2007年12月31日月曜日

今年もきょう一日
一年間を思い出すと、平凡なようでけっこういろんなことがありました

そんな中でも、盆栽人にとって一番印象に残るのは
やっぱり、今年の猛暑とそれに続く長い過酷な残暑でした

ともかく凄かったとしか言いようがないほどで
あれを境に、地球温暖化の問題も現実味をもってわれわれの頭にも染みこんできました

私自身も、夏の培養に対する考え方と姿勢を改めざるを得ないほどで
機会があるごとに、友人からの情報交換に努め、早くも来年以降の夏対策を練っています

もう日本の夏は亜熱帯だ!
その覚悟を肝に銘じていきます

ところで、今年もいろいろお世話になりました
来年もよろしくお願いいたします



この暮れの最後の仕入れで巡り会った楓の株立ち
私の親しい友人が愛好家からわけていただいたもです

盆栽との巡り会いはなんといっても、タイミング
暮れの車の渋滞を億劫がらずに出かけた、お天道様からの私へのご褒美でした

みなさんと一緒に長所欠点をゆっくりと観察して、来春以降の培養計画を立ててみましょう
樹高は12.5cmで左右の幅は23cm

持込の古さが抜群で、八方に広がった盤状の座がとてもきれい
わらかい幹立ちのバランスもよく、全体の姿は優美という表現がぴったりです

聞いてみると、今までの持ち主は10cm以下が主力の愛好家なので
ちょっと大きくしてしまったために手放したそうです

私が見てもこの楓は、1~2年の間に摘み込みがちょっと足りなかったかな
骨組みには影響なくとも、枝先にわずかながらも伸びすぎの印象がありますね

おそらくこの楓の全盛期には、一流展示会(国風展や雅風展)に出品可能な姿であったでしょう
たった1~2年の油断や手抜きであっても、繊細さが持ち味の雑木類にはかなりのダメージとなります



座元の拡大図

緩やかに裾野を描いて広がる曲線がきれいですね
各枝の別れ具合にも統一感が感じられます

カットパスターを塗った部分は不要枝を外した痕ですが
このくらいの大きさなら一年ちょっとでふさがりますから、気にはなりません



後ろ姿には、正面よりも動きと変化が感じられます
名木に裏表なし、と古人が言っています、まさにその通り



後ろから見た座元にも動きがあって、文句なし

以上のように、根張り幹立ちなどの骨格は申し分ありません
雑木らしいやわらかさと優美さを具えた、かなりの優れものです



それでは、主幹の樹冠部付近をよく観察してみましょう

枝先の整理が十分でなく、少々荒れていますね
小枝同士が絡んだり、場所により粗密があったり

むーん、何かが原因で、ちょっと手が抜けたんですね
これほどの繊細な骨組みをもった雑木は1~2年手を抜くと、その結果はすぐに表われてしまいますね



正面へ向かって左側の枝先です

ちょっと伸びすぎてはいますが、まあまあに揃っています
小枝の密度が平均しています

最低限、これくらいでなくてはいけませんね



向かって右側の枝先です

強すぎる枝先があって、それが目立ちます
他の小枝の密度も足りません

雑木の手入れの基本は
1 芽摘み
2 葉透かし
3 (場合によって)葉刈り

でしたね



今後の方針

1 来春に植替え(現在の仕立て鉢使用)
2 来春に芽当りを確かめながら、追い込みの剪定
3 春から入梅にかけ、芽摘みと葉透かしを励行
4 樹勢を考慮しながら葉刈り

この作業の繰り返します

数年計画で白線の辺りまで追い込みます
予定樹高は11cm

水やりに気を使い、肥料は秋に少々、そのような管理になるでしょう
もちろん、夏の異常な暑さ対策た最大の課題になることは、間違いなしです

復活とさらなる前進をかけて、がんばりまーす!!

それではみなさん、よいお年をお迎えください

2007年12月24日月曜日

究極の針金かけ


樹高8.5×左右12.5cm

足元に器用な模様のある黒松、一枝と二枝も低い位置にあって腰の据わった姿が魅力

そのせっかくの足元の模様を幹の途中でダラケさせては、平凡な模様木になってしまいますから
頭をつぶすつもりで、コケ順に従って下から芯までしっかりときつい模様をつけます

しかし、足元から葉先までのサイズはわずかに8.5cm
この短い距離にしっかりと針金を巻いてきつい模様をつけるには、それなりの覚悟と技術が必要になります


ご覧ください

ニの枝の上、幹のコケたあたりから上に太めの針金がしっかりと巻かれていますね
針金と針金の間隔をせまく、きつめに巻くのがコツ

しかし、これが難しいのだ!



