2012年8月31日金曜日

けやき実生挿し木の成長 2

盆栽業界ジャンルの中でも、素材作り部門は地味で目立たない存在であり、優良素材を作るのは案外に難しく
しかも手間暇がかかるので、近年では専門家がやや減少の傾向にあるようです

ながい目でみると、このことは日本の伝統文化である盆栽界の将来に大いに影響してきます
優良な山取り素材が限られている以上、それらはいちから作り出す以外には方法がないのですからね

その点からしても、けやき盆栽は、ほとんどが実生や取木による素材をいちから仕上げるものなので
みなさんにぜひともチャレンジしてもらって、仕立方をマスターして欲しい樹種ですね

さて、8/25のつれづれ草で今年の実生苗5本をご紹介しましたが
じつは、あれらの前にもう5本の実生苗を選別し、それらを剪定したり枝分かれの矯正を行なっておきました

そこで今日は、その先口のけやき実生苗5本をご紹介しておきます

ちなみに、以下は剪定と施肥を8月の中旬に行ない
画像はすべて8月24日に撮影したものです

では


A1号苗

鋭角にすっきりと枝分かれしてます
両枝とも3節ほどで止めておきましたが、まだ芽がうごいていません


A2号苗

向かって左の枝のほうが成長がやや早いようです


枝分かれももっと鋭角になるように矯正を繰り返しましょう


2節ほど残して新しい芽を切り込みました


A3号苗

左の枝の新芽が極端に伸びています


右の枝の芽は積まずに両枝の勢いが同じになるようにします


A4号苗

左の枝のほうがが成長が早い


時間をかけて両枝のバランスをとるように心がけます
枝分かれが「カエルマタ」なので、矯正を続けましょう


A5号苗

枝分かれの角度もいいし、両枝のバランスもまあまあです


2節ずつ残して切り込みました

以上合計で10本の実生苗をご紹介しました

今後の培養のポイント

1 9月いっぱいは寒冷紗下か半日陰で管理
2 肥料は9月の末に油粕を少々
3 今年の芽摘みは、よほど伸びすぎてしまわないかぎり、行なわず
  落葉後の剪定で形を整える

よろしいですか
これらの実生苗の成長は、ときどきご紹介を続けますよ

では!

2012年8月25日土曜日

けやき実生挿し木の成長 1

春に種子を蒔き、4月の末から5月にかけて実生挿し木をしたけやき
挿し木から10日ほどかけて外気にならし、その後は他の盆栽と同じ棚の上で管理してきました

実生挿し木の様子 5/12  5/18

けやきの実生苗にとって、生まれたばかりでその身をわずか1㎝ほどから下の根をチョン切られれば
いくら再生能力が高い植物であっても、かなりの負担には違いありません

しかし、ほとんどは頑張って自らの力で切り口付近から根を分化させて必死に生き延び
この灼熱の夏を驚異的な生命力で耐えています

まだ十字葉から先に2芽が伸びていないものもありますし
1芽だけしか出ていないもの、3芽もあってそれが順調に伸びているものなど様々です

ここでは、十字葉の先に2芽をつけて、それらが5~6節伸びているものをあげ
これからの本格盆栽へのトレーニングをご紹介します

当歳苗とはいえ、すでに箒立ちの大木の片鱗を感じさせてくれます
中には大いなる素質をもった有望株もありますよ


1号苗 8/24撮影

この段階で、まだ十字葉もついています
5~6節伸びていますが、枝分かれの角度が開きすぎていますね


8/24撮影

2節残して先端を切ります
十字葉は残します


8/24撮影

両方の枝を指先で摘んで枝分かれの角度を矯正します
これでかなりの効果があります


8/24撮影

ご覧のの通りです!
繰り返しこの方法で矯正してやりましょう


2号苗 8/24撮影

十字葉も健在で、6~7節伸びています


8/24撮影

3~4節残して切ります
枝分かれの左右の角度がやや異なります

8/24撮影

やはり指先でつまんで矯正します

8/24撮影

いい角度におさまりましたね



3号苗 8/24撮影

十字葉が2枚だけ健在
長さは異なりますが、両枝ともよく伸びています


8/24撮影

太さは異なりますが、枝分かれの角度はグーですね
どちらも3~4節残して同じ長さに切りそろえます


4号苗 8/24撮影

十字葉が2枚だけ健在
長さは異なりますが、両枝ともよく伸びています


8/24撮影

これも太さは異なりますが、枝分かれの角度はグーですね
どちらも3節残して同じ長さに切りそろえます


5号苗 8/24撮影

十字葉は2枚だけ健在
左右の枝が均等の力で伸び始めています


8/24撮影

先端の芽が伸びかかっている状態なので
あと一週間くらい先になって先端を摘むことにしました

★ 以上の作業を9月中旬ごろまでに行ないます
また、作業が終了したら、初めての施肥を行ないます(油粕少々)

