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2021年4月17日土曜日

大助・心山合作鉢

この数年大助鉢が中国の愛好家を中心に大炎上し、おかげで市場からまったくと云っていいほどに姿を消してしまいました。昔のツテや縁故をたよりの細々とした商品の調達ではとても市場の要求を満たすことは無理なようです。

まあ、盆栽鉢を商う業界人としては非常にはがゆい限りですが、加熱したブームが少しずつ静かになるのを待って、長い目で愛好家さんたちの収集意欲が持続するようにお手伝いしていきたいと思います。

佐野大助・赤絵玉縁撫角長方
間口7.5×奥行き6.4×高さ3.0cm

15年以上前に買っていただいたお客様から、下取りという形で譲り受けた大助鉢。「因幡の白うさぎ」の神話から題材を得た波とうさぎの赤絵。成型は心山です。


鉢底が焦げ茶色で足裏の明るい色彩と異なるのは、おそらく紅柄(ベンガラ)を塗って焼いたからでしょう。つまりこの部分だけはベンガラ焼ということになりますね。
渋い!!


大正8年生まれの大助は、健在であれば100歳を超えた年齢になっています。私とは親子ほどに歳が離れてはいましたが、壮年の頃の凄みのきいた表情は今でも忘れません。
「おい、そこのお兄ちゃん、どっから来たんだい?」って聞かれた時には、ちょっとばかりビビリましたっけ。


例えば大助が今生きていたとすれば、現在の大助鉢全盛の小鉢界の様子を見てなんと云うでしょうね?
まあ自信家でプライドの高い彼のことですから「当然、当然、遅すぎるくらいだぜ」くらいの憎まれ口は飛んでくるでしょうね。
旧い徒然草に、私の若かりし頃の逸話を載せています。キーワードは「佐野大助研究」で検索できると思います。どうぞ!


裏正面は寿。


闊達な大助の赤絵と安定感抜群の心山のボディー。


胴と外縁とのバランスが抜群です。心山のボディー成型の力量も秀逸です。


控え目でありながら存在感と重厚感を示す外縁のほどの良さには、目を見張るものがあります。実用鉢としての機能と印象も十分に具えています。

 

2019年12月11日水曜日

大助鉢、残念!

ここ数年の大助鉢の値上がり具合は、過去に他の作家の作品においてちょっと記憶にないほどの好調さといえるでしょう。その様相は、小鉢世界全体が好調であるというのではなく、大助だけが飛びぬけての独り勝ちという雰囲気だから、まったく驚かされます。


大助・染付外縁丸 間口6.3×奥行き6.3×高さ3.3cm

そんな情報が飛び回る業界では、じっと落ち着いてなんかはいられません。老いたりと言えども俺も盆栽屋のはしくれとばかりに、近隣の親しい同業者の小鉢のショーウインドウの中を半日がかりで物色。夕闇が迫る頃にようやく小さな桐箱に入った大助鉢を一つ見つけだしました。


そして汚れた箱の蓋を開けて二度目のびっくり!
鉢には小さな価格のシールが貼ってあって、な、な、なんとその金額は、あきらかに10年以上前の昔のままの数字じゃありませんか!


ちょっとひるんだ私でしたが、そこはベテラン、勇気を出して思い切って「これ、いくら?」と訊ねてみました。
書いてあるんだから聞く必要はないとも言えるでしょうが、明らかに昔の相場と認識できる数字ですから、相手は友人だし、これは気がとがめるのが普通ですよね。
すると、その数字を見たその友人は、またまたびっくり、書いてある数字の七掛けの金額を言ったのです。きっとこの友人は桐箱の底に押し込まれている鉢の銘柄を見ずに、シールの数字だけを見ていたんでしょうね。薄暮の時間帯だったし。


ここまでくればもう遠慮することもないか!
それでもちょっとばかり気もとがめましたが、素直に言い値の金額をお支払いして、めでたく取引成立という段取りに相成りましたが、勝負の世界は厳しいんですよね。友人といえど油断は禁物ですね。

ところでこの場合、私の値切りのテクニックの「廉いときは値切れ!」はまさか実行できませんでした。なぜなら、この鉢が大助だと相手さんが気がついた時点で、おそらく話は振り出しに戻ってしまうでしょう。もちろん言い分は私にありますが、普段から親しい同業者ですからね。そんなわけで暫くぶりで言い値で買いました。


