2010年10月23日土曜日

杜松芽摘み納め

春から夏にかけは葉の緑色が美しい杜松ですが
冬期になってから、枝のあちらこちらに茶色の枯れ葉が混じっているものによくお目にかかります

これはたとえ元気な杜松においても、秋の芽摘み納めの時期が遅すぎることによることが多く
鑑賞上にもマイナスですし、培養上からも好ましくないことです

そこで、芽摘みの忙しい時期から秋になって、活動の速度が少しずつ鈍ってくる9月入ったら
各々の樹勢によって今年最後の芽摘み時期を念頭に入れねばなりません

早ければ9月初旬、標準では中旬あたりがその時期で
遅くとも9月いっぱいには切り上げましょう

それ以後になっても徒長芽が気になって我慢できなければ
指先での芽摘みではなく、必ずハサミを使い、芽当たりを確かめながらの軽い切り込みをしてください

ともかく、杜松は寒さがきらいな樹種なので、秋から冬には芽当たりのない箇所を切ってはいけません
元気な芽を残すようにして追い込みます


春から夏にかけての活動の盛んな時期の杜松
この時期には新芽を指先で摘む、もちろんハサミで切り込んでもよし


9月の中旬ごろに今年最後の芽摘みを施しました
その後に吹いた芽はあまり伸びません


先端の小さな芽が冬越しの芽です

このように適切な時期に摘み納めをすれば、吹いた芽が適度に伸びて固まったころ冬眠期がきます
鑑賞上も培養管理の面からも、これが正解ですね

いま気がついた方は、来年こそ秋の芽摘み納め時期を間違えないように
では

2010年10月22日金曜日

スクール速報・五葉松針金掛け

「先生、この五葉に針金かけられるかね、もう1年待ったほうがいいかな」
ターさんが持参した五葉松、素材とはいえ模様が激しくかなりおもしろい持ち込みもの

たしかに葉数は少ないけれど、葉の艶はまあまあだし、冬芽が活き活きとしいる
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、葉数は少ないけど、冬芽がしっかりしてるからね」

というわけで、針金かけの作業にかかるkとにしました
ところで小品盆栽の場合、ニューム線ではどうしても太めになるので、細かい箇所への作業がやりにくし

せっかくの矯正も外したあとに姿が戻ってしまいやすい
というわけで、骨格を本格的に決める場合は銅線を使ってやるべきですね

作業前に私がターさんにアドバイスした点は

1 構想をしっかりと描く

2 まず最初に、太めの芯針金(しんばりがね)を幹や枝の各主要部にかける作業から始める

3 あくまで骨格の構想を重視し、途中では各細部には気をとられないで作業を進める

4 針金の巻き方の見た目にはあまり拘らずに、針金の間隔をやや密にする(小品盆栽であるため)

5 コンパクトに仕上げるために、やや太めの銅線を選ぶ

でした



針金掛け完成の姿
うっかりして作業前の姿の撮影を忘れてしまったのです、もったいなかった!

作業が進んで少しずつ構図が見えてくると、ターさんは俄然やる気じゅうぶんで、相棒のツカさんもあっけにとられるくらい(笑)
とうとう午前中から午後の5時まで集中して仕上げてしまいました

うまくいきましたよ、小品盆栽らしいまとまりと強い幹模様を強調した動きのある姿ですね
これに自信をつけたターさんは、しばらくのあいだ五葉松の素材ばかりが目につくでしょうね(笑)



樹冠部ふきんと芯の拡大図
ちょっと針金が太いと思う方もいるでしょうが、基本の骨格をコンパクトにまとめるには、時にはこれくらいの冒険が必要です



後部やや上方からの姿



太めの針金をかけて幹や枝を強くまげるときには、指先の力だけでは無理なので
ヤットコで針金をしっかり掴んで曲げるといい(先端が角になったペンチでは針金を傷つけてしまうのでダメ)



さてここでワンポイントレッスン
途中でターさんもやってしまった小さなミスですが、大切なことなので復習しておきましょう

このように先端に向けて針金を巻いてきたきた場合、二叉の手前で針金を止めてはいけません
赤点間の矢印の部分は曲げることができなくなるからです



このように先端に向かった針金を二叉の一方(赤矢印)まで巻き、もう一本のより細い針金を二叉の部分にもかけるようにします
つまりお互いの針金にはつながりができて、力が連続して伝わるからです



このような具合に連続した曲を作ることができますね

★ 針金にはできるだけ連続性を持たせよう!

