2021年1月21日木曜日

超ミニサイズ盆栽

盆栽の世界で普通に小品盆栽といえば、最大で18から20cmくらいで、間口80cmくらいの箱卓(はこしょく)で飾れる大きさのものをいいます。またさらに、それよりぐーんと縮まったサイズのジャンルもあって、戦前から東京下町を中心に栄えています。
挿し木や取り木で簡単に種木をゲットして、ハサミを中心にして、ミニミニ盆栽を作ってみましょう。


山もみじ超ミニサイズ 樹高3.5cm

普通の山もみじを小さく小さく追い込んで、本格的な模様木らしく作ったもの。このようにもみじを小さく作るのには幾つかのポイントがあります。
1 3~6cmくらいの小さな仕立て鉢に植える。
2 針金の使用は最小限として、ハサミでの切り込みを主体にする。
3 不定芽を利用して枝を作る時などは、1cm以上の節と節の「節間・せっかん」は
  思い切って取り除く。


0.3から0.5cmくらいの詰まった枝の連続で枝のふくらみを作っていきます


こちらは小葉性の舞姫もみじ。普通種の山もみじよりも小さく作りやすい。


取り木をかけて三幹に仕立てました。


こちらも舞姫もみじです。やはり種木のてっぺんを取り木して変形の株立ち樹形を作りました。舞姫の場合は胴吹き芽が吹きやすいので、いいところに吹いた芽を生かし、不要な枝芽は思い切って除去する勇気を持ちましょう。


 

2021年1月17日日曜日

鞍馬舟形石

江戸時代より文人墨客に珍重された加茂七石のひとつにあたるのが鞍馬石。養石により時代感が伴うとさらに侘び寂びの趣が深まります。


鞍馬石 間口12.5×奥行き11.5×高さ12cm

ちなみに加茂七石とは、貴船石、畚下石(ふごおろしいし)、加茂川石、雲ヶ畑石、賤機石(しずはたいし)、八瀬石の七つです。


舟形を利用して草物盆栽の根洗いなどを植えておいたのでしょう。そろそろ本格的に時代をつける段階です、
石が水の溜まる形状ですとカルキがこびりついて取れなくなりますから、盆栽棚で養石する場合でも、常に水が溜まらないように乾いた状態を保つように心がけましょう。


裏正面からの姿。水石として水盤で眺めてもよし、鉢の代わりに草ものを植えて添え草として飾ってもいいでしょう。ただこの鞍馬石ほどの高いレベルになると鉢代わりではもったいない感じですね。上手に時代をつけて水石として眺めたいですね。

 

2021年1月8日金曜日

平安東福寺広東釉外縁丸


平安東福寺広東釉外縁丸 間口22.8×奥行き22.8×高さ3.8cm

広東釉(かんとんゆう)と云えば東福寺、東福寺と云えば広東釉と云われるほどに、その魅力は盆栽鉢の世界に知れ渡っています。ところでさる文献によると、初代東福寺が広東釉を用いるようになるのは、彼が山科へ移り住んで後の昭和20年代に入ってからだと云われています。と云うことは、昭和のごく初期から始まった彼の本格的な制作活動の中期以後の作品に広東釉作品が多いということでしょう。



正面からの図。


広東釉の濃淡の輝きと窯変による釉薬の輝きがすばらしい。


鉢底や足の作りに初代東福寺の特徴が顕著に見られます。


濃い緑色と窯変部が醸し出す釉薬の美しい混濁が東福寺広東作品の真骨頂でありましょう。


窯変と長年の持込により、広東釉が美しく銀化(ぎんか)しています。
落款は楕円の中に東福寺とある、いわゆる「草鞋落款」です。


緑というよりもマリンブルーと云った方がいいでしょう。


縁の内側の釉薬が銀化して宝石のような渋い輝きを見せています。


ホツレやニューではなく釉薬の表面が荒れています。


わずか1mmほどの釉薬のホツレですが、チェックしておきましょう。

 

