2008年3月26日水曜日

楓盤根の作り方

亀の甲羅のように根張りが盤状に発達した楓
盆栽界には昔から有名な「世界の図」という銘の名木が存在します

起伏をもって広がる根のようすが、まるで世界地図のようで
それはそれは素晴らしい個性をもった名品として知られています


盤状に広がりを見せる根張り
ただし樹高はわずかに7.0cm、まさにミニ版の「世界の図」

このような盤状の根張りはどうやってできたのでしょうね?
その方法についてお話してみましょう


A 地表に出ている根の先端にさらに楓苗を呼び接ぎする方法

活着(1~2年)したら根だけを残して呼び接ぎ苗は切り離します
そして、根の発達を見ながら、さらに同じように呼び接ぎを繰り返して根張りを大きく広げていきます

この方法は根張りの発達だけでなく、根張りの不足した部分の矯正法としても
しばしば行われる技法です


後ろ姿


後ろ姿


B 取り木は一般的には台木の先端の頭部や枝を取るのが普通ですが
この方法では、この楓のように驚異的な盤状の根張りを一気にゲットすることは難しいですね

そこで、「背取り」といって、ある程度太みのある台木の背や肩や腹(コブ状ならなおいい)にあたる部分
つまり側面に取り木をかけ、一気にえぐり取ってしまう方法があります


つまり現在の幹は、もともとは横に伸びた枝だったと推測されますね
それにしても、このように甲羅状に起伏ができ
中央が盛り上がって裾野が広がるにはかなりの年月を要します

驚き!!

さあ、あなたもコブ状になった楓の取り木材料をみつけ「背取り・せどり」をやってみましょう

2008年3月21日金曜日

梅(米良)

詫び寂びの趣向を表現する樹種といえば
まさに梅がその代表的でしょう

「野梅三輪」というように、梅は桜のような満開は似合わない
楚々と咲く古木の趣が最高、盆栽界では八重よりも一重が好まれます

ですから、梅好きな盆栽人は米良(めら)と聞くと目の色を変えます
それは米良が小輪一重の清潔感のある白花だからです

おまけに枝性も密で、まさに小品盆栽向き


実生の野梅の古木に先端に米良を接いで1年
いよいよ本格的に樹形の基本作りに入ります

樹高4.0×左右9.5cm


ボディー正面拡大図

荒れた木肌をもち、団子状のように見えていますが
幹のうねりと動きはしっかりと保たれいるのが嬉しいかぎり


角度をかえてボディーのうねりを見ましょう
こんな小さいサイズの素材はめったに出会えませんよ


後ろ姿にも動きが感じられます


昨年の春に接木をした切り口がまだわかりますね

白点の2芽は以後着始めています
赤点のあたりも将来胴吹き芽が出そうな箇所です



完成予想図(その1)


さらに小品らしく左右のサイズもつめて作りたい人は
手前の一芽だけ使って挑戦しましょう

「より短く」はミニ盆栽の鉄則ですから


手前の芽をいちど幹側に戻して距離感を縮めると
より小さく見えるものです


戻した枝をもう一度外側へ誘導します


完成予想図(その2)

(その1)よりも時間がかかりますが、より締まった印象に完成します

いかが?

2008年3月20日木曜日

紅千鳥もみじ

昭和の末ごろから平成にかけて一世を風靡した紅千鳥
芽出しの色が鮮やかで葉形も小さく端正、そのうえ持込により真っ白に仕上がる木肌も美しい

だが、当時さかんに作られたものは大物盆栽がほとんど
いまでも小品盆栽、まして10cmサイズのミニはほとんど見かけません



さて、今回手に入れた紅千鳥、ごらんのようにきれいに曲線を描いて裾野をひろげた足元
幹模様、コケ順、枝配りも万全

これほどの優れた素材
焦らずにじっくりと時間をかけて仕上げたいものです

座元の左右は7.0cm強
樹高は10cmでおさまります


正面の拡大図です

幹模様、コケ順もよく、枝順も出来上がっていますから
未完成な頭部を検討してみましょう


足元からの模様の流れを追っていきますと
白点に位置当りが芯の位置であることがわかりますね


白点が芯候補として残す芽
左右の青点も枝として残す芽ですね

三つの赤点の芽は取り除きます


赤点を消してみました

とはいえ、白点もこのまま芯として最後まで使うかどうかはまだ未解決です
白点の枝の元から、さらにいい角度に短い芽が吹けば、躊躇なく切り替えるでしょう

足元からの模様に添って、小模様の入った愛嬌のある頭を作ることが最大の課題です


後ろ姿


ところで、不思議なことに縦長の蘭鉢に入っていますね
その謎は?

