2015年10月28日水曜日

楓石付再出発(機は熟した)

一度は完成に近い姿までいったものだと思われる楓の石付
親しい同業者が植え替えたばかりのものを、昨年(2014年)の春ごろ入手したものです

当初から枝先は細かくほぐれていましたが、骨格の秩序がかなり乱れおり枝数も多すぎるので
とにかく整理して再出発のスタート地点まで戻る必要がありました


2014年春の姿

ところが、主幹の骨格作りで迷いが生じたために
当初簡単だと思われた剪定作業が思い通りに進まず、なかなか闘志が燃えてこないんです

そのため、あまり無理をせずに静かに機の熟するのを待つことにしました


2014年春の足元の拡大図

画像でみるとますますややこしくなりますが
かなり不要の枝が混じっているけれど、主幹の骨格が決まらないことにはその先へ進みません

2014年春の足元の拡大図

こんな時は無理をしてはいけないのが盆栽人のセオリーです
いい構想が浮かび気力が充実してくるまで、ひたすら「待つ」のも案外効果のある高等戦術なんですよ

ただし芽摘みと葉刈りなど日々の培養管理だけは神経を使ってやらねばいけませんね
いざ構想が固まって改作にかかるときに元気が悪くては勝負になりませんね


2015秋撮影

新しい装いの日は突然にやってくるものです

あれから2年の歳月が過ぎて、数日前、秋の葉落としを行いながらこれまでの培養の成果を確かめている時
突然稲妻のような(大袈裟かな)閃きと気力の充実を覚えて、一気に新しい骨格へとたどり着いてしまいました

2年の歳月を辛抱強く耐えたおかげで
新しい気持ちで再出発する日が来たということですね


2015秋撮影

1 主幹を中心にした主要部
2 全体の激しい動の役目を担う一の枝
3 右の一の枝とのバランスをとりながら反対方向への静かな動きを演出する子幹の群

以上3つの要素から構成された楓の石付です
剪定前の昨年度の写真と見比べてください

剪定により骨格の構図がよく見えるようになったので
この後は枝先のほぐれを促進する段階から再出発することになりました


2015秋撮影

混雑した枝もかなり整理され
主幹にも表情が出てきましたね


2015秋撮影

ちなみに、盆栽スクールの常連クロちゃんは
ちょっと長く感じられる一の枝を赤線から切る派です(笑)

私は様子見派です
みなさんはどちら派?



2015秋撮影

はね出しの部分はあまり形にこだわらずに
主に枝先のほぐれで味を出すことを心がけるつもりです


2015秋撮影

主幹、一の枝、はね出しの3つのポイントを大切にして培養するつもりです
来春には深さ半分くらいの浅鉢に入れ替えたいと考えています


2015秋撮影

後ろ姿

ちなみに、これからの紅葉時期は落葉樹の剪定期に向いています
ただし、冬期には寒さ対策をしっかりやることを忘れないように

それでは

2015年10月15日木曜日

五葉松八房系名木

昭和30年代の後半を皮切りに40年代から50年代にかけても
何度か五葉松八房ブームの盛り上がりがありました

その結果、山が高ければその分だけ谷が深いように
ブームの熱が過ぎたあとの盆栽界における虚脱感は強く残りました

しかし

1 樹勢が強壮で仕立てやすい
2 短い美しい葉性で容易に姿を整えることができる
3 フトコロの葉や芽が蒸れにくい性質があるので、小品やミニ盆栽が作り易い

等々優れた美点も具えているので

現在では、小品向きの品種として那須娘や明星、福娘などが受け継がれ
九重や瑞祥なども代表的な品種としてひろく仕立てられています

ところで八房五葉松のもう一つの問題点は、繁殖のために避けられない接ぎ木の痕です

それらを克服する方法としては

1 挿木苗から仕立てる
2 接ぎ木苗で促成栽培を行ったあと取り木をかける
3 接ぎ木の台木に、従来の黒松苗でなく五葉松を使用する

などが実行されていますが、五葉松の挿木苗の成長の遅いのは
経験された方ならよくお分かりですね

また2の方法による取木もなかなか手間暇と
時間を必要とするものですね

3の方法は、これも時間がかかりますが
まずは確実な方法でしょうね

いずれにしても盆栽は時間のかかるものですが
根気よくいい種木を見つけてチャレンジするのが早道でしょうね

さて、そんな八房五葉松事情ですが
今回巡り会った八房系中品のようなものもあるんですよ



五葉松らしく典雅な姿が印象的です

枝葉に隠れてフトコロが暗いので見えずらいですが
幹模様は下から上まで弛みなくバッチリ決まっています


正面よりもっと拡大する

葉性から見て八房系と思われますが
足元付近に接ぎ木の痕跡はありますせん、これが嬉しい!


