2008年7月26日土曜日

過水にご注意

盆栽人にとっては「水やり」が勝負の夏となりました
今年も梅雨明けの初っ端から例年以上の過酷な猛暑の様相

盆栽にとって水やりは、「水やり三年」とか「水やりに始まって水やりに終わる」といわれるほど
盆栽にとって奥の深い技術といえます

ついウッカリしの水切れなどを気をつけることはもちろんですが
案外に多いのが「過水」の害です

「過水」は一時的な水切れと違い、ジワジワとボディーブローのように根にダメージを与え
本人の気がつかないうちに盆栽の勢いを奪ってしいます

ベテランは、根を常に水びたしにする「過水」のこわさがわかっていますので
「過水」はかえって、熱心な初心者が陥りやすい落とし穴のようです

盆栽の水やりの鉄則は、「乾いたらやる」ですから
だんだんに「乾かすことの勇気」も学んで頂きたいと思います



この安部性もみじのような、薄目で鉢底の平らな鉢は乾きやすいがのですが
構造上水をやった後の一時的な水抜けが遅いのが特徴

ですから水をやった後に、このように鉢を傾けて余分な水分を切っておきましょう
または、片方にカイモノをし傾斜をつけておくと水が早く抜けます



この楓の入った丸鉢も底が平らなので↑の楕円鉢と同じです
傾けて余分な水を切っておきます

このように細かい気遣いひとつが盆栽の生育に大いに影響します
「水やり三年」、がんばってくださーい!

2008年7月25日金曜日

黒松芽摘みと改作

基本の骨格を作る過程の黒松ミニの素材

この段階で、立ち上がりから芯までの幹筋、利き枝の決定などが未完成の場合
ご覧のように、思い切って樹勢をつけて太らせます

伸ばし太らせて切り込む、そしてまた伸ばし太らせて切る
この繰る返しで基本樹形のあらましを作るのです

黒松盆栽では、初期の段階ではこのように少々荒っぽいことを繰りかえさないと
黒松特有の力強い感じの樹形を作り出すことはできないのです

この黒松も春からの肥培で十分に樹勢がつき
切り込みのチャンスがやってきました

黒松の芽摘みの時期としては少々遅めになってしまいましたが
今年の夏は例年より暑そう、樹勢が抜群にいい、その二つの理由から改作を実行します


作業前


新芽の元の昨年の葉、つまり古葉を2~3対くらい残して刈り取ります
このさい、元の1~2ミリくらいは残すように(この作業はあらかじめ4~5月にやっておくといい)

枝と枝が交差した奥まった箇所もきちっと手を入れるように
これで幹筋の細部までよく見えるようになりました


ところで従来は裏と思っていたこの角度、こっちの正面の方がいいようですね

先ず足元から立ち上がりにかけて動きがあります
一番成長の著しい芽を芯にすると模様もきつくなり、枝くばりもうまくなる

急遽こちらを新正面に変更です
古葉を整理して木筋をよく見えるようにすると、こんなうれしい効用もあるんです


不要な枝を数本抜いた時点で再点検

白点が芯、赤点が差し枝、右の黄点は前枝として小さく残します
左の黄点も小さくして残しましょう


今年の新芽の半分を残して枝として活用します
だんだん構図が見えてきましたね


左からきた幹が右に向きを変える理想の位置に赤点の枝があります
右の黄点はやや斜め前に向いた前枝、左の黄点も重要な枝となるでしょう
白点の新芽も半分を残して新しい芯としました


完成した新正面(樹高9.0cm)


従来の正面は裏となりました

関東以西の愛好家さんにとっては、元気のいい素材はまだまだ切り込めますよ
関東以北の方はちょっと時期が遅いでしょうから、来年廻しですね

2008年7月22日火曜日

作る・きんず

6/24のつれづれ草で枝の剪定と葉切りをしたきんず
あれからわずか1ヵ月足らずの現在の姿をご紹介しましょう

6/24の項とよく比較して勉強してください


6/24の整枝剪定と葉切り作業終了の画像


他の樹種がどんどん芽吹くなかで、きんずだけは6/24の時点でも新芽が動いていませんでした(これが普通)
それが、ほれ、この通り、剪定と葉切りをしたとたん、不思議なほど新芽が吹き出してきました