樹高11×左右14cm

次の教材は、立ち姿が雄々しくスケールの大きな構図が頼もしい黒松ミニ
何より足元の力と立ち上がりの一曲が利いていますね


足元から芯までの模様に統一感を出すために、ニ枝にかけた太い針金を芯まで巻き上げ曲をつけます


よくご覧下さい
針金と針金の間隔をせまく、きつめに巻いていますね

頭の部分は、1~2年後にもう一度前向きにつぶし、完成予定樹高の10cmまで短縮する予定
今年はここまでが限界のようです

ところで復習の項をご覧になりましか?
用いるのはヤットコですよ、ペンチでは先が大きすぎますしニッパでは力が入りません、柄の長いヤットコです

では

2007年12月22日土曜日

けやき実生二年生・ほうき作りの必殺技

前項で不要枝の整理についてお話しました
今日は、それと前後して行うほうき作りの必殺技をご紹介しましょう


枝抜きの要点は

1 放射状に伸びた枝を良とし、その流れを極端に乱す枝は不要枝とします
2 枝の芯からの別れの角度が大きいのも不要枝
3 不要枝を外すにはハサミを使わず、指先でむしり取るような感じで慎重に作業する

でしたね

その枝抜きの作業は、この必殺技の前でも後でも大丈夫
用意するのは0.8ミリのニューム線だけ


まず最初の枝分かれを締めます

この必殺技の目的は

1 枝分かれを鋭角になるように
2 両脇の垂れ下がった枝を上向きに
3 曲がった枝を真っ直ぐに

などなど、要するに、すべての枝が美しく放射状に天に向かって伸びるように導いてやることです
枝に柔軟性がある二年生のころにしっかりとほうき作りの基礎作りをします


枝の上部を掌で握ってまとまるように癖をつけます
この場合、掌を上下にしごいてはいけません(冬芽を擦り落とさないように)


0.8ミリのアルミ線でらせん状に縛り上げていきます
注意点:太いアルミ線だと枝を痛めるし、これ以上細い線だと木肌に食い込んでしまいます


はみ出す小枝のないようにぐるぐると巻き上げていきます


最上部まで巻き上げます
全体の曲がりを直して真っ直ぐにしましょう

最大の注意点:針金を巻く方向に全体がらせん状になりがちです
手早い作業ですべての枝が直立するように、あまり力を入れずに巻き上げるように


仕上がりました

以上に上げた注意点に気をつけながら実行してください

注意点

1 必ずムロに保護する
2 一ヶ月後に針金を外す
3 外した後で不要枝の整理をする(既に行ったものも再点検する)

追伸(縛る素材について)

今回はニューム線を用いましたが他にも、銅線、太めの木綿糸(タコ糸)など
身近にある材料を使ってください
要は、作業が容易でけやきに傷をつけなければいいのですから
ゴムひもなんかも使えそうですね

2007年12月12日水曜日

けやき実生二年生

異例な夏の暑さと過酷な残暑を生き抜いて、ご覧のように立派に成長しました

どうですか、みなさん
ずいぶん大人になったでしょ

立ち上がりの幹もかなり充実して太りましたし
梢の先端もずいぶん密になりましたね

二年生とは思えないほどに
けやきの大木の片鱗が感じられるようになりました

7月と12月の画像を比べてください
成長の軌跡がよくわかります

今年の芽摘みと葉透かしは、ゆうに10回を超え
水はもちろん肥料も切らすことなく与えました




2007/12の姿


2007/7の姿


さて、落葉後だって安閑としてはいられません
早くも来年以降の姿を睨んで、不要枝の整理をする時期です

枝抜きの要点

1 放射状に伸びた枝を良とし、その流れを極端に乱す枝は不要枝とします(右の矢印の枝)
2 枝の芯からの別れの角度が大きいのも不要枝(左の矢印の枝)
3 不要枝を外すにはハサミを使わず、指先でむしり取るような感じで慎重に作業する



