2009年7月31日金曜日

赤松プチ改作

手にとって眺めるたびに気になっている赤松がある
ご覧のミニである

かなり古く持ち込まれており、力のある足元から立ち上がった幹筋も面白いし愛嬌タップリ
左右の利き枝もしっかりしているので、出会ったときには自信を持って求めたんです

しかしいつまでたってもちっともお呼びがないので、おかしいな、目が狂ったのかな!? 、とやや自信喪失気味のこのごろでした
(盆栽屋は自信満々に見えても、じつは案外に小心で世論に一喜一憂の毎日)


今朝5時半に目覚めて棚場をひと回り、やっぱり目につくこの赤松
手にとって眺める、何がいけないのだ・・・?


30分ほど眺めているうちに、アット気がついた、そうだ、そうだ!!
一の枝と二の枝(左右の赤点)が天秤枝に見えちゃうんだ

この2本の利き枝は幹の下部(一の枝)と上部(二の枝)から出ているんで
持ち主は勝手に一人合点してるだけで、みなさんには立派な天秤枝に見えちゃうんだな

そっか、論より証拠なんだ
理屈よりも実際の姿で示さなきゃ、説得力がないよなー!

善は急げ、それで、左右の利き枝の高さに段差をつけるには
青点の空間を広げて芯(上の赤点)を起すことにする


狭い空間を広げて芯を起すのにはかなりの力がいる、古木なのでかなり硬い、ひとりじゃだめだ
しかたない、寝ぼけて機嫌の悪いカミサンをたたき起こして助手を命じる

芯の下のわずかな空間に指を入れて持ち上げているあいだに、カミサンが裏から竹棒(1.5cm幅)の先を突っ込む
うーん、これで一の枝と二の枝に段差がついて、はっきりと弾みが出たな


芯を起した様子を側面より


竹棒と同じ太さの木の枝を突っ込む
どうですか? 冒頭の画像と見比べてください

芯が起きた分だけニの枝の位置が高くなり
一の枝との兼ね合いがよくなりましたね


やや下方から見ると、もっとはっきりと見えます
もう天秤枝には見えませんね


もっと拡大して見ましょう

左右の一と二の枝の高さに明らかな段差が出来上がりました
青点が芯を起すための支えの木の枝です

上の赤点が芯
樹高はやや高くなりましたが、それでも樹高8.5cmと悠々のミニサイズです

完全に幹に癖がつくまでには数年かかりますが
来春あたりにはもう少し太い木の枝を差し込めば完全ですね

ということで、早朝一番のわずかな労力の改作でしたが
収穫はかなり大きいものでした

「論より証拠」
まさに「小さな労力大きな収穫」、わずか30分間の赤松プチ改作でした

2009年7月29日水曜日

杜松芽摘みと葉透かし

杜松のもっとも大事な作業は「芽摘み」であることは、盆栽人の誰もが求めるところで
杜松の枝の棚は丹念に繰返される芽摘みによってできあがります

ところが中級クラスの愛好家でもフトコロの不要芽や枯れ葉の整理が
徹底されていないことが意外と多いようです

これまでも雑木や黒松などではちょくちょく解説してきましたが
今日は杜松の「芽摘み」と「葉透かし」とを同時にしっかり勉強しましょう


春からすでに2回の芽摘みを行い、今回は3回目の芽摘みが必要になりました
肥料もたっぷり効いて樹勢も旺盛です

ちなみに杜松は年に数回の芽摘みを行いますから
普通の樹種よりも肥料は多めに与えましょう


下方からフトコロをのぞいて見ると、ほれごらんの通り、枯れた小枝や葉がビッシリ
過去2回の芽摘み時にはフトコロの掃除を怠った証拠ですね(苦笑)

秋までこんな状態で放置すると、通風が悪いのでフトコロの新しい芽も蒸れてしまいますね
フトコロ芽の大切さは盆栽の樹種すべてに共通したことなので、急いで芽摘みと葉透かしの必要があります


頭の付近拡大図


若い芽は指先またはピンセットで芽摘み
しっかりと輪郭をそろえる場合は、ピンセットを使用した方が深く摘み込むことができます


やや固まった芽はハサミで切り込みましょう
この場合、残された元の葉を傷つけないよう上手なハサミの使い方をしましょう


芽摘みがあらかた終了した時点でフトコロの枯れた小枝や葉をていねいに掃除します
この作業はとても大切、できるだけていねいに行ってください


フトコロの掃除が終わったら再び手直しの芽摘みを行って作業完了
これで姿も整ったしフトコロの通風もよくなりました

よかった、よかった!

