2010年3月30日火曜日

黒松の植替え2

さて、それでは植付けにかかりましょう


ゴロ土を一重半(ひとかさねはん)くらいの厚みに敷く
ゴロ土の粒の大きさは4ミリ~6ミリくらい


植え土をごく薄目に敷く(厚いと低い植付けが実現しません)
植え土の粒の大きさは2~4ミリくらい

ポイント1・みなさんは心配しますが、底に敷く土の量はごく少なくていいのですよ

なぜなら、盆栽は長い鉢内の生活に慣れていて、その上根(うわね)で生命を維持しています
底の根からは案外水を吸っていないんですよ


あれ、れ、れ、れッ、根っ子に打たれたこの釘はなんだ!?

先ほど植付けのシミレーションをしたときに、前後の針金を結ぶ位置が傾斜面のため
縛った針金がズレ落ちてしまうことが判明したので、ズレ防止用に急きょ打ち込まれた釘でした

ポイント2・初心者の植替え不成功の原因に、あんがいにこの根の結束が緩い場合が多く
その怖さを知っているベテラン愛好家は、さまざまな工夫をして独特の根の結束のテクニックを身につけています


盆栽の据え付け
一度据え付けたあとはグラグラ揺らしたり移動しないこと

ポイント3・もし移動する場合は、ゴロ土を敷く段階から再びやり直すこと
この段階の作業が今後数年間の、この黒松の生育に大きな影響があるのですから、そのくらいの慎重さは当たり前(重要)


ヤットコでしっかり固定
ペンチは先端が平たくごついので使いにくい

ポイント4・固定したあとでグラットもしないように結束する


こんな感じです


植え土を入れる

竹箸や竹棒での植え土の落ち着かせ方は
真柏の植替えの項1・2を参照してください


表面に化粧土を敷いて作業終了です

黒松植替え1

”水かけ三年”ということばがありますが
植替えだって完全にマスターするには三年、五年とかかる大切な作業ですね

実際にやってみると、樹種による植替え適期や間隔や用土など、一般論だけでは乗り切れない困難に遭遇します
それは、植替え作業はたんに盆栽の健康面からだけでなく、鑑賞面も考慮に入れなければならないからです

要するに基本をしっかり押さえながら経験を積み、いろんな場面を経験し
その場その場の工夫を重ねていくことでしょう

それでは、今日は黒松の小品を植替えてみましょう
みなさんはここでも新たな見聞を広める機会に出会うはずです

しっかりと勉強して自分の知識としてください


水色の釉薬がかかった楕円鉢に入った黒松

ポイント1・一般的に松柏類は焼締鉢を使います
その理由は、松柏には渋めの雰囲気が似合うから、それと、水はけの関係です

ポイント2・現在の植え方は少々高植えになっているので落ち着きがありません
もっと低植えにしてやりましょう


いきなりですが、作業後の姿です

ポイント3・約2センチほど低い植付けにしました
いかがですか、腰が低くなり雰囲気が落ち着いた感じになったですね

ポイント4・幹を思い切って右に傾けて植付けました
一の枝に力強さが出て姿が凜としました

さて、結論は出てしまいましたが、それまでの課程をじっくりと振り返ってみましょう
ポイントをしっかり押さえてくださいね


竹棒やナイフ、小鎌などを使って根を抜く


ポイント5・鉢内の土がやや湿っているときには、半日ばかり乾かそう

植替え予定の盆栽は作業前に水をやや切らせておくのが定石です
湿っていると土を落としにくいし、残す土も泥団子状になって水はけが悪くなります(重要)

余談ですが、盆栽歴30年からの市内の愛好者で、このポイントを知らない人がいました(驚)


鉢土が半乾きになりました、それでは作業再開
植付け角度や植付けの高さなどをあらかじめ検討しておきます


低い植付けが目的なので、まず底の部分から裁いていきましょう


竹棒とハサミを交互に使って根を裁いていきます


古い根の奥にさらに以前の赤玉土の塊が見えます
まだまだ攻めます


予定の高さまではもう一息のようです
この時点においてもまだ根の周囲の土はそのままです

ポイント6・根を裁く順序をしっかり守ること
今回は低植えが最大目的なので、底根を先に攻めて側面は後回しにすること

その理由は、順序よく根を裁かないと作業終了間近には
根がばらばらになってしまい、植付けやその後の生育に悪い影響を与えるから


鉢底に横に走った根がなくなるまでさらに攻める


最後に側面の根と古土を裁いて完成です


土を入れる前に植付け角度や高さをしっかりシミレーション

ポイント7・作業を急ぎすぎてはいけません
後で後悔してやり直すよりも、納得がいくまで事前に検討すること

つづく

2010年3月24日水曜日

真柏の植替え2

さて、根さばきがおわったら植え込みにかかりますが
その前に、松柏類の用土(植え土)についてポイントを箇条書きにまとめてみましょう

ポイント4 用土(植え土)について

1 赤玉土は硬質で品質のいいものを使おう、少々高価でも盆栽の健康には代えられない

2 混ぜる砂は、矢作砂、桐生砂、富士砂など個人や地域によって好みがあるので自由です

3 赤玉土と砂の混合の割合もかなりの個人差がありますが、基本的には6:4~7:3くらい

4 フルイは絶対の必需品です、網目のサイズ 2、3、5、7、9ミリの5種類は最低必要

5 用土は、ゴロ土、植え込み用、化粧土の3種類にふるい分けます 
  その粒の大きさは、鉢のサイズや深さによって異なってきます

6 ふるい分けて市販されている赤玉土でも、2ミリのフルイでミジンを抜いてから使います(必須)
  高品質のものでも保存や運搬の課程で、けっこうミジンが出るんですよ


