2007年7月26日木曜日

真柏の基本樹形

小品の真柏の作出は、まさに小品盆栽界の夢ですね

一年半の培養サービスでお買い上げいただいた真柏の素材
その後の姿をご紹介しましょう

山採り真柏の再現を目指し、幼い苗のうちに激しい幹模様をつけ鉢内で培養
幹模様とジンのバランスなどを考慮しながら、同時に幹を削り込んでサバも作った素材です

完成予定樹高は13.5cm、幹の迫力は満点です

夏からこの秋にかけては根作りに励み、冬越しにはかなり神経を使いました
今春に針金で整形、現在は枝葉と根の充実に努めています


昨夏切込みと鉢上げ直後の姿


2007/05/24撮影

3月に基本形を作りましたが、この時点で掛けるのは、いわゆる「荒針金・あらばりがね」といいます
細部にはあまり拘らずに、幹と枝をよく観察しながら、将来に向けての基本構図を決めます

素材から一気に「半完成品」の域にジャンプですね
これが真柏の特徴であり醍醐味でもあるんです

現在(7月)の時点では、この画像よりも枝葉が伸び
ちょっとアバレタ感じになっていますが、それは培養のうまくいっている証拠です

来春までこのまま、樹勢をあげるために芽摘みはしません


2007/05/24撮影の後ろ姿

夏中にもう一回ご紹介したいと思っています

2007年7月25日水曜日

寝坊助キンズ

春になるといっせいに新芽が吹く盆栽たちの中で
5~6月になってもいっこうに新芽を動かさないことがあるキンズ

がんらい寒さを嫌う樹種ではありますが、用心深く冬囲いをして
無事に越冬した場合でも、そのようなことがあります

みなさんも経験ありませんか
葉の色つやはいいのに、いっこうに芽を動かそうとしないキンズに困ったことって

キンズは盆栽樹種の中でも、ちょっとばかりへそ曲りで
春遅くまで、まごまごすると入梅頃まで目を覚まさない「寝坊助」なんですね

こんなときには、刺激を与えてやること
そうするとビックリして慌てて目を覚ましますよ


お客さまからお預かりしているキンズ
5月の末に植え替えたのですが、まだ眠ったまま、まだ新芽が動いていません

6月初旬、もうすぐ入梅に入るという頃でした、まったく「寝坊助」なんだから!
こんなときには「葉刈り」をします、これが刺激を与えるってことなのです


ご覧のように丸刈り

買って下さったお客さまの要望で、白線のあたりから取り木をかけて6~7cmのミニサイズにする計画でしたが
芽を動かないために施術ができないでいたんです


2007/07/10撮影

すると、葉刈り後一ヶ月も経たないで、ほら、ご覧のようにいっせいに新芽がぞっくり
不思議といえば不思議のよう

布団をまくられたように、ビックリして目を覚ましました
やっぱりキンズは「寝坊助」なんですね

こうなればしめたもの
このあとはキンズの大好きな夏の季節ですからね

すでに今年は取り木の時期を過ぎてしまいましたが
来年こそはバッチリと決めようと思っています

という訳で、今日は寝坊助キンズのお話でした

以下追伸です

葉刈りをしたキンズは水を少なめに与え、乾かしぎみに管理します
これが鉄則、よろしいですか

2007年7月24日火曜日

けやき実生二年生

初期予想と違って長い入梅になりました
たっぷりと水を吸っているおかげで、けやきの実生二年生の調子が上々

細めではあるがもともと枝別れが鋭角で、すっきりとした姿にかなりの感じだったのですが
その後の成長が目を見張るようで、すでに風格の片鱗さえも備えてきたようです

ともかくご覧下さい


現在の姿

幹もやや太ってしっかり感が出てきました
↓の5月の時点の画像と見比べれば一目瞭然ですね

ハバリ(横幅)も出て全体の姿がふっくらとし、小枝の数も倍増
小枝が増えれば葉の数も増え、太りはますます促進されるものです

2007/05/27 現在の姿


参考に過去の画像と現在のとを比べてみましょう
わずか2ヶ月の間、すごい速度の出世ですね

これくらいはっきりと実績が出ると張り合いがあります
あなたも挑戦したくなったでしょ

では

2007年7月11日水曜日

佐治川名石・一期一会

名品との出会いは一期一会という言葉で表現されますね
一生に一度のチャンス

また人は縁ともいいます
幸運に恵まれあこがれの名品をてにしたときに、縁があったんだ、と

今日ご紹介する水石は、私が20数年も前に一度出会って熱望したがそのときは果たせず
胸の中にわずかではあるが、しっかりと抱き続けてきた情熱がもたらしてくれたもの

この佐治川石は、盆栽界においてまさしく「巨人」と謳われた
磯崎種吉翁の愛された名石です

私がこの佐治川石に出会ったころには翁はまだ健在でしたが
あれから20数年の歳月を経てこの石を手に入れることができるとは

まさしく、縁としか表現しようがないほどに感無量です


佐治川石 間口56×奥行22×高さ11cm

スケールの大きな景観です
海に鋭く突き出した峻険な断崖と見立てる風景でしょう

断崖の下辺は荒波に浸食されており、洞窟状に着き抜けた奇観を前にすると
