本中の基本です、なめちゃいけない!

読者のみなさん、コメントお待ちしていまーーす
可能な限りご紹介したいと思います

宛先

盆栽屋.comのメール
盆栽屋.comの掲示板

どちらでもけっこうです

2009年10月16日金曜日

実生かりん正面変更

夏の終わりごろ、愛好家が引越しのために大量放出した実生かりんと実成りかりんを
40鉢をまとめて買い取りしました

その中に樹高30cmくらいの気になる実生かりんが3鉢あったのですが
今日は中でも特に気になるひと鉢をご紹介しましょう

ちなみに放出した愛好家の方は、棚に並んでいる盆栽のほとんどがかりんで約50鉢ほど
ほんとにかりんが好きな方ですね、こういう方も珍しい(笑)




持ち主の愛好家も気に入っていた実生かりん
樹高は30cmの根上がり式の半懸崖です

葉性も枝性も申し分なし
盆栽向きのいい素質をもっています



従来の正面からフトコロをのぞいて見ると、枝はかなり密に繁って持ち込みは古い、古い
かなり幼い苗の時代に巧みな幹模様をつけてあり、持込により幹肌の味わいもたっぷりです

だがしかし、中間が長すぎ幹筋にちょっとばかりしまりがないようです
せっかくの足元の変化が幹の上部にいくにしたがって、徐々に弛緩しており力と変化が乏しくなっていますね

うーむ、む、む、惜しいなー!



そこで盆栽屋の何時もの癖で、あちらこちらと角度を変えて幹筋を眺め回してみると
従来の裏側から見た角度に、こんなにいいところがあるじゃないですか

根の動きもいいし、激しく曲がった幹筋が捻転しながら戻っている角度が絶妙
コケ順もいいし動き変化ともいうことなしです

赤点で印した2本の枝は真ん前にくるので、いずれ切ることになるでしょう
他の枝はそのまま使えそうですが、かさばっている後ろ枝のボリュームは追い込む必要がありそうです

将来の名木候補といっても言い過ぎじゃないですよ言い過ぎじゃないですよ
創作意欲をそそられました



新正面から見た全体図

現在の樹高30cmから5cm追い込みます
左右の幅も合計で10cmほど切り詰めると、かなり締まった樹形になるでしょう

ともかく、落葉時期(11月下旬)が待ち遠しい
その時には是非またお目にかけましょう

私の見込みでは、この実生かりんは名木の素質を秘めていると睨んでします
今から楽しみで楽しみで、落葉まで剪定を我慢するが辛い気がしています

では、では

2009年10月15日木曜日

スクール速報・ずみ逸品

樹高約6~7cmの山ずみ
盆栽屋.comから買っていただいたものだからって、褒めるんじゃありませんが

目の利いた愛好家なら「おー、これはいけるぞ!」と思える逸品です
この持ち主はスクールの常連・ターさん

ちゃらんぽらんに見えて、けっこう繊細な神経も持っていて
ときには言いにくい事でもズバズバくるが、陽気で明るい人柄から、それらはすべて楽しい話題となる

この人のまわりはいつも陽気で楽しい雰囲気に包まれていて、つくづく人徳を感じますね
ツカさんとは離れがたい盆友で、いつも漫才のような掛け合いを楽しんでますよ

「ツカさんよ、ツカさんの盆栽よ、オレが預けてるようなもんだよナ、オレの方が若いんだからヨ
いまにみんなオレのもんになっちゃうよナ、しっかり上手く作っておいてヨ」

「計算どおりにはいかないゼ、番狂わせもあるしヨ、うっかりするとその山ずみだって、逆にオレのもんになっちゃうゼ」
などなど、これくらいのやりとりは日常茶飯事(笑)



秋口にやや水を切らせたのか、芯付近の葉がすでに落葉
ターさんは芯が枯れ込むんじゃないか、といたく心配してスクールへ持ち込んだのです

もともとずみの葉は水切れに弱く、夏の陽射しでヤケやすいのですが
盆栽屋.comの見立てでは、大丈夫、しっかり水が上がっていますから



拡大して樹形を見てみましょう

足元と幹模様は、しっかり芯まで筋が通っています
ただ枝数がちょっと多いですね、これからの仕上げの段階で徐々に減らしていきましょう



まず目に付くのが、現在は利き枝に見えておりが、赤印のあたりを起点にしています
ちょっとばかり枝元が幹の真ん中から出ていますね

この枝はちょっともったいない感じですが、来春の植替えと同時に切ることになるでしょう
切らないとやはり木が若く見えてしまいますね

みなさんはどう思いますか?

