2004年10月31日日曜日

楓改作・取り木で名品ゲット

現在の姿がちょっともの足りないけれど、けっこう長所もある
そんな素材に出会ったら逃さずに取り木をかけて、将来の名品をゲットしよう

優秀な素材は、意外にもあなたの身近な足元にあることが多いのです


石付きの楓、石を抱いた根が片方にしかなくちょっともの足りないが、枝ほぐれは抜群
よーく観察してみると、改作の素材になりそうです


左側面から見ると、いわゆる片根です


裏面から見る


水平の赤線の部分で取り木をかける計画
太くて寸づまりの小品盆栽が期待できますね


来春には枝の輪郭線は赤線くらいまで、思い切って追い込みます
幹は立ち上がりから強い二箇所の曲が期待できますし、一,二の枝の出どころも申し分なしです

秋から冬にかけては雑木の枝がよく見えます
このような素材を探すのにはもってこいの季節

来年の取り木の時期(入梅)までじっくりと計画を練れば
早くも秋口には名品をゲットできます

挑戦です!

2004年10月30日土曜日

東福寺真贋比較

せんじつ東福寺の偽ものの画像を掲載し真贋をみなさんに当ててもらいました
大方の回答は「偽もの」という「正解」でした

その理由もいい線のところを掴んでいて、管理人としては大変嬉しかったのですが
ここでもう一押し、画像を見比べて本ものと偽ものとの第一印象を、しっかり脳裏に焼き付けていただきたいと思います


 1 紫泥大外縁獣環付丸樹盆(本もの)

 
2 緑釉窯変丸形樹盆(本もの)


 3 変釉丸形樹盆(偽もの)

こうやって三者を見比べた印象はどうでしょうか?
第一印象でも1,2に比べ3のひ弱さに気がつくと思います

この際、形の細部の違いを言っているのではなく
東福寺の手指の粘度を捏ねる力が観るものに伝わってくるかどうかが問題です

釉薬にしても、2と3ではその質感においてかなり印象が違います
この際も、色彩の違いでなく、質感や量感が問題なのです




鉢底は鑑定の際のもっとも大切な箇所
土目、足のつけ方、落款など、真贋の判定基準のポイントがたくさん隠されているのです

3の土目の弱々しさが目立ちますね
手際のよさ、これも感じられません

慣れた人にとっては一目瞭然のことでしょうが
とにかくものをたくさん観て、第一印象で判定するように心がけてください

それでは

2004年10月27日水曜日

青閑十六景・完成まじか

盆栽小鉢史上最も有名な小鉢セットに竹本十六景があります
竹本鉢を16揃えてセットです


親しい愛好家の方に、この青閑の豆鉢の三点セットを買っていただいたおり
竹本十六景にちなんで「青閑十六景」をつくりましょうよとの話が出て
お任せしていただきました


とはいえ、作柄のいい豆鉢だけ集めるのもけっこう大変でしたが、やっと15鉢揃いました


セットをつくるときの注意点は「テーマ」をはっきりさせること
十六景というからには単なる16鉢ではおもしろくない

1 大きさが大体揃っていること
2 形、色彩、イメージなどがバラエティーにとんでいること
3 そして全体で調和と変化が感じられること

そんなことを念頭に入れて集めましたが、この段階ではやや大きさが揃いすぎていますね
十六景とは単なる十六鉢の羅列であってはつまらないのです


左上の丸の背の高い鉢を入れてみました
このようにタイプの違う鉢が入ると、とたんに変化が出ます
これで16鉢揃いました

だがここで簡単に満足してはいけません
よりよい十六景にするためにはもう少しの辛抱と努力が必要!


