2010年12月24日金曜日

けやきは日本人にとってもっとも親しみやすい樹種のひとつであり
日本の穏やかな里山の風景によく似合います

そして、けやきの盆栽樹形といえば、なんといっても足元から直立し
幹の途中で二叉か三つ叉に分れた枝がさらに枝分かれを繰り返し、はるかに高い梢の先で細かく分岐した、いわゆる箒作りにつきます

他の樹種と違ってけやきは、箒作りに始まり箒作りで終わるといっても過言ではなく
まさに、この樹形がけやきの基本形であり究極の姿でもあります

他に松柏類では、杉がこのような部類に属しますね
杉の模様木や懸崖なども見たことがないですね(笑)

ところで、ひとくちに箒作りといっても、その総体の形からの連想による呼び名であって
細部についての決まりはなく、最初の枝分かれの形状や本数など個々にはかなりの相違があります

それでは、幾本かのけやき箒作りを例にとって
それぞれの特徴を検証してみましょう

 
けやき箒作り1
樹髙9.5㎝

サイズのわりには太めの逞しい足元をしています
最初に分れた右の枝はあまり太くなく鋭角に立ち上がり、芯はそのやや上で大きく二叉に分れて分岐を繰り返しています

ですから、総体としては箒作り樹形ですが
一の枝分かれにが低いために全体の姿に弾みが感じられます


箒作り樹形の最初の枝分かれは、ふつう樹髙の三分の一くらいですが
このけやきは四分の一に近いため、腰が低くどっしりとした安定感があります


実生した搭載苗のゴボウ根を入梅前に切り、再び挿し木をしてサイズを短縮した素材なので
足元の安定感が抜群で、立ち上がりも真っ直ぐです


鋭角に分れた枝分かれもけやき箒作りの見どころです
ちなみに、冬期に限る針金かけもこのように、できるだけ緩めにかけましょう


上部に行くに従って枝数はだんんだん増え、繊細な枝先へと向かっていきます


梢の先端の拡大図です
繊細な先端も落葉後には二叉に整理し、混みすぎないように秩序を保ってやりましょう


梢の先端の拡大図です
針金は春の芽だし寸前に外します

 
けやき箒作り2
樹髙11㎝

左右均等に枝分かれした典型的なけやき箒作り
しかし、平凡になるのをさけるため、左の芯をやや高めに伸して姿に動きを出そうとする工夫がされています

けやきらしいのびのびとした姿が見どころです

 
けやき箒作り3
樹髙9.0㎝

最初に分れた枝を独立させ、ふつうの箒作りとひと味違う張りを持たせていますね
すっくと天に向かって立ち上がった凛とした個性が光ります

いかがでしたか、みなさん?
ひとくちに箒作りといっても詳細に検証してみると、それぞれに個性的ですね

近所にけやき並木のある方はその一本一本を観察してしてみましょう
枝分かれの形状や梢の先端の細かさなど、それぞれに個性があり、勉強になりますよ

それでは

2010年12月23日木曜日

冬囲い作業

例年にくらべてやや遅めの冬が囲い作業を、先週の18日(土)行いました
11月末から12月中旬にかけての冬の入り口が暖かったためです

盆栽仲間たちの多くも、例年よりも2週間から3週間くらいのズレを心がけたそうで
やはり、2~3回強い霜に当ててから囲うという鉄則には忠実に従っているようです

強い霜に当てて完全に冬の到来を実感させるのは
盆栽の季節感を狂わせないために非常に大切なことですね

さて、いつものように市内の友達の大山さんと宮山さんの二人が手伝いに来てくれて
慣れた手順で作業はすいすいと進みました


まずは棚の盆栽をすっかり片づける
我が家ではこの棚下の空間をもムロとして活用します


小品盆栽用の移動式の棚をタワシで水洗い
1年間の水垢の汚れを落とさないと木の棚はすぐに腐ってしまいます

毎年2回くらいは掃除しているので
写真の棚は20年以上使ってるんですよ


骨の折れる棚掃除は私の仕事
お手伝いはコンビを組んでムロ組み立て作業は順調ですが、私はひとりでタワシで棚磨き(;´д` )


