2013年1月30日水曜日

取り木の外し方(出猩々)Ⅱ

親木から取り外すときの傷口の処理が、大袈裟でなく、その素材のこれからの一生を左右します
明るい未来が開けていくのか、それとも、やがてみじめな晩年が待っているのか


木質部が剥き出しになっていますね
この残された木質は、ぎりぎりまで追い込んで、すっかり取り除かなければなりません

何故って?

この傷口は、その上部に盛り上がってきているカルスで完全肉巻きする必要があります

出っ張ったまま放置すると、肉巻きせず、やがては木質部が腐食し
やがてどんどん幹の上部にまで進行してしまうのです

つまり、外側からは見えなくとも
幹の内部の芯は空洞になっている、なんていうことにもなりかねません


あまり切りすぎると怖いから、5mmくらい残そうかな!?


ダメダメ、赤点の箇所がカルスだよ

このカルスがや発達してやがて傷口を覆ってくれるんだよ
だから残された木質部を削るんだよ、なるべく短く凹むように削るのがいいよ


これくらいならいいかな、もういいでしょ?

いやいや、あと1mmでも2㎜でもいいから
できるだけ削ってよ


というわけで、盛り上がってきているカルスも含めて
できるだけ凹ますように削り込みます


やや斜めから見ると、こんな感じです
これなら1年、遅くとも2年のあいだには完全に肉巻き完了します

それと、画像を撮影するのを忘れてしまったのですが
この傷口にもしっかり癒合剤を塗っておくことも付け加えます


それと、根も思い切って短めに切り詰めておくことも大切なこと
怖がって長めに残すと、樹形が完成に近づいたころに、ぴったりの鉢に収まりませんね


仕立て鉢で数年培養して木作りに励みます
一年目は枝数を多くつけておき、来年あたりから少しずつ減らして樹形を整えていきましょう


正面の拡大図

みなさん、わかりましたかー!

2~3月中旬ごろまでが、春の取り木の適期ですよ
さあ、チャレンジしてください

取り木の外し方(出猩々もみじ)Ⅰ

実生や挿し木とちがって、最初からある程度の太さと骨格をもった素材がゲットできるのが
取り木術の便利なところ

指くらいの太さは楽々の部類に入るし
時には女性の手首くらい太さの小品盆栽素材がものにできるので

このうま味を覚えたらやめられませんね
成功すれば、オイシイ、オイシイ

さて、過去にもつれづれ草で折にふれて取り上げてきた取り木術なので
重複する部分もあるとは思いますが

ちょうど取り外しの時期にある出猩々が目についたので
ポイントをオサライしてみましょう


昨年の2~3月ごろに取り木を施した出猩々の素材
太さは人差し指くらいで樹高は10cm以内でおさまるミニです

環状剥く皮(かんじょうはくひ)法で行い、ビニールポットの中には赤玉土を入れ
水苔は手術個所に巻かずに、植え土の表面を覆うようにして乾燥から守りました


発根の状態は上々です
まずは親木からの切り離しのために、下の方から根をほぐしていきます

ちなみに、これくらいの発根状態であれば、早ければ入梅か
遅くとも9月ごろの取り外しは可能です

また、今の時期を取り逃がしてしまうと
根の成長の強弱が激しくなったり、新しい根の成長が妨げられますから、今春の取り外しは必須作業ですね


親木がなかなか見えないときには、
図のように根を切り詰めながら作業を進めます

この場合は、根を切ることを恐れてはいけません
いずれはさらに短く切ることになるのですから


親木が見えたらノコギリまたは又枝切りなどでブッツリと切り離します


施術のさいに剥皮した部分に水苔を巻いていないので
水で洗うえば、根にからんだ赤玉土をすっかり取り除くことができます

水苔を多用すると、水苔の繊維が根にからんで
これからの根の整理が難航し、根を傷める原因になってしまいます


手前から

赤点の箇所が親木の元の部分で
その上の黄色の点で示した部分が、皮を剥かれて木質部が露出した部分

赤点の連続部分で上からの養分がせき止められてしまったので
生き延びるために再生能力を発揮して、このように発根するというわけですね

さて、次の項でその大切な部分の処理の仕方を勉強しましょう

では、次へ続きます

2013年1月22日火曜日

スクール速報(紅千鳥素材の改作)

