2008年5月26日月曜日

長寿梅の葉刈り

人気樹種の長寿梅ですが、案外にその培養管理法
とくに、小枝の剪定時期や葉透かしと葉刈りについては、ひとによりかなりの相違があります

剪定1回派 (春の新芽を伸ばしっ放しにしておき、秋になって剪定するひと)
剪定2回派 (入梅前と秋の2回剪定するひと)
マメ派 (伸びるたびにマメに摘み込むひと)

また、葉刈りや葉透かしをやるひと、やらないひとなどなど
あなたはどのようにしていますか?


これくらいに小枝がほぐれている持込の古い長寿梅は


ご覧のように今の時期になっても、ほとんど徒長しませんが
フトコロに日光と風が通るように、外側の大きめの葉を軽く透かせてやりましょう


基本樹形は出来上がっているが、もっと小枝を密にしたい長寿梅
樹勢もよく元気ですから、葉刈りをしてさらに小枝の分岐を促します


春の新芽を1~2芽残して枝先を切り込みます
(向って右の枝は利き枝ですから、全体のバランスを見て最後に切り込みます)


ハサミの先を使って丁寧に葉を刈り取っていきます
細かい作業ですから焦らずに


以前から気になっていた下の矢印の足元の食いつき枝は
上の利き枝をさらに強調するために、思い切って切り取ることに決定


足元の食いつき枝を外したので、向って右の利き枝が目立って
構図のスケールが一段と大きくなりました、正解のようです

前面に直径6~7mmの傷ができてしまいましたが
樹勢も旺盛ですから必ず順調に治癒します


後ろ姿


逞しい根張りと立ち上がりが一層引き立つように
今秋の植替時にはこの角度で植えつけます

今日は長寿梅の葉刈りの勉強をしましたが、その注意点

長寿梅の葉刈りをやるためには、たっぷりと元気をつけておきましょう
適期は入梅前
樹勢が普通以下の長寿梅には、葉刈りは禁物です

2008年5月24日土曜日

くちなし刈り込み

基本が出来上がったくちなしで、さらに小枝をふやしながら
しまった樹形を維持したいときに、一年おきくらいに強い刈り込みをします

暖かい気候を好むくちなしは、切り込みも植替えも5月には入ってからが適期となります


作業前の姿(樹高8.0cm)

要所に針金がかかっているので、まずそれを外します


このように基本形が出来上がっている場合の剪定は、いわゆるバリカン刈りでよろしい
まず頭頂部から始めますが、この箇所の切り込みの深さが全体の基準になります


頭頂部付近の切り込みの深さ(樹高)を決めます


頭頂部を基準にして全体のバランスを見ながら刈り込みを進めます


全体の骨組みが見えてきました


次の段階では、細部の枝にも気を配りながら、すべての葉を刈り取ります


葉をすべて刈り取ったあと、今までの枝の長さや植え付け角度などを再点検して見ます
このくちなしの場合は、単にサイズを短縮しただけで、大きな変更はありませんでした


樹高8.0cm

ただ、しっかりした本格模様木なので、丸鉢から長方鉢への植替えの準備にかかったところ
根の張り具合が満足のいくほどではありませんでした

それで急遽予定を変更し、仕立て鉢にて根作りと木作りをすることにしました
仕立て鉢に入れておく期間は2年間の予定です

2008年5月19日月曜日

作る・出猩々

され、2年前から仕立て中の出猩々もみじ
一年ぶりの登場です

まず過去のつれづれ草を見てください

1  2  3  4

昨日のフリースクールでのこと、常連のKさんにせかされ
重い腰がやっと上がりました

重い腰の原因は、出猩々は新芽の節間が伸びやすいため
いい位置に芽が吹いても、節間のつまったいい枝は10本に1本くらい、非常に少ないんです

さて、今年は使えそうな節間のつまったいい新芽が、いい位置に吹いているでしょうか
Kさんと二人でじっくりと検証してみました


樹勢はごらんのように申し分なし


下方からなんどもなんどもKさんとフトコロをのぞいて意見を交わしました


ポイントは3点

1 向って左の一の枝は、先端をつめて針金をかける
2 向って右のニの枝は、間延びしているので中間から切り戻し、新しい芽吹きを期待する
3 上部に勢いをつけるために徒長させていた枝(↓)を切り、新しい芯に切り替える

