2009年8月31日月曜日

初秋の液肥散布

夏の間の施肥については、マニュアル本などではあまり勧めてはいませんね
もちろん盆栽屋.comとしても、初心の盆栽人には夏場の肥料は控えるようにご指導しています

ところが夏の終わりが近づくいまごろになると、盆栽たちは肥料切れの状態です
長い夏場の毎日の水やりによって肥料分は洗い流されており、じっさいにはお腹がペコペコになっているのです

そこで初秋の施肥には、置き肥の先立っての液肥の併用が有効

油粕の置き肥は、施肥してから根が吸収するまでに10日ほどかかるといわれているので
それまでの繋ぎとして効き目の早い液肥を散布するのです

お勧めはハイポネックス、希釈倍率はやや薄目の1.500~2.000倍
置き肥を施す前後に1週間の間を置いて2回散布します

つまり置き肥が効き出す前の10日間の空白をカバーするんですね
充実の秋はもう目の前に迫っていますから、日にちを無駄にはできません


手近に販売されているハイポネックス
希釈倍率をしっかり守れば肥当りがなくとても便利


バケツなどで希釈しておき如雨露でタップリ
葉面散布も有効ですから頭からも散布できます


適用樹種は盆栽樹種すべてに有効
黒松にも頭からタップリ

さっそく実行してください!

2009年8月23日日曜日

山もみじ・抑制された培養管理

一口に盆栽の管理といっても完成までの各段階によりかなりの違いがありますから
今日は↓の山もみじを教材にしてご説明いたしましょう

この山もみじは、小さい仕立鉢の中で実生からずーっと約20年のあいだ
ハサミ作りで幹の切り戻しや毎年の芽摘みと葉刈りを繰り返して作られた素材です

ボディーはすっかり出来上り将来性十分でしたが
枝数が多く枝順も整理されておらず、まだまだ素材段階でした

私はボディーと枝配りの調和を図りながらしっかりと正面を決め
素材から完成へ向けての道筋をつけました(3~4年前)

関西地方の愛好家に嫁いでから再び私の手元に来たのが今春
見ると数年の間にすっかり落ち着いた大人の雰囲気を身につけているではありませんか

樹高と左右のサイズに似合った化粧鉢に入り、木肌にかなりの古色感がみじみ
枝先は活き活きとしながらも徒長せずに落ち着いています

山もみじの完成への道程において、このように枝先が落ち着いているということが大切で
根と枝葉の量と活動とが、ちょうどいいバランスを保っている証拠です

未完成な素材の場合は、徒長枝が走るようでないと完成への過程がうまくいきませんが
一応枝葉の骨格ができ完成段階に近づくにしたがって、枝先が伸び過ぎないような培養が必要になります



春から入梅前に芽摘みをし、同時に片葉切りと葉切り作業を行いましたが
幸いなことに、その後に再び芽摘みをする必要がありませんでした

つまり抑制された培養管理により、根と枝葉のバランスが保たれていたので
このまま入梅から夏を乗り切ってきたのです

ここで肝に銘じることは、素材と完成を目指す段階に入った盆栽では
培養管理がかなり違ってくるということです

端的に言うと、枝葉の骨格が出きるまでの素材は元気を第一に多水多肥料
一応骨格ができて枝先の繊細さや風格を求める段階になったら、ほどよく抑制された培養管理を心がけます



やや下方よりフトコロを検証すると、不要の枝もかなりありますね
それらは落葉後に姿がよく見えるようになってから、少しずつ減らしていきます

急激に枝葉を少なくすると根とのバランスが崩れて、この場合は木が若返ってしまい
あちこちの枝の先端が徒長を始めてしまいます



夏場でも盆栽屋.comの棚は、寒冷紗などの設備をしない方針です
ですから真夏の強い陽射しのため、葉が少々焼けていますが許容範囲と割り切っています

反対に寒冷紗などでの遮光が過剰で、夏でも青々とした葉を保っている棚場もありますが
それらの大方では、日陰のモヤシのように芽先に力がないことが多いようです

水さえ間に合う条件であれば、夏でもなるべくたくさん日に当てて
成長期に枝葉を充実させておくことは大切です



葉焼け状態の拡大図
十分に許容範囲です

では「抑制された培養管理」が身につくよう
みなさん、頑張ってくださいね

2009年8月21日金曜日

黒松芽切その後

昨年は当初に暑い夏が予想されたので、黒松の芽切り時期を後ろへずらして7月15日中心に行いましたが
その後の盛夏の時期に日照時間が少なくて、結果は読み違いの大失敗となりました