気が付くと染付け鉢が入っていませんでしたが
先日おあつらえ向きの染付け鉢に出会えました、ホッ


これで17鉢、後から加えた2鉢が全体をイメージアップさせたことは一目瞭然
もうひとがんばりです


後列左から二番目の「トンボ」の図柄のやや大きめの鉢も入れてみました
これで18鉢、かなりテーマに近づいてきましたね

しかし、私としてはもう少しカラフルな装いを求めています
濃い緑や黄色や赤が欲しいですね

とにかくあと5~6鉢のいいに巡り会えるまで待ち
全体のバランスを見ながら慎重に取捨選択するつもりです

完成したらまたお目にかけましょう
楽しみにしていてください

2004年10月26日火曜日

無名鉢発掘

愛好家放出の300鉢の中で見つけた正方鉢
メジャーな落款ではないので、いわゆるブランド物ではないが、愛嬌がとてもいい

まるで前衛のモダンアートを見るようで
焼き物というより金属(ステンレス)に着色したような雰囲気があります

縁に二重に掛けた垂れ釉(たれくすり)の色彩が不可思議で妖しげな感じで
何色と呼べばいいのか例えようもなく、なんとも気に入りました


落款はありますが、それからは作者をわりだせない
ということは、市場ではそれほど知られた作家ではないということです

ブランドものはある一定の商業ベースをもっていますが
作品は魅力的であっても流通の経路が確立されていないものは、名が売れるまでには大変です


ご覧ください、いいでしょ!
愛好家より放出された300点の中に数個これと同じ落款の作品がありましたよ

そのどれもが、けっこうな魅力のあるものばかり
知っていればもっとたくさんの作品を見せてもらいたいです、いい味してます


鉢裏のようす


この丸鉢も同じ作者の落款があります
釉薬が渋いですよね


辰砂を二重に施してあるようです
窯変に似た効果をねらったのでしょう、いい線いってますよ


このように市場では無名でも魅力的な作品はけっこう巷で見受けます
みなさんも自分の感性に合致した作品に出会ったら、そっとご自分のコレクションの隅に入れてみたらいいでしょう

それらを見るたびに、なんとなく心豊かにな感じになりこと請け合いです
なぜなら、ブランドの先入感なく、純粋に自信の好みで選んだものだからです

2004年10月23日土曜日

東福寺隠し技

今日の教材も東福寺
ぞくに耳付といわれている、左右に獣面の飾りがイヤリングのように付いている作品です

東福寺は丸鉢以外の長方鉢でもこの耳付を製作していますが
ご紹介する大外縁(おおそとえん)の備前土の作品は特に有名です

この鉢に東福寺の意外な隠し技がありました
ご紹介します


平安東福寺作  紫泥大外縁獣環付丸樹盆(13×13×5.5)

東福寺の泥もの作品の中でも最高水準の丸型名鉢
盆栽界によく知られた同型の作品が存在します

堅牢で光沢のある胎土が第一印象の大きな魅力
大きく張った縁と獣面の飾りに特徴のある迫力は、東福寺ならではのものです


この画像は正面からですよ(足の位置からもここが正面です)
この正面からは耳飾が左右によく見えますね


それでは後ろ側の正面から見てみますと、ちょっと耳飾が奥へ逃げた感じで物足りない


普通であれば円の中心線上の位置に付ける飾りが、向かって右の正面方向に少々にずれていました
これが東福寺の隠し技なのです

正面から見ての効果をあらかじめ計算し、迫力が感じられるように
故意にその位置を前方にずらしていたのです


この画像からもその様子は推測できますね

このように、東福寺の発想は常識にとらわれない柔軟さが身上です
独学で身に着けた独自の感性なのでしょう

2004年10月22日金曜日

東福寺真贋問答

正解は「偽もの」

盆栽小鉢の世界で「偽ものが出れば作家は一人前」などと物騒な論理さえあるのですが
とにかく東福寺には贋物が多い

近年では涌泉・石州・雄山などの絵鉢にさえも贋物が登場し、趣味の世界での悲劇があとを絶ちません
「贋物は掴んだ人が勉強不足、授業料だと思って諦めな」なんて言う人がいますが

とんでもない、そんな意味のない授業料など一文たりとも払う必要はありませんよ
それは売る側の、自己を正当化する言い訳にしか過ぎないのです

さて、この東福寺の贋物はかなり上出来のクラス
というのは、見分けがつきにくい方です

最近、この手と同じ作品が、あるプロ・アマ混合の交換会に本ものとして出品され
本ものとして売買されていたのを目撃したのです

出品していたのはベテランのセミプロでしたが、私の見たところ故意ではなく
本ものと固く信じていたようです

しかし、この悪意がない、故意ではない、が始末が悪い
偽ものはどう転んだって本ものにはならないんですから、買った人が一方的な被害者になることが多いのです

ましてや、アマチュアの方だとはたから見ているのが辛いですね
みなさん、とにかく勉強しましょう

このように画像を見せられて「本もの?それとも偽もの?」と問われた場合はわりと冷静に判断できますが
売店などで、買う気で実物を手にしたときは、案外気がつかないのですよ
(そこには本もの?偽もの?とは書いてないのですゾ)

