2010年11月26日金曜日

楓呼び接ぎ・骨格作り

立ち上がりと幹模様の力強さに魅力のある楓
枝付が気に入らなかったで、思い切って骨格だけを残して改作中です

春の新芽を徒長させて入梅前に呼接ぎをかけ、ほとんどの枝を呼び接ぎで新たに作るもくろみです
楓やもみじは肉巻きがいい樹種なので、この技術での再生が可能なところが持ち味のひとつですね


ボディーのサイズはわずかに6.0㎝ですが、立ち上がりと幹模様の迫力はかなりで完成予想はらくらく10㎝以内
持ち込みはかなり古く、すでに木肌には古木感がにじみ出ています


今年の春の頭部の新芽を徒長させて、入梅前に3ヶ所施術しました
青線と白線が利き枝で、赤線が上部の枝です

上から下へぐるっと一回転しているのでわかりづらいですが
ともかく、上の方の枝は徒長して長さを確保しやすいので、このような方法はよくとられます


幹の側面によく切れる小ノコギリで凹型に切れ目を入れて誘引した枝をはめ込み
入り口と出口に釘を打って固定したあと、施術患部をカットパスターで保護します


約半年経過、はめ込まれた枝は胴の肉巻きの下に完全に飲み込まれ、施術成功です
出口である赤点の芽が新しくできた枝の起点になります

注意点

1 施術のさい、新しい枝の起点になる芽を、胴体になるべく近い位置に設定する
2 入り口からの切り離しは、来春の入梅ごろに新しい芽が十分に伸びきるのを確かめてから



上と下の2ヶ所の施術場所


下の枝の施術も成功しました


ただ、上の枝は失敗してしまいました

赤矢印で示したのが凹型に彫られた溝跡ですが、切り込みが浅かったのでしょう
差し込まれた枝をくわえ込まずに肉が巻いてしまいました

差し込んだ枝も成長が早かったのでしょう
胴体の肉巻きに飲み込まれる前に、それ以上の早さで太ってしまったのです


やり損なった枝は短めに切り、来期に再び施術します


現在正面の拡大図

上の赤点は新しく芯部分を形成する起点予定地
来春の切り込みで新芽が吹かなければ呼び接ぎにて芯を作ります

今回失敗した下の赤点には、もっと細めの枝を接ぐようにします
どうしても枝の欲しいところなので、必ずやり遂げなければなりません


数年後にはもっと枝数も増え、こんな感じに仕上げたいと思っています
6㎝地点で新しい芯を立替えるので、樹髙10㎝以内でゆうゆう出来上がります

みなさんも呼び接ぎにチャレンジしてみて下さい
簡単ですよ

2010年11月19日金曜日

もみじ落葉後剪定

紅葉が始まる11月の中頃から12月いっぱいくらいが雑木類の剪定適期
ともかく雑木の好きな愛好家にとっては、これからが楽しみな時期となります

葉を落とすと1年間の培養の成果は、小枝のようすに正直に現われているので
その確認の課程は胸の弾む瞬間です


愛知県のKさんの安部性もみじ

素材から半完成品の時代へと入った課程にあり、このあたりで骨格を再確認するためにも
送っていただいて私が手を入れることになりました

一見すると葉が乱れており、決して美しい感じはしませんが
芽先はしっかりしているし徒長枝もなく、全体に生気が感じられます

盆栽人にとって紅葉を美しい紅葉を楽しむのは副次的な目的であり
小枝作りが培養の主たる目標ですから、葉の状態はこの程度が平均的なところですね

今年の過酷な夏にもめげずよくがんばりました
合格!


葉を落とした姿

葉性も枝性もいい安部性だけに、頭部の徒長もさほどではなく
利き枝のフトコロの芽がしっかりしているので、容易に追い込みが可能

培養中に芽摘みや葉切り、葉透かしなどを励行し
フトコロに日と風の通るように心がけたことがうかがえます


樹形の検討をします

赤点の芽が頭部の中心(芯)のようです
一、二、三の利き枝には問題ないので、頭部の追い込みを行い図を鮮明にしましょう

また、フトコロや枝元にある不要な不定芽の整理も大切な作業です
これらを残したままであおくと、枝先などがゴツゴツになる恐れあり


不定芽の整理の仕方

枝分かれの部分にたくさんの不定芽が見られます
ピンセットや爪の先で掻き落としましょう


最小限度の予備の芽を残して整理しました


頭部剪定完成

赤点が芯、付近の白点とともに頭部を形成しています
頭部はまだ未完成であり、後々変化の可能性もあるので、やや浅めに切り込んでおきました
胴や枝元の不要な不定芽もていねいに?き取りました
これは大切な作業ですよ


右の一の枝付近

形を整えるために、ちょっとだけ軽く針金をかけました
適期ではないので強く曲げないようにします、無理をしてはいけません


二の枝付近

ここにも軽く針金かけ


作業終了図(樹髙8.5㎝)

捻りながら立ち上がった足元と、強く動いた幹模様がいいですね
一と二の枝に力があるので、勢いを感じる模様木です

それではポイントのおさらいです

1 剪定の前に、幹筋と利き枝のポイントをしっかり確認する

2 不要な不定芽は、予備の芽を残して、その他は掻き落とす

3 針金かけは最小限度にとどめる

4 未完成品は、後々の変化も見越して、やや浅めに剪定する

ではよろしく

2010年11月14日日曜日

五葉松針金かけ

先日市内の交換会をのぞいてみたら、幾つかの兄弟木の中で
ちょっと見込みがありそうなのが目に入ったので、つれづれ草の教材にと求めたこの五葉松

安価なので無理して失敗しても惜しげがないし
そのわりには幹筋がおもしろいし、葉性は太くて短く理想的です

針金かけの整形によりがガラッと姿が変わるのが松柏類の魅力なので
幹筋におもしろさがあって葉性がいい五葉松に出会ったら、練習がてらにチャレンジしてみましょう


こちらを正面にしてきたのでしょうが、植え方が反っくり返っていて不安定
上に行くに従って幹と枝が決まっておらずに、いわゆる構図が成り立っていない状態


裏から見ると足元が不安定
幹筋も変化がなくなりますね


足元の変化を見せ場にして、途中から折れ曲がった幹をさらに下方向に下げたいが、針金を巻いただけでは無理
そこで、幹の途中の前後に木ネジをぶち込んで、上の幹を引っ張り込むための支点にします


