2011年7月22日金曜日

山もみじ甲羅取り木

上部の芯に近い箇所が熱を持ってしまい、瘤状になってしまった山もみじ
そのままではどうやっても復活の路は険しく、あきらめかけていたのですが

ある時、うまく活用すると甲羅吹きのミニになりそうなことに気がつき
今年の3月に取り木をかけました

このところ我がフリースクールでも、取り木ばやりでみなさん積極的ですよ
一見して欠点だらけのような盆栽でも、よく観察すれば1箇所くらいはいいところをみつけられるものです

その長所を生かして、再び人の目につく優等生の路に戻してやるのですから
これはやり甲斐のある仕事ですね

山もみじの取り木は、発根もしやすく初心者でも簡単にできますから
まだ未経験の方はぜひチャレンジして、自前の素材をゲットしてもらいたいと思います


7月16日撮影

3月の中旬ごろに環状剥皮し、切り口にたっぷりと発根促進剤(ルートン)を塗りました
発根は1ヶ月ほど前に確認していましたが、根の伸長と充実を促すために徒長枝は切っていません


ビニールポットを取り除いて発根の様子を見てみます
周囲からまんべんなく発根していますね、それに根の色つやも健康的できれいです

ところで、このあとの処置ですが、ひとによっては親木から切り離すでしょうが
今回は来春まで我慢することにしました

ここで切り離して独立させれば、親から離れた子供はいっときは夏の暑さにかなり苦しみますが
厳しい夏を越して9月ゴロになれば、かなり根も充実して一人前となり、来春早くからのスタートが切れます

反対に、切り離しを来年まで待った場合は、来年春のスタートはやや遅れます
ただし、この厳しい夏に楽ができるため、秋までにゆっくりと枝葉や根を充実させることができます

どちらを選ぶかはあなた次第ですが
あまり焦らずにゆっくりやった方が安全で成績もいいようです

生産専門のプロなどは、仕事が立て込む春先を避け
管理にやや手がかかるのを承知で、暇のあるうちに早めに済ませるんです


切り離しを来春まで我慢することにしましたが、これだけ旺盛な根をさらに充実させるために
周囲に囲いを設けて用土を入れ、根がもっと自由に活動できるような環境作りをします


囲いの中に用土を入れて表面は水苔で保護します(肥料もやってください)

あとまわしになりましたが、素材の樹形を検証してみましょう
これが楽しみなんですね


枝葉を消してボディーだけを見てみます
ボディーの寸法は約3.5の高さで、甲羅の間口は6.0㎝強あります



来春の台木からの切り離しと同時に
現在の徒長枝のほとんどは切り取って、新しく吹く胴芽に針金をかけて基本形を作ります

そう、忘れていましたが、切り離しの時の根の処理法も大切でしたね

1 根に絡んだ水苔をすべて取り除くこと(根腐れを防ぐ)

2 発根した根はできるだけ短めに切りつめること(根の分岐を促す)

3 上下に重なった根や方向の悪い根は除去すること(足元をよくする)

などに留意しましょう

では

ところで、以下は取り木法における補足の項です
ぜひ参考にしてくださいね
  



親木から取り外す時期になっても、図のように片根の場合は
切り離しを1シーズン延期して、次のような処置を施しておきます



未発根の箇所のカルスをもう一度削り直し、発根促進剤を塗ります
さらに、発根済の根をかなり短めに切りつめます

(この根を切りつめないと、これらのみ発達しすぎて新しい発根が促進されません)

そして、もういちど水苔でくるんで1シーズンを過ごします
次の切り離しのときには八方の根張りが期待できます(急がば廻れの精神)

では

2011年7月18日月曜日

スクール速報

4月の初めごろに手に入れた時点で、大きな仕立鉢にはいっていたのですが
すでに少々芽が動いていたので、自重して9号の仕立鉢に移すのが精一杯だった山もみじ(樹髙15㎝)


おそらく取り木出身であろう根の張りは申し分なく、ボディーにも枝にも力があふれ
松粕類に負けない堂々たる古木の佇まいを感じさせてくれます

このように立派なボディーを具えていなが、途中で持ち荒らした感のある盆栽を
一度素材に戻して仕立て直すのが、盆栽人にとってはたまらない喜びです


購入の時点で気になっていた問題点は

利き枝の1と2で示した枝の流れ(全体としてAのあたりへ向かった筋が正しい枝の方向と思われます)
3で示した上部のゴツイ枝の処理の2点です


1と2の小枝の処理はかなり迷うところですが、2は間違いなく残すことになるでしょう
3についてはしばらく未解決のままにしておきます


後ろ姿です

赤点で示した2本の裏枝が重複して、ややうるさい感じですね
この時点で下の枝は切ることも考慮に入っていました

という、以上のような計画段階にあって、本格的な改作施術は来春と決めていた私
ところが、6月19のフリースクールに、所有権が移転してしまったのです(笑)

ハシやんはスクールに来るたびに、観察して構想を練っていたんですね
その構想にメドがついたのでしょう、ハシやんらしくあとの仕事は早かったですよ



6/19撮影

ハシやんの改作の構想も利き枝の処理が中心です
上下の赤矢印の枝を除去し、枝の筋は赤丸方向へと流れています



6/19撮影

そしてなんと、下の裏枝をこの時点で切り取りました

大きな枝を切るには、適期とはいえ、普通ならもう少し樹勢をつけて来春に
というのがふつうですが、果断な性格のハシやんは1年間も待ちませんでした

ところあが、サプライズはその日の剪定では終わらず
つぎの週のフリースクール(6月26日)にも起こりました



この日(6月26日)のサプライズは植替えでした
ハシやんは9号の仕立鉢から、いきなり20㎝足らずのこの楕円鉢に植替えてしまったのです

入梅中に、葉刈りと同時に植替えをする盆栽人は他にもいるので、想定内の作業ともいえなくもありませんが
私は、長い盆栽生活の中でも、この時期に、ある程度以上の高レベルの山もみじの植替えは、行なったことはありません

そうなんです

私たち盆栽業者にとって、盆栽は商品でもあり生活がかかっているわけで
100%に限りなく近い確率になるまで辛抱強く待つ習性がありますが

ところが、愛好家は待ちません
往々にしてプロがついていけないほど冒険家なのです

でも、この葉色から見て
この山もみじの植替えは確実に成功すると思いますよ



6/26撮影

さて、やはりこの時点でも、ハシやんは利き枝の流れに留意しています
来年の今ごろまでには、切り込みや針金掛けなどの技術を駆使して、自らの理想の実現に邁進することでしょう



6/26撮影

後ろ姿
このたくさんの肥料にもビックリです

また、カットパスターの外側からちょっと内側あたりに、円形に亀裂が入っていますね
これは傷口の周囲にカルスが発達し盛り上がっている印し、つまり樹勢がよい証拠なのです

では
この山もみじの次に掲載をお楽しみに