2006年8月31日木曜日

黒松の葉揃え

6月中旬から7月にかけて芽摘み(短葉法)した黒松の葉の伸び具合はどうですか?
うまく揃いそうですか?

早い時期に摘んだ樹勢のいい木は伸びすぎが心配ですし
遅すぎたのは今年は満足に鑑賞できそうにない、そんな心配なものもあります

ともかく今の時期は、個々の木によって葉の伸びにかなりの差がるので気がもめます

さて、下の黒松ですが、寒い間に針金をかけ、春の遅めに植替えました
針金掛と植替えの時期はなるべく間を空けたほうがいいからです

当然に芽摘みも控えようと思いました
針金かけ、植替え、芽摘みと、負担のかかる作業が短期間の間に続くのは可愛そうです

(↓の画像が植替えたばかりの姿です)

しかし、培養の調子もよさそうなので
思い切って7月初旬に強い芽だけを選んで摘み、弱い芽は切らずに残しました

作業をする時は、「夏になって葉の伸びが悪くとも、芽摘みをせずに形が崩れるよりましだろう」
くらいの気持ちだったのですが


ご覧のように順調そのものです
きっと植替えがうまくいき、その後の管理に成功しているからでしょうね



現在の姿

短い葉が芽摘みによって新しく吹いた芽
長い葉は、芽が弱かったので摘み残した箇所

という訳で、今年は長い葉と短い葉が混じっていますが
ともかく、各枝の勢いを平均化することには成功しました

来年が楽しみです

さて、みなさんの黒松の葉揃えはうまくいっていますか?
お知らせ下さい

2006年8月30日水曜日

この東福寺本物?贋物?

盆栽界であまりにも有名な東福寺
それ故に、贋物が横行し、無残にも犠牲になる愛好家が後を絶ちませんが
こうなったら、愛好家のみなさんとしては自衛のために勉強あるのみ

さあ、この東福寺窯変鋲打太鼓胴丸(間口10.3×奥行10.3×高さ4.0cm)
本物?それとも贋物?

ご回答を待っていますよ

その根拠も添えてくれればなお嬉しいです
「なんとなくそんな感じ」でもけっこう

ところで真贋鑑定のポイントは

1 全体のイメージ(作風)
2 釉薬
3 土目
4 足の付け方
5 水穴の位置と開け方
6 落款

等々です

ご回答を頂いた方には感謝申し上げます
ただし、正解の場合でも景品はなし

「けッちッ!」

よろしく~










2006年8月19日土曜日

真柏の種木選び

将来の役枝のみのを選り残し、不要枝の大半を切り落とし
40cmくらいの大きな仕立て鉢から間口16cmの小さな鉢に移す作業

真柏の素材(種木)の荒仕事は、なんとこの夏の最中に行われるのです

かねてより目に付けていたTさんが養成中の真柏の種木
仕事が始まったという話が耳に入ったので、さっそく出かけてみました

行ってみると下図のような種木が15本、一番乗りです
”一番イイ奴”と目を皿のようにして選んできたのがこの真柏


種木選びって案外に難しいんですよ

そのコツは

1 葉がさや太さにに惑わされず、まずは足元から芯に至る幹筋の品格を見る
2 次に、残された役枝の位置や表情を検証し、将来の構図を頭に描いてみる
3 最後に、葉の色艶などから種木の元気さを確認する

