2009年1月28日水曜日

楓の根接ぎ(貫通式)

さて、これからが大手術
まず「穂木」の太さにあわせて電動ドリルの刃先の選定


今回は親木が太幹なので、穂木も太め(5.0mm)の苗を用意しました
ですから、ドリルで開ける穴は最低でも7.0mmくらいは必要です

同じサイズでは無理です


幹の下部の中央を横断する角度で第一穴を開けました


隣の第ニ穴目は、太い盤根をまたぐような角度で開けます
あらかじめ、出口の予定位置をしっかり見極めておくことが肝心


右が第一穴で左が第ニ穴目
穴の直径は7.0mmです


穂木を差し込む前に行う準備があります

狭い穴に通すとき、上向きの芽が剥がれてしまいますね
すでに枝上になった芽は切り落としますが、幹に吹いた小さな芽は保護します

セロテープをグルグルと巻きつける方法が有効ですが
その前に一工夫が必要です

テープの糊面に赤玉土のミジンなどを少々擦りつけて
粘着力を弱めておきましょう

外すときに便利ですよ

つづく

2009年1月27日火曜日

楓の根接ぎ(貫通式)


楓模様木 樹高13.5×左右16.5

幹筋のど迫力が見どころ
枝順も申し分なく、しだいに小枝もほぐれてきました

ところが根張りの一部に泣き所があって
これを克服しなければ、これ以上の出世の道は閉ざされてしまっています

そこで、待ちに待った適期がやってきたので
将来のために荒治療に踏み切りました


貫通式の呼び接ぎは一年を通して可能ですが
根接ぎの場合は「穂木」の根も一緒の鉢に植込みますから、植替えの適期に行うのが普通です

まず親木の根を、普通の植替えよりも多めに根と土をほぐし
接ぐ位置の確認をしっかりと行います


全体を水洗いした根

接木を行う予定位置のまわりもきれいに水洗い
黒マジックで印しをつけた2点が根接ぎの予定位置です

つづく

2009年1月21日水曜日

小野義真鉢の思い出

小野鉢には忘れられない思い出があります
30年のむかしのことで、私がまだ30代の元気盛りの頃のこと

Sさんという同業者が小野鉢の逸品の掘り出し物を手に入れた
という噂を耳にした私は、さっそくSさんのところへ出かけました

Sさんは、ある盆栽屋の物置の奥に積まれていた抜き鉢の山の中から
何かを感じ取って、ひとつの白磁丸鉢(間口30cm)を1万円で求めたそうです

期待に胸をふくらませながら家に帰って、泥とホコリに塗れたその鉢を洗ってみると
鉢底にこびりついた汚れの下から、あの小野鉢特有の「しゃれこうべ」の落款が姿を現したそうです

まさに、Sさん経験と勘の勝利だったのですが
この小野鉢は、どのような運命の軌跡をたどって、ありきたりな抜き鉢の山に紛れ込んでしまったのでしょう

「みやちゃんヨー、おれ、心臓がドキドキしたよ!」
Sさんは嬉しそうに掘り出し物の顛末を話をしてくれました

ただ、鉢は家の奥にしまったまま
いくらお願いしてもみせてくれません

どうやら、手に入れた原価を正直に公表してしまったため
欲しがる仲間たちが正当な値段を表示せず、Sさんは私もきっとそうに違いないと思い込んでいたのです

私はSさんに向って自分の考えをはっきりと伝えました
鉢を見せてくれさえすれば、Sさんの購入値段にはこだわらず、正当な相場を提示する

そして、私の示した相場が気に入ったらば譲ってくれればいいし
物足りなかったら断ってくれればいい、あんたも商売こちらも商売、男らしく勝負をしようじゃないか

納得したSさんは奥から出してきた鉢は、間口約30cmの丸鉢、ロクロ挽き
鉢裏に「しゃれこうべ」の落款の入った、まぎれもない本物の小野義真の逸品でした

さーて、こんどはこちらが一発勝負で相場を切る番
Sさんの原価はたったの1万円ですが、相手の足元を見ちゃいけない、姑息なまねをしたら失敗するぞ

高速で考えを巡らして私のつけた相場は、原価の20倍の「20万円」、ただし、原価とSさんの交通費1万円は別に支払う
つまり合計で22万円ということです

私は瞬時に考えたのです、合計20万円だとSさんの儲けは19万円となります
しかし、こ儲けは掘り出したSさんへの経験と勘への謝礼と考えれば、原価と交通費は別にして、きまりのいい「20万円」の方が気持ちいい

ということで、私の心意気を汲み取り相場にも満足したSさんは
「ここまで正当に評価してくれた奴はいなかった、ありがとう」と譲渡に気持ちよく同意、私は名品を手に入れることができたのです

その小野鉢は私の住む千葉県松戸市内の愛好家の愛蔵品であったのですが
その方が故人となった後、現在は東北方面の某愛好家の愛玩するところとなっています

長いお話になりましたが、そのときの経験が私のその後の盆栽屋人生の中で
掘り出し物の名品に出会ったとき、鑑定評価や売買交渉のときの大きな教訓となって活きています

先入感なしでものを見るべし、原価なんか目じゃない!!


