2011年12月21日水曜日

苔洲鉢と竹本鉢の知られざる逸話


市川苔洲・辰砂釉外縁六角 間口4.0×奥行き4.0×高さ2.7㎝

竹本鉢と苔洲鉢の両大家の作品には
非常に似通ったものが存在することはよく知られています

実際に、明らかに苔洲の釉薬であるにもかかわらず
形状は竹本にそっくりな鉢などによく出会うものです

とくにミニサイズの豆鉢に多く
初心者の愛好家では見分けに迷うことも多いと思います

そこでみなさんの参考のために、私が実際に耳にしたことのある
信頼性の高いある逸話をご紹介しましょう

竹本隼太は明治25年に45歳で没しており、苔洲は明治30年生まれで、大正の中期頃には東京・下谷(その後は目白)で作陶していたということですが
竹本没後と苔洲の活動開始時期には、少なくとも20年からの空白があります

しかし、苔洲がおもに鉢を焼いたとされるのは目白時代であり
その目白から竹本の窯があったとされる小石川までは、距離にしてわずかに3キロくらいしか離れていません

そこで、私の耳にした逸話になります

昭和の初期の頃、苔洲は当時まだ存続していた竹本家に出入りし
残されていた鉢型や素焼きの未完成鉢などを譲り受けていた

そして、その鉢型を用いて作ったボディーや素焼き段階の鉢に
自分で工夫した釉薬を施して焼いた

ということです

当時は、小品盆栽が現代ほどに一般に流布していたわけではなく
一部の好事家でひっそりと楽しまれていた時代で、万事ゆるやかなのんびりしていたのでしょう

それらの作品は、真贋などはまったく問題にされず
苔洲鉢としてすんなりと世間に受け入れられたそうです

もちろん、当時すでに作家として独自の世界を築き上げ、一家を成していた苔洲に
悪意などあろうはずはありません

その技、神域に至る、といわれた竹本への
強いあこがれや尊崇の気持ちがなさしめたのでありましょう

また、そうして生まれた作品が現代においても
竹本鉢としてではなく、苔洲鉢として存在していることは間違いありません

主に鉢の鑑定では、作風、釉薬、土目の三つが決めてとなりますが
同じ型を使ったボディーであっても、最終的に施釉して焼き上げた作者の作品であるのは当然です

研究の進んだ現代盆栽界においては、苔洲の釉薬と胎土の特徴は
竹本鉢のそれとはしっかりと区別認識されていますから、ご安心下さい

この逸話は、苔洲と親しい間柄であった、竹本家にも同行したこともあるという
当時まだ若かったある盆栽師が、子孫に語り継いだものです

その子孫から直接私が聞いたんですよ
信憑性は高いでしょ

冒頭にご紹介した苔洲の辰砂の六角鉢も、竹本鉢にも散見する形ですが
土目と辰砂釉との特徴から、苔州の作品であることは一目瞭然ですね

では

2011年12月1日木曜日

けやき六年生はまだ若造

2007年の春に手がけ始めたけやき二年生実生苗が
早いもので、もう六年生になりました

作柄はその年の気候やちょっとした心遣いの良し悪しが
毎年かなりの差になって生育に現われます

しょうじき、昨年はひどい猛暑日が長く続いたせいもあり、あまり成績はよくなかったようですが
今年は盆栽フリースクールのみなさんの熱意に引っ張られ、私もかなりがんばりました