つづく

2012年8月24日金曜日

杜松・古葉掃除と芽摘み 2

この杜松(樹髙約10㎝)のように、枝棚もこのくらいに吹き込んでいると
ていねいに古葉掃除をおこなうと、ゆうに一日近くかかります

また、そのくらいに時間をかけて丁寧に徹底したほうが
せっかくの作業の効果が上がります


葉裏から見ます
かなりきれいになりましたね


まだ青味の残った古い葉がかなりついていますが、これらを無理に取ろうとすると細い軸を傷めるので
それらは10月の末ごろまで待って、再び掃除することにします


杜松の最後の芽摘み時期はおおよそ9月の中頃といわれています
今年の残暑は長引きそうなので、今回を含めてもう一回行えるでしょう

そうそう、ここで肥料をがっちりやっておくことも忘れないように
8月末、9月末、10月末と、あと3回の施肥です


芽摘みを兼ねた古葉掃除、完了!

作業前の画像と見比べて下さい
濃い緑に輝く葉の美しさが際立ちました


後ろ姿


真上からの画像

古葉掃除と芽摘みによって、向こうが透けて見えるようになりました
これなら風通しもよく日の光のフトコロまでとどき、胴吹き芽がしっかり育ちます

さあ、みなさんも残暑に負けずに実行しましょう!

2012年8月22日水曜日

杜松・古葉掃除と芽摘み 1

山取素材がすっかり枯渇してしまったために、なかなか優良な素材には巡り会えませんが
大物にもミニ盆栽にも向いたその特質から、杜松の盆栽界での人気は不動の地位にあります

さて、その杜松の手入れで欠かせないのが適切な芽摘み
4月頃から9月の中頃をめやすに適宜おこないますが、それと同時に古葉の除去(掃除)を徹底すると凄い培養効果をあげることができます

そこで今日は、その古葉の掃除について
しっかり勉強し、改めて効果と必要性について認識を確かにしていただきたいと思います


上から見た限りでは、芽摘みの必要性こそ感じますが
うっかりする新芽に目がいってしまい、古葉の掃除までは思いつかないことがあります


ところが葉裏から見ると黄ばんだ古葉がびっしりこびりついていますね
この古葉が通風をと日射しを妨げて、せっかくの胴吹き芽の成長のじゃまをしているのです


拡大してもっとよく観察してみます
ありゃ、こりゃひどい!


樹冠部付近の吹き込んだ棚に指を突っ込んで、フトコロの様子も観察してみます


混み合ったフトコロの中は、それでなくとも通風がわるく蒸れやすい
さあ、細かい作業で面倒ですが、ピンセットと小ハサミで古葉掃除にとりかかりましょう


ピンセットと小ハサミを使って茶色くなった古葉を取り除いていきますが
画像のように、古葉に隠れて小さな芽がけっこう吹いていますから、これらを傷めないように気をつけます

根気のいる作業ですが、頑張ります
ちなみに、剪定や針金かけなどの整姿は下(足元)からですが、掃除は盆栽の上(樹冠部)から行ないます

なぜって、ゴミが出ますから
上から綺麗にしていくほうが合理的ですね


枯れ葉はピンセットで、小さなイボ状になった複数の芽の塊などは小ハサミで
順次掃除を進めます

赤印の先に胴吹き芽がありますから
これらを傷めないように


芽止りした芽の先端はピンセットでは取り切れませんから
小ハサミでていねいに切り取る


その元に胴吹き芽が用意されていました


せっかく吹いた胴吹き芽ですが
通風がわるいために蒸れて黄色く変色してしまった

これもハサミで除去


だいぶきれいになってきましたが
せっかくですから、もっと徹底的にやりぬきましょう

一応上から下まで終わったら
もう一度上に戻って、下までもう一度仕上げ作業を繰り返せば、ほんとにきれいになりますよ

つづく

2012年8月20日月曜日

呼び接ぎ切り離し

江戸時代よりも以前、すでに戦国時代から行なわれていたという接ぎ木技法ですが
現代の盆栽人にとっても、とくに小品盆栽の愛好者には非常に大切な技法です

普通サイズの盆栽は幹の太さや葉がさなどの迫力の要素で見られるせいか
施術はそれほどには実施されていません

しかし、小品盆栽では、より造形的な厳密さが求められる傾向があるので
枝順などを整える手段としての、呼び接ぎ技法が多様されている感じです

さて、その呼び接ぎですが、案外みなさんが失敗するのが
呼んだ元枝の切り離しの急ぎすぎです

画像で詳しく見てみましょう


出猩々取木素材、今年の春の3月頃の画像です
前年の入梅頃に幹に溝を削り込んで呼び接ぎをかけてあります


拡大図

この時点では穂木の丈夫に完全に肉巻きしており
一見すると呼び接ぎ成功とも見られますが、まだ切り離しの時期には早すぎます

まず、呼んだ枝の入り口(元枝)と出口(穂木)の太さがほとんど同じですね
ということは、穂木はまだ幹とは完全に活着しておらず、まだ元枝の水揚げを必要としているのです