小野義真(義臣とも書く)は明治初期から中期にかけて官界財界で活躍した有力者
自宅の庭に窯を築き尾張の名陶工・加藤正吉を抱え、多くの名品をプロデュースした稀代の趣味人です

本作品は故忍田博三郎氏の手を経て某愛好家により長年愛玩された名品であり
小野窯のもっとも代表的な小豆釉(あずきゆう)と呼ばれる辰砂の釉薬が深い輝きを見せています


小豆釉と呼ばれる小野窯独特の釉薬の輝きは、後の市川苔洲などの作家に多大な影響を与えました
名人・加藤正吉のロクロ挽きによる精巧な線の美しさが際立っています


釉薬の深い色彩が堪能できます


このようにシンプルな線の美しさが小野鉢の特徴です

小野鉢にたまたま捺されている「しゃれこうべ」の落款は磁器作品に多く見られるもので
本作品のような半磁器作品には落款がないのがふつうです


鉢の内側の拡大図、ロクロ挽きの痕が見えますね
加藤正吉のロクロ挽きの技術は当時神業と讃えられたほどでした

2009年1月20日火曜日

ムロの保護一工夫

今日が大寒、これから立春(節分の翌日)あたりまで
一番寒い日々が続きます

昨日は気候が緩んでムロの中は3度もありましたが、これは異例のことで
寒中のムロの中の早朝の気温は、ご覧のように氷点下まで下がっています

それでも画像でもおわかりのように、鉢土の表面の雑草が青々としていますね
やっぱりムロで囲ってやると、屋外との環境の差は歴然です



ところで、早めの植替えを始めた場合に、やはり氷点下になるとちょっと気持ちが悪いもので
毎年大丈夫とは思いつつも、頭の隅で心配はつきません

そんな方への簡単なアドバイスを一つ



寒さに弱い樹種や植替えたばかりのものには
ご覧ののようなビニール(新聞紙でもよい)を頭からフンワリをかけてやる

このたった一枚のビニールや新聞紙が意外な効果を発揮するんですね
早朝に観察すると、ビニールに覆われた鉢は凍っていませんよ

人間で言うところの、重ね着の原理
小枝を傷めないように実行してみてください



寒さに弱いくちなし(赤い鉢)も元気
ビニールでの覆い方をちょっと工夫すれば、小枝に直接触れないようにもできますね

それでは

2009年1月19日月曜日

ぶな・硫黄合剤でお化粧

ぶなや山もみじなどのように、木肌の白い美しさが見どころの樹種には
消毒を兼ねて石灰硫黄合剤を直接塗ります

毎年もしくは一年おきに繰り返すことにより、持込の古さとあいまって
木肌は品格のある白い美しさを呈してきます

それでは、今日は富士ぶなをお手本にして勉強しましょう


あらかじめ歯ブラシや金ブラシで幹肌の汚れを掃除しておきます
汚れたまま塗布すると、かえって不潔な感じがして見られたもんじゃなくなりますよ


用意するものは、小皿と筆と水彩絵の具の白色
消毒液(原液もしくは2~3倍液)に白色の水彩絵の具を少々混ぜる(絵の具は混ぜなくともいい)

絵の具は水彩に限りますよ
油彩絵の具はぜったいに使用してはいけません(盆栽を傷めます)


全体に霧水をタップリかける

液を滑らかに塗るためと
液の濃度をやや薄めるため


冬芽にさわらないように(液の濃度が濃いため)枝と幹の部分に塗る
この場合、樹芯から、つまり盆栽の上部から開始します

あらかじめ霧水を施しておいたので
液は滲むように滑らかに下部へと染みて上手に塗れます

筆にたくさん液を含ませすぎると、鉢土まで走りかねません
慎重に少しずつ


最後に足元の根張りにも慎重に塗布します
決して根に染みこませてはいけませんよ


作業完了

なるべく早く日に当てて乾かします、数時間経ってからムロに戻すこと
乾燥が不十分だと水やりで液が溶けて流れてしまいます


乾燥直後はかなりの厚化粧(笑)に見えますが
水やりの水を浴びるたびに落ち着いた感じになってきますから、大丈夫

また、小枝の先端部の消毒は
この作業の前か後に、30倍液のドブ付け法か散布法で行いましょう

では実行!!