きんずにやっと遅い春がやってきたのです

きんずにはこのように、他の樹種とはちょっと違った特殊な性質があるのです
あのままにしておけば、まだ今頃になっても眠りから覚めない場合だってあります

きんずは寝坊助なんですね
ですから、時期を見計らって「たたき起こして」やりましょう

その方法が「葉切り」なんです
ご理解していただけましたか?



順調に伸びた新芽を針金で伏せてやりましょう
柔らかい新芽ですから、0.8ミリの細いニューム線で、そっと作業をします


6/24にかけた針金の延長の新芽にもかけます


真っ直ぐに勢いよく伸びた芯の芽は、特に強く曲げておきます
強く曲げることによって勢いをやや弱める効果があります


芯の付近の拡大図

勢いのよい新芽が針金で制御されたので、この後にも新芽が伸びだしてきますから
あと1ヵ月くらいのあいだに、もう一度針金をかけてやるといいでしょう

あとはこのまま培養し、夏の終わりごろに針金を外します
枝の剪定は来年の6月までがまん

いかがでしたか?
剪定と葉切りがまだの人は今からでも間に合いますよ

即、じっこう!

2008年7月21日月曜日

フリースクール

今日のフリースクールにご夫婦での新人さんの参加がありました
ご夫婦の場合、ふつう奥様はお供であることが多いのですが、このAさんの奥様はマジで盆栽に挑戦中でした

盆栽歴は約1年、持参した五葉松や長寿梅や真柏なごど5~6鉢を手入れ
その後で、私の手持ちの黒松を教材にして、芽切り(短葉法)のお勉強

初めての経験なので、おっかなびっくりやっている二人に先輩のKさんが
”先生の持ち物なので間違って切っちゃったって大丈夫、思い切ってやったほうがいいですよ”

と、これまたタイムリーで適切なアドバイス
これで気が楽になったのでしょう、二人の新人さんの手つきが急にはかどり始めました(笑)

それにしてもあまりにお若い様子なので、ガマンしきれなくなって年齢を聞いてみると(ご主人にです)
なんと30歳!

現在、市内からIさんという31歳の会員さんが参加していますが
記録がまたまた更新されたのです

ちなみに、私には36歳の長女と33歳の長男がおりますが
”こりゃあ、節酒節煙に努めてがんばりゃあ、孫の世代にも盆栽を教えることができるゾー”

