2018年6月19日火曜日

取木発根!

3~4週間ほど前から施術にかかった舞姫の取木。けっこう雑用にも追われたりしている毎日なので、いまだ予定の半分も済んではいませんが、ともかく今月いっぱいに馬力をかけてケリをつけるつもり。とは言うものの、やれるかな!?
ところで取木は、入梅前の春の新葉が固まったころ(5月末)から今頃(6月いっぱい)までに手術するの一般的ですが、まあ、比較的発根の容易な舞姫もみじはそれほど神経質にならなくていいと思いす。少々時期を早めたり、ぎりぎり夏にずれ込んだり、それでも何とかなるでしょう。
さてさて、そんな訳で数日前に棚に並べた舞姫の一群の足元を「まだ早いだろうな?」と思いながらふと覗いてみると、施術の順番どおりに並べた先頭のほうは、ご覧のように既にモヤシのような発根が見られるではありませんか!

ビニールで覆った土手の内側にこのような太いモヤシのような発根が見られれば、環状に剥皮(はくひ)した箇所にはカルスも十分に形成されており、そこから根が活発に分化されているはずです。

もやしのようなきれいな根っ子が勢いよく飛び出してきています。毎年見慣れていても、やっぱり感動します。植物の再生の息吹、生きる力、まさに命の拡大作用ともいえる光景ですね。

最初は真っ白で日が経つと次第に充実して木質化とともに茶色がかってきます。

このくらいの出方では、おそらくこの一日か二日で飛び出してきた根でしょうね。根の動きは思いのほかに素早くて、数日間であっという間に様子が変わって見えることなどしょっちゅうです。

ところで、親木からの引き離しのタイミングと根の処理の方法ですが、人によって様々です。そこで今年はちょっと冒険心を出して、手抜きの三段跳びで、とにかく早めをキーワードにして、その通りに実行したいと思っています。続編をお楽しみに。

2018年6月16日土曜日

捩幹ざくろ開花

捩幹ざくろは幹も枝も、成長とともグルグルと捩れる性質を持っています。さらに、水吸いの縦方向の独立性が強く、横方向、つまり両隣からの養分の移動がかなり少ないのです。ですから、例えば他の盆栽樹種(もみじ・かえで)などでは、大きな枝を切った場合でも葉で作られた養分や根から吸い上げた水分などが、上下左右の四方から傷口の治癒のために応援が駆けつけます。
しかし、捩幹ざくろの場合は、左右の水吸いは知らんぷりされて援助なし。ですから太い枝を切れば、盆栽の場合ほとんど例外なく、その下方が螺旋状に焼け込んでしまいます。この点が石榴盆栽の培養上で忘れてはならないポイントです。

樹高15cmの捩幹ざくろ

ミニ盆栽として流通する捩幹ざくろは少ない。このミニ盆栽は5年ほど前に筆者が手に入れて、まだ素材の段階であったのをようやく盆栽らしくここまで培養したものです。

どっしりと構えた足元の力強さはミニながらけっこう迫力あり。一、二、三と枝順もしっかり整い、各枝に力強さも具わっていて、全体としての構図にも動きがあります。

10日ほど前に開花。緑色の葉と橙色の鮮やかな実の対比が、初夏の陽光の元で鮮やかに輝きを見せて新鮮です。木肌の質感も雅味があってそれも魅力のひとつとなっています。

ところで話題は代わりますが、捩幹ざくろの幹は右(時計回り)ですか、それとも左回り(反時計回り)ですか、皆さん知っていますか?
捩幹ざくろの幹は足元から芯に向かって時計と反対回り、つまり左巻きに捩じれています。その他ツタ類などの植物でも捩じれる性質のものは、その樹種によって右巻きか左巻きに決まっているそうです。つまり、捩幹ざくろはすべて左巻き、ということです。

後ろ姿
傷っけはまったくありません。

幹の捩じれが左巻き(時計の針と反対回り)になっていますね。この捩じれが他の植物(つる性のもの)によっては右巻き(時計回り)という場合もあるそうです。自然界は不思議ですね。