今年の冬までの生育の記録は、こちらこちらで見られますよ

いかがですか?
赤いラベルの「2」が↓の現在のけやき六年生の画像です

その時々には目立ちませんが、こうやって以前の姿を振り返ってみると、すごいものですね
自分ながらその成長ぶりには驚かされます

みなさんも、自分の子供が6歳ほどに成長したころに
生まれた時の赤ちゃんの写真を見ながら、よくぞ成長してくれたと改めて感激したおぼえがおありでしょう

それとまったく同じような感覚ですね

あのひ弱で楊枝ほどの太さしかなかった苗が
4年間で足元の幹径が1.0㎝にも太り、ご覧のような大木然とした姿になれるんですよ


根張りの発達につれて、裾をひいた足元に力強さが感じられるようになってきました
枝分かれも素直で、梢の先端まで柔らかくなってきています

ですが、ここで安心して気を抜いてはいけません
これからあと3~4年間、つまり10年生くらいまでが基礎作りの最終コースです

もういちど気合いを入れ直して
最後の調教にかかります


まだ枝に柔軟性が残っていますから、幼い苗のときと同じように
まとめてギューと何度もにぎりしめて枝分かれを矯正します


中心にまとまりすぎた場合などは、各枝の広がりぐあいをバランスよく調整します


枝分かれの骨格が上向きに矯正されたため、立ち姿に勢いが出ましたね
また、枝全体を上向きすれば、さらに枝先の若返りの効果もあります

未完成(10年生以内)の場合は、枝先が下垂してくると
老木感は表現できますが、樹勢の面でマイナスになりますから、たまに矯正してあげましょう


けやき六年生 樹髙13.5㎝ 足元の幹径約1.0㎝

枝の先端に芽数が多く集中している箇所、強い枝やゴツイ箇所など
ていねいに見分けて剪定して整えます

何時まで仕立鉢に入れておくの?

そうですね、けやきの六年生はまだ若造ですね
あと3~4年くらいはこのままで育てたいですね

十年生くらいになれば基礎が十分に出来上りますから
似合った化粧鉢に入れて老木、大木の趣を重視する段階になりますね

それでは

2011年11月15日火曜日

銘鉢発掘・安納功生

盆栽鉢を鑑賞したり蒐集する場合、有名作家や産地のいわゆるブランドものばかりではなく
作品の出来栄えや味わい本位でものを見る姿勢が大切です

その精神で、ブランドにとらわれず純粋にものを見る目を養っていくと
今まで見えなかったもが少しずつ見えてきます

もちろん、有名作家や産地の作品は、ある一定の水準以上のものが多いのは当然ですが
冷静に見てみれば、平凡な作柄のものだってたくさんありますよ

陶芸は「土と炎の芸術」といわれ
どんな名人だって最後のところは、人の意のままにならない偶然の力を借りるわけです

ですから、無名作家の作品にだって、思いもよらない炎の力が働いて
趣のある作品が出来上るってこともあるわけです

そんなわけで、作者名や産地名のブランドにこだわらず
これはおもしろい、この味わいはいいと感じた作品に出会ったら

このつれづれ草でみなさんにご紹介いたしましょう


安納功生・辰砂釉窯変切立長方 間口7.8×奥行き6.7×高さ4.0㎝

かつて栃木県に、堅牢な構成のボディーと渋い釉薬で知られた
菊池春陽という鉢作家がいました

平安東福寺や平安香山などのように、盆栽界の末端にまで知られるほどの存在ではありませんでしたが
その堅実で味わいのある作風は、いわゆる通人の間ではなかなかに高い評価を得ていました

私も昔、春陽の井上良齋ばりの「夕日磁」風の秀品を持ったことがあり
なかなか味わい深い作品であったことを覚えています

ところで、今日ご紹介した「安納功生」という作家の詳細は知られていませんが
拠点が栃木県であったことや、その他伝え聞いた情報や作風からの推測によると
どうも功生はその春陽の周辺で活動した作家であるらしいのです


ほどよい角度で上に開いたボディーの重厚感が秀逸であり
下辺の下紐の力を受けとめた二段の切り足との調和がとれています

そして、何よりも縁から大胆に掛け流した辰砂釉が
窯変によって神秘的な効果をあげているのが最大の魅力です


窯変の効果は正面だけでなく、裏面や側面でも大きな効果をあげていて
一種不可思議な雰囲気を盛り上げています


鉢底にも釉薬が施されており、落款部のみそれが抜かれています
落款は「功生」

かなり長い間使われてきたらしく
時代感がよく、それが辰砂釉の神秘的な雰囲気にさらなる趣を添えています

相場的な評価は低くとも
座右において当分楽しみたいと思っています

では、また!

