2016年6月30日木曜日

明治神宮

すでに56回目を数えた日本水石名品展

日本でも最高峰の水石展示会の一つで
場所は明治神宮の東回廊と本殿の斜め裏側の社務所が陳列場所です

都会のオアシスともいえる神宮の杜での水石展は
深緑の季節であるがゆえに、なお一層の清涼感に包まれていい雰囲気です

さらに外人の観光客が多いことも
日本の伝統文化にとっては張り合いのあることです

昨今の盆栽ブームが話題になっていますが
それ以前から日本古来の文化を真剣に学んでいる海外の愛好家さんたちもたくさんいますよ

参照ページへどうぞ2002年9月10日


今年の出品作品の中で、私のもっとも気に入った恩田さんの遠山石
変化に富んだデリケートな稜線、いい姿でした

水盤で飾ることが少なくなった昨今
卓台の選定にまで周到な配慮がいきとどいて、みごとな飾り席となっています


松戸市の浮ケ谷弘子さんの一席
静岳石です


私の親しい友人の真嶋誠一さんの幸太郎石


東回廊の飾った浮ケ谷勝利さんの安部川石
姿も時代も素晴らしい逸品でした

2016年6月22日水曜日

尚古堂・紫泥雲足長方

つい先日縁あって,ある愛好家さんから尚古堂を譲っていただきました
形状などの名称は正式には紫泥外縁隅入り雲足長方(落款・尚古堂製)

あらかじめ画像をいただいていたので保存状態のよさなどはわかっていましたが
実物に触れてみると仕上がりや時代感が抜群なので感激もひとしおです

寸法は間口12.5×奥行き9.0×高さ4.2㎝で
大中小とあるこの外縁雲足の形では中の大きさに入ります



なんて言ったって尚古堂です
一目で並みの支那鉢との格の違いが伝わってきますね

底光りする土目の重厚感、シンプルなフォルムと適度な緊張感
まさに戦前の支那鉢の代表的な作品です

シンプルかつ力強いシャープな線は
やはり一発仕上げの支那鉢ならではのものがあります



盆栽鉢の凄さは、制作より一世紀もの年月の実用に耐えながら
なお現役であり続けて高い格調を保っているところでしょう

盆栽鉢として生まれてきた宿命(?)から
骨董品としてガラスケースに収まっているわけにはいきません

ぴったりと似合う盆栽を持主様が手に入れたときには
さっそく出動となるわけですからね

私達盆栽人が古い盆栽鉢に格調と同時にある種の活力を感じ取っているのは
このように盆栽鉢には定年がなく、永遠に現役として存在しているからからもしれません



外縁、隅入り、雲足なと盆栽鉢としては凝った造作でありながら
入れる盆栽を引き立てるという実用の役目を忘れてはいません

各パーツはあくまで控えめであり
全体のバランスを壊さないよう配慮されています



真上からの図

外縁の幅も広すぎずにあっさりとしていますね



鉢裏と足の様子

この角度から見たときだけ、この鉢の骨組みの堅牢さが感じられます
つまり必要以上のしっかり感やゴツサは普段目立たぬ箇所に隠しておく作者の配慮なのです

表面の見た目と実用品に求められる堅牢さとのバランスの接点がこの面にあるわけです



落款
「尚古堂製」



支那鉢の最大の特徴であるヘラ裁きが見られる隅入りの外縁や雲足付近
とにかく一発仕上げのヘラ痕から作者の息吹が感じられます



生きているような質感が輝く良質な土目です



作者の息遣いさえ感じられるヘラの痕



足裏の様子
傷の発見のポイント

この尚古堂はもちろん無傷完品でしたが
この機会にニュー(ひび割れ)の発見の仕方を簡単にお教えいたしましょう



赤線で示したあたりがニューの入りやすいところですから
手の平に載せ反対の中指の背中で赤線のあたりを軽く叩く



この図の赤線も傷を発見するポイントです



小さな鉢であればこのような持ち方も可
この形で四隅を叩くとかなりの効果ありです

このように叩くと目には見えない微小なニューでも
ひび割れ特有の濁った音がします

最終的に専門家の強力な検証法です
見た目に傷が発見されなくとも、音が濁った場合は傷ありと認定されますから

ぜひ皆さんも身につけてください

2016年6月1日水曜日

舞姫ボディー作り

今日の教材の舞姫もみじの履歴を申し上げると

一昨年(2014年)に取り木をして
昨年(2015年)の春に本植えして一年間肥培しました

今年(2016年)の春は植替えずに、ひたすら元気をつけ、根っ子の充実を図り
超ミニの基礎作りにかかっています

ともかく、盆栽はしっかりした骨格が一番大切です
ですから、盆栽作りはボディー作りなんですね


右側が主になる幹で


その左が子幹になります
赤字印の外側の2本は外して双幹体とします


後ろ側から見た様子


赤線のところから切り戻して幹模様をつける計画ですが
赤線ギリギリまで追い込むのは入梅か夏ごろまで我慢します

いきなり追い込むと傷口が塞がる前に焼け込む恐れがあります
辛抱して、ここは気長に待ちの体制ですね、焦ってはいけません


後ろからの様子


いきなり赤線までは追い込まず、2節ほど手前で切っておきます
これは、下部に残した枝葉に勢いがつくのを促す意味も含んでいます


入梅もしくはそれを過ぎる夏ごろまでは、現在の姿で培養します


赤矢印の2本の枝は非常に大切です
左は将来の幹筋を形成し、右は一の枝になります

また、不定芽が吹きやすいあたりは
赤点で示したあたりです


小っちゃくって、ずんぐりしてて
可愛くて、しかも力がありますね、逸品の匂いがします

骨格の基礎の予想図(あと1~2年後)
樹高は5.0㎝以内を目指します