と一瞬、途方もない欲に目がくらんだ私でした、ハイ


2008/07/20撮影

さて、ベテランKさんが愛培中の山もみじ双幹、今年の春に私と二人で植替え
芽摘みと葉切りがきっちりと励行され、樹勢が安定しています

若い木ならばともかく、枝先の繊細さや幹肌の時代感を求めたいこの段階になると
多肥多水を避けながら、芽摘みや葉切り後に二番芽が吹かない程度の管理が思想的です


足元の拡大図

根の張り方に変化があります
盆栽界では「根張りに動きがある」といいます


約1年半前の姿


今年の春に白点のあたりから芯を切り戻し、同時に付近も詰め込みました
この整枝の結果は、ことしの秋の落葉後に成果が見られるわけです、お楽しみに

2008年7月19日土曜日

黒松・赤松短葉法

このところ、毎年少しずつ芽切の日付けを遅めにずらしています
一昨年までは7月1日を中心にしていましたが、昨年は7月10日

今年は暑い夏になるという長期予報もあったので
さらにずらせて7月15日を中心にしてみました

ところで、芽切の時期を決める要素はいくつかありますから
ここでしっかりと復習しておきましょう

1 樹勢が強い場合は遅め、弱い場合は早めに

2 個々の芽の伸びも考慮に入れる
  短めの芽は早め、勢いのいい長い芽は一週間ほど遅らせる

3 日当たりのいい置き場は遅め
  日当たりのよくない棚の場合は早め

4 長期予報で冷夏の予想される夏などは、早めに

5 植え替えた年は芽が伸びにくいことが多いので、早目が無難

6 大物盆栽は早め(葉が長めの方がバランスがいい)
  小品盆栽は短い葉の方が似合いますから遅めです

7 地方によって日照時間や気温に差があります
  関東から西の地方は遅め、北は早め

以上のような条件を考慮に入れ経験を積んでください


黒松の春の画像


2008/07/15 芽切完了


赤松 2008/07/15 芽切完了

※ 黒松や赤松の芽切作業をまだやっていない方
7月一杯ならスレスレで間に合いますからさっそ作業してくださいね
ただし、作業後は日当たりのいい場所で管理しましょう

2008年7月14日月曜日

山ずみ呼び接ぎ

枝の欲しい位置に伸ばした枝を誘導して接木するの方法を、「呼び接ぎ」といいます
昔の人たちは、誘導することを呼ぶと言い替えたのですね、命名っておもしろいですね

さて、この期待している山ずみ、枝に2本、根に1本の呼び接ぎがされています
今年の春先に外しても大丈夫とは判断していたのですが、今日まで我慢しました

というのは、早く結果をみたくて気のせくあまり、失敗することも案外あるんですよ
それも、かなりのベテランにそういうことが多いみたいです・・・


枝は伸ばし放題


1の呼び接ぎ用の徒長枝は先で方向転回して2へ
2がボディーの背中側で呼び接ぎされ、3と4を形成しています

呼び接ぎ成功の一つの目安は
接ぎ口の手前(2の部分)よりも接ぎ口の先、つまり3と4の方が太くなっていること(よく見比べてください)

もう一つの目安は、新しく作られた枝(3と4)がみずみずしく
接ぎ口あたりの表皮に、肉上がりが活発に行われている勢いが感じられるです(これは勘と経験が必要)

よく検証すると、その2点ともクリアーしています

ただし、5の根への呼び接ぎについてはいくらかの不安あり
おそらく大丈夫とは思うけど、もし外れたら大痛手

よって、根だけは慎重を期して次回へまわすことにしました(ガマン、ガマン)


入り口の不要枝を切る


不要枝を外した姿


拡大図


根の呼び接ぎの箇所拡大図

ボディー側の括弧上の半円の線が呼び接ぎされた痕です
完全に癒着した表皮はみずみずしい印象ですが、ここは慎重にいきましょう


作業完了図

呼び接ぎが成功したかしないか、結果は1~2週間で判明します
新しい枝の芽は葉が元気であれば成功、失敗ならたちまち葉が萎れて枯れてしまうからです

ところで、今では名木の作出に欠かせない技術となった呼び接ぎ
いつか実演をご披露しましょう

では

2008年7月10日木曜日

 楓石付大改作(於:7月6日のフリースクール)

KさんとAさんは松戸の隣市に住むフリースクールの常連さん

Kさんは先日の「作る・出猩々もみじ」で活躍してくれた人
Aさんは今日の教材を「楓石付の大改作」でお手伝いしてくれた人です

このお二人は、来るたびにこの楓の石付をながめて
芽の吹いた箇所や伸び具合をながめているのです

この楓石付への、お二人の意見は
向って右方向に張り出している石が大きすぎるので、構図上のポイントがぼやけてしまう

つまり、石を小さく削れば、楓の方に焦点がしぼれ
木姿や根の動きがより強調される、というものです



この画像を見れば、それはもっともと頷けるご意見ですね、みなさん
向って右側に屏風のように張り出した石が大きすぎるため、前方の根の力の印象が弱く見えるのです

私だってわっかっちゃいるんですが
でも石を削るって難しいですヨ!

