2022年12月25日日曜日

焼締め東福寺正方名品


平安東福寺の紫泥焼き締め正方鉢。間口18×奥行き18×高さ10㎝の中品鉢です。胎土はやや粗目で梨地がかってなかなかの渋みがあります。


おそらく東福寺の中品鉢としてはその格調からして名品といっても過言ではないでしょうが、他にも見どころがあります。


足の元に楓に東福寺の落款。
東福寺の楓落款は有名ですがこの鉢の水穴は楓の葉型になっていて、落款が楓になっているのです。東福寺特有の遊び心といっていいでしょうね。



真ん中の水穴にご注目!


胎土はやや梨地の雰囲気。







楓の葉型の水穴。


 

2022年11月23日水曜日

楓葉落ち後のスタイル

樹高約22㎝の楓。隣市の愛好家さんが20年以上の歳月をかけて作りあげてきた、なかなかの優れものです。まだ主幹の上部の細部にハサミが入っていないので課題はいくつか残っていますが、来春までに答えを出すようにしましょう。
愛好家さんの所有物は、とにかく時間をかけてあるので、持ち込みの味わいに富んだものが多いのでそのあたりがうれしいですね。


主幹の頭付近に課題が残るといいましたが、向かって右に添った副幹の斜めに伸びた勢いも大切な見どころです。


後は来春に化粧鉢の選定をすることですね。
鉢の大きさや形によって盆栽のイメージは左右されます。
柔軟に、辛抱強く、木姿の引き立つような鉢を探しましょう。

 

2022年11月16日水曜日

山もみじの葉性

秋の紅葉も終わり、本格的な休眠期に入る直前の剪定を待っているところですね。



山もみじは、飛んで風に乗った花粉が自然界の山もみじ同士で
交配して繁殖します。
今日ご紹介する2本の山もみじのミニ盆栽は、兄弟実生の苗を素材にして
コツコツと20年もかけて作り上げてきた素材です。


さて、どっちのほうが葉性がいいか、皆さんはお分かりになりますか?
向かって左の細い幹のほうが葉が細かくって紅葉もきれいですよ。

理由は、

左のほうが葉柄が紅いですね。山もみじの場合、葉柄の紅が濃いものほど、葉が細かくて葉の色も紅が強いという性質がみられます。
反対に、葉柄の緑が強いものほど伸びがいいということになります。
これを知っていれば、雑木類の葉のない季節でも品定めが可能だってことですね。









 

2022年11月6日日曜日

ルーペ(鉢の鑑定)

小鉢が好きで、それらを特に蒐集目的で愛好している盆栽人にとって、ルーペは必携のグッズですね。若い頃はともかく中年を過ぎてからは、コレを忘れた時などは良品に出会えても安心して購入する気になれませんね。
どんな小鉢でも自分の目で傷の有無を確かめる習慣がついているので、ルーペなしでは買い物をしないようにしましょう。


愛用のルーペ(倍率9倍)(折りたたみ式)


宝石鑑定用のルーペが使いやすそうですが、自分は、洋服の生地屋さんの筋から30年くらい前に頂いて以来の古い付き合いです。


長いほうの一辺が5㎝くらいで手ごろな大きさ。よく見えますよ!
ということで、小鉢を勉強したい人は是非とも手に入れてくださいね。

 

2022年11月5日土曜日

葉落ち後(楓ミニ)

昨年の夏前に東京の歯医者の先生から譲り受け二回目の夏を無事に乗り切り、痩せていた芽先もこの秋になってやっと肥えてきた感じです。松戸の冬もけっこう厳しいですから、ちっとは肥やしておかないと、枝枯れって恐れもあるし、用心に越したことはありません。


葉落ち前 楓ミニ 樹高10.5㎝


葉落ち後

一廻り幅が増えて枝先に力が加わりましたね。来春には必ず植え替えて樹勢を付けて枝の追い込みを心がけます。
足元からの力強い幹模様と躍動する枝の動きが見所の、ちょいと憎い奴ですな。



 

2022年10月26日水曜日

光峰窯(市之倉石州)

月之輪涌泉と並び昭和の代表的な絵鉢作家・市之倉石州は、石州窯と名乗る工房の窯元としても多くの作品を残しました。
ですから、「市之倉石州」の落款は石州単独の作品で、「光峰」と記されたものは、その工房でスタッフ全員の作品であるわけです。
ですから当然、両者の金額的な評価はかなり異なってきますが、市之倉石州の作風は石州窯の作品にも色濃く反映されていますので、光峰の落款の大量生産品であっても十分に楽しむことができます。



後列三個のうち中央の外縁丸鉢が光峰鉢
下の画像のこれ


光峰・黒泥外縁縄縁丸

間口5.2×奥行5.2×高さ3.3㎝

市之倉石州の作風である精緻、繊細、正確なイメージが具現された作品です。





後列三個の真ん中の外縁丸鉢が光峰鉢
泥は黒色で外縁が大きく張り出して、外縁に縄目の模様が入っています。
落款は「光峰」



 

2022年10月23日日曜日

超豆鉢7点組

一番大きな鉢が間口2.6㎝の7点組です。その一番大きなのが飴釉(あめ)で、他の6個はすべて焼き締めものばかりです。



後列左から2番目が飴釉です。


焼き締めものもそれぞれに土目が異なっているので、味わいに微妙な変化がありますね。


鉢底の仕上がりを見ると7個とも微妙に味わいが異なり、組鉢の面白さが伝わってきます。

 

