2017年12月24日日曜日

紅葉と剪定の適期

盆栽屋の棚に培養されている紅葉のきれいな樹種に限って、剪定との兼ねあいから紅葉をたっぷりと楽しんでからおもむろに剪定にかかると云うわけにはいかないようです。

紅葉が次第に深まって最盛期になるちょっと前ごろだと、剪定によって樹液が噴き出すなんてことはめったにないので、剪定によるダメージなどの心配はほとんどいりません。


この織姫もみじ(舞姫もみじの兄弟実生種)は今年になって枝がよくほぐれてきたせいで、全体の葉が小さく揃い始めました。そのせいか、紅葉があまりにみごとだったので剪定を後回しにして紅葉の鑑賞を優先させました。いかがですか、きれいでしょ!?

樹勢を保ちながら、このくらいにしまった樹形で紅葉も同時に楽しめるのは、普通の山もみじではちょっと難しいでしょうね。やはり織姫(舞姫と兄弟実生種)の優れた特性のお蔭だと思います。


ついでに、この織姫の樹形と今後の管理についての予定をお話しておきましょう。この織姫は数年前に正面を変更している関係で、背中に太い後ろ枝を背負っています。

大袈裟に言うと、この枝はまさにこの木が背負っている宿命的なものにもさえ見えてきます。なんとかきれいに除去してやりたいものです。それには術後の治癒が問題ですが、焦らずにじっくり取り組めば可能な感じがします。


右側面から背中の後ろ枝が見えますね。この枝を外すのは来年の入梅前後と考えています。成功するか失敗するかはわかりませんが、とにかく前向きな姿勢で行きましょう。。

術後に数年はかかるでしょうが、傷さえ治ればめったに見られない小葉性のもみじの名木として復活するのは間違いありません。。

それでは!

2017年12月22日金曜日

振り苔の方法

日本庭園や盆栽にとって苔の重要性は改めて言うまでもないものですが、盆栽人はけっこう苔の量や質、さらには維持管理上の問題などで悩まされています。

そこで今日は「振り苔」という簡単な技巧を覚えていただいて、苔の質と量の悩みを一挙に解決してしまおうという寸法。時間的にはそのものずばりを張っていく「張り苔」にはとてもかないませんが、量の点では圧倒的に優勢です(笑)

石垣やブロック塀に生えている乾性の苔がいい。


1.0㎝未満の粗目のフルイでよく乾燥させてからウラゴシする。


よく揉み込むようにして無駄なくウラゴシする。


1.0mmの細か目のフルイで砂・土・ゴミなどを除去。


細かい繊維だけとなった苔。


ていねいに最後の繊維までウラゴシする。


鉢土を湿らせておいてから乾いた苔を表土に振りかける。この場合、指先で強く圧迫するする必要はない。霧吹きで軽く吹いて苔をならす感じで十分です。。


フアフアと綿のような苔を表土に軽くまぶして霧水でならすという寸法です。


表土を指でこねくり回さないのが一番のポイントといえるでしょう。

一日数回の霧水をやれば一週間ほどで苔の緑が濃くなってきます。張り苔とちがって自然味のある風情が楽しめます。見ごろまでには2週間以上かかりますから、観賞期から逆算して早めに施術しておきましょう。

それでは!

2017年12月11日月曜日

山もみじ変形樹形

筏吹き、根連なり、株立ちの三樹形は、よく似てはいながらも、成り立ちの過程によって、見方によって、そして見る人の想像力や判断によって、表現の異なってくることはあるものです。

盆栽屋.comのオヤジが今日ご紹介するお気に入りの山もみじの小品が、まさにそのいい例です。

樹高は12㎝で左右の幅は18㎝ほどあって、とても葉性(はしょう)と枝性(えだしょう)の優れた山もみじです。

樹齢は20年を超えているでしょう。恐らく左右の両側の下枝を地面に這わせ、周辺に吹いた不定芽を株立ちのように立ち上げたのでしょう。見ようによっては根連なりや筏吹きにも近いですね


すべての葉が落ちました。一年間の小枝の成果をじっくりと眺めるうれしい季節です。


これから細かい不要芽や枝を根気よく整理していきます。


時間をかけてゆっくりと不要な芽や小枝を整理します。落葉期の今が剪定にもっとも適した季節です。

ところであなたはこの山もみじの樹形を何と呼びますか、株立ち?根連なり?筏吹き?

