2021年12月31日金曜日

謹賀新年

 


謹 賀 新 年

昨年中はお世話になりました。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


令和四年 元旦



〒270-0023

千葉県松戸市八ヶ崎5-45-1

みやもと園 (盆栽屋com ) 宮本孝行


2021年12月22日水曜日

平安焼き締め焼き締めもの

長年親しくお付き合いしている市内の愛好家から、間口41㎝の東福寺としては破格に大きな実用鉢を譲っていただきました。高温で焼いたときにゆがまないように、また強度が増すように、粘土に練り込むシャモットが適度に弾けていて、その生地の味わいがなかなかです。



梨皮泥切立二段切足楕円

間口41×奥行き33×高さ7.8㎝


縁に細かいホツレのような痕跡が見えますが
これは「シャモットの飛び」と呼ばれる、焼き締めもの特有の制作過程に
見られる微細な凹みです。


釉薬ものが女性的とすれば、シャモットをふんだんに練り込まれた焼き締めものは
男性的な力づよさが持ち味です。




ホツレではありません。味として見てください。


適度な深さもあって使いよい形状です。


梨の皮のようなツブツブ、梨皮泥(りひでい)と呼びます。



この東福寺の焼き締め鉢の質感は、支邦鉢でいうところの荒紫泥(あらしでい)にそっくりですね。この堅牢でおおまかな質感は文人好みの南蛮皿にも共通していますね。





落款は楕円に東福寺
いあゆる「わらじ落款)です。



 

 

2021年12月17日金曜日

本郷昇・紫檀巻き卓ミニ

 盆栽界にゆかりの深い本郷寿山の兄、本郷昇も、それと知られた木工家として盆栽関係の名作を残しています。材料の優秀さによって、精巧な技巧はさらに完成度に磨きがかかると云われる世界です。その点にも本郷昇の真骨頂が発揮され、ミニ作品ながらほれぼれするほどにその技巧は冴えています。



間口7.4×奥行き5.3×高さ1.3cm


木工家の命は長い年月寝かした材料にあると云われています。このミニ卓もつやのある素晴らしい紫檀で作られています。削られた切り口の刃物の痕跡にも味わいがかんじられます。



裏側から見るとわずかにではありますが、刃物の当たった痕跡があちらこちらに垣間見えます。その痕跡を通じて作者との会話が成り立つような気さえしてきます。この感覚は小品故の親しみ深さかくるとも考えられましょう。


やはり木製品は視覚だけでなく、触覚も交えた感覚を働かせながら鑑賞するもののようです。



2021年12月14日火曜日

竹本鉢の特徴」


幕末から明治の中期を生きた竹本隼太の一生はまこと波乱に満ちたものでした。大身
旗本五千石の長男に生まれながら一陶芸家として後世に名を遺したのは、まさに歴史の転換期にこの世に生を受けた事実なくしては考えられないことです。


竹本・青磁釉反縁長方」
間口9.8×奥行き7.5×高さ4.6㎝

竹本鉢のボディはほとんどが石膏型でつくられたものです。

縁は竹本特有の反縁で、釉薬は緑色の強い青磁釉。この竹本の青磁は独特です。


一世紀以上を経て深い輝きを放つ釉の神秘的なかがやきがみごとです。
さらなる特徴として、竹本鉢には無落款の作品が多く、あっても判読不能な文字であることです。
従って鑑定に対してはある程度の経験と見識が必要とされることは必然でしょう。


 

2021年12月4日土曜日

楓落葉の姿


この楓の中品を手に入れたのは今年の春、新芽が出るころだったと記憶しています。(3月23日の徒然草を参照)
ところがその後、我が家で春の芽出しを終えた楓でしたが、ついうっかりして入梅前の葉刈の時期を遅くらせてしまったのです。
慌てて葉刈をしたのですが、こんな年に限って長梅雨となり、刈られた芽はなかなか動こうとしません。


楓株立ち 樹高25cm×左右32cm


今年一年の培養の成果で逞しくなった足元


雑木の場合、このような時がいちばん焦りますね。枝先に病気が入って枝でもいじけると、枝枯れの原因にもなりかねません。長雨で過水になれば樹勢は必ず下るものです。


梅雨で毎日雨が降るから水遣りが楽だ、なんてとんでもない。
むしろ盆栽人としては、盆栽に傘をさしてやりたいくらいですね(笑)


というわけで、軒下などの雨の吹き込まない場所を探して長期の雨宿りとなりました。


雨宿りのお陰で夏の間に勢いを取り戻した楓君。ご覧のようにかなり小枝がほぐれましたね。あと二作(ふたさく)、楽しみですなー!