では

初級・中級盆栽集中講座(1):雑木類の新芽摘み

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:3月下旬から5月上旬頃まで(二番芽,三番芽と吹いてきたら夏まで続けることもある)
  • 適用樹種:もみじ類・楓類・けやき・姫しゃら・ブナ・赤芽ソロ・カナシデなど(花や実よりも主として枝先の細かさを鑑賞する樹種)
  • 目的:小枝をふやす・徒長させない・内側の枝(ふところ枝)を守る
  • 道具:剪定小鋏・ピンセット
  • レベル:超初級から達人まで絶対必要な盆栽技術(芽摘みなくして盆栽なし!)
  • ここがポイント:内側のふところ芽は充分力をつけてから摘むか鋏で切るようにする

実技教材・山もみじ三幹


新芽がほころんできた
今がチャンスです
もう少し伸びてからでは遅すぎる
理想は鋏を使わず、ピンセットで摘み取れる新芽の柔らかいときです


ほころんだ新芽をよく見るとたいがい三節あります
元の一節を残して先端の二節を摘みます
もっと伸ばしたい枝は一節だけ摘んでもよい


先端と手前の二節がピンセットで簡単に摘み取れました


枝によって芽吹きが早いところと遅いところがあります
開いた芽をあちことさがしては摘みます

ここにもありました
ピンセットの先でほころびかけた新芽をさぐりなが、らどんどん摘みます
ふところ芽は外側の芽に比べて弱いのでなるべく摘みません
これがポイントです


外側の強い芽は全て摘みました
これでまだほぐれていない芽に勢いがつきます
この作業を何日かおきに繰り返します
全部の芽が開いて芽摘みが終わった頃には
若葉がそろって、新緑の季節になります

消毒
薬剤 殺虫剤・オルトラン乳剤(他にマラソンやスミチオンの乳剤も可)
方法 250倍から500倍に薄めて噴霧器で散布(小さいものはバケツに入れた溶液に逆さまに漬けてもいいですよ)
回数 月に一回以上4月上旬から10月末まで
ここがポイント 葉の表面と裏面、幹枝にたっぷりと(少しくらい鉢の表面に沁みても大丈夫です)
希釈倍数を間違えないこと
例・1000倍液とは水1,000ccに乳剤1cc
500倍液とは水500ccに乳剤1cc
ですよ!
もう一つポイント 濃い溶液で回数が少ないよりも、薄目でちょくちょくの方が効き目があって安全
朝よりも夕方にやるとよい(温度が下がっていくので薬害がおこりにくい)

2010年10月15日金曜日

姫柿について

私たちが「ローヤガキ」という植物名を知ったのは、かれこれ30年も前になるでしょうか
はじめは信じられなかったけれど、よくよく見ても黄色や橙色の小さな実は確かに柿そのもの

デビュー当初はよくあることで、珍品種として一部盆栽人の投機の対象にもなり
棒切れのような根伏せ苗が1万円もした時期がありましたが

すでにそのころには盆栽市場もかなり発展成熟していたため
比較的冷静に価格の落ち着くのを待つ姿勢の愛好家が多かったようです

それもそのはずで、まずは根伏せや実生での繁殖が容易であることがすぐに知れ渡ったし
肝腎の盆栽樹形としての可能性がまだ未知数だったからです

その老爺柿(以後姫柿と呼ぶ)が徐々に普及するとともに量産の時代は終え
こんどは実生による実の色彩や形の変化に流行の矛先が向かい始めました

やはり本格樹形に仕立てられるかどうかが、盆栽人の最大の関心事なので
単なる園芸品種で終わるか、盆栽樹種になりうるかを見極めないことには、爆発的な流行までに至りませんね

私自身も20年ほど前、人差し指くらいの幹の太さで樹髙12㎝ほどの幹模様も枝順もいい
当時として希にみる小品の逸品を手に入れたことが一度ありますが

そのほかには唸るような名木に接したことがないので
姫柿という樹種にさしたる熱を感じたことはありませんでした

余談ですが、その小品姫柿はバブル絶頂期とはいえ、品種的に希少なこともあって
なんと10万円もしたのを、はっきり憶えています(2万円の利益をのせて同業者に売った記憶もある)

そのように、姫柿にはかなり無感動のままの約30年でしたが
どうしたわけかこの数年、お、お、お、というような将来性のある小品や中品クラスにお目にかかる機会が増えてきました