新年早々の13日のスクールへ最年長のツカさんが持参したのは、↓の紅千鳥の素材
以前から練っていた改作構想らしく、えらい張り切りようで、元気いっぱい

ところで、改作途中の↓の画像では、ツカさんの目指す意図はわかりませんね
じつは私も最初はわからなかったのですが、これがけっこうおもしろい結果になりましたよ

おそらく取り木素材でしょう、普通の模様木風に枝配りされていましたが
頭の先端部分をちょん切ってしまい、さらに徒長させた枝をぐるっと回して

前から後ろへと貫通させ呼び接ぎをしました
根もずいぶんと追い込みましたね

しかし、まだこの段階ですはツカさんの意図が読めずに
他の生徒さんたちも「?、?、?」でしたよ


次にツカさんは、枝を多く残した背中の部分を上に向けて、やにわに幹を寝かせたのです
うーん、何やらまるでへたばったイナゴかバッタみたいに見えませんか(笑)

一番右側にツンと伸びた細い新芽は、貫通式で接がれた穂先です
針金のかかっている枝が、ぐるっと回った穂先の元の部分ということですね


この段階になって、やっとツカさんの構想の意図が読めてきました
そうです、紅千鳥には珍しい「筏吹き」を作ろうというねらいだったんですね


正式な植え込み前、真上からの図
この鉢に植えこむために、根を強く追い込み、先端もばっさり切りこんだというわけでした


幹の凹凸をうまく利用したので
将来盤状になる筏に変化があっておもしろいですね

ゴロ土をたっぷり入れて通常通りに植えこみました
セットした針金でしっかり固定したことは言うまでもありません

根元には水苔をあしらって
ていねいな養生も忘れていませんよ

直径の半分ほどは土の中に埋められた幹から、徐々に発根もしますし
もしそれが物足りなければ、要所に根接ぎをすれば、元の根はやがて不要になります


子幹の数が先端に偏っていますから、幹のあちこちに発根した時点で
右側にある従来の根を切り離してしまって、このくらいコンパクトにまとめててもいいでしょうね

もちろん、左側の子幹はバランスを見ながら
かなり減らすことになるとおもいます

ということで、ツカさんの発想と執念が稔った改作でした
みなさんもチャレンジしてください

取り木の容易な樹種、もみじやカエデなどで簡単にできますよ

では

2013年1月20日日曜日

寒中の植替えⅡ(寒中のムロ・放射冷却)

今日は大寒、1年間でいちばん寒い日

ビニールハウスの中にトンネルを作って、気合いを入れて早めの植替えにかかったものの
さすがにこの数日はトンネル内の温度が気になって、毎朝のチェックを怠らないようにしています


昨日の朝いちばん、冬囲いの中はとうとう零度を記録
もちろん、例年これは覚悟の上で、鉢内の凍結も想定内ですがネ


千枚通しで鉢土を突いてみると、そう深くまではいっていないけれど、凍っていることは確か
しかし、日の出とともにムロ内はすぐに10℃くらいにはなり、氷結は間もなくとけるので心配はいりません


問題は植替えたばかりの盆栽が収納されている、ビニールトンネル内の様子です
気温は同じく零度を記録していました


ところが、同じく零度の気温でありながら
トンネル内の鉢土はごらんのように、少しも凍結がないのです

指先で触れても、千枚通しで突いても
凍っている様子はみじんもありません

これは、外の冬囲いの中では、冬の晴れた夜におこりやすい放射冷却によって
気温が5℃以下に下がると、霜柱が立ちやすく

一方、トンネル内は密閉されており、毛布などの覆いが曇天の役目をするので
気温が零度まで下がっても霜柱が立ちにくいと考えられます

このように、放射冷却は冬の晴れた風邪の弱い夜に起きやすく
気温が5℃以下になると、霜が降って表土が凍結する場合があるので、これは注意ですね

この被害は、いわゆる早春のころに
ほころんだ新芽がやられる、遅霜の被害がいい例です

さて、とはいえ、トンネル内の気温が零度ぎりぎりまで下がっては
能書きばかりでは、正直少々心配になってきました


そこで、物置からブルーシートを引っ張り出して、もう一重ガードを固めることにしました
これなら気温が少々下がっても、まさか凍結はしないだろう(確信はなし)


ということで、翌朝いちばんに、ブルーシート、毛布、そしてビニールと順にめくってのぞいて見ると
オーッ、神様、ありがとう!!

