2011年5月30日月曜日

けやき芽摘みと葉刈り

他の雑木に比べ春の芽出しの遅いけやきですが
さすがに5月に入るとそろそろ芽摘みの時期になります

芽摘みや葉切り、それに葉刈りなどの手入れは、人によって微妙な相違がありますし
目的によってもやり方を変えることもあります

今日はけやきの箒立ちを教材にして
若木から古木にまでひろく応用のきく芽摘みと葉切りの方法を勉強してみましょう

ここで注意!

春の芽出しからすぐに芽摘みを繰り返しながら
5月中旬から6月初旬にかけて全面的な葉刈りをする方法もありますが

今回の方法はややそれと異なり
全面的な葉刈りをせず、年に5~6回の芽摘みと葉切りを繰り返すやり方です

全面的な葉刈りをしなかった理由は
今春の植替えのさいに、かなりきつい根さばきをおこなったからです


実生から6~7年の若木の箒立ち、基礎の骨格はしっかりと出来上っているので
あとは適切な手入れを繰り返しながら、樹格の向上を目指している段階です

春に植替えたので春の芽だしはやや遅くなり
作業日は5月初旬


兄弟木、同じく春に植替えたので春の芽だしはやや遅くなり
作業日は5月初旬


基本の作業は、新芽の先端を1芽残して、残された葉の四分の三から五分の四を切り取る


2芽残す必要がある小枝の先端の葉の面積も、2芽とも表面積を減らす

簡単!
よく切れる小さいハサミで根気よく以上の作業を続けるだけです

えッ!新芽の先を摘むのはわかるけど、なぜ葉を少しだけ残すんですか?
そう聞きたいひともいらっしゃるでしょうね

全面的な葉刈りを行ったばあい

1 植替えたての場合など、樹勢を損なうことがある
2 反対に樹勢のいい場合では、いっきに芽数がふえて枝先がゴツクなるおそれもある
3 全面的葉刈りは、年に複数回やると樹勢を損なう恐れがあるが、この方法なら何回も実行できる

そのために緩やかな変化を求めて
葉の表面積をわずかにのこしてやるのです


特に注意するポイント(重要)

1,2、3芽と芽先を数えてみて、この場合のように1芽目の節間が極端に狭い場合は


2芽を残して摘むようにします
1芽目で摘むと昨年枝の元に複数の芽が吹いてしまい、その箇所がゴツクなる恐れがあるためです


そして、このように2芽目の葉の表面積を減らしておきます


摘み残しのないようにていねいに作業しましょう

また、昨秋から冬に掛けた針金も必ず外すことを忘れないように!


芽摘みと葉切りを施した芽先の拡大図

1 芽先の勢いが緩やかに制御されました
2 奥に日光と風が充分に入るようになり、フトコロ芽の生育が助長されるようになりました

このように、月に1回くらい(4月~9月)を目安に芽摘みと葉切りを繰り返し(
全面的な葉刈りは行わずに管理する方法もあります

また、5~6月に全面的な葉刈りを行う習慣のひとでも
それ以外の月には、このような芽摘みと葉切りを主体にした手入れ法の併用が、かなり有効です

なお、施肥についてはやや多めにやることをお勧めします
若木のうちは健やかに成長させながら、随助で適切な制御を加えて向上を目指すのが望ましいと思います

2011年5月19日木曜日

2011/05/19 

一晩の間に、蝶や蛾の幼虫にくちなしの葉をすっかり食われて丸坊主にされた
そんな経験のある愛好家さんは大勢いるでしょね

それがちょうど、くちなしの葉刈り時期5月から6月ごろならまだしも
秋口になってからだと、寒々しくてちょっと惨めな気持ちになりますね

しかしくちなしの場合、もうひとつ気をつけることは、くちなしが罹りやすい病気です
その症状は、根元や幹の表皮が茶色く冒され、気がついたときには病菌が木質部まで達しており

次第に樹勢も衰えていき、しまいには枯れ死に至ります
カビの菌による病気らしいのですが、いまのところ特効的な治療法はないようです

盆栽人にとっては、五葉松の葉ふるい病とならんで怖がられていますが
対策としては、とにかく予防が大切なので、ふだんから培養管理に気合いを入れ、樹勢を旺盛に保つことがいちばんです

その上で、次のことがらを注意点としてください

1 健全なくちなしでも殺菌剤による予防消毒を行う(毎年5~6月ごろと秋口の2回ほど)

2 病原菌におかされたくちなし盆栽の隔離と殺菌消毒(5~6月に植替て腐った根は幹の患部を切り取る)

3 病原菌におかされたくちなし盆栽の用土や鉢などの殺菌消毒および廃棄

4 病原菌におかされたくちなし盆栽を手入れした道具や手の殺菌消毒

いいですか、病気に罹った盆栽を手入れした手や同じ道具で
健康な盆栽に触ってはいけません、かならず殺菌消毒してからにしてくださいよ

さてそれでは、健康な盆栽はどうしたらいいのでしょう
ちょうど葉刈りの時期なので、それを実行しながら予防殺菌の作業もやってみましょう


健康なくちなし盆栽

甲羅状の座元から複数の幹が立っています
主幹の充実と子幹作りの最中にある好素材です


葉刈りをし、不要枝の剪定も行い、部分的に針金もかけました


さて、こちらは甲羅状の座元から主幹が力強く立ち上がり
それに添った子幹もすでに整いつつある古木です


葉刈りを実行

かなり小枝も密になっていますね
画像はありませんが、このくちなしは植替えも行いました


主幹の頭部に部分的な針金かけ


くちなしの枝や根の剪定の際に用意する傷口癒合剤は「トップジンMペースト」がいいでしょう
傷口の癒合と殺菌とのに効果があります


くちなしの病気予防の殺菌消毒には、稲のいもち病などに用いられる農薬が有効です(今回はヘルシードT)
一般の園芸店には置いていないでしょうね、各地農協ならあるでしょう