鉢底にゴロ土を敷く、一重(ひとかさね)から一重半(ひとかさねはん)くらいの層の暑さ(鉢の深さにより調節する)
この場合のゴロ土の粒の大きさは、7ミリのフルイを通してから5ミリ網目に残ったもの


植え土を適度な厚みに敷きつめる
粒の大きさは、5ミリの網目を通してから2ミリのフルイでミジンを抜いたもの(赤玉土7:桐生砂2:竹炭1)


木の据え付け位置が決定したら、その後は絶対動かさないこと
針金でしっかり締めて動かないように固定する(道具はペンチよりもヤットコの方が使いいい)

ポイント5 固定用の針金について

針金が細すぎると緩みやすい
また、固定する位置が斜めで緩みやすいときなどは、画像のようにズレ防止のクサビなどを工夫する


鉢の半分くらいまで植え土を入れてる


竹箸の使い方の悪い例

このように竹箸を立てて突くと土は奥まで入っては行くが
奥の根を浮かせてしまったり、かえって土が落ち着かない傾向がある


竹箸の使い方のいい例

竹箸をやや斜めに寝かせてながら前後に揺すり
奥に空洞のないように土を落ち着かせるようにします


植え土は鉢の縁まで満タンに入れないこと
八分目ほどにしてあとの一文目は、3ミリの網目を通して2ミリ目に残った化粧土を入れる


植替え作業終了

表土を落ち着かせるための水苔はごく薄目に使いましょう

ポイント 水苔の使い方

化粧土が入ったら鉢穴から抜ける水がきれいになるまで灌水し
細かくほぐした水苔を表面に薄く散らし、余分は息を吹きかけてて飛ばしてしまうといい

ポイント 植替え後の置き場と管理

春の気候は変動しやすいので、1週間から10日くらいは風当たりの少ない置き場で管理する(日には当てた方がいい)
植替え直後の水切れは厳禁、葉水をやりながら気を遣ってやりましょう

2010年3月23日火曜日

真柏の植替え1

真柏は、春は2月から4月の上旬、秋には9月中旬から10月にかけてと
一年を通し長い期間の植替えが可能な樹種ですが

そうはいっても、秋の植替えは冬中の管理が大変なため
通常は、その後の管理が楽な春の植替えをお勧めしています

ということで、今日は3月23日
適期の真っ最中ですね

さっそく樹髙20㎝のやや完成に近い真柏を教材にして
植替えの基本からじっくりと勉強してみましょう

植替えは盆栽道のもっとも基本的で大切な作業の一つ
初心の愛好家さんはよく読んでしっかりマスターしてくださいよ


樹髙20㎝の真柏、ふつう松柏類の植替え間隔は、3年に1回くらいが目安といわれています
この真柏の前回の植替えは2007年ですから、今春が予定年になるわけですね

★ポイント1 3年に1回というのは中2年ということ(これが案外間違いやすい)
ちなみに、オリンピックは4年に1回なので中3年ですね


鉢底に廻した固定用の針金を外し、鉢から根を抜きました

同時に根の健康と生育状態を確認しておくことも忘れないこと、この真柏の根は健康そのものです
また、このようにゴツイ太根が見られず細かく分岐しているのことも盆栽として大切なこと


植替え間隔や鉢の形状により、楽に抜けるとは限りませんから
作業用の竹箸や根切り用のナイフや小鎌などを用意しておきましょう


あらかじめ鉢に底網を装着、固定用の針金も準備しておきます


今までと同じ鉢に、左右や高低の具合を同じように植付ける場合は
まず根元から根ほごしを初め、徐々に周囲を崩していきます

また、高植えになっていたものを低植えに直したい場合は、根の底部を最初に切り崩すなど
上部、側面、底部などの根ほごしの順番を変更するといいでしょう

★ポイント2 上部、側面、底部の根ほごしの順番はケース・バイ・ケース
新しく使用する鉢の大きさ、植付け角度、植付けの高低などにより各自が工夫すること


底部の根ほごしは、特にていねいに行います
そして、図のように底部を横に這っているやや太めの根はできるだけ切ります

初心の愛好家さんの多くは、この底部の根ほごしが足りないひとがほとんどです
慎重にやる作業ですが、大胆さも必要ですよ


このように底部に横に這っている根をすっかり取り除いて、この作業は完成です

★ポイント3 底部の根ほごしは、横に這っている太めの根を取り除ける位置まで攻め込むこと

つづく

2010年3月20日土曜日

山もみじ大改作・思い切って素材に戻す

近隣でたまに開かれる愛好家同士の交換会で
盆栽友達に処分を頼まれたという山もみじを、市内の親しい愛好家Yさんから買いました

友達が購入した値段を知っているYさんは、つけられた安い価格にかなり困っていましたが
購入当時の姿からみるとかなり荒れているので、仕方ないとも思ったようです

ところで、いつも不思議に思うことですが、このような掘り出し物を見ても
30人からの参加者の中にほかに買手がいないことですね

骨格さえしっかりしていれば、山もみじなどはいちど素材にもどして作り直しながら十分に楽しめるんですね
骨格の基本ができるまでには3年くらいはかかりますが、その課程の楽しみは有り余るほどですよ