と、ここまでのお話ならば、私だけが掘り出し物を見つけた自慢話で終わるのですが、このお話には続編があるんです。


結論を言いますと、家へ帰ってよく検品しますと、ボディーの下部から足にかけて窯傷(カマキズ)というか、釉(クスリ)ハゲのような傷がかなりあって、とても完品と云える代物ではなかったのです。


足にも窯傷(カマキズ)あり。ただし、ボディーの部分にニューがないのがせめてもの救いです。画像ではよくわかりにくいですがね。


それにしても、同業者もこの大助鉢にこんに傷があるとは、もうとっくの昔に忘れていたはずでしょう。ただ普段の宮本のように、検品もろくにしないで、ましてや言い値で慌てて買っていったな、なんて今頃不思議がっているんじゃないかと思いますよ(笑)。


戦いすんで日が暮れて、今日は慌てた私の負けでした!
明日からまたがんばりまーす!

2006年10月16日月曜日

思い出の銘鉢(15):大助染付 雷神図丸鉢

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


間口7.8×奥行7.8×高さ6.0cm

数ある大助作品の中でも、雷神を描いたこの染付鉢は傑作といましょう
力のこもった筆致でリアルな表現の雷神、まさにど迫力
改めて大助の絵のうまさに感動します

これほどの使い味を持ちながら
無傷完品


鉢底の様子
薄手のすっきりした磁器のボディーです


雷神拡大図
恐ろしい顔の表情、筆致に力がこもっています
細部の足の爪先の表現などにも注目


呉須の濃淡もみごとです


大助の落款が見えます

思い出の銘鉢(14):佐野大助 染付丸鉢

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


大助の絵画力のレベルの高さを示した最高傑作の名品
間口8.5×奥行8.5×高さ6.8cm


ボディーの正確さ、時代のよさはもちろんのこと
繊細な絵画の世界は、まさに月之輪涌泉に迫るほどの力量を示しみごとです

絵鉢作家の評価は呉須(青い釉薬)絵により定まるといわれています

単色の絵の具だけで遠近感や絵の興趣を表現するため
誤魔化しがきかず、実力がたちまち表に出てしまうのです

盆栽屋.comが大助ファンの収集家のみなさんに自信を持ってお勧め致します
無傷完品


拡大図
繊細な筆致です


情緒満点の大助の世界


丹念な描き込み


拡大図


鉢裏の様子

2005年12月11日日曜日

大助鉢の窯傷

参考資料として適当な大助鉢を入手しましたので
またまた窯傷の話をしましょう


佐野大助 五彩山水図丸鉢(磁器作品) 間口10.7×奥行10.7×高さ4.2cm

なだらかな峠の上り口の風景でしょう、これから上りにさしかかる馬子、下りてきた篭かきなど
茶屋らしき建物をポイントに画面全体に8人の人物を巧みに配した構図の妙

背景の中心を占める穏やかな丘陵も美しく、大助の五彩画として秀逸の出来を示す作品で
使い込みの時代感も抜群です


ところが、水穴の縁に数ミリのわずかな傷を発見
検証の結果、焼成過程での窯傷と断定しました

この水穴付近はもっとも窯傷の生じやすい箇所であって
焼き物の宿命ともいえるでしょう

しかし、傷は傷です

この場合問題なのは

1 将来の実用に耐えうるかどうか
2 傷の性質
3 大きさ、それに深さ

なのです

傷の大きさはおよそ3ミリ
また、長い年月の使い込みに耐え、窯出し以後に広がった形跡が見られないことから
性質はごく良質であることが理解できます


内側に達しているかどうかを見るためによく検証する必要があります

大丈夫です
これでかなり軽微であることが判明してきました


もう一度鉢底の面から傷の深さを調べてみましょう
画像からも傷は底の肉の厚さの半分までしか達していないことがわかりますね

この検証の結果、前項でもお話したように価格面の評価は下がるのは当然としても
「大助の傑作鉢」としてきっちり評価すべき作品であることがわかりましたね

さらに、売り手の業者側にとっては
買い手のコレクターさんに対し「窯傷あり」との説明責任があります 

(認めることは辛いけど) 傷は傷なのです!