2011年10月13日木曜日

スクール速報・山もみじ超ミニ

「この山もみじ、よくなったねー!」
「かわいいねー、いいよ、ほんとにいいよ、欲しくなっちゃうよ」

よっぽど私が物欲しそうな顔をしてたんでしょうね(笑)
クロちゃんは気の毒がってかしら、この小さな山もみじを置いていってくれました

でも、言い訳するわけじゃありませんが、私は譲ってくれとは言わなかったですよ
なぜって、立場上ですよ、生徒さんのものを欲しがるわけにはいきませんからね

とは言え、「欲しくなっちゃうよ」とは言ったような記憶はありますから
クロちゃんへのプレッシャーにはなった可能性は否定できない、クロちゃん、ごめんね\(_ _*)m(_ _)m(*_ _)/


\
樹髙は葉先までわずか4.0㎝しかないんですよ
おなじく間口は7.5㎝で、鉢の間口だって2.6㎝の超ミニサイズです

ミニ好きの愛好家にはたまらない魅力ですね

ところで、クロちゃんがどうやってこの超ミニを作ったのか
みなさん、しりたいでしょ


この超ミニは株立ちからの株分けという、もみじの仕立方では珍しい方法によったのです
例えば↑のような6幹立ちがあったとすると、左右両端のどちらかは取って、奇数の5幹にしたいですね

クロちゃんは、そのような親木から不要な子幹を株分けしました
そう、もう4~5年前にもなるでしょうか


右端の子幹を取れば幹の数は理想的な5幹になりますね
その子幹から出ていたわずかな根ごとえぐり取ったのです

はじめは小さな小さな苗でしたが、それを根気よく丁寧に時間をかけて育て
今年の春に今の小さな鉢に植え込んだわけです

もっとも、はじめから超ミニをもくろんでいたクロちゃんは
大きな鉢には入れずに、ごくごく小さな仕立鉢で枝の徒長を抑えてきました

その数年にわたる我慢の段階が成功の秘訣です
太らすことに重点をおいた培養法では、こんなに小さなサイズの鉢にはとても無理ですね

またおそらく、取り木であったなら根張りがよすぎて
この鉢には収らなかったかもしれません


正面を拡大すると
こずんだ枝先の様子がよく見えます

立ち上がりの第一曲のところに、強い立ち枝があり
これがちょっと気になりますが、急いで切らない方がいいでしょう
もう1~2年我慢して、立ち上がりにもう少し力がついたら
枝元から外してもいいでしょう

予想される赤点の胴吹き芽を使うか使わないかは
その時点の全体像から判断すればいいことです

ということで、久しぶりのつれづれ草は
よだれの出そうなクロちゃん作の山もみじ超ミニについてでした

では

2011年9月23日金曜日

初級・中級盆栽集中講座(2):雑木類の植え替え

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:3月上旬から4月上旬頃まで(冬芽が色づいてきた頃から開きかけるまで)
  • 適用樹種:もみじ類・楓類・けやき・姫しゃら・ブナ・赤芽ソロ・カナシデ、カリン、梅、りんごなど(花物、実物を含めて落葉する樹種
  • 目的:古い根を切り土を取り替え活性化をはかる(植え替えこそが長年小さい鉢の中で盆栽が生き続けられる秘密です)
  • 道具:剪定鋏・ピンセット・針金きり・やっとこ・竹箸・金ブラシ・フルイ・こて・針金・土・底網など
  • レベル:超初級から達人まで絶対必要な盆栽技術(植え替えなくして盆栽なし!)
  • ここがポイント
    • 植え替え前には事前に鉢の水を切って乾かし加減にしておく
    • 針金で根を鉢に固定する
    • ゴロを使う
    • ミジンを抜いた土を使う
    • 隙間なく用土を入れる
  • その後の管理:日当たりのよいところへ置く、水を切らさない、風を避ける(日陰に置くと過保護になって何時までも活着が遅れます、せめて半日陰です)