ちなみにこの現象は、台風が北半球では左巻きで南半球では右巻きになるという、地球の自転とは無関係だそうなので、物理学(コリオリの力)で説明するまでもなく、植物学の問題だそうです。(笑い)

2018年6月9日土曜日

草もの盆栽

盆栽をジャンル別に分類する方法はいくつかあります。ごくオーソドックスに樹種別から、松柏類と雑木類の二つに別けて、さらに雑木類の中から、花や実を観賞するのを主力にする花ものや実もの盆栽をそれぞれ独立させます。すると、松柏類、雑木類、実もの類、花もの類と別けて、そこへもう一つ、草もの盆栽というジャンルを加えると、オールキャスト5部門になるわけです。

斑入り風知草

ただし、盆栽屋とか愛好家が草もの盆栽と言うと、それはほとんど盆栽を引き立てるための、つまりは添え草という感覚で作っているものを言いますね。主木(しゅぼく)に対する添え物(そえもの)、つまり副次的なものという感覚です。
そして、ここで言う草もの盆栽の役目は、一点飾りでも中品の三点飾りや小品の席飾りにおいて、あくまで季節感や席の雰囲気作りをもっぱらとする脇役にあります。

紅風知草
ですから、鉢の大きさも常に主木(しゅぼく)の大きさとのバランスをとるようにしておき、ほとんどの場合は草が大き過ぎないように心がけています。大きさは鉢に対する配慮だけでなく、全体の勢い(元気)にも配慮して、ボリューム的にも抑えぎみの作柄を心がけた方がいいと思います。あまり元気が良過ぎると夏の叢(くさむら)の雰囲気になってしまって、情緒が薄れてしまいますね。

照り葉のいばら
季節感の演出などが主な目的となると、種類は多いにこしたことはありません。まったくの草でなくとも長寿梅や野ばらのような、株立ち風な樹形になりやすい、草と木の中間のような樹種もお勧めですね。その他にも、ずいな、はぜ、木瓜、竹、笹・・・・。挙げてみればきりなく出てくるでしょう。

お勧めしまーす、草もの盆栽!
廉い費用で楽しめまーす!



2018年6月2日土曜日

山もみじ・正統派模様木

もっとも好きな樹種の一つである山もみじの、ちょっとばかり自慢のできるやつに出会えました。このクラスを逃すと後から夢に出てきてなかなか往生が悪くなるので、こんな場合は話がこじれないうちに商談は即断即決するのが定石であり、精神衛生上にも健康的であります。
さて、ご覧のように模様はきつ過ぎず緩るすぎず、足元や幹もかなり太くて力があるけれど、太すぎてグロテスクだとけちをつけられるほどでもない。まずはバランスの取れた正統派模様木で、品格も備わっています。

ところで、今までの所有者がこの山もみじを仕立てている道程で、まだ素材の段階だとご自分にいい聞かせていたと強く推測できることがあります。それらは、例えば間口も奥行きも深さも、かなりサイズのゆったりした鉢を使用しているところでしょう。5年から10年先の将来に期待しているはずです。

根張りから立ち上がって最初の模様の位置に一の枝、次の強い模様の位置に二の枝、次の模様に三の枝と、この三段階の幹の動きとコケ順が理想的です。まさにこの山もみじの最大の美点はこのあたりに集約されていると言えるでしょう。

やや上方からの鳥瞰的な角度から眺めてみましょう。この画像から見ると、根張りのよさが目立ちますが、それも単なる整ったきれいさでだけではなく、躍動感にあふれた力強い生命力の裏づけ十分です

ちなみに、整い過ぎてきれいなだけの根張りというのも見飽きるものであって、やはり根に動きがあって、しっかりと大地を掴んだ実感が伝わってくるようなデリケートな動きが欲しいですね。そんな高度な要求さえも満たしてくれる素晴らしく有望な素材です。