欠点を認め説明した上での再評価、それが盆栽界の将来のために欠かせないことであると肝に銘じましょう

それではまた

2005年10月24日月曜日

佐野大助名作

先日、盆栽つれづれ草のファンの方から「最近のつれづれ草は掲載商品の宣伝でしょうか?」
とのメールを頂きました

これはまったく忌憚ない率直なご指摘で
私も汗顔のいたりという心境で、謹んでお受けした次第です

それがきっかけとなり、懸案だった「赤松大改作スペシャル」の重い腰が持ち上がった訳で
ともかく、HP開設当初の新鮮な気持ちを取り戻しさせていただいたこと、改めて感謝いたします

ところで、きょうの話題はまたまた掲載された商品からですが
既に売約済のものなので、ご理解とお許しをいただきます


大助については、ある時には一杯の酒飲みたさに絵筆を執ったこともあった、と巷間に伝聞されているほどで
それは、作風の多彩さの魅力と同時に名品と並品の差が激しいという、後世に残された事実もあります

さて、絵鉢作家の評価は呉須(青い釉薬)絵により定まるともいわれていますが
歴代の名人たち、月之輪涌泉、市之倉石州、宮崎一石等々の作品を見ればそれも頷けることです

単色の絵の具だけで遠近感や絵の興趣を表現するため
誤魔化しがきかず、実力がたちまち表に出てしまうのです

ところで、特に五彩画で知られる大助作品ですが、ご紹介するような呉須絵の名品も存在し
そして、不思議とこの磁器のボディーのものに多く見かけるのです


やはり大助といえども、彼の目標にした作家は天才・月之輪涌泉であり多大な影響も受けていますが
この作品は、涌泉に迫るほどの画境に達しているといっても過言ではないでしょう

繊細な筆致によるしっとりと情緒豊かな画面
みごとな遠近感の表現など、まさに大助最高の名品といえましょう


没後急速にその名が再評価され、盆栽界の隅々まで名を知られるようになった大助作品
こんごはさらに評価が進み、真にその名に恥じない名品が選別される時期に差しかかっているといえましょう

2005年9月8日木曜日

佐野大助研究

大助は絵師、そのボディー師としては紺野心山氏が知られています
心山との共同創作活動は、かの代表作「東海道五十三次」などとなって世に残されました

根っからのやんちゃ坊主で、年老いてまで遊蕩児の精神を失わなかった大助は
ある時には,いっぱいの酒飲みたさに絵筆を執ったこともあった、と巷間に伝聞されています

鉢作家でありながら自らはボディーを作らず、もっぱら絵筆一本を頼りに生きぬいた大助
その結果、大勢のボディー師との合作作品が作られ、期せずして作風の多彩さというありがたい遺産となり
現在の私たちに残されたのです

さて、そのように数ある大助を取りまいたボディー師の中に
宗像一蒼氏がいます

ちなみに、氏は現在伊豆の山中に隠れるようにひっそりと棲み暮らし
作陶活動を続けています


佐野大助・宗像一蒼合作 染付雷神図外縁丸

合作の場合、紺野心山氏のボディーには必ずといっていいほど氏の落款、○に「心」が印されていますが
一蒼氏のボディーには、単独の作品なら必ず見られる「一蒼作」のそれがありません

私は、その理由を一蒼氏の控えめで欲のない人間的美質からくるものだと思っています
かたや紺野心山氏のほうは、(悪口じゃないですよ)、年取った今でもけっこう「食えないじんさん」で
佐野大助との創作活動によって盆栽界に残された「過去の名声」をいまでもしっかり利用しています
(やっぱり悪口だ!)

ところでご紹介するのは、一蒼氏のスッキリとした磁器のボディーに描いた雷神の図
数ある大助作品の中でも、雷神を描いたこの染付鉢は傑作ですね
力のこもった筆致でリアルな表現、雷神の顔、手足、絵の具の濃淡、全てにおいて優れています

