2018年9月28日金曜日

窯傷・東福寺2

こちらは間口10cmくらいの東福寺の定番である手捻り丸鉢。普通ならご紹介するほどの珍しさはなく欠点もあるのですが、一部に特別の魅力を兼ね備えているので話題にしてみます。

東福寺手捻り辰砂釉丸鉢

東福寺手捻り辰砂釉丸鉢と呼ぶのが本式でしょうね。おそらく初期の登り窯作品でしょう。辰砂釉が部分的にエメラルド色に変化してえ深い輝きを見せています。

この鉢の見せ場は、鉢の内側に濃く垂れたエメラルドと辰砂釉の深い輝きです。まるで宝石のように輝いています。

釉薬が足元に流れてやや足元が乱れていますが、深い輝きを放つ釉薬の魅力のおかげで、足元の乱れはほとんど気になりません。燦然と輝く釉薬の魅力にただ脱帽です。

2018年9月27日木曜日

窯傷・東福寺1

もう何十年もお付き合いしている市内の愛好家さんが足を怪我してしまい、所有品をいくらか整理したいとおっしゃるので、まずは当面使いそうもない抜き鉢から買取りさせていただきました。その中から出てきたのが今日ご紹介する東福寺窯変太鼓胴丸鉢。間口は30cmほどの中鉢です。

やや厚めのがっしりとした胴体で、灰釉が基調。その上から全体に緑釉(りょくゆう)の窯変が出て焼き物としてのおもしろさが表現されています。ただ正面から見ると向こう側にバックリと窯傷があり、これを力の表現と見ればなかなかの迫力です。

やや焦げ茶いろの土目で、胴はやや肉厚のがっしり形、色調はやや暗い感じですが、存在感は十分です。
窯傷(カマキズ)の拡大図。10年ほど前に私が買っていただいたものです。今回久しぶりに手にしてみて記憶が少しずつ戻ってきましたが、さすがに当時の価格や入手先などは思い出せません。

ともかく、こうして全体をながめると、東福寺らしい東福寺といえる鉢ですね。

窯傷の部分には接着剤が流し込まれていて補強されているので、音もでないし傷がこれ以上広がる心配もいりません。どんどん使い込んで時代感がつけば、もっと見栄えもよくなるでしょう。まあ傷物ではありますが、腐っても東福寺ということで使ってみたいと思います。



2018年9月10日月曜日

姫柿’(荒皮性)ミニ

老翁柿(ろうやがき)もしくは姫柿という名称で、この樹種が盆栽界にデビューしてから何十年経ったでしょうか。いろいろな記憶を繋ぎあわせて思い出してみると、とにかく30年以上になることはまちがいなさそうですね。
当時は、当才の根伏せ苗でさえ数千円からものによると何万円と、ビックリするような価格で取引されていました。最初の頃は黄色実が主流でしたが、様々な交配によっていろいろな特徴をもった品種が作り出されました。現在では盆栽界において、実物盆栽として席飾りには欠かせない重要な樹種となって盛んに栽培されています。

これはもう5年ほども我が盆栽屋.comの棚に5年以上長逗留している姫柿。太くて短い特徴のある幹筋がおもしろいのですが、とにかく締まった枝振りに作るために切り込むので、なかなか実を成らすことができません。そのために木姿はかなりよくなっているのになかなか売れません。

しかし、今年は培養がうまくいったようで、枝もしまって姿がピリッとしてきました。それに現在付いている来年用の芽も良く充実しているので、来春には花芽になりそうなのがたくさんあるので楽しみです。

後姿も締りが出てきました。この力のある幹と締まった枝振りで実が成ったら見ごたえありますね。
このように5年も6年も盆栽棚で飽きずに水をかけてやると愛着はひとしおで、ある日突然買い手のお客様が現れたりすると、たとえ売り物であっても少々可哀想な感じになるものです。

というわけで、暑かった今年のなるもそろそろ秋の気配が濃厚になってきて、盆栽界でも実物が気になる季節になってきました。