2017年12月8日金曜日

超ミニ舞姫もみじ

樹高わずかに4.0㎝、舞姫の挿し木苗の細い先端を取木して数年ハサミで作り込みました。針金はいっさい使っていないので小枝の先はまだ硬さが感じられますが、それだけに枝の風情は自然です。

それにしても、いくら小葉性(こばしょう)の舞姫もみじでも4.0㎝の樹高で仕上げるのはなかなか大変。本格模様木の限界サイズは3.0㎝くらいと予想はしているのですが、とにかくチャレンジ、チャレンジ、チャレンジ!


こんなふうに傾けた角度で植えつければ幹の動きが出ると思います。水色系とか黄色系の楕円鉢をイメージしていますが、少々無理をしてでも小さめの鉢に入れようと思います。

















超ミニサイズは可愛さがもポイントになりますが、やはり盆栽の真髄は本格派の模様木にあります。いくらサイズが小さくとも真髄へのチャレンジ精神を忘れないようにがんばりたいですね。

芯のあたりに力が集中して節間(せっかん)の長い小枝がありますから、これらは少しずつ外すようにします。サイズの小さな盆栽にと言っては、とにかく節間(せっかん)の短い小枝が何よりもたいせつです。

それでは、本格派の模様木を目指して頑張ってみます。


2017年12月5日火曜日

真柏のジンの長さ

濃い緑色の葉と赤茶色の幹肌と、加えてジンやサバの白色が絡み合う真柏の色彩美は、松粕類の中でもひときわあでやかな装いが感じられます。

それ故か、アマチュアの方がジン付きの真柏を作った場合、ともするとそのジンが長過ぎる場合をよく見かけることがあります。

そこで今日は、つい最近市内の交換会でセリ落とした真柏小品(樹高16㎝)を例にして、ジンの長さについて勉強してみましょ


バックが白いのでこれまた白色のジンが見えにくくてごめんなさい。さて、手前の肩あたりにあるジンは形もよく締まっていて、自然界の力でもぎとられたような力が感じられます。

比べて裏側の下枝の細いジンは、ちょっと長過ぎるのとのっぺりとしているのとで、厳しさが感じられないので雰囲気に緩みが出てしまうようです。

そうです、ジンはお飾りではないのです。

なるべく目立たないようにしながら、あるべきところにはある、という感じで雰囲気を盛り上げる役目を担っているのです。


細くて長い、力の感じられないジンでは風景に厳しさが出てきませんね。


新しい正面を模索しています。左の肩のあたりのジンはまったくいじってはいませんが、やや左へ振った新正面の方が動きがあるようです。ジンも短く切りつめたので見る者の目が前のジンに集中します。


新正面


フトコロにあった長くて細めのジンはすべて短めに切り詰めたので、景色全体がコンパクトにまとまるとともに、より主要な見せ場である左肩の部分に力が集中されたようです。

それでは

2017年12月3日日曜日

移動式紅葉一石二鳥

数年前に、当時としては太さも樹高も大きめの舞姫の素材苗を3本ほど、口径1尺(30㎝)の大きな仕立鉢に植えて思いっきり伸ばしっ放しにしてみました。もちろ水はけのいいようにゴロ土をたっぷりと入れて、ぜんたいに粗目の赤玉土でざっくりと植えました。

すると、植えたその年はたいしてえ目立った成長はしませんでしたが、2年目以後の生育には目を見張るものがありました。やはりある程度鉢内に根が張ってからのほうが養分の摂取がうまくいくようです。


















3年間徒長させておいた結果、足元は子供の手首くらいに太くなり、樹高は1mに近いほどに成長しました。当初私はこれらの模様の面白い処に取木をかけて盆栽素材をゲットする狙いだったのですが、この紅葉の見事さを見た私は、もう一つの欲張った目的を思いつたのです。

来年にはこの鉢植えをあと10鉢ほど増やし、春の芽出し時、若葉の季節、さらには秋の紅葉の時期など、その都度見ごろによって庭のあちらこちらに移動してたら楽しいだろうと。


紅葉の色彩は個々の鉢の栄養状態や健康状態、さらには日照条件によって微妙に変化するはずですから、普段から培養状態を意識的に違えておけば楽しさも倍増するでしょう。

盆栽素材の肥培と移動式紅葉の生垣とでもいいましょうか、欲張った計画は来年にむけてすでに走り始めたようです。

では!