それにこりたので、今年はやや早め(6月下旬~7月上旬)に作業を進めました
結果は長梅雨と冷夏という最悪の気候が続たのですが、どうやら間に合った感じです

毎年私は作業日の設定をできるだけ遅めに設定しているのですが(短葉を実現するため)
友人の中には、原則として6月中旬から月内に完了、例外でも7月10ごろ迄にと決めている人もいます

そうすると、気候が順調で日照時間が長い年にはかなり伸び過ぎてしまいますが
反面樹勢が順調になる効果もあるので、それはそれでいいことだと割り切っているんですね

ともかく関東地方では、この一週間くらい真夏日が続くようになりましたが
盆栽人としては、もっともっと残暑が続くことを祈りたいですね(農作物のためにも)




8月初旬撮影

すでに芽切された状態で仕入れした黒松です
芽摘みの時期はおそらく7月の初めです、1ヵ月後の姿

7月中は長梅雨の影響で芽の上がりはイマイチでしたが
気温の上昇とともに徐々に芽が動いてきました

ちなみに、一緒に仕入れた他の黒松の中にまだ作業前のもあって
それらは7月中旬に慌ててやりましたが、芽の吹きと伸びは現在イマイチです



8/20撮影

8月に入ってから芽の動きがぐんぐんと活発になり
特にこの10日ばかりは真夏日が続いているのでさらに順調です

やはり黒松には日照と高温が大切
もっと暑くなれー!



8/20撮影

一箇所から元気よく数本の芽が伸びてきていますね
気の早いひとはそろそろ芽かき作業を行う人もいます

ただし各人により手入れの流儀はやや異なります
普通私は10~11月になってから葉透かしを兼ねて芽の整理をします

では

2009年8月18日火曜日

水盤と水石 2

砂敷きを楽しめましたか?