みなさんは完成までの時間がもったいないのか
それともこの好素質を見抜けないのかわかりませんが、もったいないですね

盆栽をやるひとは気を長く持たなきゃいけません
盆栽時間は最小単位で1年、その先は3年、5年と数えるんです(笑)


盤状に発達した根張りがみごとで、さらに根張りの上部の足元の直径は7.5㎝もあり、堂々とした幹筋です
ただ幹の中間から上が鶴の首のように長すぎますし、枝順が無秩序で各枝のフトコロ芽もなく単調ですね

ようするに、根張りと中程までの幹筋のよさだけが光っていて
全体の姿がばらばらで統一感が失われているんですね

ですから、この長所のみを活用し不要なところは切り捨て
改めて素材から作り直せばかなりの見込みがあります

盆栽の基本樹形作りは、まず思い切った取捨選択から始まるのです
(なおこの山もみじは10日ほど前に根洗いをして植替え済です)


高さ15㎝にある赤点の芽が、新しい芯として予定されています
立ち上がりの幹の直径はなんと7.5㎝もあります


左の一の枝は枝元だけ残して使い、あとの枝はすべて切り取ります
白点の胴吹き芽は新しい芯として予定していますから、現時点では焼け込みを用心して、その上部をやや残して切り取ります


赤点が芯として活用する芽
他の白点は胴吹き芽が吹く可能性が高い箇所です


来年の入梅頃の予想図

左の二の枝は胴吹き芽が期待できないので、呼接ぎによって作るつもりですが
あとの枝はほとんど予想図のようにできるでしょう

それでは

2010年3月16日火曜日

出猩々ミニ取り木・独立

盆栽素材をゲットするには、実生、挿し木、取り木、接ぎ木、根伏せなどいろいろな方法がありますが
ミニ盆栽を比較的短時間で仕立てるには、なんといっても取り木が便利ですね

早春もしくは入梅ごろに施術しますが
気の早いひとは9月ごろには台木から外してしまう人もいるくらいです

この出猩々は昨年の春に取り木をかけました
樹髙はわずかに5.0㎝、太さは人差し指くらいです

さて今日は晴れて親からの独立の日
ポイントをしっかりおさえ自立の道を歩めるようにしてやりましょう


下の黒っぽい層が従来の地表で、上の茶色い層が取り木をかけたときに盛った赤玉土、その上に薄く水苔の層が見えます
発根した根は従来の表土の中にも食い込んでいますが、食い込んだ先端は不要ですから

赤玉土の層の下から切り離します
この作業には小さな盆栽用のノコギリがあれば便利です



このように切り離します
まさに親離れの第一歩!



発根した根を傷めないように足元の水苔を少しずつ取り除く
この水苔はあらかじめ細かく切ったものをしようしているので、根を傷めずにわりと容易に取り除くことができます(重要)



途中経過です、ここで作業をやめてはいけません
すっかり水苔を取り除くまで続けます

見た目にはいっぱい根があるように見えても
その多くは複雑に絡み合っているだけなので、足元から発根している必要な根だけを残すようにします



切断面を観察します
切断面の上部の黒っぽく変色しているのは、環状剥皮した箇所

その上の生き生きした茶色の部分は、剥皮によって形成されたカルス



新しく根張りとして必要な根だけを残し、
それらが伸びて絡み合っていた先端はすべて除去します

また新しい盆栽の根の底部にあたる箇所は
なるべく短めに切り詰め、さらにカルスの形成により完全に肉巻きするように処理します

この処理を怠ると、長い年月には底部から幹の中心部のかけて腐食してウロとなり
樹勢に大きな影響がでてしまいます



底部の切り口に癒合剤を塗ることも忘れないように



さらに根張りの高さをそろえるために根を一本切りましたよ
怖がったり根の数を惜しんではいけません

初心の方は、これで大丈夫!? とご心配しているでしょうが
だいじょぶですよ

余分な根を残さない方がいいですよ
もう親からの養分をもらえないので、この出猩々は必死に自立しようと頑張るんです(人間の子供だって同じ・過保護はいけません)

生き残るために、今は発根していない箇所からも根を出そうとがんばるんですね
数本の根でもかならず力強く生き抜いてくれるでしょう


鉢底にたっぷりゴロ土を入れ赤玉の小粒のみで植え込みました
こんごの生育も追跡してお知らせしましょう

では!