この3点で一番難しいのは3の新しい芯の選定


白線で示した切りかけの枝が、徒長させていた枝です

この枝のおかげで上部にずいぶん勢いがつきましたが、もう役目は終わりました
これ以上つけておくと、その付近が太りすぎてしまいます

幸いにその後ろに新しい芯の候補を発見
これはKさんの精密な検証によるものでした、感謝


新しい芯候補を発見したことで作業は一気にはかどりをみせ、急ピッチになりました

1 一の枝は、先端を追い込む
2 二の枝は、中間からの芽吹きを期待して詰め込む
3 将来の裏枝候補の細い新しい枝が2本
4 なるべくコブにならないよう、傷口の処理をしっかり行う
5 新しい芯(↓)候補はしっかり伸ばして勢いをつける


ポイントの拡大図
白癬の矢印が新しい芯候補です


新しい芯候補付近を裏側から見る
白線矢印が新しい芯候補


剪定後の全体図

さて、これから針金をかけ、左に傾いた芯を右方向へ曲げなくてはならない、ちょっと難しい作業になります
雑木類の枝葉は、松柏類のようには間単に曲がってはくれませんね

さあ、気合を入れて!


矢印で示した方向へ曲げ、将来は白線のような芯を形成する計画です


どうやら芯候補は右向きに曲がりました
盆栽用語で言うと「芯が起きた」、そういう表現になりますね

針金をかけている期間はおおよそ一ヶ月間
ひどく食い込まないうちに外すことをわすれてはいけません


作業完了図

現在の樹高は、針金の最上部で7cmです
新しい芯を作りこんで10cmで収めたいと計画しています

Kさんどうもありがとう
(じつは、針金以外の作業はすべてKさんがやってくれました)

では

2008年5月15日木曜日

遅霜はこわい

今日は実生かりんを題材にして遅霜の話をしましょう

かりんの芽動きはかなり早いので
柔らかい芽や葉が冷たい風や遅霜で傷まないよ気を使う樹種です

さて、4月初旬の時点でこのかりんは、日中は戸外で日にも外気にも当てながら
夜はムロの屋根下へ入れていました

そして、ムロ出しの予行演習のために
4月の初旬に、たった一晩だけ戸外へ置きました

しかし、そのころはいやに気温が下がる日々が続いたので
翌日から再び今までとおなじく屋根下に戻したのです
  

4月初旬、遅霜被害の前のかりん


ところが、それから数日後に、ところどころの新葉の先が黒くなっているのに気がつきました
たった一晩戸外に置いたときに、冷たい遅霜にやられたんですね


春先の遅霜にはまったく油断ができません

この時期には霜が降らなくとも、急に気温が下がって冷たい夜露に当り
柔らかい新芽や新葉が風邪をひくということが、たまたまあるんです



被害にあってから一ヶ月以上

1 冷たい夜露にあたらない屋根下で、冷たい風にあてないよう

2 午前中だけ日光にあて

3 一日数回の霧水をやり、しかし、鉢の水はあまり多すぎないように

そんな管理を繰り返しました


ご覧下さい

新芽がぐんぐんと伸び、先端へいくほどに葉が大きくなってきましたね
葉の色つやもよくなりました

気温も上がってきたので、もう安心です


後ろ姿

まだまだ肥料はやらない方がいいですよ
一度眠ってしまった根っこが、やっと再び眠りから覚め活動し始めたばかり

そういうふうに認識して、あと一ヶ月くらい経ってから、油粕の固形肥料を少々やりましょう
それがこの実生かりんの朝飯です


真上から

春先に出始めた葉は、遅霜にあたって寒さのために、一休みしてしまったので
ご覧のように大きくなれませんでした

その後の出た葉は次第に成長の速度を速め
倍くらいの大きさになり、色つやもよく元気に伸びています(これが復調の兆し)

ほんとに遅霜はこわいですね
回復にいヶ月以上かかってしまいました

さてこんごは、あと半月ほど半日陰で管理し
その間に完全に外気に慣らすようにもっていきます

教訓:春先に遅霜にあたって成長を休んでしまった場合は
その後にゆっくりと目覚めさせ、入梅ごろまでに完全に復調させるように(焦りは禁物)