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2017年12月2日土曜日

舞姫もみじの株寄せ

幹立ちの数からすると、単幹、双幹、三幹、その次に四は抜かして五幹と数えていくのが順当でしょう。中でも。最も避けたい数は、一目で偶数であることがわかってしまう四幹でしょうね。

その次ぎの六幹以上の場合は、偶数ではあっても一応数えてみないと、目算では奇数か偶数かを瞬時に判別しにくいですね。そんなわけで、もし六幹立の名木が存在したとしても、偶数を嫌って本数を減らされることはめったにないでしょう。

ところが、四幹となるとこれは一目で偶数であることが識別できてしまうので、ほとんどの場合、一本増やすか減らすかの具体的な選択を迫られることは必定といえましょう。


さて、昨年の春に化粧鉢に植えた舞姫もみじの超ミニ取木素材ですが、どうした加減か四幹立ちになってしまいました。そのうえ4本の幹がどんぐりの背比べで高低差がないので、どうにも恰好がよくありません。


そこで閃いたのが、本数を増やして風景を再構築すること、つまり寄せ植えです。


あまり幹数が多いとミニの雰囲気がなくなるので、5~6本立の小さな景色をイメージしてみました。あらかじめ二つの風景を重ねてみて、イメージを膨らませてみます。


小さめの鉢を使って足元はなるべく締まった感じにします。向かってみ右側に奇抜な感じの景色を演出し、左方向への強い動きとのバランスをとりました。


複数本の二つの根のグループを調和よく収めるのが難しい。さらに各幹がぐらつかないように麻ひもや針金で固定します。
















4本と2本のグループ間の調和がとれました。右にやや傾けた主幹一本と残りの五本の力関係が=になっていますね。このバランスがこの構図の見せどころです。

ちなみに、主幹の高さは14㎝で、その他の子幹は8.0㎝くらいです。小葉性(こはしょう)の舞姫もみじの場合は、あまり樹高のある寄せ植えよりも、このくらいの小さなものが似合うと思います。


後姿
この風景は六本の幹から成り立っています。しかし、一目では目算できませんね。このような場合では偶数であっても合えて拘る必要はありません。構図を主体にして堂々とこのまま作り込んでいきましょう。

2017年11月27日月曜日

フリースクール・けやき超ミニ
















昨日は、今月最後のフリースクール講習日。ここ数日朝晩の冷え込みは厳しくなって霜も降り始めました。まさに本格的な盆栽シーズンの到来ですが、手入れの順番としてはまず雑木類の剪定から始めるのが定石でしょうね。

というのも、雑木の代表格であるもみじやカエデ類は晩秋の休眠期に入るのも早いけれど、早春のお目覚め時期もすこぶる早い。12月の末ごろにうっかり切り込むと樹液がポタポタと吹き出してくることもあります。

その様を見ると、人間に例えれば多量の出血を見るようで決して気持ちのいいものではありませんね。ですから雑木の剪定はできるだけ早く、そうですね、12月の半ばごろに終わらせたいですね。その適期を逃した場合は春先に根の剪定と同時に行うようにします。

さて、今日ご紹介するのはツカさんが取り木から仕立てたけやきの超ミニ。細いれど姿といい古さといいかなりの優良品ですね。それに双幹体なのが珍しくて新鮮です。ここまで来ればあと1年枝先の面倒を見て、来年度は展示会の松粕類の添えとして使いましょう。まだまだ伸びしろのある超ミニですよ。気合を入れてがんばりましょう。

2017年11月21日火曜日

舞姫もみじの紅葉

舞姫もみじは、細かい枝先の分岐や、切れ長の細く端正な葉形などに他の種類にはない強い特性があります。ところが、それらに加えてその濃い鮮やかな紅葉時の色彩が、他の紅系の優良種に比べても遜色ないということがわかってきました。


取木をして株立状に仕立てている超ミニの舞姫ですが、葉刈りもしないのにこのように真紅に紅葉します。出猩々なみの色彩ですが、出猩々では葉肉が薄いのでなかなかここまできれいに紅葉しきれませんね。

その点、舞姫もみじではさほどの努力をしなくとも、この程度には簡単に紅葉するのですから、有り難いです。


ちょっと日当たりの鈍い場所でも、この程度に色彩がでました。あと数日強い日差しに当てればもっと濃い紅葉に変化するでしょう。片側は緑色で、日当たりのよい方が虹のように変色していてとてもきれいです。


このミニも真紅の紅葉が見事です。よく日に当てて水も切らさぬようにていねいに管理するのが美しい紅葉を見るコツです。


日光の移動とともに紅葉の色彩も変化しています。


舞姫の切れ長の小さい葉は持ち込むほどに大きさが揃ってきます。揃って密になった葉がいっせいに紅葉すると、みごと盆上に美しい自然が再現されます。

適度な日照、寒暖の差、適切な水やりの三要素が美しい紅葉の源です。


追加の画像です。枝数がふえて芽数が多くなると舞姫の葉はさらに細かくなって、大きさもきれいにそろいます。その揃った葉がいっせいに紅葉すると非常にきれいです。


フトコロの部分はまだ緑が残り、枝先は濃い紅色に染まり、微妙な変化が楽しめます。












2017年11月20日月曜日

もみじの枝作り

期待をかけている山もみじの超ミニがあります。↓のもみじいですが、樹高はわずかに8.0㎝で足元の立ち上がりの幹径は5.0㎝もあります。時代感もたっぷりだし模様もコケ順もよくって云うことないボディーです。