小品盆栽用のムロは組み立て式
コンビで仕事をすると能率が上がります


棚下の周囲の三方をコンパネとビニールで囲い、南側には巻き上げ式の扉をつけます
寒中の一時期には鉢土が軽く凍ることもありますが、これくらいの方が過保護になりません

2010年12月13日月曜日

楓甲羅吹き・骨格再認識

芽摘みや葉透かしなど恒例の手入れを繰り返していて、何年も経ってふと気がつくと
基本の骨格をいつの間にか見失っていていることがあります

この楓甲羅吹きも入手しておそらく3年ほどになると思いますが、芽摘みや葉刈りや葉透かしなど繰り返しきたので
かなり小枝が増えたし古色感が出てきて、落ち着きと貫禄が感じられるようになりました

しかし、落葉後にまじまじと眺めてみると、今年は将来の大きな飛躍に備えるべき時期のようで
ここでじっくりと基本の骨格を再認識し、思い切った整枝を実行することにしました

それでは、入手した当時の新鮮な感じを取り戻してチャレンジしてみましょう
みなさんは前回の「楓・三歩前進二歩後退」の続編と思って勉強して下さい


落葉後の姿

今年も、芽摘み、葉刈り、葉透かしの、雑木類の重要な三つの手入れは真面目にやってきましたが
枝のバランスが崩れたり枝数芽数の多すぎる箇所も目立っています


赤点は芯です

1    芯の手前に小枝や芽が集中しています
     枝を整理しないと幹に熱を持ってしまい、コブ状になる恐れもあります

2    右方向への流れと広がりを表現する大切な枝ですが、ちょっと長いかな

3と4  同じく左方向への流れと広がりを表現しながら、主幹を引き立てる役目の大切な子幹2本
     動きを表現しながらも、なるべくコンパクトにまとめたいと思います


1の箇所の拡大図
芯の手前の背中に当あたる部分をまとめて除去(赤点は芯で白点は活用する枝)


取り除きました
二叉に分岐した左が芯で右は裏枝として活用する


主幹の剪定のあらかたは終了しましたので、左右の子幹の剪定にかかります
子幹を剪定する場合は、主幹とのバランスと全体の流れと広がりを強く念頭においてください

株立ちや寄せ植え盆栽のポイントは、主幹はもちろんですが
子幹の左右への流れや広がりによりその景色に、動きと変化を出すように心がけることです


主幹とのバランスを見ながら左右の子幹を剪定しましたが
まだ赤点で示した3点に問題が残っているようです

右の赤点の子幹の枝が長すぎるようだ
左の2点の子幹が直線的で全体の流れを固い感じにしている


剪定完了

主幹を中心に左右に流れと広がり感が演出されました
また、主幹の後ろにある小さな子幹は、遠近感を出すために決して大きくしないこと

樹形がコンパクトになったため、鉢が大き過ぎる感じになってきました
数年は培養本位のためこのままで行きますが、将来はもっと浅めの鉢を考えています

では

2010年12月2日木曜日

楓・三歩前進二歩後退

三歩前進というとうれしくなるが、そのあとに二歩後退とくると、あれあれと思ってしまいますが
雑木の落葉後の剪定は、せっかく元気に繁ってにぎやかになった枝や芽を減らす作業なので、それなりに思い切りが入りますね

でも、とくに5~7分目くらいの完成課程にある雑木類は
枝の基本作りや不要枝の整理などを毎年ていねいに行う必要があります

ですから、この場合、二歩後退とは単に葉がさが減ることをいうのであって
差額の一歩の前進は、大きな大きな一歩となるのです

盆栽は絵に描いたように、とんとん拍子に苦労なくできあがるものではありません
三歩前進二歩後退を繰り返すうちに、苦労の末に筋道がついてきて

気がついたらいつの間にか古色感も身についていた
そんな感じで盆栽に接するのも大切なことです


さて、この楓甲羅吹きも愛知県のKさんの所有物
先日の「もみじ落葉後の剪定」と併せてお読み下さいればよろしいかと思います

生育期間の手入れ(芽摘み、葉透かし、葉刈り)、また水や肥料の培養管理もうまくいったようで
枝先の勢いが過剰ではなく、芽や枝は適度な元気さを保ち、まさに三歩前進の感じです


後ろ姿


しかし、枝の細部を検討すると、二叉の枝分かれが基本形のはずが、赤点のように三つ叉だったり
徒長して伸びすぎた小枝や不定芽もあり、時間をかけて徐々に剪定しなければなりません


