2010年5月26日水曜日

スクール速報・杜松

スクール常連のクロちゃんは愛知県渥美半島の出身
年はなんぼかな?、そう高校生の息子さんがいるといっているから、ざっと40代の半ばくらいだろう

田舎へ帰郷のおりに山取りし20年も培養しているという黒松などもを持っているので
盆栽歴はかなり古く、20代からやっているに違いない

そのクロちゃんの杜松
樹髙はやっと10㎝ほどで腰の据わった堂々たる模様木です

これも自身の山取りなのかな、そう思っていたんですが
聞いてみると、かなり以前に私から買ったそうで

失礼ながら私はどうしても思い出せないです(笑)
「いい杜松だねー、ますますよくなってきたよ」って、この杜松を褒めたのは決してお世辞じゃないですよ

自分の扱った盆栽類は、売買したときの値段や姿をたいがい覚えているのですが
この杜松については記憶がまるっきり抜け落ちちゃってるんです

まあ、それはともかく、伊勢杜松の山取り素材が市場からすっかっり姿を消した昨今(乱獲のためらしい)
このような持ち込みものはまことに貴重な存在となりました

さて、杜松の植替えは4月下旬から始めて5月いっぱいが適期です
植替え時期が来たのと鉢の映りがイマイチだったのでクロちゃんは5月9日に植替えました


太みもあって力があるので、奥行きのあるオーソドックスな外縁が似合いました
ちなみに、この鉢は陶翠窯で戦後の量産品ですが、さすがに土目もいいし形状も垢抜けています

クロちゃんには、なるべく安定感が出るように低く植付けるようにアドバイスしましたが
さすがベテラン、位置や角度にスンプの狂いもなく、正確な植付けです

植替えといっても、培養本位の仕立て鉢に植付けるのではなく
このように鑑賞段階に達した盆栽の植え付けは、前後左右や傾けの角度などがかなり微妙で

気に入るまで何度もやり直すことがしばしばですが
きょうは一発でうまく決まりましたね


正面の拡大図

植替えに際しては、事前に新芽をほとんど摘みました
これは新芽が伸び始めているので、根付くまでの木の負担を軽減するために必要な処置ですから

読者のみんさんもしっかり覚えておきましょう


鉢も決まったことだし、一ヶ月ほどの休養のあと
樹冠部を中心に輪郭をしっかり整えましょう

それにより、木の相はさらにスケールが大きく見えるようになるはずです
また、樹冠部がぴりっとすれば、足元の力強さもさらに目立ってくるはずです

今年の秋の姿が楽しみです

2010年5月20日木曜日

フリースクール速報・山ずみ

昨年の秋にご紹介したターさんの山ずみ
冬の間はターさんの休みが多かったので,元気かどうか気にかかっていました

というのも、昨年のターさんは、夏から秋にかけやや水を切らせ
秋の落葉期のかなり前から、わずかの葉を残している状態だったからです

そのときの状態は、すでにみなさんにはお知らせしたとおり
診断したところは心配なしとの私の結論でしたが、やはりその後の長い冬越しのあとですから・・・

さて、半年ぶりにお目にかかるずみ、状態はどうでしょうか?



ご覧のように、あれほどの気のもみようは、さいわいにも杞憂でありました
ターさんもかなり心配したらしく、仕立て鉢に移し用心深く冬越しの管理をしたそうです

さらに樹勢が回復しただけでなく実もしっかり成りました
やや樹勢を落としたことがかえって適度な制御となり、このような実成りにつながったのでしょう

ご存じのように、あまりにツンツンと勢いよく伸びる若い枝には花芽がつきません
花芽は適度に制御された中くらいの勢いの枝にくるのがふつうですね



葉がすっかり繁ってしまったので、不要枝の剪定はもう出来ませんから
芯の部分(カットパスターを貼った箇所)を一節つめて、もうしばらく様子を見ることにします

もちろん、実成り樹種でも楓やもみじの雑木類とおなじく
あまりに徒長した枝先や繁りすぎた葉は透かしたり葉切りをして、日光と風の通しをよくする作業は必要です

その作業はもう一ヶ月ほど先のことになりそうです

ターさん、ご無事でよかったね!

