2010年1月28日木曜日

フリースクール速報・.山もみじ

大型新人としてご紹介したハシやんが20年近く手塩にかけた山もみじ
旅行先で小さな実生苗を採取したものをコツコツと作り込んだそうです

樹髙(上下)はわずかに6.0㎝です

ちなみに、懸崖式の樹髙は下の画像のように、芯から下枝の一番下までの垂直の距離を測り
樹髙でなく上下○○㎝と表記するのが通例です


全体の姿もいいし古さも申し分ないし、小枝の先もよく制御のきいた培養がなされています
それでもハシやんにとってはまだまだ物足りないところがあるらしく

小枝の節間の伸びた部分を剪定しなきゃと言っていましたし
根張りがまだ細いために、もっともちこまなきゃとも思っているようです

もちろん盆栽は、命ある限り半永久的に未完の芸術ではありますが
20年からの年月にわたり、自らの作品に妥協を許さない批判眼を持ち続けることはすごいことです

快活なハシやんは「とにかくオレは盆キチでよ!」と自らを揶揄していますが
どうぢてどうして、その情熱と持続力は大いに見習うべきものがあります


赤点間の距離は6.0㎝、したがってこの山もみじのサイズは上下6.0㎝と表記します


かなり以前、幹に模様をつけるために切り戻した傷口が2箇所ありますが、きれいにふさがり時代感も周囲と同化しています
傷口が瘤状にならないのは、切ったあとの傷口の処理が適切であり、その後に均衡がとれた培養を何年も続けられた証拠ですね

勢いがなければ肉巻きが遅くなるし、樹勢がよすぎると肉巻きの部分が盛り上がってしまいます
ですから肉巻きが完了するまでの何年間は、均衡のとれた培養が必要となります


ハシやんは毎年強い芽を抜き、芽数を制限しながら
ほどほどに元気をつけるような培養を心がけています

今年の春もきっと思い切った剪定をすると思います
楽しみですね、また機会があったらこの山もみじのその後の姿をご紹介したいですね

よろしく

2010年1月27日水曜日

四万十川ミニ水石の思い出

きょうは先日頒布コーナーでご紹介した四万十川のミニ水石です
約20年も前のことですが、思い出も交えてお話ししましょう


約20年も前、ミニ水石として見込みのありそうな石をーそうですね、おおよそ500個もあったでしょうかー自採した同業者がいました
もちろん四国の方ですが、その水石を国風展の売店に並べて目玉の商品にするつもりだったんですね

当時、国風展の売店(上野グリーンクラブ)の常連であった私が、会期前の商品搬入の時にそれらのミニ水石に目をつけたというわけです
ひとつひとつ指先でつまんで眺めてみると、それぞれに個性があるし、数は少ないながら、中には特別な素質のもありそうでした

無鉄砲といえばそうですが、若くて元気もよかったんですね
それに根っから水石好きときちゃあたまらないですよ

「オイ、○○さんよ、オレがそっくり買うから安くしとけよ!」
なんちゃって、しぶる彼氏を値切り倒してぜんぶ買っちゃったんですね

さあそれからの何日はかなり大変でしたよ
なにせ500個からの膨大な数のミニ水石を、一個一個品定めしてABCと3ランクにわけたんですから

そのAランクの中から、さらに特Aランクの30個ほどを選び抜き
さらに最後に、その中から◎の特Aランクを5個選び抜いたのです

選び漏れのないように、ランク分けの作業も何度も何度も根気よくやり直し
絶対と自信を持てる5個に絞ったんです

茅舎石の特別いいのがありましたね
ともかく、豆石らしく素晴らしく愛嬌のあるのばっかりで、満足感たっぷりだったのを覚えています

そのはずでよね、みなさん、100個に1つですよ
それも心得のある業者が、一応商品として通用しそうなものを採集した中からですよ

まあ、水石が好きだったから出来たんだし
楽しみと欲との二人づれだったんですね(笑)