上から思い切り圧力をかけて幹を下げます
力の加わる部分に少々のヒビ割れが生じても大丈夫ですから、とにかく思い切りです

最初の姿には力枝(利き枝)がなかったてめに、構図に弾みが感じられませんでしたので
やや裏枝になりますが、太めの枝を下げて利き枝として構図に変化を出します


頭の部分をたたみ込むように針金で調整します
頭部がコンパクトになるに従い、足元から幹筋のおもしろさが目立ってきたようです


左後方のあった枝は不要になりましたので切り取ります
葉ガサが小さくなり少しさびしい感じになりましたが、すっきり感もでてきました


反っくり返った幹をやや起こした完成図(樹髙13㎝)
根上がりぎみの足元に変化があり、ジンのついた幹筋が鋭角に折れ曲がって激しさが増しました

来春にこの角度で植替えます
2作すれば芽数も増え頭部や利き枝にボリュームが増し安定感が出るでしょう

ちなみに、今頃から3月いっぱいくらいが針金掛けの適期
さあ、あなたも掘り出しものの素材を探して、チャレンジしましょう!

2010年11月5日金曜日

フリースクール速報・五葉松整形

思えばヒナさんとのおつきあいは30年になるはず
既に30代の半ばになる私の二人の子供達は、当時まだほんの幼児だったと思います

定年を控えた何年か前に、日当たりの面で物足りなかったそれまでの住居を
東からも南側からも十分に太陽の恵みを受けられる場所を探して、引っ越しました

新しい家の設計も盆栽本位で、日当たりのいい一階の居間の二階部分はすべてフラットなベランダにして盆栽置き場で
そこへ接するヒナさんの書斎は作業場も兼ねていて、最高の環境です

さて今日の話題は、その盆栽三昧のヒナさんの五葉松の模様木です



樹髙は25㎝くらい、たしか20年以上もヒナさんが培養しているはずで
葉性はもちろん枝順もよく、五葉松らしい穏やかな雰囲気をもった古木です



ところが、整っていればいるほど欠点は目につくもので、ヒナさんは悩んでいました
それは一番下の裏枝が長すぎて側面から見ると、まるでお尻が出っ張っているようなのです

正面から見ればなんの不自然さも感じられないので、少々切り詰めればとも思えますしたが
やはり持ち主としてはそうは割り切れず、やはり根本的な解決を目指しました



右下の矢印の箇所にあった二叉の片方の長い枝を切り
残した枝を左下の矢印の二箇所の針金で手前(幹側)思い切り引っ張りました

なるべく幹に近く短く見せるためです
巻いた針金だけではとても曲げきれないので、このような工夫が大切です

上の3点の矢印の箇所でも他の枝を引っ張っています
重要な整形技術ですよ



作業終了図

2010年11月3日水曜日

フリースクール・山もみじ大改作

足元にいい素質をもった山もみじの双幹
しかし、背丈が高く、上の方はいわゆる「こわれた状態」で樹勢も悪かった

ところがそのように状態が悪いときでも、この山もみじに若手のイーさんが目をつけてくれたときは
「なかなか目筋があがってきたなー」と内心驚いた憶えがあります

だから現在、このもみじはイーさんの所有になっていて
今年の春に根洗をして植替えたら、いいあんばいにうまく勢いがついてきました

入梅ごろ、ぐんぐん勢いがよくなってくるのを、来るたびに観察していたクロちゃんが
「早く切ろうよ、早くきろうよ」とせかします

どちらかというと慎重派の私は、「もう少し勢いをつけて、来年まわしでもいいんじゃん」でしたが
とうとう「じゃーあ、やるか」とゴーサインを出しました

実際の作業はイーさんの代理で大先輩のクロちゃん
大胆かつていねいな仕事ぶりには信頼でるものがあります

ところで、スクールの先輩後輩が盆栽を縁に仲良くなれるって
指導者の私にとってこんなうれしいことはない、日頃からそう思っています



入梅に大胆に切り込んだあと、芽摘みをせずに徒長させたまま
元気よく伸びてくれました

スクールの先輩達にとっても気になる盆栽らしく
みなさん手にとってよく見ていますよ



主幹の上部はもともとやや上向きの枝だったのですが、これからは重要な芯として活用するわけです
来春には二つの赤点あたりから切り込んで新しく芯を立てますが、おそらく下の赤点となるでしょう

子幹にある強い枝は赤線からややえぐるように切り込みましょう(来春)
芯は赤点あたりからの芽を活用します



ボディーだけを見てみると骨格がよくわかります
きれいに裾を引いた足元が出色ですね



ちょっと画像のピントが外れていますが、傷の処理についてひとこと

山もみじや楓など肉巻きのいい樹種においては、完全に肉巻きする前にカットパスターを取り去ること
というのは、長く貼ったままでいると肉が巻きすぎて、その箇所が盛り上がってしまうからです

では、この素質満点の山もみじは、創作の課程を随時追っかけてみなさまにお知らせするつもりです

よろしく