もっと近づいても痕跡は見当たりませんよ


後ろからみても、これが接ぎ木の痕だと思われる痕跡は断定できません


もっと若木のころに取り木をかけたのでしょうか?
それとも、五葉松の台木を使った苗から仕立てものでしょうか?

いずれにしても断定できる所見はありませんが
盆栽人としては、葉性が八房系でありながらこのように接ぎ木の痕跡がないのはうれしいことですね

たまにはこんな珍しいことに巡り会えるのが
盆栽人の最高の喜びといえるでしょうね

では

2015年10月8日木曜日

幹に這い上る悪い苔

一言で云えば苔や盆栽にとって必須のアイテムですが
中には是非とも除去しなければならない悪い苔があるのも事実です

↓は気に入って求めたミニサイズの黒松ですが
足元付近では木肌の割れ目にまで苔がびっしりと食い込んでいます

おまけに、それらの苔が湿性なので
足元が乾きにくくいつもジメジメした感じですっきりしません

またピンセットで苔を取ろうとすると
せっかくの荒れた皮を?してしまうので、何とも始末が悪いですね

過去のつれづれ草にも書いたように
まったく湿性の苔は百害あって一利なしです


足元の下部半分くらいが湿性の苔に覆われているので
常に幹が濡れた状態になっており、木肌が腐食してしまうことさえあります


ピンセットでコケを丁寧に取り除く
木肌を傷めないようにていねいに作業しましよう


苔を取り除いた部分に石灰硫黄合剤の1~10倍くらいの溶液を塗る
木肌の割れ目の奥まで溶液が届くように、丹念に塗り込む

数日これをよく乾かすと
ジメジメした苔もいっしょに乾いて、やがて剥がれ落ちます


硫黄合剤を塗った足元の拡大図


後ろ姿

この方法は驚くほど効果があります
是非試してください

では

2015年10月1日木曜日

真柏・石灰硫黄合剤

盆栽人にとってなくてはならない消毒薬であり
また盆栽のお化粧用にも使われる石灰硫黄合剤

2010年に少量包装品の製造と販売が禁止されて以来
500mlの普及版にはお目にかかれなくなって、盆栽人にはとても不便になりました

まあしかし、ウチに見える愛好家さんたちも、知り合いを頼ったり友人同士で融通をつけたりなど
それぞれにうまく調達しているようで、代用品の薬剤に頼るほどではないようです

話は横道にそれました

今日はしばらくぶりに真柏の中品を教材にして
ジンの掃除とお化粧をしてみましょう

参照したい過去のページ(必須)      


硫黄合剤用と水彩絵の具用との皿状の器を2枚
ハケはナイロン製のもの2~3本(動物性のハケはすぐに傷んでしまう)


まず最初は石灰硫黄合剤の原液を塗ります
ジンに硫黄合剤を塗るのは木質部の腐食を防ぐのが第一の目的だからです

ポイントは、水圧ポンプやブラシで幹の掃除を丹念にやっておくこと
また、硫黄合剤が水吸いの方へ滲まない程度に乾してから塗るのもコツの一つです


ハケの毛は動物性でなくビニール製のものを、大中小の3本くらい欲しいですね
使用後によく水洗いしておけば長持ちします


硫黄合剤を塗り終わったらよく乾かすこと
現役の場合は黄色く変色しますが気にしない


次に、水彩絵の具の白(ホワイト)をホンの少々の水で溶きます
硫黄合剤をホンの少し混ぜてもいいですが、仕上がり後にやや黄色っぽさが残りますよ


水吸い部分に絵の具がはみ出さないようにていねいに


こんな具合ですね
木目の割れ目にも絵の具を染み込ませること


でき上がりました
葉の緑と真白なジンと水吸いの紅色の対比が際立ってきれいになりました

それでは過去のページも参考にしながらゆっくりマスターしてください

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