2007年1月30日火曜日

かりん太幹小品

実生かりんの取り木太幹素材の優良品に出会いました
足元に力があるし、模様も下から頭まで遊びがのない「お利巧さん」です

そして、もっとの特記すべきはその太さ
足元で直径5.5cmと立派なボディーの持ち主です

盆栽は「自然の縮図」といわれますが、小品盆栽においては
大物盆栽よりもさらに「樹高に対する幹の太さの比率」を大きくすることが可能で
それがまた魅力のひとつにもなっています

より短く、より太く
力強さを求めて限界までチャレンジするのも、現代の盆栽界の傾向です

つなみに、大物盆栽での「樹高に対する幹の太さの比率」を調べてみたらいかがでしょう


実生かりん取り木素材 樹高9.0×左右13.5cm(足元の幹径5.5cm)

樹高と太さの比率は10:5
まさに大物盆栽では実現が難しい、小品盆栽ならではのバランスです


大雑把に骨格の基本を見た画像
それほどの苦労せずに、基本の構図の予想ができます


後ろ姿
傷は頭の下に一箇所、すでに周囲にカルスが形成され、将来必ず完治します

今年一年間は根作りに励み
本格的な樹形作りは来年からになります

あなたも取り木の優良素材を探し
チャレンジしてみましょう

環状剥皮による取り木の適期は2月と5月

では

2007年1月26日金曜日

かりん取り木素材

かりんは実もの盆栽の中でも
松柏類のような堂々たる本格模様木を作ることができる数少ない樹種です

しかし、大物から中品には本格模様木はかなりの数がありますが
小品盆栽、まして10cmクラスでは、ちょっと例を見ることは少ないですね

その類の少ないのに挑戦したがるのが盆栽人
これは私の親しい同業者がチャレンジした優良素材です

ご覧下さい


昨年取り木をし、ここで根の整理をして本植えした現在の姿

枝は荒切りの状態です
幹とのバランスや枝順などの構想をしっかりと立て、気候の暖かくなる3月、本格的に切り詰めます


根元の拡大図

白線は取り木を施す際の印
発根状態は良好で、将来の八方根張りが期待されます


一の力枝の拡大図
太みも十分あり、すでに逞しい幹との調和がとれています


向かって右のニの枝は、いい位置に枝がなかったので呼接ぎで作りました
2年ほどは幹の太さとのバランスがとれるくらいまで徒長させます


樹冠部付近には将来不要とと思われる枝もつけたままです
不要枝を外すのは、かっちりと構想が固まってからでも遅くはありません

胴吹き芽などを確かめながら、急がず
盆栽の成長にあわせながら、ゆっくりと

ともすると、愛好家の方は枝(部分)にばかり目が行って
全体が見えなくなることがありますから、ご注意!


ボディーの部分だけを取り出してみました

この素材は、この主要部分だけ見れば素質を見抜くことができます
それができたとしたら、あなたはベテランですよ


将来は、このような本格派の模様木を目指します
樹高はおおよそ11から12cm

あなたは、このかりん素材を見たときに、このような本格模様木の完成予想図を頭の中に描けましたか?

2007年1月25日木曜日

吉向松月窯

席飾りで、表現をより強調したい場合に使う小道具を「添配・てんぱい」といいます

動物では、鹿、鳥、蟹、また筏や小船や釣り人など
茅ぶき屋根の民家や観音堂や五重塔などの建物も一般的です

それらの材質は銅や鉄製のものが多く
中には木製や陶磁器の類もあります

今日ご紹介するのは、陶器の小蟹
添配として蟹は多く使われますが、ほとんど銅か鉄製です

というのは、足の表現が複雑で難しいのと
丈夫な材質でないと、細い足の先などをすぐに傷めてしまうからです

その点からいっても陶器の蟹はまことに珍しいものです

ごゆっくりご覧下さい


間口6.0×奥行2.5×高さ2.5cm

江戸の享和年間(1801~1804年)、戸田治兵衛のより大阪十三村に築窯された吉向松月(きっこう・しょうげつ)窯
時の将軍に作品を献上したおり大いに喜ばれ、吉に向かうにちなんで「吉向」の窯号を賜わったと伝えられ、代々松月を名乗っています
京焼の流れをくんだ典雅な作風で、現在の当主は八世・吉向松月