ところが、一とニの枝の裏側にある裏枝が二本あってそのあたりがごちゃついて見えるために、幹筋の動きがすっきりしません。超ミニサイズではよくあることです。


正面の図
左右に利き枝がありますが、右の利き枝の上部に裏枝が二本あってお互いをけん制しています。古い枝ですが、ここで思い切って外せば、幹筋が見えるようになると思います。


→で示した足元のこんもりとした枝です。


裏から見ると左から二番目になる枝ですね。横に一列に三本の枝が並んでいます。左は正面の利き枝、二番目が外す枝で、三番目が残して裏枝として活用する枝となります。


赤矢印で示したのが外す計画の枝です。


コブ切の刃が傷口の大きさにピタッリと合ったので上手く削れました!


液体状のカットパスターを塗布。


傷口の隣の利き枝の元が丸く膨らんで、ややぶかっこうですね。いまその元を削るという選択もなくはないですが、やはり今削った傷口が癒えてからの方が無難でしょう。慎重を期して後回しにします。

















幹筋をすっきりと見せるために削る箇所は灰色で修正した利き枝の元の膨れた部分です。その次には、その上部のやや後ろから顔を覗かしている太めの後ろ枝となります。

このように古木には今までに整理しきれない古い枝がよくあって、幹筋の流れの妨げをしていることがたまたま見受けられます。そんなときはよく検討して少しずつ修正してやりましょう。

では!














2017年11月17日金曜日

楓変わり木鑑賞

我が盆栽フリースクールの最年長のツカさんが、骨格の素材段階に手に入れて、8~9年作り込んだ楓の変わり木です。現在は故あって盆栽屋,comの棚に鎮座しているのですが、落葉時期でもあるので木姿をじっくりと眺めてみよう。

ちなみにこの楓の樹高は意外に小さくて、30㎝を軽く下回って28㎝くらいです。ご覧のように差し枝が暴れたような変形の構図なので姿が大きく見えるのでしょうね。


今年の秋は長雨のためあまり鮮やかな紅葉というわけにはいかなかったですね。ただこの画像からはこの楓の葉性(はしょう)と枝性(えだしょう)が細かく、優れた性質であることがお分かりいただけると思います。

松粕であれ雑木であれ作り込んでいくうちに、持って生まれた優れた素質には適わない、そんな思いをすることがよくありますが、とにかくそんな美点は何よりも大切にしたいものです。


きれいにすべての葉を刈ってみました。今年この楓にたいしてツカさんは、2回以上の葉刈り作業を施しているはずです。その事実はご本人から聞かなくともこうしてほぐれた枝先を見れば瞭然ですね。

ところで、いかがですか、このおもしろい変わり木樹形は?

幹筋は本格的な模様木風ですが、左の足元からそう遠くない位置に2本の枝があって、それがまず第一の個性ですね。そして上の右側の最大の利き枝は横へ伸びるのではなく、途中から隣の幹筋と並んでもう一つの樹冠を形成しています。局限すると、見たこともないような原始的で奔放な姿ですね。

これが雑記でなく松柏であれば、まさしく、双頭の龍のような構図とも例えられるでしょうね。いずれにしても躍動的な力にあふれた構図です。


いっぽう、実物を見るとあまり目立たないのですが、赤矢印で示した数本の枝の流れに違和感がある感じなので、指摘したいと思います。�↓で拡大してみましょう。�


下向きの何本かが流れを妨げているようですが、現段階では構想が固まっていません。ここでは一泊して次の段階で解決していこうと思います。大切でもあり難しくもあるポイントになる箇所のようですから慎重にいきましょう。


やや上方から全体の輪郭線を見ます。小枝のほぐれ具合から見て、早くとも3年、できれば5年くらいの長期計画でじっくりと取り組みたい逸材です。必ずや一流展示会で活躍できる逸材ですよ。

そのころになれば、現在はちょっと気になる幹の全面の傷跡などもなまなましさが消え幹味となっているでしょう。たいがいのことは持ち込みの辛抱が解決してくれのが盆栽です。


正面のやや視線を下げた位置からの撮影ポイントより見るとスケールが大きく見えます。力に溢れた迫力のある姿が見どころですね。

本格的な手入れはまだ終わっていないので、雑木盆栽独特のきれいさがまだ発揮されていませんが、じっくりと手を入れて磨き上げれば、見違えるような晴れ姿に変わるはずです。

それでは。