2012年3月24日土曜日

楓根接ぎの結果

どうしても欲しいところに根張りがない
そんなくやしい思いをした愛好家さんは大勢いらっしゃるでしょう

たかが根張り1本とはいえ、盆栽人にとっては
何ものにも代え難くたいせつなんですね

今日ご紹介する楓も、昨春期待して植替えたところ
いちばん肝腎な足元の踏ん張りどころに根張りがなかったのです

まだ素材の段階ではありますが、立ち上がりや幹筋の模様に愛嬌があって、こいつはものになるぞ
そう期待してそれまでの1年間めんどうを見てきただけに、そのときはがっくりしました

他の位置の根張りはすでに甲羅状になっているだけに
よけいにくやしかったことを覚えています

そこで、もっとも欲しい位置に1本だけ貫通式の根接ぎを施しました
その結果をご覧に入れましょう


根接ぎの結果確認のために根をほぐしてみます
後ろに突き出ているのが貫通式の苗の頭部分です

どうですか、いい根でしょう
ちょっと見ではどの部分が接いだ根なのか判然としないほどです


ここです
ここにドリルで穴を開けて楓の実生苗を通したんですね

1年が経って、糸のように細かったひげ根も順調に太りました
見たところ一箇所から4本に分岐していますね


このまま4本すべてを残しておくと、熱をもってしまいかえって醜いコブ状になったら大変ですから
1本はもとから切り、もうい本は1㎝ほどに短く追い込み、勢いを制御しました

ところで、この角度から見ると他の根も接いだようにおもえてしまうほどに
元気よくいい位置からたくさんの根が出ていますね、楽しみです


底の部分の根だってこんなにきれいですよ


もう1~2年この仕立鉢で樹形の骨格作りをする予定

接いだ頭の部分の切り離しは、安全を期して入梅以降に行ないます
決して焦ってはいけません

2012年3月23日金曜日

作る・出猩々もみじ

手がけてから今年で6年目に入る出猩々もみじ

2010年からは、葉刈り後に出る節間(せっかん)のつまった短めの枝を使って小枝をふやす作戦に変更
昨年にはその効果がややあがって、ごらんのようになんとなく全体像がまとまりを見せてきました

向かって右の低い位置に欲しいと思っている枝も、まだ呼び接ぎをしていませんが
ただ芽摘み、葉切り、葉刈りなどの当たり前の手入れだけでも、それなりの成果は上がったようです

そこで、今年はさらにその方針を推し進めるために
鉢を小さくして小枝作りに重点をおいてみようと思います

今までの項を参考にしてください



まだ骨格は当初の理想的な域には達していない現在の姿ですが
節間(せっかん)が伸びやすい出猩々もみじの特性を考慮して、このあたりで一度姿を整えます

整った段階で気にくわなければ、またまた素材に戻して
また根本から改作することも可能ですからね

このやり直しがきくのが雑木類の便利なところですね



前項の「けやき古木」と同じように、根の底まできっちりと追い込みます



周囲の根も小さな鉢に収るように思い切り切り込む



足元のよごれもきれいに水洗い



間口14.5㎝の鉢に入れましたが、あと数㎝の短縮はゆうゆう可能です

現在の樹髙は11㎝
足元や木肌の古色感は抜群ですね



今年は無理な欲を出さずに、平凡に当たり前の手入れをくりかえし
画像のように小枝をふやし、全体の姿にまとまりを出そうと思っています



後ろ姿

それでは、入梅頃にまたご紹介しましょう

2012年3月22日木曜日

けやき古木の根さばき

春の彼岸前後は植替えの最適期
みなさんもがんばっていることと思います

とにかくこの冬はひどい寒さで、私も例年よりも植替え開始が例年よりやや一ヶ月も遅れたので
このところ連日作業に追われています

さて、今日の教材はけやきの古木

昨年の冬の初めごろ入手したものですが
用土が老朽化していて今春の植替えはぜひとも必要な状態でした


取木で作り込んだ根張りが特徴で、八方根張りが見どころ

根の状態はいたって健康ですから
思い切り根をさばいて若返りをはかることにしました


大胆に根をさばいて、一番大切な足元の根を裏側から検証すると
前回の植替えでは根の底の部分の追い込みが足りなかったようで、根全体がややあばれ気味でした

しかし、底部分に腐れはないし、不要根もそれほどおおくはありません
だいじょうぶ、きれいな根ですね、少々根を追い込めば合格ですね


根さばき完了
このように根の底が露出するまで切り込みます


根と根の間に詰まった古い土も水圧ポンプできれいに取り除きます


鉢底にゴロ土をたっぷり敷いて水はけよく植替えました
今年一年の成長が楽しみです

強く追い込まれた根先から新しい根が分岐し
木そのものがグーンと若返って元気が出るでしょう

ちなみに、けやきなどの雑木類は普通一年おきに植替えますが
このような古木であっても数回に一度くらいは、今回のように用土の全取替えをして樹勢を保つように心がけます

では

2012年3月20日火曜日

真柏ジンのお化粧

長年の風雨にさらされて白骨化したジンやサバのイメージは
真柏や杜松盆栽にとっては最大の見どころといって過言ではありません

しかし、せっかくのジンやサバでも、ときどきは手入れをしてやらなければ
汚れたり苔が生えたりして腐食してしまいます

ですから、一年に1回くらいは腐食とめの手入れをかねて
お化粧してあげましょう

時期は一年を通していつでもOK
でも、石灰硫黄合剤を使うので、冬期以外では薬剤が葉に触れないように気をつけましょう


用意するもの

石灰硫黄合剤と水彩絵の具のホワイト
くどいようですが、絵の具は水性にかぎりますよ、油性は絶対ダメ


ナイロン製の筆、大小数本
ちなみに、100円ショップで売っていますよ

これもナイロン製に限ります
動物性の毛の絵筆では、硫黄合剤のアクで痛んでいっかいこっきりになってしまいます


硫黄合剤は原液のままで使い、ときには白絵の具と混ぜたりします
また、この他に小さな容器に水を少々用意しておき、白絵の具を溶くときに使います


ジンやサバが汚れた真柏


こちらの真柏もかなり汚れていますね


幹掃除するための道具は、歯ブラシ、金ブラシ、千枚通しなどを使いますが
なんといっても高圧力の水圧ポンプが便利です(3万円くらいしますが、便利便利、欲しい片はお世話しますよ)


ジンやサバや水吸いにこびりついていた汚れが落ちました
このまま半乾きの状態まで待ちましょう


乾いたところでお化粧の始まり
まず、石灰硫黄合剤の原液を塗ります

硫黄合剤は木材の腐りどめのためですが、このまま乾くと真っ白には仕上がらず
やや黄色っぽくなります


硫黄合剤が生乾きのうちに、水彩絵の具のホワイトを上塗りする
生乾きだと絵の具がよく伸びます


仕上げりはこんな感じ
白骨化したジンのイメージが強調されまさいた


絵の具が水吸いの部分にはみ出さないように、ていねいに塗る


こちらの真柏もきれいにお化粧がおわりましたので
絵の具をよく乾かします

簡単でしょ

ジンやサバの腐りとめを兼ねたお化粧
グーンと鑑賞価値がアップしますよ