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2020年11月12日木曜日

稚松愛草瑠璃釉正方鉢

稚松愛草の作品で辰砂釉の三味胴鉢の名品を一時所有したことがありましたが、最近その三味胴とよく似た雰囲気の正方鉢に出会って、一目で気に入って手に入れました。

間口4.7×奥行き4.7×高さ3.4cmのサイズで、大きさからいえばミニ鉢の部類に入りますが。がっしりとした切立の内縁のボディには重量感と存在感があってなかなかか見ごたえガあります。さらに鉄分の多い胎土にタップリと施釉された瑠璃釉の深い神秘的な輝きは非常に魅惑的です。



稚松愛草瑠璃釉内縁切立切足正方


愛草の瑠璃釉は大まかにわけて2種類あるようです。胎土が白色の場合は、淡く明るい発色が多く、鉄分の多い土目の場合はこのように湖の底のような深い発色になります。


愛草鉢の魅力はタップリと施釉され、ギリギリの線で釉が止まっているところです。
地味ながら隅々まで神経の行き届いた玄人好みのいい仕事ですね。


三味胴よりもくせのないシンプルな正方形。


これほどのミニサイズながら釉(クスリ)の流れに乱れはありません。まして登り窯の作品なのに、驚きです。


シンプルかつ味わい深い造形美が宿されている愛草鉢。


鉢裏と足の様子。


釉の流れに乱れはありません。


「稚松愛草」と何時もながらの丁寧な落款、まことに品格あり。


登り窯の灰被りの痕。


長年の使い込みによって深い趣の発色をみせる瑠璃釉。


2020年10月9日金曜日

稚松愛草鉢鑑賞

稚松愛草(わかまつあいそう)という作家は生没年も不祥で、京都の稚松小学校の近くに住まっていたところから、この陶名を用いたと伝えられています。まことにあれだけの名作を世に残しながら、あまりにも伝えられることの少ないミステリアスな作家です。



辰砂釉、緑釉、瑠璃釉などの発色は独特であり、他の作家の追随を許さないものがあります。造形的には全体に小振りな作品が多く、ゆるぎのない几帳面でバランスのいいのが特徴です。


このミニ鉢は間口が7.5cm、緑釉が温度の高い登り窯で変化し、さらみそこに持ち込みの時代感も加わって、愛草ならではの独特の趣が滲み出ています。


ところが眺めているうちに、あまりに時代感が付き過ぎて本来の釉(くすり)の色彩が見えにくいことに気がつきました。
そんなときには文房具屋さんで売っている「砂消しゴム」を使って、ところどころ、つまりボディーの隅や下地の透けて見えるような箇所を、少しずつ時代感を擦り落としてやりましょう。さらに縁の上側など、ところどころに変化を持たせるように、斑に汚れを擦り落とします。


縁の上場(うわば)や切足のやや上あたりの釉の止まったあたりに、釉の輝きが見られるようになりました。全体が明るくなって色彩にもアクセントが出てきたでしょ?


この角度から見ても、釉の輝いた箇所と落ち着いた時代感に覆われた箇所のコントラストに、赴きが感じられるようになってきました。この一連の作業はいわば鉢のお化粧というわけですね。


如何ですか?
最初の方の画像よりもずーっと輝いていませんか!?


この面も少々違ったイメージですね。


鉢裏と足の様子も検証してみましょう。愛草にとっては珍しいことに、焼成中の温度が高かったのでしょう、足の釉が僅かに流れて、窯内の棚板にくっついてしまいました。
まあ、鉢底からもろに見るとちょっと気になりますが、正面から見た場合は、許されるレベルの範囲でしょう。


深みのある釉ですね。さすが愛草です。


この面も他の面とは違った趣ですね。


この面の釉も艶が出てきました。








登り窯特有の灰被りの味わいが感じられる内側の画像。


落款は小さく「稚松愛草」
小さく控え目で愛草らしいですね。

 

2020年4月22日水曜日

稚松愛草・飴釉小鉢

稚松愛草(わかまつ・あいそう)は世にこれほどの名作を残しながら、故・河合蔦蔵氏に指導を受けたアマチュア作家で、京都市下京区の稚松小学校の付近に住まう京扇子作りの職人であったらしいと僅かに伝えられているのみで、それ以上の身の回りの逸話ですらあまり知られていません。
当時、初代香艸園主故・河合蔦蔵氏の主宰する坫陶会(ねんとうかい)には平安東福寺をはじめ稚松愛草、平安萬草、永田健次郎など次の世に大家となるべき俊英がそろっていました。この中で東福寺以外は作品の数は多くはありませんが、一目見れば作家名が浮かんでくるような個性あふれた作風を有している名人ばかりです。


間口5.5×奥行き5.5×高さ4.5cm
飴釉切立変足七角

私も愛草鉢のファンで、世に愛草の名品と知られるトップクラスの辰砂や瑠璃釉の長方鉢を持った経験があります。それらはすべて両方の掌の中ですっぽりと入ってしまうほどのサイズでしたが、いずれも遠くから離れて眺めるというよりも掌の中で撫ぜたり摩ったりしてまさに愛玩すると言うイメージの鉢でした。いずれも宝石のような釉薬の輝きが感動的で、ボディーは作者の手の温もりが伝わってくるような肌触りのいいものでした。


