2015年11月30日月曜日

山もみじ超ボディー

私が30代のころ、もみじの人気が高騰して
現在の価格と比較すると異常ともいえる高値の時代がありました

約10年も続いたその高値は、一部では危惧されながらも一向に衰えることなく
バブルの波にも乗ってその後も10年ほど続き、都合20年間ほど高値の時代が続きました

自ら作ることの喜びを感じさせてくれるのが雑木盆栽のだいご味ですね
その喜びを盆栽人が満喫した結果がブームとなって表れたのでしょう

その後いくつかの曲節があって、今ではバブルの崩壊など日本経済の影響などで
昔では考えられないほど手頃な価格に安定しています

考えようで、もみじ大好きの愛好家さんにとっては
安価で優秀な素材が手に入るなどいいこともたくさんありますね

つまり、欲得抜きで盆栽を楽しめる時代になったわけですね
このさい好きな樹種や樹形に思い切り没頭してチャレンジしてみたいものです


私が働き盛りの30代から40代ではこんな素晴らしい素質をもったボディーは
めったになかったですね

たとえあったとしても、目玉が飛び出るほどに高くて
商売人ですらなかなか買い切れなかったものです


優秀品といえど欠点がないわけではありません
幾つかの課題があるので一つずつ克服していきましょう

1 矢印で示した箇所の曲が角ばって見えるので角を滑らかに削ります

2 切り残した箇所が凸状になっているので滑らかに削りましょう

3 枝を抜いた傷痕の処理が悪いので幹模様が滑らかでない

4 この角度からは見えにくいが、複数の枝がかたまっているので整理する必要がある(後ろ姿を参照)


後ろ姿からも問題点を検討しておきます



掃除用具

手前から
千枚通し、カッターナイフ、又枝切り、カッターナイフ、金ブラシ


根張りを確かめて徐々に足元から上に向って掃除をしていきます
同時に不要枝の軽い剪定も行いましょう


やはり問題点は最初に挙げた4点ですね


やや上方から問題点を見る


後ろ姿


やや上方からの後ろ姿


掃除をしながらできるところは軽く剪定しておく
幹の削り込みや深い剪定は、来春に植え替え作業と同時にやればいい


白色の部分が不要枝や削り込みの箇所になります
幹や枝の模様に柔らかさが出るように心がけるのが雑木の手入れのコツ

枝の骨格を作るのに2~3年、その後の小枝作りとあわせて5年がんばれば
名木間違いなしですね

手頃な価格で逸品のボディーが手に入る時代になりました
もみじ大好き人間にはほんんとうにいい時代ですね

思い切り楽しみましょう!

2015年11月27日金曜日

けやき箒作り10年生

今年の春の記事参照

どちらかというとやや冷夏ぎみの、不順な天候の夏にもかかわらず
10年目を迎えたけやき箒作りの作柄は順調でした


春の植え替え時に太めの根を残らず剪定した効果でしょう
枝もよく分岐してごらんの通りです

「枝作りは根作りから」と先人の教えにありますが
やはり本当ですね

根がゴツければいくら芽摘みや葉刈りを繰り返しても
ほんとうの小枝の柔らかさは出ないものなんです

また、植え替えた年は幹は太りにくいのが普通ですが
あんのじょう、幹は目立っては太ってはいない感じです


昨年の画像よりも一段上がった感じです
やはり、小枝のほぐれがものをいっているようです


肥料もやや控え気味に管理したせいか
小枝の先がやや細めに仕上がったような気がします


輪郭線をそろえる感じで軽く剪定しました


やや拡大して見る


後ろ姿

大好きな盆栽ですが、商売でやっていると、10年も持ち続けているものは
ありそうでなかなかないものですよ

売り忘れて押し入れや引き出しの奥に眠ったままの小鉢や水石などはあるでしょうが
それらと違って盆栽は手入れの必要な生き物ですからね

このけやきも越冬すれば来年は11年目になるわけです
どのように変化成長していくか楽しみです)

それではまた

2015年11月23日月曜日

作る(織姫もみじ逸品素材)



織姫もみじは、あの舞姫もみじと同じ親木から生まれた兄弟種の小葉性もみじで
切れ込みが7つの葉が多く交るのが舞姫との目立った相違点です

その織姫の逸品素材に昨年からチャレンジしているので、途中経過をご報告しておきます
素材は立ち上がりの幹径が6.5cm以上あって、織姫としては極太の部類に入るでしょう

数年前に、この織姫は私の親しい同業者の持ち物だったんですが
タッチの差で買い損なってしまったんです

その後、某愛好家さんの持ちものとなり、大幅な切り込みや利き枝の呼び接ぎなど
骨格の組み立てがなされていたのですが、この度ひょんなことから買い取りのチャンスに巡り会えたものです