何代の作品かはわかりませんが、共箱の古さや作風から
幕末から明治にかけて活躍した4代か5代の作であろうと思われます


小蟹の一瞬の動きを捉えた写実力、大胆に施された釉薬の輝きなどじつにみごとな出来栄え
細部をつぶさに観察すると、大胆かつ繊細で的確なヘラ使いの妙技が随所に見られます


別角度より


落款は「吉向・きっこう」


共箱

2007年1月15日月曜日

黒松の掃除

この黒松の逸品は昨年の秋に仕入れたもの

葉の固まった晩秋から冬にかけ、軽い葉透かしと掃除をします
黒松盆栽の管理として、これは行わなければならない必須作業

鑑賞のための見栄えはもちろんですが
まず第一の目的は、フトコロ芽の日当たりと通風をよくするためです

さあ、ハサミとピンセットと小箒を用意
軽い葉透かしと掃除をしてみましょう



作業前

正面から見ると、掃除の必要あるの?
って感じですが



下からのぞいてみると、けっこう枯れっ葉が出ています
これが案外に日当たりと通風の妨げになってるんですよ



ついでにアチコチ点検
やはり枯れっ葉が出てますね



掃除終了後の姿
いかがですか、きれいになったでしょ

ちなみに、葉透かしは行っていません
掃除をしただけの姿です

それでもフトコロ芽の日当たりと通風は抜群によくなっています



下方からのぞぞいても枯れっ葉がないときれいですね

2007年1月11日木曜日

盆栽屋の楽しみ

何十年盆栽屋をやっていても、好みの盆栽に巡り会ったときは格別で

内心で歓びがワクワクと湧き上がってきます

もっとも、この感動が湧き上がらなくなり
新鮮な気持ちで盆栽に接することができなくなったら、盆栽屋は失格、失業ですね

今年の正月は、松の内がすんだらすでに三連休
なんで、盆栽屋の本格的な仕事始めは9日からでした

その9日に仕入れに出かけ巡り会ったのが
今日紹介する「山づた」の小品

山づたはもともと私の好みの樹種なのですが
それにしても、これほどの小品の山づたにはお目にかかったことがありません

ワクワク!


盆栽界の一般的な位置づけとして、山づたという樹種は若葉や紅葉の季節が鑑賞期とされていますが
この本格的な樹形ですから、葉落ちの姿の方が見栄えがするでしょう

この段階まで持ち込んだ山づたは、山もみじや楓のように
葉落ちの姿で枝先の味わいまで眺めたくなりますね


この山づたの最大の魅力は、足元の力と幹の躍動感


全体をアップで鑑賞しましょう

いわゆる「構えのいい木」、本格派の樹形ですね
立ち上がりの迫力、幹模様の躍動感、細かい枝先がみごとです

山づたという樹種の特徴である「野趣味」
木肌の古さが一層にそれを強調しているようです

でも、文句をつけることもある
それは「鉢」

大き過ぎますよね
だから盆栽が小さく見えちゃう

これほど大きなスケールの構えの山づたの魅力を引き出すには
二廻りくらい小さな鉢を使うべきですね

この春には、映りのいい鉢に必ず植え替えるゾ

という訳で、車の中の助手席にこの山づたを置き
信号待ちの度々に、何度も手にとって眺めながら帰宅した盆栽屋.comでした

山もみじミニの掃除

いつものようにお正月も慌しく過ぎ松の内が明けて
今年最初の仕入れに出かけました

そこで新年早々にぶつかったのが、今日ご紹介する山もみじのミニ
樹高はわずかに8.5cmで幹の直径が6.0cm

出かけて2軒目でこの山もみじに出くわして
ギュウギュウと値切ること2時間あまり(しつこいってば)