実技教材・箱根サンショバラ



本日の教材は箱根サンショバラです
それらと兄弟の盆栽素材です
素材といってもけっこう古い木ですから
吹流し風な懸崖で充分楽しめます



植え替えのときは手入れの機会でもあります
剥けかけた古い木肌を金ブラシやピンセットで取ってやります
サルスベリのようなきれいな肌が出てきます
実にきれい
でもあまりこすり過ぎて擦り剥けないように注意!
サルスベリ、楓、カリン、しゃらなどは古くなると上側の肌が落ちて
下からもっと時代をおびたきれいな肌が現れます
これが本当の盆栽としての木肌です


お肌の手入れが終わったら本番に入ります
鉢底をみると本格的に仕事がしてあります
太い針金を支点にして細い針金を水穴に通して根をしばってあるのです
こうすればグラグラしないですぐに活着できます
しばっていないと白根が出ても揺られて切れてしまい
植え替え失敗の大きな原因になります
必ず実行!


その針金を切って鉢から抜いてみます
きれいな根がぐるっと廻っています
元気な証拠です
まず根をほぐす前に根張りを掻きだします
傷つけないように!
ほら、土の中に隠れていた根張りが出てきました
これだけの作業で足元は見違えるように太く逞しくなりましたね


根をほぐします
残す目安は雑木の場合は半分くらいです


こんな風に根を切ります
こんなに根を取っちゃって大丈夫?
このくらい取らなきゃダメ!


次にやることは植え込むための鉢の準備
新しい(古いけど)鉢を選びました
針金でこのような形を作ります
知恵の輪みたい!


鉢底にひいた網がずれないためにする、だいじ~なポイント!
初心者は覚えといて、必ず実行!
これをしないと水穴から網がずれて、土がこぼれっちゃう!
でもよく見かけることです


小粒と大粒の用土・赤玉土8に桐生砂2くらいの割合で混ぜたもの
大粒はゴロといって水はけがよくなるように鉢底に敷く(深鉢鉢の場合は深さの2~3割くらいまで)
これも必ず実行!
小品盆栽の場合でもフルイの目で一ミリ以下の細かいみじんは使っちゃいけませんよ
これも鉄則!


ゴロの上に植え土を少し入れてから、木を入れます
周囲に植え土を入れ、根の隙間に土が行き渡るよう竹箸などでつつきます
忘れてる?
そう!
針金で根を固定する作業です
でもご心配なく
今回は簡単で確実な別の方法をご披露します


ご覧下さい、小さい盆栽によくやるんですが
底穴から針金を通して表面に出たらその先端をピンのように曲げます
写真のように針金を支えにして下から引っ張りはちの穴にところで曲げれば出来上がり
余分部分は切れば邪魔になりません
これを二ヶ所やれば完全です
わかりましたか?


最後に鉢の表面にやや細かい化粧土をまいて
コテで仕上げます


そっと如露で水をやって仕上がりです
よくなったでしょ!
初めの姿と比べてみて下さい(エヘン)

2011年8月28日日曜日

秋肥(液肥)のやり方

今年はまさに節電の夏でしたね
なにせ、昨年があの通りの超酷暑日の連続で、おまけに2ヶ月も雨が降りませんでした

ですから、夏が来る前から、もし今年もだったらと恐々としていましたが
日本国民が総力をあげての節電努力により停電もなく、どうやら秋風が心地いい季節までこぎつけた感じですね

さて、盆栽の方は、春から芽摘みや葉切りなど忙しかった作業も一段落して
じっくりした整姿などの本格的な手入れが近づいてきました

そこで気を付けなければならないのは
これからの9,10,11月の肥培管理です

春から入梅頃の肥培管理は、芽の伸びや葉の色つやに結果がすぐに現われます
ですから、張り合いがあり気合いも入りますが

この時期の管理は結果が目に見えにくいので
どうしても肥料が少なめになってしまう傾向が見られます

しかし、夏の間は忘れていますが、これから厳しい冬の寒さを生き抜かなくてはならないし
樹勢がいいものであっても、針金かけや剪定の激しい整姿作業の洗礼が待っているのです