このあとは8月中旬から下旬にかけてもう一度芽摘みを実施
その後の9月中旬頃を今年の摘み収めとして冬を迎えます

2009年7月25日土曜日

スクール新築

愛好家のみんさんのために少しでもお役に立てばと思い立って始めた「フリースクール」も
早いもので今年で3回目の春を迎えました

そこで是非とも自慢したいのが、常連さんの年齢層
私の息子(30代前半)と同年代の生徒さんが4人もいるんですよ

そして私より年上のお兄さんが1人で、あとは全部年下(ホント)
盆栽界の高齢化が危惧されている今日ですが、わがフリースクールは安泰ですな(笑)

えッ? 雰囲気はどうかですって!
これもバッチリお任せください

最年長で長男格のTさんがとっても若々しい方で
工学部の機械科出身だけに工作熱心で、呼び接ぎや取り木の工作が大好き

昼食は何時も奥さんの手作り弁当持参で
特にその「お稲荷さん」のおいしいこと(またお願いしまーす)

話題がそれましたね
そんな訳で月に2回、私も張り合いよく過ごさせてもらっています

ところが、今までのスクールの場所は床のある屋内なので
暑さ寒さには強いのですが、植替えなどの作業となるとやりたい放題というわけにはいきません

散らかしちゃうとか、あまり汚しちゃとか、どうしてもみんさん遠慮が働いて
なんとなくぎこちない感じでした

そこで、渋るカミサンを巧みに懐柔、カミサンの草花の置き場所(7~8坪)を払い下げてもらい
コジンマリとしたビニールフレームを新築(床は土間)しました



7月13日 昨日に引き続き骨組みの細部の工作中
全体の工程の中では、とくに引き戸の組み立てがかなり難しいようだ


脚立に乗っている職人はビニール留めの金具を取り付け中、昔のフレームよりも格段進歩していてる
しかし留め金のパーツの数が多くて素人にはちょっと難しいようです


2日目の夕方完成!
寒冷紗の遮光率70%、これ以上の遮光率だと暗くなっちゃうそうだ


道路方角には巻き上げ式の通風窓
昔のフレームじゃ、無理だった


東西に引き戸を設置したので通風はバッチリ
床が土間なので土足で出入り、植替え時に汚しても大丈夫(これが有難い!)

ではでは

2009年7月24日金曜日

杜松ミニ・芽摘み仕上げ

樹高わずかに4.5cmのミニ杜松

手元に来て1年くらい経ったでしょうか
小さくいので見落とさないよう目立つ場所に置いて可愛がっています


06/18撮影

春の芽だしも好調で、今年2回目の芽摘みの時期が来ました


ほころびかけた新芽を指先で摘む
柔らかい芽は軽くひっぱると簡単に摘めます


頭の部分の芽摘みが完了、次に枝の部分に移ります
あちこちと無秩序に摘まないで、このように全体の姿を整えながら順序良く摘み込んでいく


芽摘み終了

差し枝の部分は小枝の吹き込みがまだまだですから
頭の部分に比べてやや軽く摘み込んでおく

とくに先端の芽はもう少し徒長させて力をつけたいので
勢いのいい芽を数個残しました


7月初旬撮影

前回の芽摘みがうまくいったようで、一芽吹いた姿にふっくらとした貫禄がでてきましたね
このように芽摘み作業の目的は、単に徒長を抑えるだけでなく、姿を作り整える気持ちで行いましょう


ここで白線で囲んだ差し枝の先端にご注目

先述したようにこの部分は、もう少し徒長させ勢いをつけ
もっと充実した感じがほしいですね

やはり差し枝の先端に勢いが感じられないと
全体の姿に「張り」がなくなります(これってだいじなことですよ)

しかし目的を達したころになると、先端の小枝が木質化して指先では摘めませんね
そんな時にはハサミで切り込みます

その場合の注意点↓


kのようなハサミの使い方は×
元側の葉の先端も切ってしまい醜いハサミの痕が残るし、樹勢を損なう原因にもなりかねません


元側の葉を巻き込まないようにハサミの先端を斜めにして切るのです


このようなハサミの使い方をすれば元側の葉の先端は無傷です


07/17 撮影

さて、撮影時点でしみじみとこの可愛らしいミニ杜松をながめていたら
今までの裏側から眺めた方が、立ち上がりから幹筋に力と味があることを発見しました


これからはこちらを正面にすることにしました
みんさんはどうお思いますか?