2022年10月15日土曜日

組鉢を作ろう





小鉢、豆鉢のコレクションの世界には、複数個の一組をまとめて鑑賞する組鉢という楽しみ方があります。
しばらくぶりに、お茶飲み場のガラスケースや机の引き出しの片隅にしまい忘れているミニ鉢を集めて、八個の組鉢を作ってみました。


前列左側から、①辰砂丸、②菊池清心染付長方、③金蕎麦丸、④菊池清心赤絵丸
後列左側より、⓹鉄釉丸、⑥辰砂丸、⑦色絵丸、⑧辰砂丸


すべての鉢に共通な属性を拾い出して括ってみましょう。
1⃣すべての鉢がやや大きさはことなるとしても、いわゆる豆鉢です。
 例 ②の菊池清心・染付長方は間口3.2×奥行2.4×高さ1.0㎝
2⃣すべての鉢が釉薬(ゆうやく)ものです。
3⃣すべての鉢が和鉢(日本鉢)です。

ですからこの組鉢は「和小鉢八枚組」と呼べるでしょう。ただ釉薬については、一言で表現することはできませんね。


一枚ずつ釉薬の色を見てください。ちょっと画像が暗かったようですが、渋めの釉薬が地味ながらしっかりとした輝きを見せています。


 よろしいですかみなさん。組鉢をまとめたときは、すべてに共通な属性を見つけだすのがまず最初のおしごとですよ。

2022年10月10日月曜日

楓の魅力


樹勢がこの上なく強壮でしかも春の目出し、新緑、深緑、紅葉と葉色の美しさだけでも年中を通してその趣を楽しむことができます。さらには盆栽の精神から言っても、その葉落ちの姿は最も鑑賞に値する季節の贈物とも言えるのではないでしょうか。


樹高20×左右30㎝の楓の古木


さらにその魅力を列挙すれば実生、挿し木、取り木、株分けなど、素材の供給も多岐にわたって可能です。この素材は実生苗をある時期に足元に取り木をかけて腰を低く改作したものと推測できますね。


唐楓の場合は本来の性質と丁寧な芽摘みなどの手入れの繰り返しによって、このような美しい繊細な枝先が出来上がります。


他の代表的な雑木類にもみじ、けやきなどが挙げられますが、楓ほどに多岐にわたって様々な樹形が可能な樹種はないでしょう。


これからも様々な角度から楓の魅力を追いかけて、個性あふれた小品やミニをこしらえて下さい。



 

2022年10月7日金曜日

ピラカンサ中品

ひと昔、ふた昔前のピラカンサといえば、もっぱら園芸界でのみ愛好されており、盆栽界では一段下の樹種とされていました。それはひとえに詫びさびをもっぱらとする昔の盆栽観の強い影響を受けた感性といえるでしょう。


ピラカンサ 樹高25㎝×左右30㎝

昭和中後期から平成令和へと時は過ぎるに従い、盆栽技術の発達は目覚ましく、さらにその波は整形技術にとどまらず肥培管理にいたるまで驚異的な発展を見せるに至りました。


昔では夢のまた夢であったような力強い骨格の中品ピラカンサ。千葉県の親しい愛好家さんが挿し木素材から40年の歳月を立派に育て上げました。


後ろ姿


実はやや小粒で色も鮮やか。

 

2022年10月6日木曜日

真柏の文人木

親指から人差し指くらいの、ごく細身の真柏。樹形は文人調で樹高は25㎝くらいです。


やや大きめの仕立て鉢風の安鉢に入っているので、夏の間は水やりが楽でしたが、こうやって改めて眺めてみると、もうちょっとお洒落な軽い感じの鉢に入れてやりたく
なりました。


サバとジンの本格的な掃除もまだなので、真柏特有の雅たきれいさが見られず、どちらかというとヤマだしの泥くさい感じが目についてしまいますが、水吸いの皮あたりの古色感はなかなかいい感じです。


後ろから眺めた姿も飄々とした感じが出て、けっこう味がありますね。


部分的な細部に目をやってみると、その古さは捨てがたい。




根気よく来春迄辛抱して、早春に思い切った整形をして幹と枝の見どころをはっきりさせて
鉢も替えましょう。
風が感じられるような洒落た真柏文人をお楽しみに。

 

2022年9月3日土曜日

天目釉外縁長方

しまい忘れの未整理の小鉢などを片付けていると、ときどき思わぬ珍品らしきものが出てくることがあります。どこからいくらで買ったのかもすっかり忘れているので、気楽そのもので、我を忘れてしばし没頭してしまいます。


天目釉外縁二段足長方
間口10×奥行き7.0×高さ4.1㎝


ついこの間でてきたのが「真葛香山・まくずこうざん」ばりのこの天目釉の長方鉢。

鉢裏に四角落款があるのですが押しが甘いので薄くて読めず、残念!
ただボディの膨らみ具合と釉薬の色つやは申し分なし。持ち込みもよく、無傷です。


真葛香山は幕末から明治期に活躍した日本小鉢界の最高峰の作家で、遺されたその作品はほとんどが図録ものの有名品です。
今日の掘り出し物は、真葛によく似た天目釉の長方鉢として覚えておいてくださいね。きっとみなさんのお役に立つ時がくるでしょうから。
とにかくそう簡単には実物にお目にかかるような代物ではないので、日頃から図録をよく見て勉強しておいてくださいね。