そのためには、この数ヶ月の間にみっちりと体内に栄養を蓄えておく必要があります
盆栽人は今だけを見ていたんじゃだめですね、少なくとも半年先までの行程を頭に入れて行動を起こしましょう

この秋の肥培管理の結果は
少なくとも来春の芽出しにも間違いなく強い影響を与えるわけです

さあ、みなさん、厳しい夏は終わりに近づいていますが
ここでもう一度改めて気合いを入れて秋の肥培管理に精を出しましょう



秋一番の施肥は液肥から始めるのが秘訣(その理由は最後にお話しします)
液肥はハイポネックスが使いいいです

10リットルのバケツに5㏄
つまり2000倍液を作ります(濃すぎないように)



水やりの要領で如雨露でやってもいいし
小品やミニならこのように、鉢ごと浸してもいいでしょう

ちなみに、この真柏はフリースクールの生徒さん・イシくんの愛樹
この秋には、古葉とり、小枝の剪定、部分的な針金かけなどの手入れが予定されています



こちらは、やはりスクールのマユちゃんが可愛がっているミニ杜松
今年は樹格が大幅に前進したので、来年も一気に突っ走りたいものです

8月のはじめにあげた固形肥料はもうすでに効いていませんね
ですから、この杜松もドボンです



液肥へドボンのあとには油粕の玉肥を2個

あれれ!液肥と玉肥を同時にやるなんて、やり過ぎじゃん?

いえいえ、ここに肥料のやり方の秘訣があるんです
以下箇条書にまとめますから、忘れずに実行して下さい

1 固形油粕(遅効性)は吸収されるまでに10日ほどかかりますから
  それまでの空白期間がないように、1~2回ほど即効性の液肥を施しまます

2 固形肥料は、効き始めてから約10~15日でその効力が失われます
  施肥後1ヶ月経過したら、いつまでもそのままにしないで、カスは取り除いてやります

3 そして次にも、今回のように固形肥料をやりながら液肥を1~2回やります
  つまり、空白なく肥料が効いているようにするわけですね

おわかりですか、効果はてきめんです

それでは、ソク実行しましょう

では

2011年8月23日火曜日

くちなし・青虫出現

盆栽を悩ませる虫害は数えればきりがないほどありますが
蝶の幼虫(アオムシ・イモムシ)も、これは始末が悪いですね

特に気をつける樹種はクチナシとキンズ(柑橘類全般)です
夏も終わりに近づいた今ごろに、葉が丸刈り状態に食べられてしまうと

新しい葉が出そろわないうちに秋が深まり
冬の寒さを葉のない状態で生きぬかなければないのです

これは、寒さの苦手なクチナシやキンズにとってはまことに厳しいことです
私も以前クチナシの名木を丸刈りにされたことがあって、、冬中心細く管理したことが忘れられません

対策は言ってみれば簡単なのですが、日頃からの定期的な消毒はもちろん
盆栽の棚場で蝶を見かけてから一週間くらいは、ピンセットと消毒スプレーを持ってクチナシやキンズなどをよく点検することです

蝶の幼虫は成長が早いので、一週間も気がつかないでいると
たちまちタバコの太さくらいの堂々たるた大きなアオムシ様となってしまい、盆栽は葉刈り状態になってしまいます



一週間くらい前に棚場すべての消毒をしたばかりなのに
あれあれ、今朝気がついたらこの通りです

卵の段階では消毒が効かないのでしょう
消毒後にと孵化して幼虫(アオムシ)になったわけですね

それにしても保護色なので見つけにくい
3匹捕獲しましたが、念のために所毒もしておきましょう



部分的な消毒用に500㏄くらいの小さな専用スプレーを常備しましょう
小型の計量スポイトも便利です

それでは、今日はごく初歩的なお話しでしたが
ベテランの盆栽棚にも蝶々は飛んできますからね(笑)

