2018年10月30日火曜日

もみじ・台風の塩害

10月初旬の台風24号は、特にその進路の東側にあたった地域に強い塩害をもたらしたようです。当初被害は、一見雑木類にのみ及んだように見えましたが、松柏類でも潮風に強い黒松などは例外として、高山性の五葉松などには今頃になって少なからず影響がみられるようです。

小枝作りの段階に入っている古木は肥料を控え目にしているので、樹勢(ジュセイ)が抑えられています。そのため塩害による葉の痛みがやや見られます。しかし、来襲時期が植物の成長期にあたる夏でなくて幸運でした。やや休眠期の近い時期だったので、葉の痛み具合がこの程度ですんだようです。

台風の来襲わずか前に軽い葉透かしと葉切りをやった記憶があります。軽くでよかった!

塩害による葉の痛みが見えますね。でもこのくらいは軽傷です。知り合いの、海岸線に接している町の愛好家さんの雑木類などは、塩害と風害のダブルパンチで葉がほとんど落葉してしまったのもありましたね。

塩害に遭わずにもう少し葉が多めについている例年ですと、なるべく11月まで待ってから葉落としと小枝の剪定を行いますが、その作業は選定しても樹液が吹かない12月の中旬までに切り上げます。

ところが、今年のように塩害にで葉の数が極端に少なくなった場合などは、少々早めの剪定もやむを得ないでしょうね。盆栽棚のメチャクチャ感がいつまでも片付かなくてはストレスがたまります。

樹高は約16㎝ほどの本格模様木。向かって右の一の枝に力がありやや双幹体の雰囲気もあるので、そのあたりが個性となっているようです。

制作過程での古傷はすべて肉巻きして、あと数年で完成の領域に入っています。古い持ち込みによって力強く発達した立ち上がりと木肌の古色感がみごとです。

塩害から盆栽を守るポイント

1 台風の風雨に当てないように避難する。
2 風雨に当ててしまった場合は、水やりを繰り返して鉢内の塩分濃度をうすめてやる。
3 葉の表裏全体をよく水洗いする。


2018年10月21日日曜日

平安東福寺の落款

平安東福寺の落款についての話題に触れるとなると、ちょっとやそっとの紙数では間に合わなくなるでしょう。東福寺が用いたその種類の多さや、捺し方の特徴などにしても簡単に話題はつきません。
平安東福寺でもっとも知られた落款といえば、東福寺と記された楓の葉でしょうね。次には手書きの落款や縦に小さく東福寺と印したものが代表的な落款といえるでしょう。反対に希少な落款としては「ふくべ」などが有名でしょうか。

ところで今日ご紹介するのは、東福寺の落款の中でもその稀少性においては最右翼に属するもので、ほとんどのひとが見るのが初めてという代物です。

東福寺と印されたこの小さな落款は、東福寺のいくつかの落款集においても確かに紹介されております。それらによると、東福寺鉢によくある一つの鉢に複数の落款が押されている場合には、添えの副款(ふくかん)として用いられることが多く、単独での使用例はめったにないということです。ところがこの白釉の丸鉢においては珍しく単独での使用となっています。私にとってもこの楕円の落款だけが捺されている東福寺は初めてです。

志野焼風の渋い氷列の釉薬と素朴なボディーの形状が新鮮なイメージです。この鉢の以前の持ち主はIさんとおっしゃる私よりもひと回り年上の愛好家さんで、骨董にも目の利く方でしたので、鉢の鑑定をめぐってのよい喧嘩相手でもありました。

水穴と比べても落款の寸法が小さい認印風なのがわかりますね。約一年ばかり前に亡くなったので、今ではIさんを思い出す懐かしい遺品となってしまいました。

この角度から見ると東福寺と上から読めます。

氷列がくっきりとして、穏やかな釉薬の雰囲気にある種の緊張感が感じられます。使い味もなかなかのですね。

という訳で、珍しい落款の東福寺鉢のお話でした。



2018年10月17日水曜日

超ミニ盆栽作り方

樹高はほんの数cm、鉢もご覧のとおり小さいものは小指の爪ほど。小品の中でも上にいくつも超がつくほどに小さいのが超ミニです。今ではミニ盆栽とか超ミニ盆栽と呼ぶようになりましたが、昔は「豆盆栽」と呼んでいました。
仕立てやすい樹種は挿し木や取木や根伏せなどで、繁殖の容易な樹種が向いています。松柏類なら真柏、杜松、檜、杉など。雑木類や実物、花ものはさらに多くの樹種が挙げられます。
竜神づたの超ミニです。挿し木で感嘆に活着するので超ミニに向いた樹種です。成長が極端に遅いので、挿し木苗を数年仕立て鉢で肥培してから似合いの鉢に植え付けます。幹や枝に針金を掛けなくとも自然に面白い姿に成長してくれます。濃い緑の夏の葉がみどころですから、鉢は白や薄い水色や黄色などが似合うでしょう。樹高4.5cm。

実生かりんの根を挿し木(根伏せ)して作った懸崖式の樹形。足元から幹筋にかけて人工では表現できない微妙で自然な味わいが感じられます。上下4.5cm。

盆栽スクールの最ベテランのクロちゃんが、本来は捨ててしまう剪定した小枝の屑の中から、ちょっと格好のイイのを選んで挿し木して仕立てた超ミニ。年数はまだまだかかりそうですが、足元のあたりがもっこりとボリューム感が出ており、大木然とした雰囲気を匂わせています。3年先がたのしみですね。樹高5.5cm。

くちなし超ミニ、樹高6.5cm。細葉の姫くちなしの小枝の先端からの挿し木苗を鉢に入れれば立派なミニ盆栽のできあがり、と言いたいけれど、このように足元に微妙な模様と力量感が感じられるまでには数年の培養が必要です。棚に寒冷紗の日よけや人口芝を敷くなどの工夫をして夏場を乗り切ります。とにかく自分の赤ちゃんを育てる心がけで面倒をみましょう。
それと日ごろから、指の爪ほどの大きさの可愛らしい豆鉢の調達を忘れないように。

2018年10月11日木曜日

けやき箒作り逸品

先日ある交換会へ遊びに行ったおりに、立ち上がりの幹径が2.2cmくらいで樹高14cmのけやきの箒作りに出っくわしました。ごらんの通りの足元の太さで、枝分かれもこんな感じに巧みにこしらえてあって、もちろんAクラスの筋ものです。

ところで、先日関東を急襲した台風24号がもたらした塩害は内陸部までも影響をもたらしましたが、このけやきは葉がしっかりと固まっていたせいで、ご覧のとおりぶじでした。

この秋は天候が不順で日照不足が続いているので、覆いかぶさった外側の葉を半分くらいに切ってフトコロに日光が入るように調整しておきます。普通は5~6月ごろに芽摘み、葉透かしなどと同時に行う作業ですが、今年のように秋晴れの爽やかな日の少ないときにも効果のある作業です。

フトコロがずいぶんと明るくなって枝の内側にも日光がはいるようになりました。小枝の先端についている芽は、葉が落ちると冬芽になって来春まで越冬するわけですから、今のうちにたっぷりと日に当てて充実させておくことが大切ですね。

後姿です。そうそう、もうひとつ大切なことがありましたっけ。もう10月も中旬ですから、そろそろ本年最後の肥料をやりましょう。今年のように雨の多い秋は鉢内の肥料が流れ出して、意外と肥やし切れになっているものなのです。