2010年5月19日水曜日

スクール速報・山もみじ

去年の夏にこの山もみじを手に入れたイーさんは、半年以上辛抱強く待ちました
芽摘みも葉刈りもせず、しっかり肥料をやりどんどんと樹勢をつけたのです

昨年の姿はここをクリック

おかげで元気いっぱいになった山もみじ
改造計画に沿ってばっさり切り込む適期となりました

もちろん、今春の彼岸前にやや大きめの現在の仕立て鉢に
水はけよく植替えておいたことも申し上げておきます

また余談ですが、この山もみじはイーさんが手に入れたあとに何人ものスクールの先輩たちに目をつけれられ
すでにイーさんの所有だとわかると、みなさんが残念がっていたんです

「これ、イーさんのだって、よくなるぞー」
「イーさん、枯れないうちに、おれに譲っちゃったほうがいいぞ」

こんな先輩達の励ましや脅迫(笑)を受けながら
イーさんはこの山もみじを手に入れたことにますます喜びを強くしているようです

さて、これからが大切な時期となります
みなさんの期待を裏切らないようにがんばりましょう、イーさん


2010/05/09 作業

イーさんの先輩のクロちゃんと私の意見も一致したので、ばっさりといきました
しょうじき、イーさんにはまだまだこの山もみじの将来図が描けてはいないようですが

いいんですよ、わからなくとも、論より証拠といいます
自分の持ち物が少しずつ出世するのを目にしながら、自分の目筋も向上していくんですから


赤点で示したところは胴吹き芽が吹きやすい箇所
青点は是非とも芽が欲しいのですが、芽が吹きにくい?の箇所です

その場合は呼接ぎという手段がありますから心配要りません

ちなみに、この山もみじの切り込みに際して、丸裸にするのが定石ですが
水揚げ用に主幹と副幹の頭の葉をわずかに残しました


現段階での将来予想図
ただし芽の吹く位置などにより途中での微修正は十分にありえます

イーさん、がんばりましょう!

2010年5月10日月曜日

昭和年代の後期に雑木盆栽の人気を独り占めしたことのある紅千鳥
その人気はものすごく、価格も現在と比べると想像も出来ないほどに高かったですね

そうなれば、ヒッパリダコの人気者にはまがい物が登場するのは世の常で
業界のあちらこちらで悲劇やもめごとが絶えませんでした

私は当時から、うさんくさいと感じたら手を出さすにかなり気をつけていましたし
もみじの品種に詳しい同業者に恵まれてたので、さいわいにも大きなトラブルに巻き込まれたことはありませんでした

それはともかく、ブームの最中はうわすべりな人気ばかりが先行し
盆栽樹種としての長所や美点を見る目は、脇に追いやられてしまっていたようです

しかし優れたものはやはり忘れられません、ブームが沈静化してしばらく経った今、改めてその長所が冷静に再認識され
真性の紅千鳥を求める愛好家さんも増えつつあるようです