釉溜り(くすりだまり)が個性的


七角形のボディー
薬溜りと素朴な飴釉(あめゆう)の対比魅力的

愛草の作品には基本的には長方形の鉢が主流ですが、丸系統の作品もみうけらられます。ただ、その場合であってもさすがに天下の愛草ですね、単純平凡な作品の域には留めておきません。素晴らしい縄縁(なわべり)や縄目の胴紐をつけたりして、非常にレベルの高い作品へと昇華させています。


この作品も単なる丸か六角鉢で終わらせずに、なんと奇抜なアイディアを発揮して七角形の作品として仕上げています。


高台の外側は七角形で内側は丸

愛草の落款は「稚草愛草」の4文字の書く落款で大と小があります。


釉薬の特徴は鮮やかでたっぷりした質感でY。
窯傷がありますね。


↑の窯傷の対角の縁にも薬(くすり)ニューがあります。

以上、玄人好みの人気作家稚松愛草のお話でしたが、さして多作の作家ではなかったので市場に売りにでる数もそれほど多くはなく、お目に留まる機会も少ないでしょうが、機会がありましたら是非ともよく観察してきてくださいね。

2006年10月16日月曜日

思い出の銘鉢(10):稚松愛草 高取釉切立長方

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


間口5.7×奥行4.9×高さ1.9cm

愛草の珍しい高取釉
たっぷりと施された釉薬が登り窯の高温の炎によりよく溶け魅惑的な色調を呈しています


縁の上場、胴の上部、同じく下部と高取釉の濃淡の魅力が溢れています


愛草作品によく見られる、足部分に釉薬のくっつきが見られますが
この鉢の評価にはほとんど影響はありません


鉢裏の様子
このように鉢底まで釉薬の施されたものを「総釉・そうぐすり」と呼びます

2004年12月28日火曜日

瑠璃釉鉢5態

瑠璃釉を得意とする作家の作品を見比べてみましょう
作家と作品によって釉薬の特徴がかなり異なります
そのあたりをじっくりと見極めてください


平安香山 

澄んだ深みのある色彩と釉薬ののりのころあいがいい
制御のきいた品格が感じられる


平安東福寺

濃い目の色彩と透明感が特徴
ボディーの縁、中段、下段と釉薬の変化が印象的


平安東福寺

白釉の上に重ねがけされたこれも瑠璃色の釉薬
下地のためであろう、天衣無縫な明るさが特徴


今岡町直

鉄分を多く含む胎土の影響でやや暗い色調の瑠璃釉
窯変による紫の発色がおもしろい効果を上げている


稚松愛草

透明感のある瑠璃釉
清涼感と格調がみごと

2004年11月13日土曜日

謎の作家・愛草

稚松愛草は謎だらけの作家です
残された作品からその謎を少しずつひも解いてみましょう



稚松愛草作
緑釉金結晶外縁雲足長方盆(上)
瑠璃釉外縁長方切足長方盆(下)

稚松愛草は香艸園初代園主・河合蔦蔵氏が昭和13年ごろから主宰した「拈陶会・ねんとうかい」
のメンバーであったといわれますが生没年は不詳です
この陶名の由来は、京都市の稚松小学校の付近に居住していたことによるという説が有力です

この「拈陶会・ねんとうかい」は河合蔦蔵氏の指導のもとに小鉢作りを研究したグループで
かの平安東福寺も属しており、永田健次郎や平安萬草など後世に伝わる優れた鉢作家を輩出しました

その作風は端正で、瑠璃釉や辰砂釉に優れたものが多く
土は数種類に大別できます
登り窯の高温焼成のためややゆがみのあるものが多いのも愛草鉢の特徴です

上の緑釉金結晶外縁雲足長方盆は彼の作品としては非常に珍しくい釉薬と用いており
点々とちりばめられた金結晶が印象的です

下は愛草独特の透明感と清潔感のある代表的瑠璃釉作品であり
抜群の発色が魅力的です

平成2年日本盆栽協同組合編纂の盆栽鉢のバイブル「美術盆器」誌上に
愛草の代表作品として掲載されている「瑠璃釉外縁長方鉢」と同型同サイズで
その作ゆきにおいても遜色ありません

ちなみに、誌上に掲載されている有名なその「瑠璃釉外縁長方鉢」も
盆栽屋.comがその昔扱った鉢であることを添えておきます

愛草の作品は昔から熱狂的な愛好家の間で評価されてきましたが
今日に至り小品盆栽界において広く知られるようになりました




雲足と切足の違いはあるが端正でハッタリのないボディーの形はまったく似かよっています
この2点の比較により愛草の作風を強く認識することができます



上は明るい緑色に渋い金の結晶がみごとに散っています
平安東福寺も好んで使用した釉薬

瑠璃釉は戦前の平安香山に似通った印象
透明感と輝きが印象的です



ここでまず注目するのは土目
上は戦前の平安東福寺の用いた白い胎土と同一のもので
ざっくりしていながらも雅味のある質感です

彼らが「拈陶会・ねんとうかい」において同じ道を歩む同志でありライバルでもあったことの証明となるでしょう



稚松愛草の落款
じつに品のある落款です

この二つは画像の大きさが違いますが同一の落款
愛草は同じタイプの大小の落款があります