2020年7月27日月曜日

二代平安東福寺・瑠璃釉外縁雲足長方(3)

初代平安東福寺存命のころより二代勇氏は初代と共に作陶に励んでおりましたが、作品の質や絶対数となりますと、初代には遠く及ぶものではありません。


ところが門前の小僧と申しますように、たまには意図せずとも子供の頃より慣れ親しんだ陶芸の道は、二代目をしてなかなかの傑作を実現させる僥倖もあったようです。


初代得意の瑠璃釉雲足長方、やや重厚感に欠けるが、作柄はまあまあというところでしょう。





上の二つの落款は「東福寺」、下は「ゆう作」。
本名は水野勇。落款は(ゆうさく)ではありません。



ほとんど識別不能ですが、きっと雲足が何かの衝撃で外れてしまったのでしょう。そこへ透明のボンドを入れてくっつけたようで、乾いたボンドが光っています。
見逃さないように!



2020年7月23日木曜日

二代平安東福寺(2)

二代東福寺の話題を少々と思って始めたのですが、皆さんが興味を持てて、しかも参考になる肝心の教材にぶつかれば興味のあるブログが書けるだけど、などと思っていた矢先でした。市内の親しい友人にあるものを差し上げたお返しに、これからお見せする二代東福寺の長方鉢を頂いたのです。


二代平安東福寺・瑠璃釉外縁雲足長方
間口16.6×奥行き11.5×高さ5.4cm


二代の外縁作品としては出来栄えも優れていますが、初代作品と比べると外縁付近の構成に何となく力強さが不足しているように感じます。


初代の得とした瑠璃釉。この作品においても素晴らしい発色です。


この明るい色の胎土は初代の晩年の大鉢によく用いられています。


あまり使用された痕跡はありません。


二代東福寺は水野勇という本名なので、「東福寺」「東福寺印」の落款の下に「二代」とか「ゆう作」とかの印を捺しています。
ちなみに、初代ほどには落款の捺し方は上手ではありませんが、本作品は二代目としてはレベルの高い出来栄えを示しています。


2020年7月20日月曜日

二代平安東福寺

東福寺と云えば盆栽鉢のなかでもっとも知られた鉢作家です。少なくともみずからの趣味は盆栽ですと云うような方で、東福寺の名を知らない人はまさかいらっしゃらないでしょう。ところでこの名工の作品でややこしくて始末の悪いことがひとつだけあるんですね。
それは、初代と二代目の作品の区別と真贋の問題です。
もちろん簡単に解決する問題ではありませんが、おりに触れて話題にして、少しでも皆様の楽しみのお助けができればと思っています。


この作品は二代平安東福寺・梨皮泥外縁額入切足長方で、間口14×奥行き10.7×高さ4.8cmです。二代作品である証拠は作風はもちろんのことですが、楓の落款の下に二代と記されていますから、間違いありません。
ということは、この梨皮泥は本物の二代目作品であるということですね。


さらに胎土は白泥や桃花泥に近い二代目特有の梨皮泥ですから、ベテランが見れば迷うことなく二代目作品であると鑑定するでしょう。


ボディーは安定していて構造的にもしっかりしています。


切足のできは初代に似てバランスよく出来ています。

楓落款をやや深めに捺していますが、初代は落款の捺し方が非常に上手くて、浅からず深からずどの鉢を見ても程よく決まっています。このあたりも二代目の物足りない点でしょう。


この画像のポイントは、ややめり込みぎみの落款と、水穴の周辺の時代感です。
驚いたことに水穴周辺の時代感は長年の使い込みによる本時代(ほんじだい)でした。推測するに、この鉢は二代目と親しかった盆栽愛好家さんが丁寧に長年使い込んだものだったのでしょう。まことにていねいな使い込みは、余程に身近な関係の人だと思えてなりません。




2020年7月9日木曜日

山もみじ根上り懸崖

私が手に入れて1年以上が経ったでしょう。上下が19cmで左右の幅が22cmあります。総体の姿は懸崖ですが、立ち上がりの根元は根上がり状になった古い木です。


私の盆栽ショップにも売り物として掲載されていますが、そこでは表裏が逆になっています。間違えたのではなく、そのときも表裏を決定するまでに随分と迷ったことを覚えています。


複雑に変化しながら下垂した幹の味わいは格別です。今までの正面ではこの迫力ある幹筋が隠れてしまいます。正面を替えた第一の理由はそのためです。


木肌が古びて時代感があふれています。いい肌です。


手に入れたときには痩せ気味だったので、葉透かしもやや加減して樹勢をつけている最中です。


こんなに細くて痩せた根でもちょっぴり充実感が備わり、心なしか太って来たような気がしますね。


後姿(以前の裏)です。やっぱり表裏を取り替えて正解のようです。現在の正面の方が下垂した幹筋にいい模様が感じられますね。
来年は洒落た鉢を見つけて交換です。


2020年7月5日日曜日

楓甲羅吹き樹形

株立ち、根連なり、甲羅吹きなどは、いずれも一元(ひともと)より複数の幹が立ち上がっていてそれらのバランスの妙を楽しむ樹形です。もっともそれらの樹形には明確には区別のつかない場合もありますが、盆栽とは本来天然自然の生命の力と人工の力が加わって完成に近づいていくものなので、それらの樹形の定義にはあまり拘らない方がよろしいと思います。


先月の末に隣市で開催された交換会で競り落とした楓の甲羅吹き樹形。株立ちとも云えますが、足元が海亀の背中のように甲羅状に盛り上がっていますね。ですから、この際は甲羅吹きと呼ぶのがふさわしいと思います。


樹高18.5cm×左右25cmで幹の数はおおよそ15本くらいです。
このような樹形のポイントは
①甲羅に傷が少なく、あっても完治可能であること。
②株立ち状の風景が左右に広がって動きがあること。
③幹の数は必要最小限度にとどめること(この場合は10本以内の予定)


右側面より。


左側面より。


後姿。


正面やや上方より。

その他の所見
①葉刈り後再び新芽が吹き出したところです。軽く肥料をやって樹勢の充実に努めましょう。
②今年中に二度目の葉刈りは無理のようですから、以後は芽摘みと葉透かしで形をととのえます。
③本格的な整枝は来春の植替えと同時に行います。
④サイズと樹形の個性からみて、三点飾りの添えが一番似合うでしょう。名脇役を目指して頑張りたいと思います。