2017年10月25日水曜日

台風襲来

10月も下旬に入っての季節外れの台風だから大したことはないだろうとタカをくくっていたのですが、22日(日)の朝方には台風情報でもかなりの警戒を呼びかけていました。

近年ゲリラ豪雨などによる土砂災害が多いせいで、天気予報や警報が時として大袈裟な表現に聞こえるような気がするときがありますね。

しかしそんな時は、せっかくの情報を甘くみてはいけないと自分にいい聞かせるようにしています。

自分のおかれている状況では大袈裟に感じられても、実際に異なる環境の下では災害に発展していることも十分にあり得ることなのです。

というわけで、一番面倒くさい風による転倒や破損対策、つまり棚から降ろす単純作業の励行あるのみです。盆栽屋にとって一番怖いのは、ともかく風ですからね。


盆栽を棚から降ろす作業は、雨中でのことが多いのでけっこうシンドイ。急げや急げです。こうしてただ低い位置へ移動するだけも転倒破損対策としては十分に効果ありです。


盆栽置場の通路にもドンドン降ろします。背の高い鉢などは集団で横に寝かせるようにしておくと傷まないですよ。


盆栽の重みから解放された棚板は、うっかりすると落下して大被害の許もとになりますから要注意です。ここでもちょっとでもいいから低い場所へ移動します。

よろしいですかみなさん、台風対策はとにかく高いところから低いところへ移動するだけで効果があります。億劫がらずにとにかく降ろせ、降ろせ!


2017年10月23日月曜日

獅子頭もみじ筏吹き樹形





それほど多くはありませんが、筏吹きという樹形があります。自然界において朽ちかれた幹から複数本の枝が立ち上がり、やがて幹となってまとまった景色をけいせいしていきます。
それほど多くはありませんが、筏吹きという樹形があります。自然界において朽ち倒れた幹から複数本の枝が立ち上がり、やがて幹となってまとまった景色を形成しています。

その倒れた幹が横たわった筏のように見えるために「筏吹き樹形」と呼ばれています。

寄せ植え風な造形の面白さとともに、自然界に生きる不滅の生命力が感じられる樹形で、ベテラン好みの渋い樹形でもあります。

この樹形は、朽ち倒れた筏部分の動きと時代感がポイントで、奇観にふさわしい面白味のある景色が望まれます。盆栽人は、筏吹き樹形から不滅の生命力を感じ取って、それを愛でています。


堂下慶心作の色絵長方に入った樹高12㎝の獅子頭もみじ筏吹き樹形。筏の動きに照応して飄々とした造形の面白さが表現された双幹の動きです。


左から右方向に倒れた幹が画面右のギリギリのところで立ち上がっています。しかも大小の2本幹で、主幹と子幹の双幹体となってい秀逸な動きです。


もっと拡大して見ます。


1 主木となります。獅子頭もみじの場合はこのように傷っけのない幹は特に貴重です。傷の肉が巻きにくい樹種だからです。

2 子幹となります。主幹よりも模様が繊細なので、双方のバランスがよくとれています。

3 倒れた幹であり筏の部分となります。普通の模様木などでは根張りに相当するところです。

4 倒れた筏の先端部分です。この部分に根が出ているのが理想とされています。もちろんこの獅子頭の場合は根が下  りています。

5 根張り。

6 根張り。


裏側の根元付近の拡大図。矢印で示した付近にも適度に根張りが発達しています。もみじ類は取木が可能な樹種なので、持ち込みとともに筏部分から発根して次第に根の数が増えてきます。改めて傷っけのない筏部分に称賛ですね!

以上、希少な獅子頭もみじの筏吹き樹形の魅力を分析してみました。樹令はおおよそ20年以上は経っているでしょう。筏部分の時代感と双幹体のバランスのよさ、さらに傷っけのない古色感あふれた木肌の趣が最高です。

2017年10月19日木曜日

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。

プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります。好きな方を見つけて差し上げるのも方法ですが、次の愛玩者を見つけるのは案外簡単ではありません。本音はまさに時間の問題でもあるんです。

ご家族の側から云うと、ずいぶんと可愛がってきた生命ですから当然愛着もあって、金銭で割り切るわけでなくともやはり命ある生き物であることから、早めに手放さざるを得ないのが実状なのです。

このあたりが盆栽趣味のほろ苦いところでしょうね。

ところで、このお宅ではご家族の方が亡くなったご主人の趣味にずいぶんとご理解があったようで、四十九日の法要が済むまでは水やりをかなり頑張ったようです。私としても、主人に置き去りにされてボロボロになった盆栽でなくてホットしています。


ご家族の方がざっと数えたところでは、ひっくるめて500鉢ほど。ご覧のようにそうレベルの高い盆栽ではありませんが、とにかく大小あわせてそれくらいの数はあるようです。


手狭な宮本園のビニールハウスは満タン!ふだんは盆栽を置き場ではない玄関周りにも溢れ返った土払い品。


窮屈、これじゃ水やりもできない!!!


これまたふだんは盆栽を置かない表のバス道路沿いの塀際までビッシリです。


バス道路に面した塀際は、物騒なのと日当たりの関係で盆栽置き場には不向きな場所ですが、この際そんなこと云ってはいられません。買っちゃったものだからとにかく頑張って運びました。信じられない、500鉢!!

ちなみに、黒松、五葉松、錦松、真柏、レンギョウ、ニレケヤキ、寒椿等々の樹種がありました。

2017年10月6日金曜日

黒い実の姫柿

市内の親しい愛好家さんから黒い実の姫柿(老爺柿)を譲ってもらいました。以前から頼んでおいたのですが、なんでも秋になって柿の実が色づいてこないと真っ黒い実成りの特徴が出てこないそうで、ずいぶんともったいぶって今まで待たされました(笑)。

この方はかなり以前から姫柿のいろいろな種類の蒐集や繁殖が得意で、実生や挿し木で新品種を作出したり繁殖したり、また園芸の範疇に止まらず盆栽としての樹形作りまで手がけています。


入梅から夏ごろでは黒実の特徴はまだ見分けがつきにくいが、秋になると多品種に先駆けて赤っぽく色づき始めます。さらに実の形が図のようにやや細長くなっているのが特徴です。名の知れた楊貴妃や都紅などの赤系統の品種とは形が違いますね。


朝晩の気温が下がり始める今頃になると色が濃くなり始めます。肥料がよく効いていると実の艶も一段と冴えてくるようです。すると、次第に図のように墨を吹きかけたような細かい斑点が現れてきます。これが下地となって霜のころには真っ黒い艶のある実成りへと変化していくのです。きれいですよ。


最初はゴマ状ですが、次第に墨を塗ったような艶のあるみごとな黒色へと変化していきます。


日当たりのいい箇所ほどいい変化が見られます。また、実の形は丸や楕円ではなく、このようにやや胴のくびれた細長い形をしています。

まあ、私達盆栽人は、実の色に強い拘りをもって品種の蒐集に一番の重心を置いている、いわゆる「姫柿専門愛好家家」ではありませんから、あくまで植物の盆養と造形を優先させる盆栽作りの気持ちを忘れてはいけませんが、たまには珍種奇種の面白さを無邪気に喜んでみるのも一興かと思います。

そんなわけで今年の秋は、黒い実成りの姫柿を鑑賞してみるつもりです。