外のムロは零度なのに、トンネル内は、なんと2℃もあるじゃあありませんか
ブルーシートに感謝、感謝です


ご覧下さい

ちっとも凍っていませんね
盆栽たちは元気、元気


それと、愛好家のみなさんが案外に迷っているのが冬季の水やりですが
凍るよりも乾燥の方が怖いことを肝にめいじておくこと


2日か3日に一回くらいのわりあいで、たっぷりとやりましょう
時間帯は気温の下がる夕方や夜を避けることは、言うまでもありませんね

では、もうあと半月で立春です
がんばりましょう!

2013年1月14日月曜日

寒中の植替えⅠ

昨日の盆栽スクールはよく晴れて案外気温も高くて
生徒さんたちも気合いが入ったいい勉強ができたと思っていたら

今日は朝からの小雨が、午前の10時ごろからいきなり雪にかわって
たちまち本格的に降り始めています

夕方まで降り続くという予報なので
この様子ですは数㎝は積もる勢いです

さて、私たち盆栽人は、12月の冬囲いを終って年が替われば
早くも春の植替えに思いをはせるのが習性になっていますね

ところが、寒中の植替えは凍るのが怖くて
立春(節分)頃までジリジリとしながらも我慢します

しかし、立春を過ぎるあたりから、冬囲いの中で手厚く保護された盆栽たちの芽の動きは案外早くなり
間に合わずに毎年やり残しが出てしまうものです

そこで昨年の暮れのうちから、今春の植替え始めは
2組の子供の家族がそれぞれに自分たちの住み家に帰るころ、つまり、正月の4日あたりと決めておきました

問題は場所とムロの形態ですが、いろいろな条件を考慮した結果
仕事場、物置兼用のビニールハウス内に、小さなビニールトンネルを作ることにしました

また、、おそらく、ハウスのトンネル内でも寒中には軽い程度ながら凍るでしょうから
ビニールの上から毛布などで二重に覆い凍結を防ぐことにしました

暮れのあいだに寒暖計で事前に試した結果
3~4℃の温度を保てることを確かめ

これなら凍結しない!
もしヤバイときには、もう一重の覆いをすればいいなど。私としては案外慎重に計画した感じです

そして、、もくろみ通り、幸いに3日にはみんな帰ったので(笑)
計画通りに植え替えが始まりましたよ


仕事場と物置兼用のビニールハウスの片側に作ったビニールトンネル
上から毛布、古いカーペットや布団で覆って厳重に保温しています

この状態で、早朝の温度は、暖かめの日で4~5℃
庭の水瓶の水が、厚さ1㎝ほど凍るような寒い日でも2℃くらい

大寒に向かって寒さはさらに厳しくなるでしょうが
その場合は、二重の覆いをする覚悟です

このようなビニールトンネルが、保護室として優れている点は
なんといっても、湿度を高く保つことが容易なことですね

冬の保護は、寒さよりもまず乾かさないこと
それが一番のポイントですよ


盆栽屋.comのビニールハウスは、北側のあまり日当たりのよくない場所に建てられているので
室内の温度が上がりすぎず、かえって好都合

それでも日当たりがいい日には、トンネル内の温度が上がりすぎないように、ハウスの戸口を開け
トンネルの覆いやビニールをめくって、温度調整が必要です


冬眠中の落葉樹は、うす暗い場所でも大丈夫
盆栽の幹肌の濡れ具合から、湿度が高いのがおわかりですね


置くはキンズの実生苗、寒さに弱いキンズがあのくらい緑が濃いということは
環境がいいということですね


春の芽の動きが早い樹種であるもみじや楓は、早めに植替えましょう


撮影日に庭の水瓶に厚さ1㎝ほどの氷が張りましたが
植替え用保護室内は2℃で安泰です

ゆうゆうですね
ばりばり植替えしまーす!!