考えればそれもそのはずで、デビューからの年月を考えれば、量的にはかなり以前から飽和状態になっている姫柿のこと
何年も前から今日を見越して、量より質の生産体制に転換した生産者も多いはずです

顧みると、珍品種として鳴り物入りで盆栽に登場した樹種であっても
年月が経ち量的な飽和状態になった時期に、本格盆栽が登場しないことには、やがて見捨てられ消えゆく運命にあるようです

その観点からすると、姫柿は盆栽界に確実に残れるといえるでしょう
幾多の盆栽人の努力により培養法も進歩し、小品や柔らかな模様木樹形や文人樹形に見るべきものが確実に増えてきているからです


姫柿(紅宝樹)

親しい市内の愛好家が根伏せから10数年の歳月をかけた三幹
幹に傷っけのない柔らかな幹立ちがみごとです


もみじや楓のような雑木の風情
枝順も端正につくられたやさしい風情が見どころです


いわゆる赤実という品種
秋の深まりとともに真っ赤に色づきます


拡大図

姫柿の培養のポイント

1 多肥多水で育てる

2 植替えは3~4月に最適(9~10月も可)

3 剪定は春植替えと同時に行う

寒さにも強く強壮な樹種です

では

2010年10月14日木曜日

秋の仮剪定・楓

太らせる目的で、春から夏にかけて徒長させていた枝も
秋風の吹く頃になると伸びもとまってくると、そろそろ切りたくなる

やはり盆栽人は、常に清潔感とさっぱり感を求めているようで
目的を達したとたんに初期の目的は忘れ、ハサミを持ち出したくなるようです

しかしみなさん、決して慌ててはいけません
できるだけ11月の初旬ごろまでは我慢してください

理由は二つです

1 秋の早めに切ると、先端に再び芽が吹き、その芽が充実しないうちに寒さが来る

2 関東地方では、10月いっぱいから11月の中旬ごろまではまだ活動期ですから
  せっかくの太りが中断されてしまう


あまりに長すぎるため、9月中旬にしかたなく切った楓素材
上記の理由を考慮に入れて、図のようにうーんと長めに仮切りしておきましたところ

案の状、矢印の箇所に新しい芽が吹いてきました
でも、心配はいりません、これくらい長めに残しておけば、冬期に一節くらい凍えても素材の本体には影響なしです


新しく吹いてしまった芽を拡大してみましょう
ほら、ご覧下さい

この新芽が充実しないうちに寒さがやって来ては
それはかわいそうなことになりますね

落葉樹全般にいえることです
初心者の方々、気をつけて下さいね

2010年10月7日木曜日

五葉松・古葉取り

せっかちの愛好家は、9月に入ると五葉松の古葉取りを始めますが
古葉取り作業は、春の新葉がさらに固まった10月に入ってからが理想的です

しかし、黒松のように短葉法をかけないため、あまりに早すぎることはありませんから
新葉をいためないように気をつけながら始めて下さい

ただし、黒松はやはり11月に入ってから行いましょう
黒松の場合は、まだまだ短葉法以後の新葉が完全に固まっていませんね


昨年に古葉取りを行わなかった五葉松先端


一番の元についている葉は一昨年の古葉(三年葉)
中間が昨年の古葉(二年葉)

先端の新しい葉が今年出た新葉
つまり三年分の葉がついているわけです

このように三年分の葉をつけたままでおくと、いろいろな障害のもとになります

1 先端の新芽に行くはずの養分が分散してしまう

2 フトコロに日光がとどかず、通風も悪くなり、フトコロ芽の発育の妨げになる

3 葉の量が多すぎて根に多大な負担をかけている

4 以上の原因で、手入れの悪い五葉松の大半は、外側の芽だけが残り
  フトコロがガラガラになっていますね


作業の実際

一年目の新葉のみ残して古葉を取り除く
ただし、指先で引き抜くのは厳禁、必ず図のようにハサミで元の数ミリを残して切り取るようにします

このようにすれば、元から新しい芽が吹く可能性があるからです
手間はかかりますが、必ず実行して下さい

ちなみに、↑の図の赤点は取り忘れの古葉です
これも残らず切り取ります


作業完成
一年葉だけを残してすべて切り取りました

このように葉の量を減らすことにより、根の負担は減り
わずかに残された古葉の元から、胴吹き芽を出す可能性が高くなります

いいことだらけの古葉取り作業

では実行!!