太古の昔から絶え間なく繰り返された自然の力の前に、ただただ息を呑むばかりです


佐治川特有の寂びた味わいの肌目がこの厳しい景観にぴったりです
まったくのウブ石、さすがは盆栽界の巨人と謳われた種吉翁の遺愛石です


この石の見どころのひとつ
海に突き出した岩壁の下辺が、波の浸食により洞窟状に抜けた箇所

洞窟の天井部分に刻まれた、侵食の爪痕の残る岩肌の厳しさです


この佐治川石の最大のポイント、自然界の造形の妙といえる先端部
石全体の流れと重みをこの一点が支えることにより、世にも奇抜な景が形づくられているのです


裏返した姿

ということで、ともかく盆栽屋という家業は幸せですね
20年以上も前の思いを今になって遂げ、子供のように嬉しがることができるのですから

ちなみに、この佐治川石を正式に鑑賞するには水盤を用います
機会があったらまたご紹介しましょう

では

2007年7月4日水曜日

きんず・その後

6月7日の「作る・きんず」のその後の報告です



一ヶ月前には頂上の芽だけで、他のはやっと緑の点ののようだったのが
丹精の甲斐あって、元気よく伸び出しました

もう少しできんずが大好きな夏がやってきます
それまでは入梅中の雨にあてないように気をつけましょうね

さて、伸びた芽を指で矯めてみると、硬からず軟らかからず
ちょうど針金かけの適期のようです



将来の芯にする予定の芽は残し、他の立ち芽は切り取ります
立ち芽は勢いがいいので、あまり長く伸ばすと、他の芽に行くはずの養分まで吸い上げてしまうからです

将来の芯は幹のコケ順を作るためにも、さらに太らせる必要がありますから
どんどんと伸ばして充実させます

次には枝の針金かけ

枝の流れに沿うように新芽の芽の方向を変えてやる、そういう発想が大切
松柏類と異なり、この針金によりすぐさま姿かたちを整える、そういう必要はないのです

この先、針金をかけた後も新芽の先を伸ばして充実させ
さらに元の一芽か二芽で切り込むことを繰り返して、枝作りをしていくのです

ですから、現在の針金は元の一芽からせいぜい三芽くらいまでの方向を決めてやれば十分
おおよそ一ヶ月くらい、針金が食い込みかけたころを見計らって外します

外したころにまたご紹介しましょうね

2007年7月3日火曜日

迷う・こまゆみ

Yさんからこまゆみをお預かりしています

以前にネットで買っていただいたものですが
お宅がリホーム中なので発送を延ばし、しばらくお預かりしているわけです

ところで先日、Yさんからメールがあって
白線のところから切戻してほしいとのことです

Yさんも私も、当初からちょっと首が長いかな?
そう感じていたので、一気に解決すべく思い切ったのです

そして最後に「芽が出なくても恨みっこなしです」
と添えてありました

私は思い切りのいいYさんの人柄を知っていますので
すぐさま、同意のメールをお送りし

お任せください!

と力強く請合ったという次第です


切り込みのチャンスを狙って思い切り伸ばしている姿


切断予定の白線


一、二の枝を軽く切り詰め、肝心の頭を残して最後の点検をする

やや斜めに立ち上がった足元の力と、一の枝の位置と表情が絶妙で
一の枝から右に反転した幹の模様も力に満ち、コケ順も理想的です

ところが、その上のわずかな部分に模様がなく直線的に見えてしまいます
首が長い感じもそのためでしょう

さて作業の途中で、ハサミをもったままジーット眺めていると
今までとは何かが違う! 

そういう印象がだんだん強くなりだしたではありませんか
同時に、ちょっと待てよ、という自制も芽生えてきたのです

お任せください!

とお約束した以上、何度も切り詰めようと考えたのですが
やっとのことで思いとどまり、再度冷静に観察に戻りました

現在の姿 今年の春先の姿 樹高4.5cm


今までとは何かが違う、という印象はどこから来ているのでしょう
頭を冷やし、目を擦り、今年の春先の画像と現在のそれを比べて見ました

いかがですか? みなさん

よく見ると、春先よりも直線的な部分が太っていませんか
そのため、以前よりその部分にふっくらとした感じが出てきませんか

そうです、一本は芯、もう一本は枝にと上部を思い切り徒長させたため
若い直線的な部分が太ったので、総体のコケ順に自然味が出てきたのです

短気は損気だ
冒険はしばらく見合わせよう!

このようにして、ようやっとのことで結論に達したのでした


樹高4.5cm

今週中にはYさんの手元に届ける予定のこまゆみ

徒長枝を切り詰めたので、白点のあたりから胴吹き芽が出れば最高
簡単にこちらの都合通りにはいかないでしょうが

頭の二又の向かって右を芯にすれば、曲が出ますね
また、来春もう一度徒長させて、様子によってはこんどこそ切り戻す手もあります

Yさん、お約束通りにはがあしませんでしたが
選択肢は残しておきました

ふとあるとき気がつくと
盆栽は自らの姿を変えていることがあります

それが成長ということなのでしょう
それに気がつくためには、ともかく観察ですね

ミニの名品の素質十分
ちょっと気長に培養してください

では