2011年8月11日木曜日

くちなしの芽揃え

昨年並みの超猛暑を予感させる入梅明けの陽気だったのが
台風6号の襲来を境に、一転涼しい日々が続き随分と仕事がしやすい感じでしたね

その過ごしやすい気候のせいでしょう、積年の課題であった棚場の拡張(たった畳3枚分だが)と
今や不要品と化したと思われる、物置いっぱいのガラクタの山を片づける気になったわけです

(ちなみに、畳3枚分だと10㎝クラスの小品が100鉢はらくにおける)

ところが、普段からの心がけの悪い怠け者には
天はそう易々とは味方をしてくれなかったようです

まずは、物置のガラクタを処分したまでは順調でしたが、その余勢で盆栽置き場の片付けをしながら棚場の拡張をという段階で
またまた殺人的な猛暑がぶりっ返して来たではありませんか

しかし、途中で頓挫するわけにもいかず、ともかくやり過ぎないことを心がけながら
遅々とした進み具合ながら、棚場の拡張にとりかかっているこのごろです

さて、余談はこのあたりにして本番の盆栽のお話しになりますが
こんな猛烈な暑さの中で元気のいいのは、やはり暖地を好むクチナシやキンズなどですね

強烈な夏の日射しをあびても、葉やけなどいっさい心配なしで
人間はおろか、盆栽たちでさえも暑がっているのは目に見えているのに

クチナシやキンズに限っては
太陽の下で濃い緑の葉をかがやかせ、元気いっぱいに夏を謳歌しています


さる5月19日のつれづれ草で葉刈りと病気予防をしたクチナシ(当時の画像)


ご覧下さい

夏の暑さが大好きなクチナシは肥料もよく吸収し、このように葉の色つやも好調です
またこの状態は、病気予防の殺菌消毒の効果の現われでもあります


このクチナシのように骨格を作り上げている段階では、各枝の伸び具合にまだムラがあります
まだ8月の中旬ですから、少々深めに芽を摘み、葉の数を減らしておきましょう(結果として葉刈りに近い作業になりました)


強めに伸びた芽は1~2芽で摘み、葉も刈っておく
普通の勢いの芽は下のように葉を刈らずに残しましょう


ちなみに、くちなしの葉は対生ですが、このように3枚の葉がでることもありますね
このような葉の出方を三輪性というらしい


やはり5月19日のつれづれ草でご紹介したくちなし(当時の画像)
こちらはかなりの持ち込み品なので、各枝の伸び具合にも落ち着きがありますから


ご覧のように、かなりの樹勢であっても基本の輪郭線はさほど乱れません
やはり持ち込みの古い木はちがいますね


各芽の伸びをよく観察しながら、ていねいに飛び芽をさぐります
そして、飛び芽は原則1芽残しで摘み取りましょう


これから8月いっぱい、好調な樹勢であっても9月中旬くらいが摘みおさめの予定です
それまでに、飛び芽が目につきしだい繰り返し摘み込みます

では

2011年8月2日火曜日

けやきの芽摘みと葉切り(重要ポイント3)

雑木盆栽として不朽の人気を誇るけやきですが
やはり代表的な雑木樹種の山もみじや楓などのように、持ち崩した場合のやり直しが難しい

もみじや楓などであれば、枝が荒れてしまっても
いちど素材にもどしてボディーの骨格からの再出発がききますね

ところがけやきの場合は、まったくの不可能時ではないけれど
素材にもどしての一からの再出発は、かなり難しいことになります

ですから、けやき盆栽の場合は、育てる途中での停滞や曲折はなるべく避けて
そのかわり、いっぺんに急激な飛躍も望まず、冒険もせず、安全第一の培養管理を心がけるのが最大のコツであるといえましょう