中には強すぎる枝(赤点)もあります
このような枝は周囲とのバランスによっては途中から切り取り、やわらかい枝に切替える必要もあります


ざっと主幹の剪定が終わった時点で、総体の姿を点検してみましょう
頭部に枝や芽が徒長して団子状になり、このままでは将来のためになりません


側面の角度より

赤点あたりを新しい芯として、団子状の従来の頭は外すことにしました
これも案外勇気の要る仕事ですよ


幹筋の線がすっきりと見えてきましたね
素材の頃から完成までには、何度か経験することになる芯の立替えです


同じような感じで利き枝の剪定も行います
枝作りの基本は「左右に二叉」ですね、根気よくこれを繰り返して剪定を進めます

赤点の枝は、現時点では除去するには迷いがあります
ですから、途中で止めておき一年後に再検討することにします

このように、現時点では結論を出さずに保留する自制心も大切
このことも覚えておいてください、「急がば回れ」ですね

一応これで剪定終了


後ろ姿

さて、三歩前進した楓の甲羅吹きも、大幅な剪定により二歩後退した感じですね
しかし、芯の切替えや不要枝の剪定などにより、将来に向けての樹形の基本が再検討されたので

差し引きでは大きな一歩を記録しました
来年が楽しみです

2010年11月26日金曜日

楓呼び接ぎ・骨格作り

立ち上がりと幹模様の力強さに魅力のある楓
枝付が気に入らなかったで、思い切って骨格だけを残して改作中です

春の新芽を徒長させて入梅前に呼接ぎをかけ、ほとんどの枝を呼び接ぎで新たに作るもくろみです
楓やもみじは肉巻きがいい樹種なので、この技術での再生が可能なところが持ち味のひとつですね


ボディーのサイズはわずかに6.0㎝ですが、立ち上がりと幹模様の迫力はかなりで完成予想はらくらく10㎝以内
持ち込みはかなり古く、すでに木肌には古木感がにじみ出ています


今年の春の頭部の新芽を徒長させて、入梅前に3ヶ所施術しました
青線と白線が利き枝で、赤線が上部の枝です

上から下へぐるっと一回転しているのでわかりづらいですが
ともかく、上の方の枝は徒長して長さを確保しやすいので、このような方法はよくとられます


幹の側面によく切れる小ノコギリで凹型に切れ目を入れて誘引した枝をはめ込み
入り口と出口に釘を打って固定したあと、施術患部をカットパスターで保護します


約半年経過、はめ込まれた枝は胴の肉巻きの下に完全に飲み込まれ、施術成功です
出口である赤点の芽が新しくできた枝の起点になります

注意点

1 施術のさい、新しい枝の起点になる芽を、胴体になるべく近い位置に設定する
2 入り口からの切り離しは、来春の入梅ごろに新しい芽が十分に伸びきるのを確かめてから



上と下の2ヶ所の施術場所


下の枝の施術も成功しました


ただ、上の枝は失敗してしまいました

赤矢印で示したのが凹型に彫られた溝跡ですが、切り込みが浅かったのでしょう
差し込まれた枝をくわえ込まずに肉が巻いてしまいました

差し込んだ枝も成長が早かったのでしょう
胴体の肉巻きに飲み込まれる前に、それ以上の早さで太ってしまったのです


やり損なった枝は短めに切り、来期に再び施術します


現在正面の拡大図

上の赤点は新しく芯部分を形成する起点予定地
来春の切り込みで新芽が吹かなければ呼び接ぎにて芯を作ります

今回失敗した下の赤点には、もっと細めの枝を接ぐようにします
どうしても枝の欲しいところなので、必ずやり遂げなければなりません


数年後にはもっと枝数も増え、こんな感じに仕上げたいと思っています
6㎝地点で新しい芯を立替えるので、樹髙10㎝以内でゆうゆう出来上がります

みなさんも呼び接ぎにチャレンジしてみて下さい
簡単ですよ

2010年11月19日金曜日

もみじ落葉後剪定

紅葉が始まる11月の中頃から12月いっぱいくらいが雑木類の剪定適期
ともかく雑木の好きな愛好家にとっては、これからが楽しみな時期となります

葉を落とすと1年間の培養の成果は、小枝のようすに正直に現われているので
その確認の課程は胸の弾む瞬間です


愛知県のKさんの安部性もみじ

素材から半完成品の時代へと入った課程にあり、このあたりで骨格を再確認するためにも
送っていただいて私が手を入れることになりました

一見すると葉が乱れており、決して美しい感じはしませんが
芽先はしっかりしているし徒長枝もなく、全体に生気が感じられます

盆栽人にとって紅葉を美しい紅葉を楽しむのは副次的な目的であり
小枝作りが培養の主たる目標ですから、葉の状態はこの程度が平均的なところですね

今年の過酷な夏にもめげずよくがんばりました
合格!