 

2021年11月22日月曜日

紀元2600年


「万古焼」の古い急須を長いこと持っています。今ではどういう手づるで私の持ち物になったのかさえも思い出せませんが、とにかく何十年も我が家の小さなガラスケースの中に鎮座しているのです。


万古焼急須 胴の間口約8.0cm


万古焼特有の堅牢で渋い土目がとても魅力的です。全体に肉は薄目ですが硬質な質感が特徴でしょう。


シンプルな意匠も魅力の一つでしょう。


それでいながら縁取りの意匠には控え目ながら華やかさも感じられます。


この角度からも姿もなかなか端正です。



胴体いっぱいに詩文が彫りこまれています。紀元26002年と記されていますので、昭和17年が制作年代であることが推測されます。もちろん「萬古」の落款も入っています。


 

2021年11月12日金曜日

本筋の楓小品

前項でご紹介した力強い本格模様木の楓小品と一緒にやってきたやや細身の本格派。うちへ来る前には、ある園の棚で仲良く並んで培養されていた2鉢だったのです。


幹筋は雑木らしく細身で模様も柔らかく、枝も軽い感じに作られています。まさに雑木のお手本のような雰囲気ですが、根張りだけは力強く地面をしっかりと掴んでいます。


全体の樹形のバランスも、左右よりも樹高を高めにとったところに好感が持てて、とても穏やかな感じがします。



マメな芽摘みと葉透かしの実行により、枝先の先端まで繊細な味わいが表現されています。
昔から盆栽盆栽界では“木は木なりに作れ”と云われています。素材の素質を素直に伸ばしてやろうという方向性を示した含蓄のあることばですね。

 

2021年11月10日水曜日

紅千鳥取り木外し

大して広くもない我が家の庭ですが、もちろん盆栽や種木素材でいっぱいになっています。それらの植物はほとんど鉢や苗木の培養箱に入っていて、2メートルくらいの紅千鳥もみじ以外には庭に根をおろしたいわゆる庭木は一本もありません。
この紅千鳥は、今から10年ほど前に取り木の材料にと小さな若い苗を庭に植えたものです。
この数年でやっと頭に勢いがついて、その頭の部分に取り木をかける気になりました。


樹高35㎝で足元の直径が約3.0㎝くらいの株立樹形が取り木できました。
5月末の施術だったと思います。


環状には皮を剝かないで、部分的に水吸いを残したので発根がやや弱い感じですね。その分安全策を優先させたといえるでしょう。


水苔は来春に本植えと同時にきれいに取り除きます。今はどんな細いひ弱い根でも大事に扱います。


来春まで仮植えして養生する。


鉢穴から針金を通して固定するとどうじに、足元をビニール紐でしっかり結束しておく。

 

2021年10月21日木曜日

楓の根張り

樹齢が古く根張りがよくて、しかも全体に細身でやわらかな雑木らしい楓が欲しい、とのご注文をいただきました。これはたいへん難しいご注文でしたが、幸いに何とか自信のあるものに出会えてホットしているところです。
その探索の課程で私なりに他に気に入った出会いもありましたので、自慢かたがた(笑)皆様にお目にかけることにいたしました。


楓模様木 樹高14×左右22㎝

重厚感のある根張りと力強い幹の模様がこの楓の特徴です。
注文をいただいたお客様の好みはもっと細身で自然体の樹形でした。


根張りを後ろから見てみましょう。盤状になって大地でとぐろを巻いているようです。


正面の足元がよく見えるアングルからの画像です。模様木としての足元は申し分ありませんが、雑木らしい柔らかさよりも迫力の表現が強調された樹形ですね。



後ろ姿です。力に溢れた模様木ですね。雑木の本領である柔よりも剛のイメージを強調した木造りの結果です。

 

2021年9月29日水曜日

一陽の釉


東福寺、香山と並んで大正期から昭和の初期にわたって活躍した一陽。この白い釉は白交趾と表記されることが多いようです。



一陽白交趾外縁段足木瓜式
間口17.5cm


 ただ残念なことに正面に僅かな浅い釉切れ(くすりきれ)があります。私の親しい愛好家さんが、どこかの売店でうっかり見落としてしまったそうです。


この角度だと光線の加減で目立ちますね。使い鉢としては十分でしょう。


落款は「三琇一陽」(さんしゅういちよう)
作風は一陽の人柄に似て、温もりがありあくまで穏やかです。



中央の縦線が釉切れ(くすりきれ)です。
 

2021年9月28日火曜日

昭和の名人鈴木舟山

昭和の40年代の初め頃から急激に皐月盆栽ブームがおこり、根張のよい太物をいれるための、実用にも展示会のための鑑賞用にも向いた鉢が求められました。


舟山正方 間口43×奥行き43×高さ20cm

それらの需要に答えて人気が高騰したのが、ご紹介する舟山。


その舟山鉢の特徴は

①支邦鉢に似て堅牢で雅味のある土目。
②重厚な構図からくる品格ある造形美。
③持ち込むほどに深い時代感を発揮する。


支邦鉢同様一発仕上げのシンプルな作風も特徴です。


長い年月の使い込みによる時代感も舟山鉢の特徴です


実用鉢だけに水穴の数は支邦鉢よりは多めに空けられています。


「舟山」の落款


緩みのない構成力が舟山の人気の秘密でしょう。故に大型鉢だけでなく小鉢においてもその作品の力強さはかわりません。