水盤にきれいに敷きつめられたしっとりと湿り気を帯びた砂を見ただけで
いろいろな連想が働いてくるのは、あながち水石愛好家だけではないでしょうね


峻険な感じの連山石を据えてみましょう
据える位置、つまり左右だけでなく前後の間合いにも注意をはらいながら、慎重に

据えたあとに下方に向って両手でしっかりと圧力をかけ
砂にやや食い込むくらいにします


圧力をかけたので石の根元が盛り上がってやや乱れる場合があります
これもヘラでしっかりと均して整えます


完成

裾野に湖水を控えた峻険な連山、もしくは海上遥かに望む絶海の孤島の姿と見立てるか
それはあなたの連想が働くままに楽しめばよろしいのです


舟形石を据えてみましょう

このようにただ置いただけでは据えたとはいえません
石の根っ子が露出したままで不安定ですね

先ほど申し上げたように、両手でしっかりと押さえ下方に向って圧力をかけましょう


石と銅盤に一体感が出ました
詫びた銅盤の古さとしっかり時代の乗った多摩川の船形石の調和が最高です

これで完成
このあとはたまに霧水をかけて砂の水分を保ちながら楽しみます

では

水石と水盤 1

水石の鑑賞法は台座と水盤を用いる二通りの演出方法が主流

昔は水盤飾りが主流でしたが、扱いが楽なせいでしょうか、徐々に台座飾りが普及してきて
現代では台座と水盤飾りが半々という印象です

しかし初夏から夏にかけての暑い季節に、水盤に砂を敷きつめ水を張り
そこにお気に入りの愛石を吸えたときの清涼感は格別ですよ

さて、今日は銅盤を用いて水盤石の初歩から勉強しましょう


購入した砂はあらかじめよく洗っておきましょう
要領は、お米をとぐ場合と同じです


洗った砂はよく干して保管する

ちなみに、用いる砂の質はあまりに白っぽいものや粗めのものは避け
粒子の細かい落ち着いた茶系統のものが上品です

そうです、ちょうど茶室の京壁のような色ですね


間口17cmほどの古色感のある楕円銅盤
やや多めに砂を入れます


枡でお米を計るように、スリキリ


スリキリいっぱいだとちょっと多いので、縁よりも数ミリ低く表面を均します
柔らかめの小箒がポイント、硬い箒ではうまくいかない


きれいに敷きつめることができました
砂の量は縁の内側を基準にして多過ぎず少な過ぎず


砂が乾いたままでは海や湖水のイメージが湧きませんね
それに据えた石の落ち着きもよくありません

水盤が小さい場合は噴霧器で、大きい場合は如雨露で
しっかりと湿らせましょう


コテやヘラ(この場合はもんじゃ焼きのハガシ・笑)などを使って
さらに丁寧に砂の乱れを直します

ともかく、ただ漫然と砂を敷くという感覚ではなく
この何気ない一連の動作を”静かな気持ちで楽しむ”つもりでやってみましょう

つづく

2009年8月14日金曜日

草もの盆栽

草もの盆栽の魅力は、なんといってもその季節感
春には春らしく、秋には秋らしく、四季の時々を感じさせてくれます

もちろん樹木の盆栽にも四季それぞれの姿がありますが
草もの盆栽はさらに季節を先取りした形で、繊細にしかも鮮やかにその息吹きを放ってくれます

ですから、秋から早春にかけて常緑の松類を飾る場合など
添える草ものによって、季節のイメージをより鮮明に演出することができるのです

例えば姫ススキをならば晩秋だし、霜に当たって色づいたシダ類ならば冬
さらにフキノトウや福寿草なら早春の色が濃厚となるでしょう

うれしいことに草ものは樹木の盆栽に比べ培養法も簡単なので
樹木の盆栽は難しくってというかたがたでも、上手に育てることができますね

とはいえ草ものといえど盆栽の重要な一ジャンル
盆栽人は盆栽人らしく、侘びさびのきいたキラリと光る草もの盆栽に挑戦していただきたいと思います



鉢の間口4.0cmの矢竹



手篭式の間口5.0cmの黄金シダ

草もの盆栽培養の要点

1 鉢はなるべく浅めで小さめのものを選定する(鉢が目立ってはいけない)

2 水も肥料も少なめに管理し、なるべく徒長させない(肥料は水肥を年数回)

3 徒長を避けるため日当たりのいい置き場で培養する

4 添え物として使用する場合を考慮して、サイズとイメージの異なった鉢で一品種を数鉢培養すると便利

5 四季を通じて楽しめるように、見ごろの異なった品種が揃っていれば最高

2009年8月9日日曜日

真柏の葉つや復活

盆栽人にとって例年よりも水やりの難しい天候不順の今年の夏
夏といえば水切れを思いうかべる我々ですが、今年のような天候では水が多すぎて失敗するひとも多いようです

その水やり過多の警報のために「五葉松・乾かす勇気」「黒松の色抜け」を書いたのですが
今日はごく単純な水や肥料不足が原因で葉の色つやが冴えなかった真柏を教材にして、その復活した姿をお見せしましょう



7月初旬ごろ撮影

ある日訪れた懇意な同業者の棚で目についた真柏
おそらくベテランの愛好家さんから放出されたものと目星をつけたんですが、聞いてみるとやはりその通り

余談ですが、私たちプロが見るとベテラン愛好家が長く愛培したものは、おおよそわかるんです
見分ける最大のポイントは鉢で、たいがいはきっちりと小さめの鉢に入っていますよ

この真柏もシマッタ小さ目な鉢におさまって
培養よりも鑑賞に重きを置いたたたずまいが感じられますね

初心の愛好家さんだとこうはいかない、思い切ってここまで鉢を小さくできませんね
培養に重きをおいたり乾くのを怖がって、やや大きめの鉢を選定するでしょう

ところで心なしか葉つやが冴えた緑色とは言いがたいですね
きっと鉢が小さいための水不足だとは推測しましたが

ほんとうの原因は何でしょう?
さっそく調べにかかります

さて、枯れ枝や葉の痛みはぜんぜんなし、各枝に葉つやのムラもなし
さらに鉢土を検証してみると、粒子はしっかりして水はけもいい様子

次に底の水穴を見てみると、やはり用土の粒子はしっかりしているし
底網ごしに僅かに見える鉢内部にも清潔感が感じられるので、根の障害はありません

このような場合は、水と肥料が不足しているだけの
いわば単純な軽度の栄養不足だと判定できます、オーケーですね

もちろんこのような状態を何年も続ければほんとうの病気になってしまいますが
今のうちならば十分に間に合います



約1ヵ月後、適切な水やりと少々の施肥によりこんなに葉つやがよくなりました
人間でいえば、医薬に頼らず規則正しい食生活によりすっかり健康を取り戻したということでしょう