間口はあまり広げずに縦長の素焼き鉢で培養すると
植物の根の向地性の原理によって、どんどん下方へ伸びます

そして、根の伸長により目を見張るほどに培養の効果が上がるそうです

見てくれよりもこの紅千鳥の培養を最優先させた実験です
二年間はこのままで肥培してみます

2008年3月12日水曜日

寒ぐみ

3年間手がけた寒ぐみ
ボディーもかなり太り枝の基本形も出来上がってきました

寒ぐみといっても葉性や枝性は固体によって微妙に異なります
この寒ぐみはやや大きめの葉ですが、それだけに太りやすい性質を持っています


むくむくと盛り上がった幹筋の量感と逞しい立ち上がりが圧巻です
枝配りの定石にとらわれず、大胆な構図を心がけました

一の枝に動きをつけ、ニの枝は裏側から後ろ斜め方向に差し出し
姿に奥行きを出すようにしたのです

この構図の取り方は、山取り松柏類の古木によく見られ
スケールの大きな大木感を表現するためにしばしば用いられます

樹高8.5cm


正面の拡大図


後ろ姿


手がけた当初は大きかった傷もほとんど治癒しました


矢印1 一の枝、一度上向き方向にしてから下向きに下げて動きを出しました
矢印2 間合いをとるためにつけた枝です、こんごも大きくしないように心がけます
矢印3 二の枝、斜め後ろ方向に導き、裏枝を兼ねています

赤点の印 ここから上は樹高の短縮のために呼び接ぎをしたものです
この枝が太るのに3年間の年月を費やしました

矢印4 重要な枝ですが、ちょっと長いので切り詰めましょう
矢印5 芯です、これ以上伸ばさずに芽摘みにより枝数をふやします


完成予想図

寒ぐみは樹性強壮で切り込みにもよく耐えますから
多肥多水で培養し、芽摘みと切り込みを励行して枝を細かく作りこみます

2008年3月4日火曜日

楓石付大改作

セミプロや愛好家が月に1回集う市内の小さな盆栽交換会で
持ち荒らしたごく古の楓石付を格安で手に入れまし

このようなお楽しみの交換会にも、たまには掘り出し物が出品されることがあるため
車で10分ほどの近い場所だし、私は欠かさず顔を出すようにしているのです


枝は伸び放題荒れ放題、所々に枝枯れも見られかなり痩せています
虐待されてきたんですね、かわいそう、人間でいえばまさに瀕死の重傷です

しかし、石を噛んだ根の模様と古さは抜群のものがあります
生きている枝の芽先を観察すると、なんとか一命は取りとめることができると判断しました

それでは、作業に掛かる前の段階で
残して活用する骨格の部分と不要な部分との目当てをつけておきましょう


いかがですか、この古さは貴重ですね


白線内の骨格は活用し、外側は不要になります
幸い大改作の時期としては今が最高、荒治療が可能です

現在の樹高は足元から徒長枝の先端までは80cm超
切り戻しの目安は50cmくらいの高さです


まずおおよその構図を確かめてから、枯れ枝や不要枝から切り始めます
(小型の鋸と又枝切りが必要)


いかがですか
枯れ枝や不要枝を切り取るうちに、だんだんと構図がはっきりしてきました

構図は少しずつ見えてくるものなので
この段階では決して慌てて作業を急いではいけませんよ


おおよその剪定が終了
この段階でもう一度完成予想の構図を再確認し、最終的な作業を待ちます


第一段階の作業は一段落しましたが、これからが肝心な時間のかかる作業ですから
仮の傷口が乾かないよう癒合剤で保護することを忘れないように


木肌や根と石の絡み合った凹みなどの掃除を行います


幹の掃除や仮の傷口に癒合剤を塗ったりした段階で、ゆっくりと眺めてみましょう


3本の幹の芯の長さはまだ決まっていませんし、活用する利き枝の長さもまだ
その二つが将来の重要な決め手になるので、最後の作業にします


枯れ枝は元から切り戻します


ノミで削り、さらに切り出しナイフで滑らかに整え癒合剤を塗ります


最後に芯と利き枝を切り整えて作業完了
現在の樹高は48cmとなりました


植替え後ムロに保護(必須)

頭からスッポリとビニール袋で覆い、一日数回霧水をやって幹の乾燥を防いでやります
古木なので発芽まで約一ヶ月くらいかかるでしょう

続編をお楽しみに