やや安めの価格が表示されていたりして、売り手の巧みな話術が後押しして
案外にベテランでも引っかかることが多いんですね



ちょっと見の姿は、東福寺
釉薬の種類からは判定しにくいのが東福寺です

ちょっとでも違和感を感じた人は鋭い感覚の持ち主ですよ

東福寺は作風が多彩で、こんなのもあったのか
ということもしばしばです



ご指摘の通り、縁の部分に力が感じられませんね
作者の手捻りの指の圧力のようなもの、それが感じられるのが本ものの東福寺鉢なのです



鉄さびのような不自然な時代感
鉢底には時代感はつきにくいので、「つけ時代」の施されている鉢には前もって要注意



この画像に疑問を解く鍵が数多くあります

1 鉢底の土の質感が弱い
2 足のつけ方がやや手のろいギクシャクした感じ(かなり本ものに似ているのですが)
3 このハンコウ落款はもっと外側に捺されている場合が多い
4 鉢底の不自然な引っ掻き傷も気に入らないですね
5 穴に圧力や手作りの痕跡が感じられない



東福寺鉢の釉薬は足まで施されている場合と、足の部分は生地のまま
その二通りがあるので、その部分からの判断はしにくいが

手捻り丸鉢の場合、ほとんど足の部分に釉薬は施されていませんね



外見はごまかせても隠すに隠せないのが「土」

投稿者の中で「土が死んでる」というメールを下さった方がいますが
まさにその通り、ペッタリした弱々しい印象ですね

鉢の鑑定で一番大切なのは、「感じ・印象」
真贋を見分けるコツの第一は「第一印象で見分ける鋭い感覚を磨く」こと

1 ものをよく観察すること
2 感覚を磨くこと
3 いい先輩や指導者をもつこと

そんなことを心がけて、しっかり勉強してくださいね
盆栽趣味の楽しみが倍増します

掲示板へ

2004年10月19日火曜日

東福寺、本物?偽物?

平安東福寺の(11.5×11.5×5cm)の丸鉢
東福寺は贋物が多いことでも有名です

この東福寺、本もの?
それとも偽もの?

掲示板にあなたのお答えをお願いします
できればその根拠もお書き添えください











2004年10月18日月曜日

宮崎一石の製作期間はは昭和40年ごろからで、昭和59年に65歳で病没するまでの約20年足らずの間です
手間のかかる絵付け鉢であるため、作品の数はそれほど多くはありません

プロの画家に師事し、本格的に絵画を学んだ一石の絵は
鉢をキャンバスに見立てた本格的な絵画の要素が強く感じられます

いわば、鉢のための絵絵付けというより、絵を描くためにそこに鉢があった
とさえ言い換えられるほどに、絵画的な要素にこだわっている印象を受けるのです

比較される月ノ輪涌泉が線と情感の天才絵付師とすれば
一石は構図と細密な描き込みとそして色彩の巨匠といえるでしょう

現存する数少ない一石作品の中でも傑作中の傑作といえる
五彩画の六角鉢をご紹介します




五彩山水図六角(7.8×7.8×4.2
一石作品群の中では豆鉢の範疇に入るこのサイズは珍しく、おおかたは10cm内外です

六面に廻した山水図の雄大な構図と鮮やかな色彩
そして綿密な描き込みが目をひきます

この小さな画面に、壮大なスケールの山水を綿密に描き込んだ作者の熱と技巧
炎も味方してくれて完璧なできばえです

苦心惨憺した絵付けであっても、陶芸の道だけは窯から出してみないとわからないいい
釉薬がこれほどに鮮やかに発色をみせることは稀なのです

ところでおもしろいことに、この画面には人物や動物がいっさい見当たらず
一石が得意の山水図に心いくまで没頭していることがうかがえます




鉢裏のようす
落款は「あびこ山・一石作」

この落款は初期の作品であることを物語っており
後期は「一石」の落款が多いのです

「あびこ山」は大阪府住吉区のあびこ山観音のこと
一石がかつて居住した地域と思われます










1、2が鑑賞鉢としての正面
盆栽を植える場合には木の雰囲気や流れに合わせて各正面を選ぶのが絵鉢の心得です