ごらんのように、、寒中に早めの植替えをする方は
2つのポイントに留意すること

★ 凍らないように
★ 鉢土はもちろん、保護室の湿度を保つ工夫をすること

では、じゃんじゃん植替えを始めて下さいね!

2013年1月13日日曜日

もみじ・舞姫

秋落葉後に手に入れた樹髙3.5㎝の舞姫もみじ
画像はすでに撮っておいたのですが、この記事を書くにあたって実物が見つからない

ムロ入れのドサクサで、どこへ置いたのか行方不明になってしまったようです
やっと見つけ出すまでに、目を皿にして1時間もかかりました

水盤の中に砂を敷いた超ミニたちと一緒にしておいたのを
すっかり忘れていたようです

樹髙3.5㎝の舞姫もみじ

去年あたりからみなさんが騒ぎ始めたもみじ・舞姫
出回っているものには数年生の苗の段階のものが多いようですが

これはすでに、超ミニとして幹の骨格は一人前の風格があり
枝先にも苗木としての段階を超えた落ち着きが出てきています


正面拡大図

舞姫は山もみじ系の極小葉性なので、取り木や挿し木が可能で
少しずつ市場に出回る量も多くなっては来るでしょうが、なにせ小葉性で成長も遅々としてるので、数年は品薄状態が続くでしょう


後ろ姿


それでは実物の画像で普通の山もみじとの相違を比べてみましょう

左が普通の山もみじで、右が舞姫の挿し木3年生(今春で4年生になる)
葉の大きさと形をよく観察してください


左が舞姫で、右が山もみじ
このくらい違うんです

舞姫の方が、葉が細くて切れ込みが深く入っていますね
全体の大きさが違うのはもちろんですが、それだけではなく形そのものに相違があります

もちろん、葉の大きさや形だけでなく、枝の節間もつまって間延びがしにくいので
小さいなサイズの盆栽を作るには最適ですから

今年はもっともっと人気が出てミニの世界に普及するでしょう
もみじ好きの愛好家さんには、願ってもない朗報ですね

では

2013年1月12日土曜日

姫柿取木素材

今年はじめてのつれづれ草です

気がついてみたら、昨年の12月中のつれづれ草は皆無
新年早々怠慢の我が身を恥じてしきりに反省しているところです

今年「も」ではなく、「は」がんばりますので
お見捨てなく、どうぞよろしく


昨年の10月にPart199でご紹介した姫柿の取木素材

松戸市内の親しい愛好家・Mさんが、数年前に私のアドバイスに従って取木をかけたものです

ところが、アドバイスした方の私はすっかり記憶喪失(笑)
でも、忠実に実行した愛好家・Mさんはしっかり覚えていました

さて、譲ってもらった当初はこちら側を正面にして作り込むつもりでいたんですが
スクールのクロちゃんが、反対の正面もある、そう言うので結論は植替えまで待つことにしていました


クロちゃん推奨の正面

植替えと剪定の段階になったので、すべての葉を落としてみると
どうもクロちゃんの意見が正解のような気がしてきました

私は樹髙の短縮ばかりに拘りすぎていたようですね


まず土を全部落として根の具合を確かめます
八方から発根しており、素晴らしい根張り、これを見たから嬉しさ倍増


ここが一番の急所である台木から取り外した箇所を検証すると
1.5㎝ほどの台木の切り残しがありました


白線にしたがって切り残し部分を元までしっかり削り込みます
取木素材ではもっとも肝腎なことですから、決して手を抜いてはいけませんね


新しく見出したクロちゃん推奨の新正面です

図のように、各枝は先端に水揚げのための芽をいくつか残したままの荒切り状態にしておき
春になって芽が動き出す直前に、↓のように再び切り込み直します

その理由は、寒中よりも芽出し直前まで待って切り込んだ方が
不定芽が多く吹きやすいからです


再剪定の予定図

切り込み位置の高さは12.5㎝


骨格の予想図

こちらの正面の特徴としては、傷っけの少ないやわらかな幹模様
枝順のよさなどが上げられます


後ろ姿

みなさも姫柿の取木(環状剥皮)で、姫柿の素材をゲットしてください
このような素晴らしい模様木が短期間で手に入りますよ

それでは