2008年5月14日水曜日

真柏の基本作り

さて、真柏の基本形を作るときの針金かけ
もう一例お目にかけましょう



向って左の差した枝、整形前にはもっと幹から離れて緩んだ感じでした
コンパクトにして緊張感をだすために、もっと幹に近いところへ手繰り寄せたのです



太い枝なので、針金を巻いただけでは手繰り寄せることはできないので
ゴム管を通した針金を反対方向へ引っ張って、矢印方向へ寄せます



裏側から見ましょう
向って右が手繰り寄せる枝、左の枝も手繰られていますね
このようにいろいろと工夫して激しい曲をつけたりして、樹形をコンパクトに仕上げます



頭の部分に葉が吹き込めば、ごらんのように風格十分な仕上がりとなります

2008年5月12日月曜日

獅子頭・芽摘み・葉切り

これからが手間がかかりますよ
作業は次の段階に進みます



図のように4枚のうち、残された1枚の葉もハサミで切って面積を大幅に減らします
この作業を全体に行うのです、根気が要りますよ



作業前の画像と比べてみましょう
全体の葉の数はもちろん、葉の面積はおおよそ十分の一くらいになるでしょう



頂上付近の拡大図

この作業の効用

1 芽の先端の勢いを抑え、枝先の繊細さを促す
2 日当たりと風通しがよくなり、フトコロ芽の蒸れを防ぐ
3 眠っているフトコロ芽を活性化して芽数をふやす

ともかく雑木盆栽には必須の作業です
必ず実行!

さらに、作業後にフトコロ芽が目覚めて伸び始めたら
再び同じ作業を繰り返すことも忘れないように

では

2008年5月9日金曜日

獅子頭・芽摘み・葉切り

もみじ類の春の手入れ、芽摘みと葉切りについては
過去の盆栽つれづれ草で詳しくご紹介していますね

もみじ類ではもっとも重要な作業なんですよ
みなさん、しっかり実行していますか?

さて、今日はもみじ類の中の獅子頭もみじを教材にしてやってみましょう

獅子頭も山もみじと同じ方法で行いますが
芽先がツンツンと徒長しない性質のため、徒長しているのをつい見過ごしがちなのです

それでわざわざ山もみじと区別して取り上げました


春の芽出しからやく1ヶ月が経ちました
葉陰に隠れたフトコロ芽はもう1ヶ月も日に当たっていないことになります

当然風通しも悪くなっていますね、今月一杯には必ずやること
やらないと、あなたの獅子頭はフトコロ芽が弱って、メチャメチャになっちゃいますよ!


作業1 芽先の伸びにくい獅子頭でも、よく観察して1~2芽を残して摘む(切る)


作業2 残された1節の片葉を切り取る


芽摘みと片葉切り終了
葉数は二分の一以下になりました

獅子頭は葉が縮れて小さいので、かなり面倒ですが
根気よく一芽一芽整理していきます

作業は次へ続きます

2008年5月6日火曜日

真柏素材の基本作り

山採り真柏の再現を目指し、激しい幹模様をサバ幹に仕上げ、不要枝の樹皮を剥いてジンする
小品真柏の作出は、まさに小品盆栽界の夢です

大き目の鉢で肥培管理していた素材
昨年の早春、大幅に不要枝の荒切りをし根も切り込みました

完成予定樹高は13.5cmです


昨年早春の姿

春からこの秋にかけて根作りの管理も順調で
冬越しもうまくいき、いよいよ基本樹形作りの段階に入りました

以下、整形作業後の姿を見ながら基本樹形の解説を致します



将来の構図がはっきりと見えてきました
大器の素質十分ですよ

1 向って右手前に躍動するジンの動きを最大の見どころとしました
2 そのジンとボディーの動きを強調するために、植え付け角度を大幅に修正しました
3 向って左に突き出した枝はジンとして活用します

以上の3点が基本樹形を決めるポイントでした


正面の拡大図

1 火炎のように捩れながら躍動するジン
2 複雑に絡み合うボディーの力
3 捩れながら突き出されたジンが樹形をさらに雄大に見せています(将来は削り込む)


姿をよりコンパクトに縮めるための様々な工夫と仕掛け

1 ジンに木ネジを打ち込み、牽引するための基点としています
2 針金を巻いただけでは矯正できない場合の牽引の方法


後ろ姿


完成予想図

今年からいっぱいは、根作りを念頭において培養し
樹冠部の充実を目指します