2009年1月8日木曜日

石灰硫黄合剤の簡単散布法

殺虫と殺菌の効能を併せ持つ「石灰硫黄合剤」は
真柏などのジンの腐り防止用と雑木類の化粧用にも使われ、盆栽界にはとっても便利な薬剤です

薬害を起しやすいためふつう夏場には使わず、もっぱら冬季に用いますから、今が絶好の最適期
この消毒の効果は初夏のころまでずーっと長続きしますから、是非是非お勧めします

今日はその簡単散布法をご紹介しましょう


散布時期は1月から2月いっぱいくらいの完全休眠中が最適期
3月に入ると早くもムロの中で冬芽が動き出す樹種もあるので、それに要注意

冬季の殺虫殺菌消毒の希釈倍率は、30倍くらいが安全で効果もあります
休眠期のため、ちょっと濃い目(20倍)くらいでも薬害はおきませんが、松柏類などは真っ白になっちゃいますね

成長期の殺虫剤の多くは1.000倍に希釈するものが多いので
30倍という半端な希釈倍数を間違わないでくださいよ


用意した大きなバケツは60リットル用ですから、500㏄の瓶を4本(2.000㏄)で30倍液ができます
ですから、6リットルのバケツを使う人は200㏄の石灰硫黄合剤が必要です

頭がコンガラガッチャウ!
くれぐれも計算間違いをしないように


盆栽を逆さに持って


どぶーん!


鉢際のぎりぎりまで、しっかりと浸します

ここで大切な注意点

ほとんどの消毒薬は根も同時に消毒できるのですが、この石灰硫黄合剤だけは絶対ダメ!
しずくが落ちるくらいなら大丈夫ですが、根までどぶ漬けしたらオダブツですよ

もし間違って落っことしたら、水道の水で何度も何度も根を洗うほかはありません
作業は慎重にやってくださいよ


よくシズクを落として


シズクが鉢や表土に垂れないように横にして乾かすと、天気のいい日であれば10分ほどで乾きます
ただし、ムロに戻すまでには十分に乾かしてください(水やりで薬剤が溶けて流れないため)

以上で完了、かんたんでしょ!?

他に

1 噴霧器で散布する方法もありますが、鉢と表土に薬剤がかからないための養生(ビニールや新聞紙で覆う)が必要なので
  小品盆栽にはご紹介の「どぶ漬け法」が一番簡単

2 植替えしたばかりで逆さにできない小品盆栽や
  真柏や雑木の化粧を兼ねた方法は別項でご紹介しましましょう 

3 晴天の日に実行してください(乾きやすいから)

4 ちなみに、この石灰硫黄合剤は安価ですよ、お近くのホームセンターや園芸店で500㏄入が1本¥200ほど

2009年1月3日土曜日

冬季の植替えと保護

「盆栽は何時ごろ植替えるの?」と聞かれたらほとんどの盆栽人は「春の彼岸ごろ」と答えるでしょう

私も初心者に質問されれば、必ずそう答えていますし
事実、ほとんどの樹種にとってそのころが最適期であることには違いありません

しかし、手持ちの盆栽の数が多い場合は最適期の短い期間だけでは間に合いません
植替え後の管理がきちっとできれば、遅いよりも早めの方がその後の結果はいいのでお勧めです

それでは、冬季の植替えとその後の管理についての注意点
みなさん、しっかりマスターしてやってみましょう

1  休眠期なので、必要があれば根の処理は最適期のころと同じように、トコトンやってもよろしい

2  必要ならば根洗いも怖がることはありません

3  大きめの鉢から小さい鉢に移す素材など、根を大幅に追い込むことも可能

4  植込みの用土も普段と同じ、植込みの方法もまったく同じ

5  違うのは置き場です、これは必ずムロの中に囲うこと

6  落葉用のムロは直射日光を遮って、日中と夜間の温度差を少なくする工夫をし(薄暗い感じでいい)

7  松柏用のは、日中にやや日光が当たるようにして、やはり昼夜の温度差を少なくする

8  いずれも、冷たく乾燥した風が直接当たらないことが一番大切

9  夜間の温度は0度になっても心配なし、目安でいうと「鉢土の表面がショリショリに凍る」くらいは大丈夫です
   あまり温度の高いムロでは、春の芽出しが早くなりすぎ大変な苦労をすることになります

10  鉢内はもちろん、日中には湿度を保つための葉水を心がける

以上たくさんの注意点を挙げましたが
要約すると、強い凍結と冷たい風による乾燥を避けることが、まず一番に大切なことです


盆栽屋.comの雑木用ムロの中

これから植替え予定の盆栽たちがいっぱい
植替えた後もこのムロの中で春を待つのです


ちなみに早朝の温度はやっと1度

これから寒に入るともっと下がって氷点下になり、鉢土の表面が薄く凍ることもありますが
日中にやや気温があがってすぐに融けてしまうので、大丈夫、心配いりません