葉を落とした姿

葉性も枝性もいい安部性だけに、頭部の徒長もさほどではなく
利き枝のフトコロの芽がしっかりしているので、容易に追い込みが可能

培養中に芽摘みや葉切り、葉透かしなどを励行し
フトコロに日と風の通るように心がけたことがうかがえます


樹形の検討をします

赤点の芽が頭部の中心(芯)のようです
一、二、三の利き枝には問題ないので、頭部の追い込みを行い図を鮮明にしましょう

また、フトコロや枝元にある不要な不定芽の整理も大切な作業です
これらを残したままであおくと、枝先などがゴツゴツになる恐れあり


不定芽の整理の仕方

枝分かれの部分にたくさんの不定芽が見られます
ピンセットや爪の先で掻き落としましょう


最小限度の予備の芽を残して整理しました


頭部剪定完成

赤点が芯、付近の白点とともに頭部を形成しています
頭部はまだ未完成であり、後々変化の可能性もあるので、やや浅めに切り込んでおきました
胴や枝元の不要な不定芽もていねいに?き取りました
これは大切な作業ですよ


右の一の枝付近

形を整えるために、ちょっとだけ軽く針金をかけました
適期ではないので強く曲げないようにします、無理をしてはいけません


二の枝付近

ここにも軽く針金かけ


作業終了図(樹髙8.5㎝)

捻りながら立ち上がった足元と、強く動いた幹模様がいいですね
一と二の枝に力があるので、勢いを感じる模様木です

それではポイントのおさらいです

1 剪定の前に、幹筋と利き枝のポイントをしっかり確認する

2 不要な不定芽は、予備の芽を残して、その他は掻き落とす

3 針金かけは最小限度にとどめる

4 未完成品は、後々の変化も見越して、やや浅めに剪定する

ではよろしく

2010年11月14日日曜日

五葉松針金かけ

先日市内の交換会をのぞいてみたら、幾つかの兄弟木の中で
ちょっと見込みがありそうなのが目に入ったので、つれづれ草の教材にと求めたこの五葉松

安価なので無理して失敗しても惜しげがないし
そのわりには幹筋がおもしろいし、葉性は太くて短く理想的です

針金かけの整形によりがガラッと姿が変わるのが松柏類の魅力なので
幹筋におもしろさがあって葉性がいい五葉松に出会ったら、練習がてらにチャレンジしてみましょう


こちらを正面にしてきたのでしょうが、植え方が反っくり返っていて不安定
上に行くに従って幹と枝が決まっておらずに、いわゆる構図が成り立っていない状態


裏から見ると足元が不安定
幹筋も変化がなくなりますね


足元の変化を見せ場にして、途中から折れ曲がった幹をさらに下方向に下げたいが、針金を巻いただけでは無理
そこで、幹の途中の前後に木ネジをぶち込んで、上の幹を引っ張り込むための支点にします


上から思い切り圧力をかけて幹を下げます
力の加わる部分に少々のヒビ割れが生じても大丈夫ですから、とにかく思い切りです

最初の姿には力枝(利き枝)がなかったてめに、構図に弾みが感じられませんでしたので
やや裏枝になりますが、太めの枝を下げて利き枝として構図に変化を出します


頭の部分をたたみ込むように針金で調整します
頭部がコンパクトになるに従い、足元から幹筋のおもしろさが目立ってきたようです


左後方のあった枝は不要になりましたので切り取ります
葉ガサが小さくなり少しさびしい感じになりましたが、すっきり感もでてきました


反っくり返った幹をやや起こした完成図(樹髙13㎝)
根上がりぎみの足元に変化があり、ジンのついた幹筋が鋭角に折れ曲がって激しさが増しました

来春にこの角度で植替えます
2作すれば芽数も増え頭部や利き枝にボリュームが増し安定感が出るでしょう

ちなみに、今頃から3月いっぱいくらいが針金掛けの適期
さあ、あなたも掘り出しものの素材を探して、チャレンジしましょう!