ご覧のように、根張りのよさと幹筋の模様など大きな将来性に恵まれた優良品なので
気合いを入れて取り組みたいと張り切っている次第です


今年一年の培養により骨組の作りがかなり進行しました
葉を落としてみると矢印で示した4~5点が主な課題点です


力強く大地を掴む根張りは八方に張っています
根張りからやや上がった地点での幹径が6.5cmとすごい太さです

左の一の枝に力があり、この織姫の骨格を作る上でのポイントの枝
その上の幹模様の外側には、右の利き枝(矢印1)が呼び接ぎされており、これも大切な枝となります

それでは問題点を5つにわけて順に解説いたします

1 利き枝になる重要な場所です
  慌てて一本にしないで、しばらくは2本のままで様子を見ます
2 背中にある大きな不要枝、来年度はこの枝の切り外しが大きな課題になります
3 前枝ですが、将来も必要かどうか今の段階では判断が難しいので
  しばらくはこのまま行きます
4 枝を外した痕がややコブ状に残っているので削り込みました
  来年の夏ごろには治癒します
5 この付近が樹冠部になる予定です


側面より(画面左が正面)

大きな課題は、背面にある太い枝
木の肥大を図るためにわざと徒長させたいわゆる「捨て枝」です

十分に役目を終えた、この枝を切ることが今年の最大目標になります
時期は入梅前の葉刈りの時期と思っています

一番の活動期に切れば肉巻きも活発に行われますね
完全肉巻きまでに2年を目標にしています(織姫・舞姫は肉巻き良好)


背面の不要枝をティシュで隠して見る


正面より

来年の春に切り外し予定の後ろ枝をティッシュで隠して見る
今年一年の培養により本格模様木の骨組がしっかりとでき上がってきました


足元の拡大図

次のご報告は入梅前後になると思いますす
お楽しみにお待ちください

2015年10月28日水曜日

楓石付再出発(機は熟した)

一度は完成に近い姿までいったものだと思われる楓の石付
親しい同業者が植え替えたばかりのものを、昨年(2014年)の春ごろ入手したものです

当初から枝先は細かくほぐれていましたが、骨格の秩序がかなり乱れおり枝数も多すぎるので
とにかく整理して再出発のスタート地点まで戻る必要がありました


2014年春の姿

ところが、主幹の骨格作りで迷いが生じたために
当初簡単だと思われた剪定作業が思い通りに進まず、なかなか闘志が燃えてこないんです

そのため、あまり無理をせずに静かに機の熟するのを待つことにしました


2014年春の足元の拡大図

画像でみるとますますややこしくなりますが
かなり不要の枝が混じっているけれど、主幹の骨格が決まらないことにはその先へ進みません

2014年春の足元の拡大図

こんな時は無理をしてはいけないのが盆栽人のセオリーです
いい構想が浮かび気力が充実してくるまで、ひたすら「待つ」のも案外効果のある高等戦術なんですよ

ただし芽摘みと葉刈りなど日々の培養管理だけは神経を使ってやらねばいけませんね
いざ構想が固まって改作にかかるときに元気が悪くては勝負になりませんね


2015秋撮影

新しい装いの日は突然にやってくるものです

あれから2年の歳月が過ぎて、数日前、秋の葉落としを行いながらこれまでの培養の成果を確かめている時
突然稲妻のような(大袈裟かな)閃きと気力の充実を覚えて、一気に新しい骨格へとたどり着いてしまいました

2年の歳月を辛抱強く耐えたおかげで
新しい気持ちで再出発する日が来たということですね


2015秋撮影

1 主幹を中心にした主要部
2 全体の激しい動の役目を担う一の枝
3 右の一の枝とのバランスをとりながら反対方向への静かな動きを演出する子幹の群

以上3つの要素から構成された楓の石付です
剪定前の昨年度の写真と見比べてください

剪定により骨格の構図がよく見えるようになったので
この後は枝先のほぐれを促進する段階から再出発することになりました


2015秋撮影

混雑した枝もかなり整理され
主幹にも表情が出てきましたね


2015秋撮影

ちなみに、盆栽スクールの常連クロちゃんは
ちょっと長く感じられる一の枝を赤線から切る派です(笑)

私は様子見派です
みなさんはどちら派?