そして、その特Aの◎の5つに友人の鈴木広寿(台座名人)に頼んで台座をつけたんです
鈴木さんはチッチャクッテやりずらいかって、ずいぶん渋ってましたっけ

というわけで、私の手元に残った最後のひとつも先だってお嫁に行きましたが
きっと新しい持ち主さんにしっかり可愛がってもらっていることでしょう


ところで、20年前のランク分けのときに、最後の特Aに選ばれながら台座をつけられなかった20数個ほどの石たちも
やはり大切に保管したしたつもりでしたが、気がつくといつの間にか二つが残るばかりとなっていました

その一つがこのミニ茅舎


どうです、いいでしょ、かわいいでしょ
まるで日本昔話に出てくるお百姓の家みたいですね


こんど鈴木さんに会ったら台座を注文しようと思ってるんですが
彼、引き受けてくれるかな、小さすぎるので面倒がって断られるかもしれませんね(笑)


最後の5個の中には遠山石はありませんでしたね
たった一つだけ気に入ったこの遠山石だったんですが、やはり台座組には選ばれなかったんです

それで気が残ってたんでしょうか
こうやって最後まで手元にあるんですね

これも今度の機会に台座を頼むつもりです

さてさて、長い思い出話でした
それでは、また

2010年1月7日木曜日

サイズと樹形・姫柿



この姫柿は、腕利きのセミプロが根伏せから仕立て上げた小品盆栽(樹髙12㎝)ですが
10㎝以内のサイズが好きな愛好家さんからは、なぜ10㎝以内で作らなかったの?

そういうご質問をたびたび受けました
この姫柿の画像を見た小品盆栽の愛好家のみなさんの多くも、そう感じたことでしょう

そこで、サイズを詰めることは今からでも簡単なことですが
その前に、なぜこれほどの腕利きの作者がこのサイズを選んだのか?!

作者の意図や好みを推測してみるのも面白そうですね
それではいろいろ考察してみましょう


芯付近をじっくり観察すると、高さ8~9㎝のあたりに赤点で示した新しい芯の候補がたくさんあります
作者はそれを知りながらも、その候補たちのさらに上部に強い模様をつけ、現在の芯を作っています

ちなみに、この作者はかなりの腕利き目利きで、ミニサイズの魅力も知り抜いた人です
決してうっかりなどということあり得ません

その非凡さは、一度下方へ戻りながら再び立ち上げた強い幹模様に現れています
単にボンヤリとサイズを伸して作った芯ではありません、表情がとても豊かに作られていますね

その人がなぜ?!


↑の画像をご覧ください

堂々たる立ち上がりと緩みない模様を持った逞しいボディーが、この姫柿の最大の見どころです
しかし、一、二、三と順調な枝順の上に芯を作れば、サイズも10㎝以内でおさまりもいいのに

あえてその上まで伸した理由を推測すると
おそらく、ミニサイズの定石を超えたところに美を表現したかったのでしょう

そのため作者は、あえてこの太い青線で記した空間を作り出し
もう一箇所の強く印象をアピールする見どころを演出したかったのでしょう

太い青線で記した空間が、樹形のスケールをさらに大きくしていることは確かです
サイズを犠牲にして、スケールの大きさと見せ場を選択した作者の意図は、みごとに成功していますね

その他に樹形やサイズが決定された要素の中に
この作者が小品盆栽から大物盆栽まで幅広く取り組む人だ、ということも考慮に入れるべきでしょう

大物愛好家の場合、箱卓(はこしょく)を使わないため、サイズにはあまりこだわらない傾向があり
それよりも見せ場の要素を一箇所でも多く演出しようとします

私は今、優劣を言おうとしているんっじゃありませんよ

大物盆栽家と小品盆栽家の傾向や感覚の違いに触れているんです
このため同じ素材を前にしても、両者のイメージする完成図のサイズや樹形はかなり異なってきます

サイズにこだわらず、より多くの見せ場を求める大物愛好家
サイズにこだわり、あくまで素材の定石を通そうとする小品愛好家


今度は小品盆栽家だったらの作り方をシミュレーションしてみましょう

新しい芯のために切り返す芽は右の赤点(高さ9㎝)で、10㎝ギリギリでの完成は可能です
左の赤点は後ろ枝になります


現在の上部を切り取った図


樹項の短縮にあわせ一の枝も大幅に短くしましょう
筋の定石が通って樹形は無駄なく簡潔に出来上がりました

芯の新芽は針金で強く伏せ込み伸さないように
そして、枝間の空間に美しさを見せ場として意識しながら作り込むことです

さあー、あなたはどっちだ?!