このような石灰質をかんだ竜眼石(りゅうがんせき)には、肉眼では見えない石の目があって
どのような角度で割れるか予測不能な場合もあるんです

そんなわけで、石を削る作業はちょっと見合わせたい気分なので
お二人の熱心な勧めには一応トボケておいて、とりあえず枝葉の剪定にかかりました



枯れ死寸前だったのが、これ、この通りの元気な芽吹き
主幹の芯の芽吹き位置が気に入らない以外は、すべて満足といっていいほど

3月に思い切って切れなかった箇所を切りなおし、陰になった小さな芽にも日が当たるようにし
呼び接ぎで主幹の芯を希望の位置に作ったりと、三人なかよく順調に剪定作業は終了



ところが、やっぱり仕事は流れ出すとその勢いは止まらないものですね
最初は躊躇していた私なのに、何時の間にやらノリノリで、ああしろこうしろ、とお二人に注文をつけておりました(笑)



裏側から見ると石の大きさがわかります
つまり手のひらで掴んでいる部分と、その下の白い部分が不要な部分

手のひらで掴んでいる部分を自然な味わいを損なわないように形良く削るのが、最大の難関
ちょっと不可能な感じですが、もう後へは引けません



白い石灰質の部分から攻める
タガネを使うのがKさん、押さえるのがAさん、無責任な私は監督



仕事に夢中で途中経過の画像を撮りそこないましたが

いかがですか、奇跡的にドンピシャの出来上がり
神さまが削ったように、人工の臭いはまったく残っていませんいませんよ



作業終了

石が小さくなったので、幹と根の動きの印象が強くなりました
この作業の効果は、木姿の基本が見えてくる来年の今頃になると、もっとわかりやすくなります

Kさん、Aさん、お疲れ様、ありがとう、うまくいってよかったですね
失敗したらお二人のせいにされたかもね!?

2008年7月4日金曜日

くちなしの保護(続編)

前項では安全第一の過保護ともいえる管理に徹してきたくちなし
今ではご覧のように順調に芽出しも進んでいます

今は保護室から出て屋外の棚に置かれています

ところで↓の画像を注意深く見てください
気がつきましたか?

そうです、鉢土の表面が乾いていますね

植替え後に根が活着するまでは土を乾かしてはいけませんし
また根が活動していないので、あまり乾かないものなのです

ところが根の活動が活発になるに従って
この画像のようによく乾くようになってきます

この乾き具合が根の活着や活動の目安になることを
みなさんに覚えていただきたく、今日の話題にしました



乾きの遅い鉢にどんどん水をやっていると
鉢土の温度が上がらないために、ますます根の活動が不活発になります

乾きにくい鉢は根の活動が鈍っているので
乾くのをまって水をやるようにするのが、ベテランの水やり法なのです

普通、元気のいい盆栽の鉢はよく乾くのでどんどん水をやり
乾きにくい鉢は幾分水を控えめにして様子を見ましょう

以上が水やりの基本です

2008年7月3日木曜日

真柏の手入れ

真柏は松柏盆栽の花形、ただ、その花形ゆえにか初心の方々にとっては高級品のイメージが強すぎて
培養法や手入れの仕方が案外に知られていない、そんな雰囲気もあります

真柏は丈夫な樹種で、水も肥料も大好き
暑さ寒さにも強く、初心者でも容易に育てることが可能です

さて、その手入れ方法ですが、真柏の芽摘みについて多くのマニュアル本では
伸びた新芽を指先で摘み込むように説明されていますね

これじたいは正しいのですが、これだけではちょっと説明不足で
指先だけでなくハサミを併用しなければうまくいかないのです


早春に針金をかけなおし再び形を整えた真柏、ところどころに新芽がツンツンと伸び
芽の元の部分はやや木質化しかけています

この伸びた芽を指先で引っ張ってはいけません
ハサミを使い切るのが正しい方法


ハサミの先端を使い、他の新芽の先を傷めないよう伸びた新芽のみ切り落とします


残された新芽の先を指先で摘み込みます
このようにハサミと指を併用してください


ついでにジンや水吸い部分の掃除をしましょう
高圧のポンプで水洗いするときれいになります

歯ブラシや柔らかめの金ブラシでもいいですよ


だいぶきれいになってきました


作業完了


後ろ姿

みなさん、さっそく実行!