美しい濃緑に葉つや

以上のように、盆栽にとって水や肥料は人間の食生活に該当する生命維持の基本です
本当の病気になってから医薬に頼る前に、まずは規則正しい食生活を心がけましょう

では

2009年8月3日月曜日

黒松の色抜け

あなたの盆栽の黒松や赤松が↓のように緑色が極端に薄くなった経験はありませんか?
松の品種に「蛇の目松」といって、斑入り葉の松がありますが、とても普通の黒松とは思えないほどです

入梅頃によくみられますが、盆栽人はこの症状を「色抜け」と呼びます
決して健全な状態でないのは確かですね

この症状になった盆栽を見ると大方の愛好家さんは、原因を「肥料不足」と判断します
それは一部正解のときもありますが、もっと大きな原因は「根の酸素不足」であることがほとんどなのです

つまり、植物の葉は光合成、つまり二酸化炭素を吸収して酸素を作り出す作用をしているんですが
根は人間と同じ「呼吸作用」をしているので、常に水過多では酸素不足になっちゃうんですね

その酸素不足が「色抜け」の主な原因です


黒松ですよ、決して特別な珍種ではありません


特に葉の元のほうの色彩が薄くなるのが特徴です


普通の黒松と比較すると、ビックリ!

このように色抜けした松類をよく観察すると

・長いこと植替えをしていないので用土の粒子が壊れて劣化している
・水や肥料が過多で、鉢内の水はけが悪い

場合が多いようです

水や肥料の不足が原因で葉に生気がない場合は
色つやは冴えなくとも、このように色抜けはしないものです

さて、解決の方法ですが、適期でもないのに慌てて植替えてはいけませんぞ
それは初心者のもっとも陥りやすい誤解です

・決して肥料をやらず水も控えめにしてジッと植替え適期(春)まで待つ

松類はかなり乾燥にも強いものです
怖がらずに「乾かす勇気」を持って実行してください

水を控えるだけで色が戻ってくることあるくらいですよ
さあ、さっそく棚場を見直してくださいね

2009年8月2日日曜日

がんばれ、きんず!

5月の半ばに頒布コナーに掲載した4鉢の中の1鉢
仕入れの段階ではまだビニールハウスに入っていました

そのためお買い上げいただいた2鉢も
外気に慣れて培養が軌道にのるまでお預かりしてからお送りした次第です


ところが、仕入れした段階ではいちばん芽先が進んでいたこの鉢が
どんどん他の鉢に抜かれてしまい、とうとう↓のような始末になってしまったのです


まことにお恥ずかしい!

こうなるまでには、針金のせいかな?
とも思って針金を外したりもしたんですが、衰弱の症状はいっこうに改善されません

とうとう利き枝は完全に枯れ上がり、アウト


ご覧のように初めから伸びかかっていた頂上の芽も、止まったままいっこうに動こうとしません
他の小枝の先も動く気配はまったくありません

まいった!


参考のために、残されたもう1鉢はご覧の通り元気はつらつ
なかの一芽はすでに10cm以上徒長していますが、根作りのためにさらに伸ばしており、余裕しゃくしゃくです


このまんまじゃいずれオダブツだな、と半ば諦めていました

そんなわけで、今年は梅雨明け宣言のあとも雨が多くスッキリしない天気が続いているので
南側の小屋への出し入れが面倒になって、一週間ほど前から日当たりが少々落ちるけどビニールハウス内に置いておきました

水やりのたびにそれとなく注意はしていたんですが
正直その心は、「元気になってくれよ」というよりも、「いつ枯れちゃうのかな?」の感じでした



ところが1週間経っても残された芽先の葉は黄ばんでは来ず、反対に心なしか青味が深まった感じさえしてきました
あれッ!? あれッ!? このきんず、調子が出てきたのかな、ハウスの環境が合っているのかな!?

これはひょっとすると、ひょっとするかも!
確信は持てないが、赤点の2箇所に新芽が吹いているようにも見える

そして風当たりの少ない湿度を保ったハウス内の環境が
瀕死のきんずのために集中治療室(ICU)の役目をしていることだけは確かなようです

私は直射日光に当てることに拘りすぎるあまり、風による乾燥が衰弱した盆栽の大敵であることを忘れていたようです
改めてそう反省させられいる今の私です

いずれにして遠からず結論は出るでしょうが
ともかく、「がんばれ、きんず! 」と念じながら、霧水に励む毎日です