思い通りの相場でゲット
これは春から縁起がいい


ともかく汚れがひどいですね
まずやることは掃除です


幹に苔が這い登っています
さらに癒合剤のカスが木肌にこびりついているのも目障りです


このままにしておいてはいけません、ピンセットで表土の苔をきれいに取り除きます
これによって根張りや用土のようすも確かめます


金ブラシで木肌にこびりついた苔や汚れを擦り落とします(金ブラシの使用は冬季に限ります)
同時に、幹に傷やヤケがないかも検証します


枝の剪定は後回しで、とにかく掃除が先


木肌にこびりついた癒合剤、金ブラシやピンセットで取れない場合には
ナイフで丁寧に削り取ることもあります


ようやく第一段階の掃除が終了

枝の剪定は差し枝の先端をちょっと摘めただけ
本格的には今春の植替え時期に行います

第二段階の掃除は、天気にいい日に水圧ポンプで水洗いしましょう
今日はこれまで


掃除がすんでから改めて細部の検証と今後の培養方針を立てます

つづく

2007年1月9日火曜日

山もみじ双幹

2006/01/03のつれづれ草「冬来りなば・・・」の項で、冬囲いのムロの中で
小品盆栽に混じって居候していた山もみじの双幹

あれから間もなく隣市の愛好家・Kさんに買っていただき
春の植替え、小枝の剪定、新芽摘み、葉透かしなど一年間の作業を終えました

それぞれの作業のは、要点をお教えしながら二人でやりましたが、Kさんは積極的にがんばって
ほとんどご自分でやったといっていいでしょう

当初、小品盆栽の愛好家・Kさんが「この山もみじを欲しい」とおっしゃったときには
内心、「持ちきれるかな?」と心配したのは事実でしたが

春の最初、剪定と植替え作業の途中で、それが私のまったくの杞憂であったことがわかりました
Kさんは小品愛好家らしい繊細さに加え、大胆な構想力も持ち合わせていたのです

水や肥料の毎日の管理も上々、一作でかなり樹格があがりました
昨年の暮れの画像です

ごゆっくりご覧下さい



この山もみじは若木から壮年期に差しかかった段階で、骨格はしっかりと出来上がっています
こんごは、細部の枝つきなどを調整しながらそろそろ古木感を目指すところです

Kさんは主幹の一の枝と子幹の利き枝の先端が上向きだったのを、一年間針金で下へ引っ張りました
そのため、力枝の先端が落ち着いて、古木らしい雰囲気が出てきました(これはKさんの構想でした・天晴れ)

芽摘み、葉透かし(葉刈りはしていない)の励行により、芽の先端が柔らかく密になり
フトコロ芽には勢いがでてきました

一年前より格段の向上



樹冠部付近はちょっと枝が多すぎるので、様子を見ながら数本抜いてあります(朱色の癒合剤が見えますね)
さらに、芯に軽く針金もかかっていますね、これらはKさんの仕事で、検証してもすべて正解でした

「冬来りなば・・・」で申し上げているように、私はこの山もみじは5年で国風展に入選できる、とみています
その意味からも、この一年間は順調な船出でした

Kさんはもう石灰硫黄合剤のお化粧と消毒、終わったかな?
この一年間もがんばってください

2007年1月7日日曜日

石灰硫黄合剤(松柏類・雑木類の消毒)

松柏類や雑木類を消毒するときの硫黄合剤の希釈倍数は30倍くらい
ということは、1リットルの水に対して薬剤を30cc混ぜます(間違えないようにね)

実際には、私の友人でも10倍くらいの濃さでやる人もいるし
薬害を恐れて50倍の人もいますが

いつでも消毒薬はやや薄目にやるのが安全
かといって50倍では効き目が不安ですね


噴霧器でやる場合、鉢の汚れや用土に染み込むのを防ぐため
ボロ布、新聞紙、サランラップなどなどで鉢と鉢の表面を保護し、葉裏に行き届くようにタップリと施します

いいですか、タップリが最大の秘訣


ドブづけの方法
この方法は小さな盆栽にむいていますね


頭からつけ終わったら、しずくをよく切って日に当てて早く乾かすこと
この場合にも鉢や用土の表面を保護します

以上、いたって簡単

快晴の日を選んでやりましょう!