そこで、昔取ったきねずかで
まがい物に引っかからないための簡単な紅千鳥の識別法をご披露しましょう

紅千鳥の盆栽としての長所は、葉の美しさだけではなく
幹肌のきれいさ、枝先のやさしさなどたくさん具わっています

ぜひともまちがいない真性の素材を手に入れ
じっくりと楽しんでください


やや黄色みがかった淡い赤色が特徴ですが
当時、春の芽出しの色が同じでありながら、真性とは異なる品種と思われるまがい物が出回りました

その中間種ともいうべきまがい物は、色彩その他はほとんど同じながら
この画像のような五つ手の中に、裾の左右にもう一つずつ手がついた七つ手が多く混じるものでした

ちなみに、真性のものにも、樹勢が良すぎたりすると葉型が乱れて
一本の木の葉の中に七つ手の葉がごく希に混じることもありますが

ともかく、私はこの端正な五つ手の葉であることを、第一の識別法としていました

今も、取り木用に地植えにしてある庭木の紅千鳥の葉の中に
みなさんへの見本用にと七つ手の葉を見つけたのですが、すべて五つ手で七つ手の葉は一枚も見つかりませんでした


出芽の色彩は樹勢や置き場所などによって少々の差異があります

注意

赤系の出猩々や清玄などは特徴がはっきりしていますから
ぞれらとのではなく、あくまで真性の紅千鳥とまがい物(中間種)との識別法を申し上げています


もうひとつの特徴が葉脈の色です

出芽の時期には黄色みを帯びていますが
この時期葉が固まるにつれ緑色を帯び、渋味を帯びてきた葉色とともに、神秘的な美しさをたたえてきます

それでは、間違えないようにね!

ちなみに紅千鳥は取り木が容易です
取り木用の種木を一本お持ちになって素材をゲットすることをお勧めします

2010年5月8日土曜日

スクール速報・コマユミ

スクール速報で初めてのご紹介になるイシくん
1才半のかわいい娘さんのパパで、30代前半のまじめな青年です(私の息子より1才年下!)

5年ほどの海外赴任中に日本の伝統文化である盆栽に目覚めたそうで
2年前の帰国を機会にこの道に入りました


遠く離れたで外国での異文化に囲まれた生活が
故国のよき伝統文化を再認識するきっかけになったのでしょう

イシくんは将来ふたたび海外赴任の可能性があるそうで
そのときまでにはと、心中密かに期するものがあるのではないか、そう私は想像しています

イシくんは住まいの関係や将来の海外赴任の可能性もあって
盆栽はたくさんふやさない方針ですが、そのかわり持ち運びの容易な水石にも強い関心をもっています

東洋の禅にも通じた精神性をもった水石趣味は
BONSAとともにSUISAEKIも国際用語となっていますから、きっとイシくんはそれらを外国人に伝えることが出来ると思います

さて、そのイシくんのコマユミに今年異変が起きてしまいました
その治療の過程をご紹介いたしましょう



4月の中旬をすぎても冬芽がほころんできません
枝先が枯れてはいませんが、枝先に瑞々しさと生気がない

このような状態を盆栽人は、「風邪を引いた」といいます
冬の寒さと感想で衰弱し、春がきても起き上がる元気がない状態です

それで、こんなときに有効なのは仮設の集中治療室(ICU)
場所はスクール兼用のビニールハウスの棚下の日陰、ご覧のビニールドームです



大切な注意点は、鉢内の水はやや乾かし加減にしながら
ドーム内の湿度を保つために地べたに直接置くこと

鉢内の水を控えるのは、例えれば
人間が体力が弱ったときには消化のいい食べ物にして、内臓に余分な負担を与えないことに通じます

つまり人間の内臓は植物の根と同じことなんですね



集中治療室に入れて約10日ほどの4月25日撮影

効果てきめん、早くも回復の兆しあり、ところどころの芽が吹っ切れています
左や芯付近の赤っぽく変色した部分は、水の上がっていない小枝なので枯れ落ちる感じですね

しかし部分的には落ちても、木そのものの命は助かりそう
あーよかった!


5月7日撮影

急激に回復しつつありますね、集中治療室の効用は抜群です
戸外の元気な盆栽たちにはかないませんが、体力を回復したコマユミは驚異的な回復をみせています


撮影後の夕方に、にわか雨が降り出しました
集中治療室から出す一番のタイミングは、ムロ出しと同じで湿度の高い天候が最適

さっそく戸外の棚へ

半日陰程度の置き場所で数日間は目を離さないように気をつけてやりましょう
葉の乾燥には特に注意

このまま順調に芽先が伸びるようなら
入梅くらいまでには他の盆栽たちの生育に追いつくはずです

ビニールドームはホームセンターの農業用資材コーナーに売ってますよ
困ったときにはぜひお使いくださいー!