2015秋撮影

はね出しの部分はあまり形にこだわらずに
主に枝先のほぐれで味を出すことを心がけるつもりです


2015秋撮影

主幹、一の枝、はね出しの3つのポイントを大切にして培養するつもりです
来春には深さ半分くらいの浅鉢に入れ替えたいと考えています


2015秋撮影

後ろ姿

ちなみに、これからの紅葉時期は落葉樹の剪定期に向いています
ただし、冬期には寒さ対策をしっかりやることを忘れないように

それでは

2015年10月15日木曜日

五葉松八房系名木

昭和30年代の後半を皮切りに40年代から50年代にかけても
何度か五葉松八房ブームの盛り上がりがありました

その結果、山が高ければその分だけ谷が深いように
ブームの熱が過ぎたあとの盆栽界における虚脱感は強く残りました

しかし

1 樹勢が強壮で仕立てやすい
2 短い美しい葉性で容易に姿を整えることができる
3 フトコロの葉や芽が蒸れにくい性質があるので、小品やミニ盆栽が作り易い

等々優れた美点も具えているので

現在では、小品向きの品種として那須娘や明星、福娘などが受け継がれ
九重や瑞祥なども代表的な品種としてひろく仕立てられています

ところで八房五葉松のもう一つの問題点は、繁殖のために避けられない接ぎ木の痕です

それらを克服する方法としては

1 挿木苗から仕立てる
2 接ぎ木苗で促成栽培を行ったあと取り木をかける
3 接ぎ木の台木に、従来の黒松苗でなく五葉松を使用する

などが実行されていますが、五葉松の挿木苗の成長の遅いのは
経験された方ならよくお分かりですね

また2の方法による取木もなかなか手間暇と
時間を必要とするものですね

3の方法は、これも時間がかかりますが
まずは確実な方法でしょうね

いずれにしても盆栽は時間のかかるものですが
根気よくいい種木を見つけてチャレンジするのが早道でしょうね

さて、そんな八房五葉松事情ですが
今回巡り会った八房系中品のようなものもあるんですよ



五葉松らしく典雅な姿が印象的です

枝葉に隠れてフトコロが暗いので見えずらいですが
幹模様は下から上まで弛みなくバッチリ決まっています


正面よりもっと拡大する

葉性から見て八房系と思われますが
足元付近に接ぎ木の痕跡はありますせん、これが嬉しい!


もっと近づいても痕跡は見当たりませんよ


後ろからみても、これが接ぎ木の痕だと思われる痕跡は断定できません


もっと若木のころに取り木をかけたのでしょうか?
それとも、五葉松の台木を使った苗から仕立てものでしょうか?

いずれにしても断定できる所見はありませんが
盆栽人としては、葉性が八房系でありながらこのように接ぎ木の痕跡がないのはうれしいことですね

たまにはこんな珍しいことに巡り会えるのが
盆栽人の最高の喜びといえるでしょうね

では

2015年10月8日木曜日

幹に這い上る悪い苔

一言で云えば苔や盆栽にとって必須のアイテムですが
中には是非とも除去しなければならない悪い苔があるのも事実です

↓は気に入って求めたミニサイズの黒松ですが
足元付近では木肌の割れ目にまで苔がびっしりと食い込んでいます

おまけに、それらの苔が湿性なので
足元が乾きにくくいつもジメジメした感じですっきりしません

またピンセットで苔を取ろうとすると
せっかくの荒れた皮を?してしまうので、何とも始末が悪いですね

過去のつれづれ草にも書いたように
まったく湿性の苔は百害あって一利なしです


足元の下部半分くらいが湿性の苔に覆われているので
常に幹が濡れた状態になっており、木肌が腐食してしまうことさえあります


ピンセットでコケを丁寧に取り除く
木肌を傷めないようにていねいに作業しましよう


苔を取り除いた部分に石灰硫黄合剤の1~10倍くらいの溶液を塗る
木肌の割れ目の奥まで溶液が届くように、丹念に塗り込む

数日これをよく乾かすと
ジメジメした苔もいっしょに乾いて、やがて剥がれ落ちます


硫黄合剤を塗った足元の拡大図


後ろ姿

この方法は驚くほど効果があります
是非試してください

では

2015年10月1日木曜日

真柏・石灰硫黄合剤

盆栽人にとってなくてはならない消毒薬であり
また盆栽のお化粧用にも使われる石灰硫黄合剤

2010年に少量包装品の製造と販売が禁止されて以来
500mlの普及版にはお目にかかれなくなって、盆栽人にはとても不便になりました

まあしかし、ウチに見える愛好家さんたちも、知り合いを頼ったり友人同士で融通をつけたりなど
それぞれにうまく調達しているようで、代用品の薬剤に頼るほどではないようです

話は横道にそれました

今日はしばらくぶりに真柏の中品を教材にして
ジンの掃除とお化粧をしてみましょう

参照したい過去のページ(必須)      


硫黄合剤用と水彩絵の具用との皿状の器を2枚
ハケはナイロン製のもの2~3本(動物性のハケはすぐに傷んでしまう)


まず最初は石灰硫黄合剤の原液を塗ります
ジンに硫黄合剤を塗るのは木質部の腐食を防ぐのが第一の目的だからです

ポイントは、水圧ポンプやブラシで幹の掃除を丹念にやっておくこと
また、硫黄合剤が水吸いの方へ滲まない程度に乾してから塗るのもコツの一つです


ハケの毛は動物性でなくビニール製のものを、大中小の3本くらい欲しいですね
使用後によく水洗いしておけば長持ちします


硫黄合剤を塗り終わったらよく乾かすこと
現役の場合は黄色く変色しますが気にしない


次に、水彩絵の具の白(ホワイト)をホンの少々の水で溶きます
硫黄合剤をホンの少し混ぜてもいいですが、仕上がり後にやや黄色っぽさが残りますよ


水吸い部分に絵の具がはみ出さないようにていねいに


こんな具合ですね
木目の割れ目にも絵の具を染み込ませること


でき上がりました
葉の緑と真白なジンと水吸いの紅色の対比が際立ってきれいになりました

それでは過去のページも参考にしながらゆっくりマスターしてください

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