2007年1月5日金曜日

石灰硫黄合剤(雑木類の消毒兼お化粧)

1月中が石灰硫黄合剤(殺菌殺虫兼用)を施す適期

12月でもいいいけれど、早すぎると春までに効き目が薄れるし
2月中旬以後になると芽の動き出す樹種もあるからです

噴霧器や計量カップ、それに筆などを用意
他の消毒液とは異なり、晴天の日を選んで実行することをお勧めします

その理由は、施した後に早く乾くから


薬剤、噴霧器、計量カップ、筆、これに端の欠けた茶碗か小皿を用意します


噴霧器でまんべんなく幹を水で濡らす

この際に鉢土はなるべく濡らさないようにします
施した薬剤が根元を伝わって根に染み込まないため


水で2倍(原液も可)に薄めた薬剤を、濡れた幹の上部から順に塗ります
幹が濡れているため、薬剤は容易に伸びて塗りやすい

枝元の部分にも塗りますが
冬芽の部分は避ける


薬剤がまんべんなく行き渡るように裏面からも塗る


最後に根張りの部分を仕上げる
他の消毒薬と異なり、石灰硫黄合剤は染み込むと根を痛めるので要注意


塗り終わったら直射日光に当て、なるべく早く薬剤を乾かします
濡れていると、次の水やりの際に薬剤が流れて根を痛める恐れあり

以上、あなたも実行してください
消毒目的の方法は次の項で勉強します

注1)石灰硫黄合剤の希釈倍率

今日の勉強のように「消毒兼お化粧」の目的で、木肌に用いる場合は原液でも大丈夫
しかし、消毒の目的で葉を含めて頭から散布する場合は、30倍くらいが適当です


注2)幹に新しい切り傷がある場合は、傷口を癒合剤などでしっかりガードし
薬剤が染み込まないようにする

石灰硫黄合剤(雑木類の消毒兼お化粧)

1月中が石灰硫黄合剤(殺菌殺虫兼用)を施す適期

12月でもいいいけれど、早すぎると春までに効き目が薄れるし
2月中旬以後になると芽の動き出す樹種もあるからです

噴霧器や計量カップ、それに筆などを用意
他の消毒液とは異なり、晴天の日を選んで実行することをお勧めします

その理由は、施した後に早く乾くから


薬剤、噴霧器、計量カップ、筆、これに端の欠けた茶碗か小皿を用意します


噴霧器でまんべんなく幹を水で濡らす

この際に鉢土はなるべく濡らさないようにします
施した薬剤が根元を伝わって根に染み込まないため


水で2倍(原液も可)に薄めた薬剤を、濡れた幹の上部から順に塗ります
幹が濡れているため、薬剤は容易に伸びて塗りやすい

枝元の部分にも塗りますが
冬芽の部分は避ける


薬剤がまんべんなく行き渡るように裏面からも塗る


最後に根張りの部分を仕上げる
他の消毒薬と異なり、石灰硫黄合剤は染み込むと根を痛めるので要注意


塗り終わったら直射日光に当て、なるべく早く薬剤を乾かします
濡れていると、次の水やりの際に薬剤が流れて根を痛める恐れあり

以上、あなたも実行してください
消毒目的の方法は次の項で勉強します

注1)石灰硫黄合剤の希釈倍率

今日の勉強のように「消毒兼お化粧」の目的で、木肌に用いる場合は原液でも大丈夫
しかし、消毒の目的で葉を含めて頭から散布する場合は、30倍くらいが適当です

注2)幹に新しい切り傷がある場合は、傷口を癒合剤などでしっかりガードし
薬剤が染み込まないようにする

2007年1月4日木曜日

赤松大改作

一昨年10月22日に「盆栽つれづれ草」で大改作した赤松懸崖昨春に小さめの正方鉢を選んで懸崖形に植え、より個性のある姿に大変身
7月の初旬に緑摘み(短葉法)を実行

↓は短葉法をかける前の画像
見比べてみると、芽数葉数がふえ、完成度が高まってきたのが一目瞭然ですね

ところでこんな時には、盆栽の完成度を見るもう一つの尺度である
「古さ」や「鉢持込の味」も見比べてほしいものです


現在の画像


昨春植替え直後の画像

いかがですか?
鉢の土の落ち着きぐあいなども、盆栽の「風格」を見る上で重要な要素ですよ

それと


現在の足元の拡大図

たった1年で幹肌が荒れ始め貫禄が出てきていますね

やはり、小さめの鉢で制御された培養を繰り返した結果で
大きな鉢で漫然と管理していれば、このようにはならないのです

「小さめの鉢で元気に育てる」、これが盆栽の本道です
みなさん、ことしはこのテーマに挑戦してみてはいかがでしょう

「芽から鱗」で、新しい発見ができることを請合です