従来の画像と見比べてください
では

2009年7月22日水曜日

湿性コケの退治

青々とした鉢土表面のコケは盆栽をより美しく見せる演出に必要なものですが
コケによっては、いいコケと悪いコケがあるので注意しなければなりません

ふつうコケは湿地や日陰を好んで生えるものですが
盆栽の健康のためには、乾燥と日当たりに強く、きめが細かく丈の短いものが好ましいでしょう

ヒゴケやビロードのような乾性のコケは、盆栽の時代感や美しさを引き立ててくれますが
幹の上部まで這い上り、松類や梅の荒れた木肌の裂け目に食い込む湿性のコケは歓迎できませんね

こんな悪いコケは木肌を腐食させたり、害虫の住みかになったり
さらには鉢内の通気を妨げるため、根の呼吸作用を不活発にしてしまうのです


最近愛好家より譲り受けた黒松、4階の屋上の棚場でしっかり管理され元気は上々
しかし、湿性のコケが鉢の表面にびっしりと生え、さらに根張りを伝わりじわじわと上部に這い上げっています


見るからに湿気を含んだ湿性のコケがじわじわと長い手足をの伸ばし
幹の上部や木肌の裂け目にもしっかり食い込んでいますね

これはしっかり退治しなければなりませんぞ


ピンセットの先端でつまんでも、裂け目に食い込んだコケを完全には取り切れません
無理をするとせっかく荒れた木肌も一緒に剥がれてしまいます

山もみじや楓のように木肌の滑らかな雑木類には可能ですが
松類や梅など木肌の荒れを尊重する樹種には、ピンセットでは無理なようです


そこでとっておきの方法があるんです

石灰硫黄合剤の0~5倍液を用意してコケの表面に容赦なく塗りつけるのです
ただし、薬品が木肌に触れるぶんには無害ですが、絶対に鉢内の根には染み込まないように気をつけてくださいね

もちろん葉に触れてもいけませんよ


塗り終わったら日に当て、なるべく早く乾かすようにします
次の水やりのときに、融けて流れて鉢内に染み込んではたまりませんから


コケ退治作業から数日経った黒松
原液を使用したので真っ白でちょっと目立ってしまい、鑑賞上は好ましくないですね(苦笑)

私は0~5倍液を使ってきましたが、おそらく10倍液くらいでも効くかもしれません
みなさんはまず10倍液くらいで試してみて、効き目を確かめてみたらよろしいでしょう

そうすればこんなに真っ白にならないですからね


拡大図では枯れた湿性コケの繊維がよく見えます

この枯れた繊維は、ピンセットの先端で木肌を傷めないようにていねいに取り除くか
自然に風化してなくなるのを待ちましょう

それでは

2009年7月11日土曜日

五葉松取り木・乾かす勇気

水切れによって盆栽を衰弱させるのは盆栽初級の方が多く
そろそろ中級に成長してきたくらいの方、それにベテランでも几帳面な真面目な方

そのような愛好家さんに案外多いのが、「水のやり過ぎ」による不健康
盆栽人にとって恐怖の真夏も近づいてきたこの時期、今日はご自分の水やりについてふり返ってみましょう

水やりを完全にマスターするのが上級への近道
しっかりと勉強してくださいね

水やりの原則は

1 乾いたらやる
2 午前中の水はたっぷり
3 夕方の水は少なめに

今の時期の水やり回数を仮に1日3回と仮定してお話しすると

1回目 なるべく毎日の同じ時間帯の午前中にたっぷりやり

2回目 その後は各鉢の乾き具合を見て、乾いている鉢のみ水やりする(これを拾い水と呼ぶ)

3回目 夕方の水やりは葉水を中心にして、根への水は午前中の半分くらいの感じにとどめる
     昼間は少々水が多くても発散しますが、夜間に鉢内の水分が多いと
     温度の低下と過水により根の呼吸作用が不活発になるのです(重要)

ですから、例えば朝夜しか水やりのできない愛好家のみなさんが
夜間帰宅して乾いた盆栽に接し、慌ててたっぷりやるのは、かえって逆効果

そんなときもはやる心を抑え、半分くらいの水量で我慢しましょう
水を控える勇気、乾かす勇気、これが盆栽上達の重要な鍵を握っているのです



以前紹介した取り木五葉松、親木から外したばかりの映像(2009/03/11)
この時期から3月の彼岸ごろまでは根が活発に動かないので、水を乾かさないように気をつけました

芽の動き出した彼岸ごろからは、朝にたっぷり
あとは土の表面の表情に注意して、半乾きになるまで我慢、ひたすら我慢

長雨のときは軒下へ取り込んだりして
ともかく過水にならないように

ときに鉢土の表面のようすによっては、朝の水やりさえも控えました



新芽は順調に伸びて葉もしっかりと開き、色つやもよし(6月下旬撮影)
勇気をもって抑えた水やりに徹したおかげです



しっかりと開いた五葉松の葉

よろしいですか、みなさん!
水やりの基本は「乾いたらやる」、そして乾かす勇気が大切ですよ