2006年2月26日日曜日

支那鉢・鉄画軒

盆栽界では、明治末から大正期、および昭和初期に支那(現在の中国)より渡来した鉢を
中渡(なかわたり)と呼びます

一般的に、支那鉢とはこれらの時期のものを指しており
それら以前のものは古渡(こわたり)、戦後のものは新渡(しんとう)という呼び名で区別します

その中渡の支那鉢の代表的落款のひとつが「鉄画軒」(てつがけん)であり
実用名鉢としてその名は有名です



鉢の表記法は、朱泥外縁雲足木瓜式(しゅでい・そとえん・くもあし・もっこしき)と記すのが原則で
そこへ間口15.5×奥行12.8×高さ5.8cmと併記します

盆栽界では、この表記により次のことがわかるのです

1 支那鉢であること
2 中渡の鉢であること
3 朱色の土による焼しめものであること
4 縁が外に向いた鉢であること
5 足に雲の文様があること
6 木瓜式(もっこしき)の形であること

便利でしょー!
こんなにたくさんのことがいっぺんにわかっちゃうんですから

ちなみに、古渡と新渡は表記の頭にそれぞれを記すことによって中渡と区別しますし
現在の中国で作られる鉢は決して「支那鉢」と呼ばず、「新渡」「新々渡・しんしんとう」と云うのが盆栽界の慣わしです



この鉄画軒の鉢はおよそ100年前に作られたもので、朱色の土の光沢が時代を経てとてもすばらしく
使い込みによる時代感が一層の渋みと重厚感を添えています

私の手に入ったときには黒松の小品盆栽が入った状態で
外見からは傷もなく、そのすばらしさは見ることができましたが、内側の様子はわかりません

もしも内側に欠点があったらと心配もしましたが
とこかく土の光沢と時代感のすばらしさに惹かれて、思い切って買ってみたのです

帰って、さっそくその黒松を抜いてみますと
幸い保存状態もよく、無傷完品、思わずニンヤリとした次第です

名品の鑑賞と支那鉢の解説でした
では

2006年2月25日土曜日

もみじ植替え4

さて、植替えも最終段階
ここで大切なことは根の隙間の隅々まで用土を入れること
と、植え付けの土の密度です

もみじや楓の雑木類はやや柔らかめに(密度を粗く)ふんわり
反対に松柏類は、固めに土を押し付けて密度濃く植えつけます


最初は半分くらい植え土を入れ、竹べらで土が隅々まで行き届くようにします
使いやすい手製の竹べらを作りましょう(太細、それと長短など)


今度は、多めに植え土を入れさらに根の隙間に土が行き届くようにします
そして、表面をならして水をやって仕上がります

この場合、水はたっぷり
水穴から出る水がきれいになるまでやります


作業完了!

水やりの際に表面の土が流れないように、水苔を張る人がいます
その場合、水苔の量は最小限にしましょう

鉢土の表面をサッパリさせておくことは根の生理上(呼吸作用)からいっても
とても必要なことなのです

「鉢土の乾きが悪くなり根の活動を妨げる恐れがあります
植替えの際の水苔は、夏場の乾燥対策とは目的が違うことを知ってください」

植替え後の置き場と管理について

目安としては凍らない程度で乾燥した冷たい風の当たらない場所に置き
水を切らさないようにします

霧水は盆栽がもっとも喜ぶこと、できれば一日に数回やってください
必須ではないがお勧めです

もみじ植替え3

さて、植替えの最終段階、植え付けです


用土は赤玉土8:桐生砂2の割合
まず、鉢底に荒めのゴロ土を敷きます


ゴロ土の上に植え土を少々入れます


ここが肝心!

植え付け位置や角度をしっかり決めます
一度決めたものを訂正するときは、ゴロ土を入れる段階からすべてやり直します(絶対条件)


ここも肝心!