効能書きに従って消毒液を作ります
注意点は、盆栽が頭までもぐる程度の深さのある容器を用いること


葉刈りや植替えを行ったくちなしを、鉢ごと頭まで消毒液に漬ける
このままで一晩消毒を続けます

大切な注意点

健全なくちなしの予防とすでに病気に冒されたくちなしを
同じ液の中に同時に漬けはいけません(伝染の恐れあり)

病気に罹ったくちなしの消毒は
健全なくちなしをすべて消毒したあとの消毒液でやればよろしい

それでは

2011年5月10日火曜日

山もみじ株立ち大改作計画

この3月の末にすばらしい山もみじの素材を手に入れました
もっとも素材というのは、私がかってに決めているだけで、もともとは出来上った株立ちの古木です

25年も前になるでしょうか
地元松戸市の盆栽会を私が引率して大宮の盆栽村へ見学旅行へ行ったさい

副会長のHさんが気に入って求めたもので
以来、Hさんが大切に培養してきたものです

松戸の会員の中でも指導的な立場にあるHさんは
その手入れのよさで知られ、とくに根張りの作り方では定評があります

Hさんが長年手がけた盆栽は、特に根張りがよく発達して
会員のみんなが不思議がるほどです

そんなHさんも80歳をすぎて元気ではあっても、さすがに大きな盆栽には手こずるらしく
「もうこの山もみじも持ち上がらなくなっちゃったよ」といって、特別の安値で私にゆずってくれました



主幹の高さは約85㎝で鉢の間口は65㎝、盤状の根張りの間口は40㎝以上あります

現在は8本の幹が立っていますが、購入した25年前にはたしかあと2~3本多かった記憶がありますから
きっとHさんなりの感覚でそれらを切ったのでしょう



綺麗に裾を引いた盤状の根張り
25年前にも根張りはよかったけれど、左右の間口の大きさは25㎝くらいだったと記憶しています

しかし、このような細幹で幹数の多い株立ち樹形は
姿を維持するのが難しいんですね

主幹の元の方が日陰になってしまうため、付近の枝が育ちにくい下部が太らず
日当たりがよく枝が育ちやすい上部が太ってしまいがちです

この山もみじにもややその傾向が出始めていますね
やはり枝のない付近の幹は太りにくいものです

私は以前からこの裾を引いた根張りと
中央に立った主幹との関係に目をつけていました

この山もみじは大改作が必要だ
それによって再び世にでるぞ

Hさんのお宅におじゃましてこの株立ちを見るたびに
そう思っていたんです



私が目をつけていたのは、富士山のようにきれいに裾を引いた根張りと中央の主幹
あとの子幹はすべて切るつもりです(もちろん一気にではなく、3年くらいかけて)



子幹を切る施術と同時進行で、赤点の箇所に胴吹き芽を期待し
もし吹かなければ呼接ぎで枝や子幹を作ります

その際、主幹の切断および芯作りは一番最後の作業となります
ともかく大手術なので、根張りや幹がヤケないようすることが一番の注意点です



大きく裾を引いた根張りと中央に立ち上がった主幹
裾には子幹を立て、それが枝の役目もするような個性のある樹形を目指します

おそらく基本作りだけで、5年くらいはかかるでしょう
樹髙は30㎝以内で収ります

★ 現在、この山もみじ株立ちは多めの施肥で芽摘みをせずに枝を徒長させています
入梅ごろには数本の子幹を切り放つ段取りになると思います

では

2011年5月6日金曜日

杜松ジン離れ矯正

ジンと水吸いの絡みが見どころの真柏や杜松にも悩みはあります

それは、ジンと水吸いの接点が少ない場合、か細かった水吸いが成長とともに太ってきて断面が円くなってくると
ジンから離れてしまうことがあります(盆栽用語でジン離れという)

昨年に樹形の基本作りを頼まれた愛知県のKさんの杜松も、そのジン離れの兆候があったのであ
まずはそちらの方を矯正することを優先させました



裏から見るとジンと水吸いの下部はしっかりついているんですが
指で矯めてみると、上部はややジン離れの傾向があります

どうしたらいいでしょうね
接着剤?

無理でしょうね
根や幹に染み込んだら害になることは目に見えています

こんな時には外科的な矯正法が第一です
植物は切ったり張ったりにはとても強いものです


木ネジの頭の大きさに表皮と木質部を円くえぐる
その中心に細いドリルで道穴を開ける


木ネジの頭は表皮にめり込むように打つ
ゆくゆくは周囲が肉巻きして木ネジの頭が隠れるようにするわけです


2つ目の木ネジを打ちます
もちろんカットパスターを塗布するのを忘れないように


木ネジを打つだけの太さと元気が欲しいために、昨年は30㎝も徒長枝を引っ張りましたから
芽当たりから思い切って切り込んで、今年は構図の基本を決めます


作業後の後ろ姿


矯正作業から1ヶ月ほどが経ちました
二重鉢のおかげで水もたっぷり間に合って元気よく芽が伸びてきました

もう一息ですね


後ろ姿

ポイント

この作業は春から夏までの気温の高い時期に行いましょう
杜松が活発に活動するのは、4月から9月ごろの暖かい(暑い)季節ですから