2012年2月25日土曜日

楓植替え

盆栽用語で「この盆栽は根がよくできている」という場合
根張りがいいという意味でなく、土の部分に隠れて見えない根っ子がいいということです

人間に例えれば、根は内蔵にあたりますから
腐った根や植替え不足で走り過ぎたりゴツゴツした根はいけませんね

盆栽を選ぶときには、幹や枝ぶりばかりに気を取られていてはいけません
根の健康状態まで推測するように訓練しましょう

枝ぶりや根張りは外側から観察できますが、根っ子の状態は鉢から抜いてみないとわかりませんね
しかし、注意深く観察すれば、落葉期であっても、根の健康状態は枝先や芽の色つやから判断できます

さて、今日はその「根の状態がいい」見本のような楓のミニの植替えをご紹介しましょう
樹髙は6.5㎝です


定期的な植替えによる根裁き(剪定)と適切な管理のおかげで
走り根やゴツイ根がなく細かく分岐したいい状態です

このような場合は
いきなり下半分の根をスッパリ切り落として、仕事を短縮してもかまいません


これでかなりの手順が省けました
どうです、根の色つやがきれいですね


肥料の残りカスやらで汚れた表土も根と共によくぼぐす
盆栽では上根(うわね・鉢の表面の根)をよくほぐし、走り根などがないようにする心がけが大切です

この作業を繰り返すことにより
上根がよく発達して盤状の根張りの基礎になるわけです


幹の真下の太い根は完全に肉が巻いています
その他の根はすべて細かいひげ根なので、これらの先端が水を吸い上げる力となっていて、非常にいい状態です


さらに土をほぐして根の剪定もしっかり実行します


根裁き完了です
従来よりもさらに盤状の根張りが大きくなりました


今までの仕立鉢から浅い楕円の化粧鉢に入れますから、ゴロ土を十分に敷きます
浅鉢は案外に水はけが悪い場合があるんですね


1.5㎜と1.0㎜のフルイでふるった中間の赤玉土に、桐生砂を10%ほど混ぜたもので植付けます


植替え完了

表面に少々の水苔を敷きますが
これは土の落ち着きをよくするのが主目的です

乾燥を防ぐために厚めに水苔を載せる人がいますが
それは過湿のもとになるので「御法度」ですから注意して下さいね

2012年2月14日火曜日

紅千鳥(取り木3年目)

この紅千鳥の取り木素材に出会ったのは昨年の夏ごろ
いつも寄る親しい同業者の棚に、他の盆栽たちと離れて1鉢だけポツンと置かれていた

仕入れしたものではなく、何となくここの主人公が作り込んだ素材のように感じられたのは
ここの園主がなかなかの腕利きで目筋も利いているせいだろう

「この紅千鳥、売りものかい?」
さりげなく聞いてみると

なんとその返事が、「あれ、見つかっちゃった!」
なのであった

昨年の取り木素材の中でも飛び抜けていい素質なので、すぐに売り物にするにはもったいなかったのでしょう
「宮本さんに持っていかれないように、1年間隠しておいたんだよな」

それで早いところ手入れをして、また目立たないところへ
ひっそりとかくしておこうと思っていたらしい(笑)

何時も思うことは、盆栽との出会いはまさに運次第
あの日に彼のところへ寄らなければ、まだこの紅千鳥とは出会っていなかったかもしれません

まさに、一期一会ということばがぴったりです


とにかく立ち上がりがすばらしく力強い
それに加えて、八方にまんべんな発根しているので、将来の成長が非常に楽しみです

また、量感のあふれたボディーも
立ち上がりから芯に至るまで、きっちりと微妙な模様が入っていて動きがあります

さて、今年の冬は寒さが厳しいので、時期はちょっと早い気がしますが
術後の管理さえ気をつければ大丈夫です(凍らない程度の置き場)

素材から本格的な盆栽への道への船出のための
根の整理を目的とした最初の植替え実行です


昨年の入梅ごろに、将来の枝配りを考慮して貫通式の呼び接ぎがされています

赤線と黄線で示した2本で
入り口と出口を色分けしましたが、わかりますか

もっとも、この段階での呼び接ぎは、芯や利き枝は別として
補助的な枝は将来使わないものも案外ありますから、あまりムキにならない方がいいと思います


スッポリと鉢から抜いてみる

深い仕立鉢を考えに入れて
底から半分くらいは粗いゴロをたっぷり使っています

水はけがいいので
根の色も健康的でツヤツヤしていますね


恐れずに根は短めにどんどんとさばいていきましょう
ビクビクして沢山の根を残そうとすると、将来ちょうどいい大きさの鉢に入りません

「盆栽作りは根っ子作り」です
これをまず実行していて下さいね

親木から切り離した幹の真下の傷口が見えるまで
根の追い込みはまだまだ続きます


根と根の間に詰まった古い泥は水で洗流す
このように、根の発達を促進するためには周辺を清潔にしておくことが大切


幹の真下の親木から切り外した傷口の処理は一番大切なこと
この素材はきっちりと処理されていましたが、再びカットパスターを塗っておきました

周辺の根っ子もかなり追い込んでおきました
これが正解、これだけの根があれば十分に活着します


正面から


なるべく小さめの仕立鉢に植え込む
大きすぎると「過水」になっていい結果は得られません


将来の予想図

幹元の太さは約6.5㎝ほど
完成の予想樹髙は10㎝くらいです