据えつけた盆栽が浮かないように素早く針金で仮止めします
浮いた盆栽の根の下に空洞を作らないためです


盆栽が浮かないように根元を押さえながら、しっかりと針金を締めます
十文字の方向の針金もしっかりと締めます

要は、固定した盆栽が動かないこと、しっかりと針金を締めてください

つづく

もみじ植替え2

仕立鉢で育てた盆栽がいよいよ化粧鉢に植えられ
これから「本格的なミニ盆栽」としてデビューしていくのです

それには、まず、さらに小さな鉢に入れられるように「根」を作らねばなりません
そうです、根の追い込み作業です

枝と同じように、根も追い込んで作っていくものなのです
この「根の追い込み」という認識は、盆栽人にとって非常に大切です



根の底部を追い込みます
根張りを発達させるために大切なことです



かなり薄くなってきましたが、もうひとふんばり
竹べらで丁寧に底部の土を削ります



鉢に入るかどうか試してみます
根の側面はまだほぐされていません、最後にその追い込みにかかります



側面の土をほぐし、根を追い込みます
この場合、鉢の形(長方形)も意識してくださいね



根さばき完成

ここで復習です

原則として、根をほぐす順番は

1 根元付近
2 底面
3 側面

の順ですよ

つづく

もみじ植替え1

今頃が山もみじの植替え適期です

晩秋から初冬にかけ(紅葉の晩期)のほんの一時の間冬眠したもみじも
12月になると早くも根は活動を始めます

その頃になって枝を切ると樹液が滴り落ちることから
もみじの休眠期と活動期を知ることができますね

ですから、表からは未だ休んでいると思われる盆栽も
根は来るべき春の芽出しに備え、すでに動き始めているのです

芽が動き始めてからでは遅すぎますよ
さあ、みなさんも植替えを始めましょう



樹高7.0cmの山もみじ、仕立鉢で20年も作りこんだ逸品です、根もよく出来ていますね

用意した鉢は一蒼鉢の辰砂長方、ちょっと深いと思われますが
根の容積からこれくらいと考慮しました




鉢の準備

敷き網と固定用の針金をばっちりと
植替えの失敗は、このような下準備不足の場合が案外多いですよ


根をさばく順番は、まず根元
根張りの確認から始めます


根元の次は根の底部
鉢の深さを念頭に入れながらほぐします

同時に根の観察も怠りなく
綺麗な色の子根がよく発達していますね

今までに適切な植え替えが繰り返されてきた証拠
(枝と同じく徒長させてはいけないのです)
子根がよく発達していることがいい盆栽の大切な条件ですよ

根は人間でいうと「内臓」なのです


この段階まではハサミを使っていません
手製の竹べらで充分です

つづく

2006年2月7日火曜日

石州・香山鶏血釉の比較

長らく休筆しました
ごめんなさい

さて

石州と香山の他には陶翠の鶏血釉もよく知られていますが
東福寺の作品ではあまり見かけません

しかし、一口に鶏血釉といっても作家によってその持ち味はかなり違いますね
今日は市之倉石州と平安香山の作品を比較してそれぞれの特徴を見てみましょう



市之倉石州 間口7.7×奥行7.7×高さ3.6cm

こってりと量感のある釉薬
鮮やか過ぎるほどの鮮やかさです

しかし、石州はその鮮やかさに少々の黒っぽい釉薬をもってアクセントをつけ
陰影の効果をねらっています



平安香山 間口12.3×奥行12.3×高さ4.5cm

石州とはやや異なった色彩です
釉薬の量感もさらっとしていますね

このように、香山の鶏血釉には白っぽい窯変がよく見られます
これも鶏血釉のくどさを和らげるための作者独自の工夫なのでしょう

このように作家は独自性を表現するために心血を注いできたのです

鑑賞する側のみなさんも釉薬鉢の微妙な相違や変化を見逃さないように
平素から色彩に敏感になる心がけが大切ですよ

では