2010年1月5日火曜日

楓石付き生還復活

明けましておめでとうございます

ところでみなさん、盆栽屋.comのHPもちょうど10回目のお正月を迎えました
月日の経つの早いことにビックリするとともに、改めてみなさんのご厚意に感謝の念でいっぱいです

こんなこっちゃ、これからの10年だってあっという間に過ぎちゃうぞー
みんさんとのコミュニケーションの更新はもちろん、盆栽作りだってもっともっとがんばらなくっちゃ
今年はみなさんに今までと違った自分を見せるぞー!

というわけで、遅まきながら激しく自分に気合いを入れている新年の盆栽屋.comです
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます


今年の第1回の盆栽つれづれ草は、約2年前に瀕死の状態で手に入れたこの楓石附
可能性は半々と覚悟していたのですが、みごとに命拾いして復活しました

盆栽の再生は盆栽趣味の醍醐味のひとつ
枯れ死寸前や形の乱れた盆栽を蘇生させ基本の形を作り直し、さらに鑑賞価値を目指すんです

基本の構図を作り込むまでには、あと3年ほど必要でしょうが
それまでの年月も期待感でわくわくできるんですね

まず 楓石付大改作

2年前の改作時と↑の画像を比べてみましょう
昨年春に主幹の頭部に新しい芯(赤印)を作るための呼接ぎをし

同時に、大きすぎて構図がぼやけていたので、赤印の石の部分を削り取りました
フリースクール常連のヒナさんとクロちゃんが手伝ってくれて

天然に割れた味を残すように心がけながら
鏨を使った作業はうまくいきました

ざっと剪定、呼接ぎした枝は徒長させたままにしておきます
冬の寒さに凍えるといけませんから


本格的な切り込みはこの春先まで我慢

呼び接ぎした枝元(赤点)にしっかりした芽がありますから、この芽を利用して新しい芯を立て
ゴツゴツした旧い芯は、春先に白線に沿って切り返します


今春にはこのような姿になりますね


入梅前に新芽に針金をかけて基本の構図を作ります


来年中に2回ほど針金をかけ、このくらいまで持って行ければいいなー、と考えています


それ以後も、新芽の軟らかいうちにマメに針金で模様をつけていきます

基本構図を作るうえで、特に気を配るのは

★向かって右の利き枝の動きと空間の美しさ
★左の利き枝の長さ


3年ほど枝作りに励めば基本形ができあがります
木と石が一体となって空間の美しさを醸し出すように心がけましょう

根と幹には力強さを
枝には変化と柔らかさとを

古いいい素材を探して、みなさんも盆栽再生仕事人になりましょう
おもしろいですよ、楽しめますよ

ところで、この楓石付ですが瀕死の重傷であったのを格安で求めたことはお話しましたね
そこでこの楓石付きをご希望の方がいらっしゃったら、特別の掘り出し物価格で頒布いたします

完成予定樹髙は50~55㎝
ご遠慮なくメールか電話でお問い合わせください

ただし1つだけ盆栽屋.comのわがままをご了解していただきたいのです
それは基本形が出来上がるまでの3年間、盆栽屋comでお預かりして管理させていただくこと(もちろんその間の費用は一切無料です)

3年すれば構図の基本ができあがりますから
つれづれ草でご紹介しながら入念に管理させていただきます

つまり、この盆栽屋.comにこの楓石付きを3年間作らせて欲しいのです
ではよろしく