2021年1月5日火曜日

鉢の検証「白泥丸」


正月の3日に、親しい市内の愛好家さんから鉢の買取を依頼されました。この愛好家さんとはもう何十年のお付き合いで、若い頃には他の盆栽仲間も交えてずいぶんと飲み歩いたポン友でもあります。
さて、そのあたりはともかくとして、中の一枚が今日検証するこの白い土の丸鉢です。
サイズは、間口22.8×奥行き22.8×高さ9.0cmの反り縁(ソリエン)で、これだけの時代感がありながら小さなホツレひとつない完品です。ただ、一目では産地(中国鉢か日本鉢)が特定しにくいのです。
ではその点をポイントにして、いろいろな角度から見たままを箇条書きに列挙してみましょう。



1 正面からの見た場合、形からだけでは中国か日本かは断定不能ですが、ボディーの胎土は日本鉢らしくのっぺりした質感です。


2 全体の形から受ける質感ですが、中国鉢の場合はもう少しどっしりとした重量感が感じられる印象ですね。


3 縁の作りも柔らかな感じで、どちらかと言えば日本鉢の印象です。
ただ穴の数は、大穴が1個で小穴が2個の合計3個で、不思議なことにすべて本穴なのです。


4 この3つの水穴はすべて本穴。後穴(あとあな)なら納得できますが、日本鉢でも中国鉢でも、こんな本穴は見たことないですね。



5 この水穴が後穴であれば文句無く日本鉢と断定できますが、お話したようにこの水穴の開け方は中国鉢の特徴がはっきりと現れているのです。
ちなみに、鉢の内側のロクロメも日本鉢の特徴を示しています。

という訳で、胎土や作風からは中国鉢、水穴は本穴で中国式ということになります。
ちなみに、前の所有者は中渡りの中国鉢として入手したそうですが、私は日本鉢として評価しました。さて、貴方の見立ては如何でしょうか?


 

2021年1月3日日曜日

黄実ずみ中品


黄ずみ中品 樹高37cm×左右35cm


樹種的に説明するとりんごの野生種とも云えるずみは深山海棠とも近い。野生種であるために木肌や枝打ちが野生的な雰囲気があって、それゆえに実物盆栽としての人気が高い。
特に、この黄色い実のずみは実成りがいいのも特徴で、かつ小枝も細かくほぐれるので、盆栽としてまことに優れた樹種といえましょう


鉢持込の長いずみなので、木肌はもみじのように真っ白で古色感にあふれています。


枝打ちも細かいので雑木類としての魅力も持ち合わせています。


小さ目の実と細かい枝先が釣り合っているので小品盆栽として適した樹種といえましょう。


足元の根張りにも安定感あり。


次の植替え(今春)では現在よりもやや小さ目の鉢を選び、枝も全体に締め加減に整理するように剪定します。




 

2021年1月2日土曜日

幸太郎遠山石

北海道日高山脈のふもと、沙流川の側の平取町あたりから採取される幸太郎石。北海道を代表する水石といえば神居古譚石、千軒岳石に加えてこの幸太郎石が代表的な産地といえるでしょう。
幸太郎石は赤、黒、青の三色のを基調にしながら、それらの単体であったり、三色の石質が交じり合いながら天然自然の造形美が表現されていたりします。


幸太郎石 間口45×奥行き18.5×高さ7.0㎝
杉井家旧蔵品

左側に穏やかな頂上を頂き、さらに右方向に緩やかな稜線が下りながら、景色の最後に表情豊かな小高い小山が盛り上がって全体の景色を締めています。



険しい山容というより、穏やかに人里を囲う穏やかな風景。



紅葉の晩期を思わせる赤色、硬質の黒、宝石風な青色の三色。
さながら紅葉期の連山の晩期を思わせる色彩感覚です。銘をつけるとしたら、やはりテーマは晩期、紅葉期などがイメージとなるでしょう。


景色の右側の止めとしての小山の稜線。


後姿。


紫檀高級台座ですが、約5ミリほどの僅かな欠けがある。


台座を外して真上から見る。



紫檀高級台座。


台座の内側に前の所有者の覚書のメモ用紙が貼ってあります。
この幸太郎石は千葉県館山市の杉井忠司氏の旧蔵品でした。杉井氏は10数年前にお亡くなりになりましたが、日本の水石界で知らぬ人のいないほど超有名な大収集家です。杉井氏逝去の後の売り立て会の際に手に入れた私の親しい盆友から、最近譲ってもらったものです。現在桐箱製作中です。箱が出来上がったら改めてご披露したいと思います。