現段階で不要枝とされる主な枝は上記の2本
それらを取り去った予想図です

2007年12月10日月曜日

山もみじ・使っちゃいけない枝

樹高6.0cmの山もみじ
土に隠れてよく見えないけれど、根張りは八方にあり
模様もよく、コケ順もよし、模様の外側に枝があって、端正な模様木に仕上がりそう


今年の春にじゃまな前枝を2本抜きました(傷口が完治している箇所)
模様の外側に一、二の枝が揃っています


芯の部分にあった芽を整理し、新しい芯を選びました
その下方に三の枝もとれました

同時に上部の前方にあった芽のかたまりをそっくり外したので、幹筋がきれいに通りましたね
さて、ここで大切なことです


一の枝の矢印と矢印の間に節がありませんね
つまりこれは、節間(せっかん)の伸びた「使っちゃいけない枝」なんです

初心者の方は、最初に伸びた枝を切るのが不安で、どうしても思い切ることができませんが
思い切らないと一生涯(おおげさ)後悔するのが、このように節間の伸びた枝なのです

節と節の間には芽が吹かないので、将来にわたって困ることになります
来春の芽出し時に、思い切って元の数ミリを残して切り取りましょう


枝作りの要点

1 わずかに残した枝元から伸びた芽の中で、中くらいの勢いで節間のつまった枝を選んで枝の芯とする
2 さらに、その枝の一節目から吹いた芽で枝分かれを作る
3 次ぎの枝の一節目から吹いた芽で、さらに枝分かれを作る

この繰り返しで枝の基本形を作っていきましょう

2007年12月9日日曜日

楓ミニ・樹形基本構想

おおよそ二年ほど前に、寸法(5cm)がいいのと葉性がいいのが気に入って求めた楓の取り木素材
ただ親木から切り離されて間もなく、根の状態は非常に頼りないものでした

もしかしたら育ちきれずに、途中で枯れちゃうかな
そんな恐れもあったので、頭の部分を根を充実させるために、わざと芽摘みはしないで伸ばしました

おかげで今年はご覧のように、芯がしっかりと伸び
鉢内にぐるぐると小根が廻っています

こうなれば樹形の基本構想を建てて切り込みにも耐えられる


正面らしき角度より
芯はしっかりと伸ばしました


幹筋と枝順から見て、この角度が正面らしい

慎重に前枝を2本を切る
さらに向かって左のニの枝の元の芽を整理(足元と幹筋の見通しがよくなる)

切り込みに際しての要点:剪定の当初は枝の細部にはあまり拘らす、要点だけを大雑把に


幹の左側からのぞいていた裏枝のゴツイ部分を整理
ここまでくると構図がよりはっきりと見えてきました


幹の右側からのぞいていた裏枝のゴツイ部分も整理
これにより幹筋と枝順がはっきりと見えてきました


来年は芯を作り込む段階です

芯の選定

1 徒長させて部分をすべて切り取って、芯は古い小枝を立て替える
2 小さい芽を芯にする
3 この部分は胴吹き芽が出やすい、来春に新しく吹いた芽を芯にする

さあ、あなたならどうする!

2007年12月8日土曜日

出猩々もみじ

鮮やかな春の芽出し、小さめで姿のよい葉、細い枝先、白く美しい木肌

おまけに取り木もしやすく、いいところだらけの出猩々もみじ

ところが、唯一ともいえる欠点は、枝の節間が伸びやすく
しまった枝をつくるのには、なかなかの辛抱がいることです


三年くらい前に取り木をかけた出猩々の株立ち、昨年の春にきれいに根を裁きました
小さめの仕立て鉢に入れたため、枝先の徒長もかなり落ち着きを見せ始め、節間のつまった小枝がふえてきました



要点:節間のつまったいい枝を作るには

1 節間が長く徒長しやすい枝は、元から切ることを繰り返す
  根気よく続けることにより、節間のつまったいい性質の枝が生えてくればそれを活用する
  (よりよい枝に切り替える勇気が大切)

2 鉢を小さめに、さらに春の肥料はやや控えめに


不要芽や不要枝を整理しました
株立ちの基本形がだけをしっかり掴んで、無駄枝に惑わされないように


節間のつまった短めの枝を残しました


後ろ姿
主幹の背中に若い徒長枝が走っていますが
この枝は来春に元の数ミリを残して切ります

その元に吹く芽の中で、いい性質の枝を活用するようにします