選んできた種木は、3つの条件をクリアーしたNO.1の優れものでした


幹筋をアップしてみましょう

幹の太さも十分
大きな模様とその間の小さな模様が入り組んで遊びがなく、変化と迫力に満ちています


やや右側面から見ます


後ろ姿からも残された役枝の位置が適切なことがうかがえます
葉の色艶も申し分ありません、OKです


タオルなどの布で鉢の表面を被い、ふところの枯葉や幹の掃除を軽く行います
この作業は、風通しをよくし胴吹き芽を促すための大切な作業


置き場所
直射日光と強い風を避けましょう

私は足元を水苔で保護し棚下、涼しくて適当に風も通ります
下から土がはねないように、ブロックの上に置きました

そして、種木にとっての何よりのご馳走は「葉水」
噴霧器をそばに置いておき、気がついたら何度でもやります

養生期間は3週間ほど
夏は温度が高いので根の動き出すのが早いのです

2006年8月8日火曜日

水やり苦心談

私の住む松戸市に隣接する鎌ヶ谷市のKさんが
お盆休みに田舎へ帰る一週間ほど、盆栽を預けに来られた

もっとたくさん盆栽を持っているのですが、その中から大物の山もみじ1点と小品16点
あまり多くてはと、おそらく熟慮厳選されたのでしょう

自働潅水の設備も整えてはいるそうですが
持ってこられた17点はいずれも逸品揃いで、とても自働潅水装置に任せる気にはなれないのでしょう

やはり私のところに遊びに見える愛好家の方で
旅行中に自働潅水装置の故障で、お気の毒に、かなりの被害を受けた方もいらっしゃいます

Kさんもいろいろに想定してはいるようです
正しく作動していても、風向きなどで水の掛からない場所ができたり

回数はカンカン照りの日を標準にセットするので
曇りの日が続くと、水のやり過ぎになってしまうそうです

というわけで、ともかく盆栽趣味を楽しむには
知られざる苦心が要るものです


Kさんの預かり品にうちから、山採りの真柏(樹高19cm・天ジンも含む)

さて、かく言う盆栽屋.comが実行している水やりの苦心とは?

1 家族旅行は絶対にしない
2 数十年の間、カミサンの誹謗(ほとんど呪い)を受け続けるも、ジーット我慢する、これからも我慢し続ける

まあ、盆栽屋.comでは、ともかく自働潅水装置は使わず人力で水をやる
そのためには人力が必要、その必要な人力とはカミサンということです

そうは言っても、私だって、まったく家族サービスをしないわけではないんですよ
宿泊旅行ほどではなくとも、日常的な「小さな楽しみ」の行事をささやかに実行します

特に、嫁に行った娘の長女がやってきたときなど点数の稼ぎ時です
潮干狩り、海水浴、縁台夕涼み食事会と花火大会など、家族を味方につける絶好のチャンス!
その他、カミサン懐柔策には、日帰り紅葉見物、市内近隣のお寺など旧跡巡りなど・・・

みなさんの「水やり」の苦心談を聞かせてください
「盆栽つれづれ草」でご紹介したします
画像入り、大いに歓迎です、メール下さい

2006年8月1日火曜日

東福寺真贋比較

小鉢界において平安東福寺の格付けは、まさに最高峰
それだけに、巷間には真贋にまつわる物騒な話もたくさんあるようです

しかし、愛好家のみんさんが犠牲になって
盆栽界に失望するようなことがあってはなりません

転ばぬ先の杖、ともかく贋物を掴まぬようにするためは
平素からの勉強が大切です

ちょうどホンモノと紛らわしいかっこうの教材(?)に出くわしたので
みなさんにお見せしようと購入しておきました


間口7.5cmの灰釉(はいゆう)の手捻り東福寺、これが真っ赤な贋物

東福寺鉢の中には、泥ものとして作られた鉢を
他の作家が後日に釉薬を施し、改めて焼き直した作品も散見します

そのような鉢を「焼き直しもの」といいますが
この作品はちょっと見でその類に見えるので、初心者はもちろん中級くらいの方も引っ掛かりそう


比較の教材、手捻りの焼締めもの、これは正真正銘のほんものです


鉢裏を見ます、まるで「焼き直し」のように見えます

時代感がないのが「焼き直し」の特徴
使い込みの時代感(不純物)は焼き直しの際に、高温で燃えてしまい、このように出来立てのようになってしまうのです


ほんものの鉢裏と足の様子


足の形や付け方はかなり似ているが、わずかにぎこちなし
東福寺手捻り鉢の特徴である、足の内側の「折込の溝」が不自然です


東福寺の手練が感じられるほんものの足の作り
さらに、水穴の周りに、穴を開けた際のバリが見えます、これもほんものの特徴です

また、足の内側の「折込の溝」も自然な感じですね


東福寺の落款が捺されている位置に注目
この贋物の落款はわずかに内側に捺されています


ほんものの落款の捺されている位置
外側近くに捺されているのが平安東福寺手捻り丸鉢の癖です、これも重要


内側から見たにせものの水穴


内側から見たほんものの水穴
ざっと面取りしています


外側から見たにせものの水穴


外側から見たほんものの水穴
作業が手早く行われた感触が伝わってきます

この手早いという感覚が東福寺鉢の特徴です