この段階で切り離しを急げば
せっかくの穂木が萎れてしまうこともあります

それに加えて、まだ芽の動かない休眠中に切り離しを行なうと
穂木の元気さや生育状況がわかりにくいので、もう少し我慢するのがより正しい選択です


7月19日に確認したところ
ご覧のように穂木(左)が元枝(右)よりもかなり太くなっていました

穂木はすでに必要な水のかなりの割合を
元枝よりも活着した幹から揚げている証拠です

もう穂木は一本立ちできるはずですから
この時点で元木を切り離しました

ただし、元枝はすぐに元から切らずに
後日の比較検討のために数㎝ばかり残しておきますね


8月10日撮影

一本立ちしてから20日間が経ちました
左右の枝の太さはますます差が開いています

この時点ではじめて「呼び接ぎ成功」
穂木は完全に独立した一本の枝になったのです


入り口を削って癒合剤を塗布
穂木から新しい枝へとステップアップしました

急ぎすぎないで~!
ではでは

2012年8月17日金曜日

スクール速報・くちなし

今日ご紹介するのは、ワーさんと愛培する姫くちなし
ワーさんは約1年前から熱心に通っているスクールの新人さんで、年齢は40代の半ば

とても几帳面でていねいな性分なので
盆栽のひと芽ひと芽にも注意力が及んでおり、将来を楽しみにしています

さて姫くちなしですが、去年の5月に、それまでのよりちょっと大きめの現在の一蒼鉢に入替え
樹勢をつけることに専心したきました

みなさんもご存知のように
くちなし盆栽には天敵ともいえる害虫がいますね

6月頃になるとスズメ蜂に似たオオスカシバがやってきて
気がついたときには、幼虫が葉を丸刈りにしてしまうことがしばしばです

そのため、よほどコマメにチェックしていないと
なかなかきれいに葉が揃いませんね

予防するには、6~9月ごろのオオスカシバの発生時期に
防虫ネットや金網などで覆った、箱状の避難場所を設けるのもひとつの方法です

さて、そんなわけで今年はオオスカシバの餌食にもならず、順調に葉がさがふえてきた姫くちなし
5月ごろにワーさんの持ち物になって数ヶ月が過ぎました


葉の色つやもよく葉がさもかなりふえて貫禄が出てきました

そこで、向かって左の枝に細めの銅線をかけて枝を下げました
向かって右の差した力枝は、針金で吊りをとって下方に下げました

まだ初心者のワーさんにはこのくらいが精一杯かな
それでも両枝を下げたために、木の構図にどっしりとした安定感が出て、スケールが格段に大きくなりました


正面のフトコロを拡大して眺めます
針金の掛け方が定法通りにはいっていませんが、オオメに見ましょう(盆栽の形優先です)


去年の5月ごろの画像

現在の画像と見比べてください

両方の利き枝がやや上向きなため
なんとなく木姿に重みが感じられませんね

この樹勢ならばこの夏中にもう一度芽摘みができます
そうすれば一段と葉がさもふえ、さらに重量感が感じられるようになるはずです

がんばりましょう!

2012年8月9日木曜日

散水口の取替え

一昨日が立秋だったとは言え、まだまだとても秋の雰囲気ではなく
盆栽人にとっては暑さとの闘いの毎日が当分続きそう

今年は寒冷紗の日除け設備に加えて、棚に人工芝を敷いた水対策のおかげで
水やり作業の負担はおおよそ半分くらいになり、盆栽の健康状態も順調のようです

とは言え、ちなみに申し上げると、「順調のようです」とあいまいな表現をしたのは
まだ寒冷紗の日除け設備での水やりのコツが完全に掴み切れていないので

かえって過水にならないように、かなり神経を使っている最中で、まだ自信満々とは胸を張れないからです
秋になって、「順調でした」と断言できるようにがんばります

さてそこで、今日のレッスンもやはり水やりに関係したことです


数ヶ月前に取替えた散水口の筒先

それがどこかへブツケタのでしょうか、一部が壊れてあさっての方角へ水漏れ
糸状の水の散り方にも強弱がみられますね

あなたもこんな筒先を使っていませんか? 
新しく取替えた↓の画像と見比べて下さい

新しい筒先の画像では
全体の水が平均してムラなく散っていますね

このように如雨露や散水口の筒先からは、平均してムラなく水が出るのが理想
とくに、植替えしたばかりの鉢の表面などは、このように圧力の平均した「柔らかい水」でないといけません

もったいながらずに、年に数回は取替えるように!

では