2009年10月13日火曜日

フリースクール速報・大型新人現る

「盆栽教室始めたんだって、おれも行きたいなけど、いいかナー」
「自分の持ち物をもっておいでよ、フリースクールだから自由参加だよ、気軽にネー」

数年前に1、2度買い物をして頂いたことのあるハシやんから
数日前に電話があり、こんな会話を交わしました

そして当日のハシやんの持ち込んだ5鉢ほどのミニ盆栽を見て驚いた
正直に言わしてもらうと、初対面からガラガラと気取らずに話をするおおらかな人柄からは

(失礼ながら)こんな繊細な感覚の自作のミニ盆栽を、まったく想像できなかった
驚いた、驚いた、まさに盆栽屋.comのフリースクールに大型新人が現れたのです

それでは論より証拠、ハシやんの作品をご紹介しましょう



樹高約15cm×16cm

「このけやきはヨー、旅行先で実生2年生苗をヨー、採ってきて仕立てたんだヨ、もう16年も作ってんだヨ」
「葉性はあんまりよくネーからけっこう苦労したけど、針金かけたりして、やっと何とかなってきたヨ」

取り木で寸法を縮めたのでまだ根張りが若いのが気になっている、とも言っていましたが
そのようにご自分の作品の先々まで見通している点も評価できます

枝下(枝分かれまでの高さ)と全体の樹高とのバランスもよし
枝幅に対する立ち上がりのボリューム感も十分なので、力強さもしっかり感じられます

枝分かれのきれいさも枝先の繊細さも秀逸
地道な持込を繰り返しながら、今後は古色感を求める段階にあると思います

さらなる樹格の向上が楽しみですね
みごとな作品です



樹高13cm×14cm

ハシやんがいかに大型新人だということの証明に
盆栽屋.comの頒布品の中から、↑のハシやんのけやきに似たものを参考に掲載してみました

このけやきは愛好家の放出品ではありますが
もともと基本の骨格は、その道では「名人」として知られる「プロ中のプロ」が作ったもの

↑のハシやんの16年の努力の結晶は、この名人の作品と比べてもなんら遜色ありませんね
たいしたもんです



参考に、ハシやんのけやきを下方からのぞいて見ます
すばらしい仕上がりですね

ということで、”盆栽界は広いようで狭い”とはよく聞く言葉ですが
今回は”盆栽界は狭いようで広い!” ということを改めて強く感じました

もちろん一流展示会の常連で全国に名を知られた大家は、盆栽界の先達でありますが
ただただ盆栽が大好きで、人知れず独学でコツコツと努力した愛好家でも、これほどの結果を残せるんです

このことを全国の盆栽ファンのみなさんにお伝えしたくって、この項を書きました
それでは!

2009年10月9日金曜日

フリースクール速報・けやき

ツカさんはフリースクール仲間の最年長
でも気力にあふれた元気のいい中高年ですよ

なんでもツカ少年とその家族は、太平洋戦争終了後命からがら満州から帰還したそうで
当時の手記をHPで発表してるという信念のひとなんです

盆栽趣味に臨む気風や作風は、ひとがらそのものを表しとてもおおらかで
施術なども早め早めで気が短い傾向があります(笑)、思い切りが良過ぎるともいえましょう

ところがやはりこのひとは努力のひとですね
最近はフリースクールに見えた当初よりも、かなり上達し緻密な目筋を身につけてきたました

その上達の証がこのけやきです
やや荒れ気味だったものを昨年の秋頃から手がけ、かなりのレベルまで培養ができました



樹高17cm

手に入れた時点よりもひとまわり追い込み、枝の先端に力が集中せず柔らかい感じ
もちろん芽摘みと葉透かしを徹底的に励行した成果です

画像ではわかりにくいんですが、フトコロ芽も生きいきしていますから
来年以降も徒長の心配はありません

ここまでくると、一年一年の成長が目に見えて楽しみが倍加します

ところで、今年の春に選定した現在の鉢
これはちょっといただけませんね

秋に紅や黄に色づく樹種(雑木の多く)には、この鉄砂釉(てっしゃゆう)は似合いませんね
葉の色合いとの調和から白か水色や瑠璃などがいいでしょう

去年の植替えですから、もい一年間は我慢するとして
再来年までに映りのいい鉢を探しましょうね

それでは、ますますがんばって!