心山との合作鉢には五彩作品が多いのですが
一蒼氏とのそれは、玄人好みの地味な絵が多く、いずれも粒揃いの傑作が多いようです

ロクロ名人である一蒼氏のボディーの品格が
大助の絵心とあいまった結果だと思われます


雷神の怖い顔に迫力があります
それに、足指や脛などの細部の描き込みもリアルでみごとな筆致です、うまいですね

そうそう、思い出しました、過去にも一蒼氏との合作で忘れられない傑作がありましたっけ
過去の「つれづれ草」から抜粋しました

この鉢です


山の端に昇る月と渡りゆく雁の群れを背景に、牛の背で笛を吹く牧童
大助の叙情に溢れた絵付け、うまいですね、 惚れ惚れとします

大助の絵付け鉢のモチーフは多彩で、安藤広重の東海道五十三次など、その出典も多岐にわたり
京友禅の絵付け職人だったといわれるその域を遥かに超えた仕事をしています

近景に骨太に描かれた牛と笛を吹く牧童の背中
大助のデッサン力の確かさと巧みな画面構成がみられます

モチーフを背面から描くことにより、叙情的な画面によりいっそうの余韻が強調されており
このあたりに大助の技量の高さが感じられます


骨太のデッサンの力に圧倒されますね
まるで油絵のようです

この絵をみると、京友禅の職人であった大助は
溢れ出る才能に加え、若いときにかなり本格的な絵画の勉強をした人のように思えます

淡い色調の丹念な描き込みは、さすがに大助全盛期の作品
牧童の背中に幼い可愛らしさとともに、哀愁も漂っていますね

近景の山の描写は丹念に描き込んで、その下方は大きな余白をとっている大胆な構図が光ります
山の端に昇った月が叙情性を深める役目をになっていますね

以上の2鉢、大助・一蒼合作作品のトップレベルの傑作と認定します
みなさん、勉強になりましたか?

2005年6月28日火曜日

大助・石州合作

佐野大助が亡くなって何年になったでしょうか、まだ10年にはならないでしょう
生前から小鉢の絵付師としての彼の技量は高く評価されてはいたのですが
作品の評価価格はイマイチでした

ところが没後数年が過ぎた頃からの人気の高騰はものすごく
今や市場では引っ張りだこの勢いです

人気と価格の急騰期には、えてしてこういう現象が起こるのですが
市場全体では非常な品薄感があるにもかかわらず
一方では、今までに見たこともないような名品が突然に市場に売りに出されたります

この現象は、収集家により密かに収集されていた愛蔵品が
値段の高騰につられたり抗い切れなくなったで、市場に放出されているのです

あまり響きのいい言葉ではありませんが
業界では業者が愛好家の収集品をしつこく粘って買い出すことを「引っ張り出す」といいます
つまり、市場価格が高騰すれば「値段で誘って」収集家をその気にさせ「引っ張り出す」というわけですね

まあ、これは市場の原理というやつで、このようにして品物が出回らなければ
大助鉢の人気も価格も上がりようがないわけです

ただ、ありていに言ってしまえば、手放した収集家が再び同じようなものを求めようとしても
なかなか同じ価格では無理だということです

ですから、収集家が愛贓品を手放したときには、その金額にお小遣いをプラスして
さらなる名品を求めておくことをお勧めしますね

お金で持っていると、いつの間にかなくなっちゃいますよ


佐野大助・ 市之倉石洲(光峰)合作鉢  ・麒麟・落ち雁赤絵一対

さて、この合作の一対鉢なども、収集家の放出品です
もちろん、このような珍品が出まわるということは、私達業界人にとってはありがたいことですし
市場の活況にもつながるわけですから、これは大歓迎です

大助、石州ともに脂の乗り切った全盛期の合作鉢で
ロクロ名人である石州のボディーはさすがに精巧を極めています

青みがっかった上品な白釉に、綿密に描き込んだ赤い釉薬がよく映っており
巨匠同士の個性がぴったりとかみ合った魅力に溢れています

大助は絵付け専門の鉢作家であったので、心山、一蒼など、多くの作家のボディーを使っていますが
石州との合作は数が少ないため、この一対鉢の評価価値には希少性も加味されてきます


体は鹿、尾は牛、ひづめは馬、額は狼という想像上の麒麟をみごとに描き切っていますね
石州の完璧なボディーを得て、大助の筆も精巧かつ躍動感溢れるタッチを示しています


人物や動物の絵は顔が生命です
みごとな描写です


蹄(ひづめ)の部分まで気を抜かずに描き切って緊張感があります


鉢裏の様子


石州独特の足の作り


「夜の雁や 葛飾の野に みな落ちぬ」  秋桜子
大助は好んで落ち雁の図を描いています

小さな画面をいっぱいに使った巧みな構図からも大助の類稀な絵画力が窺われます


哀愁を帯びた画題を鉢の縁のギリギリまで使った、スケールの大きな構図です


全体に余韻の感じられる画面ですね


鉢裏の様子


石州独特の足の作り


石州のボディーの見本


光峰の落款