そんなわけで、けやきの芽摘みと葉切りについては5月30日に詳しくご説明しましたが
みなさんが失敗のないように、さらにクドク念を押しておきましょう



程よく伸びて、芽摘みと葉切りの時期がやってきたようです

春の植替え後の生育が順調なので、平均して月に2回くらいの割合で芽摘みと葉切りを繰り返してきました
このけやきの前回の芽摘みと葉切りはちょうど2週間前でした

前回5月30日の項で、芽摘み葉切りは月に1回ほどと申し上げましたが、順調な樹勢のものにはとても足りませんね
樹勢のいいものでは月に2回くらい、とここで訂正しておきましょう


芽摘みと葉切り作業が必要になったけやき、上部から見ます

どの枝先からも平均して芽が伸びていますね
根がどの部分においても、平均して順調に活動していることを示しています



芽摘みと葉切りのポイント1

伸びた新芽をよく観察すると、枝元のすそ(元)にやや小さめの葉が1~2ツついています
芽摘みをする場合に1~2節残して切る」といわれますが、初心を脱して中級になった方は

少なくともこのすその葉(元っ葉)の1節目は
その勘定に入れない方がよろしい

というのは、新芽の1~2節のすそ葉(元っ葉)の部分は、節間が極端に短いので
教科書通りに1~2節残しで摘むことを繰り返しいると、同じ場所に芽がたくさん吹きすぎて、そこがゴツクなってしまうからです



ですから、1節残しで摘むという場合でも、最初のすそ葉(元っ葉)は勘定に入れずに
図のように2節を残します



最初のすそ葉(元っ葉)は全部切り取る
1節目(じつは2節目なのだが)で切り、残された葉の面積を3~4分の1くらいに葉切りする

そこまでご説明すると、かならず以下のご質問を受けます
「1節目(じつは2節目)で摘んでいくと、一年間ではかなり伸びてしまい、樹髙はどんどん大きくなっちゃいますが、どうしたらいいんですか?」

これは当然の疑問ですね

その回答は、樹髙の短縮は落葉時の剪定で本格的に調整すると覚えて下さい
その時に具えて、活動期に新芽摘みや葉切りによってフトコロ芽を元気にしておくわけです

よろしいですね



芽摘みと葉切りのポイント2

芽摘みはハサミだけで行なわず、必ず空いた片方の手指も使って行なう
新芽は真っ直ぐに上に伸びているとは限らず、横や下を向いている芽もあります



空いた片方の手指も使って
もぐった新芽をフトコロの奥から引っ張り出して、ていねいに行ないます



芽摘みと葉切りのポイント3

ちなみに、このように各枝先によって伸び方が不均衡なものは、根の強弱が激しく各部署が均等に発達していない証拠なのです
来春の植替え時に、強い根は制御し、弱い根は発達を促すように、しっかりとして根さばきをしましょう



さて、一箇所に芽が混んで、おまけに極端な徒長枝があり、落葉後の剪定まで待てません
そんな時にはハサミを使わず必殺技!

ハサミを使うと切り口が盛り上がって瘤状になることがありますから
下に向かって裂くように力をいれて皮ごとむしり取る(傷口が凹みますね)



現在の姿

5月から8月までにどのくらい成長したか、培養の成果を画像で見比べてみましょう



5月頃の画像

芽摘みと葉切りの成果は顕著ですね
芽と葉の数が圧倒的に増えています



最後に、芽摘みと葉切り作業前と作業後の姿を並べて比較してみます

葉の量がかなり減りますね
ということは、芽摘みと葉切り作業によって、樹勢がかなり制御されていることがわかります

ですから、作業のいろいろなポイントはもちろんですが
水やりと施肥を中心にした適切な培養が一層求められます(安全第一の培養管理)

けやきの芽摘みと葉切りはおおよそ9月の中旬まで
あと1ヶ月とちょっとですね

落葉後の大きく出世した姿を楽しみにして
もうしばらく頑張りましょう