2009年3月21日土曜日

ムロ出し

今年は暖冬で、桜の開花も例年よりもかなり早そうな予想
いよいよ盆栽人たちにとっても、ムロ出しのタイミングがやってきました

過去のつれづれ草を見ても1週間くらい早まっている感じですね



植替えた雑木類はまだまだ油断は禁物ですよ
片屋根のムロの中で外気に慣らすトレーニング中です

急激な気候の変動に備えて移動しやすいように
まだトレイに入れたままになっています



松柏類(杜松以外)は数日前にすべてムロから出しました
もともと寒さに強い樹種ですから、これから少々の寒さがきても移動することはありません

ちなみに、関東地方の今日のように、暖かい日が続いて明日が雨の予想の日
こういう日の夕方が最高のムロ出しタイミングです

晴れた日が続き雨が降らなければ、せめて気温の下がった夕方に出すようにします
新芽がほころび始めた雑木類など、いきなり晴天の乾燥した屋外に出すのは可愛そうですよ

ムロ出し直後の盆栽たちにとって何よりも必要なのは「湿度」です
葉水もそれを守る有効な手段の一つね

かわいい盆栽たちへ
慎重な配慮をしてあげましょう

2009年3月18日水曜日

けやき実生四年生

二年生から手がけているけやきの実生苗
今年の春で早くも四年生となりました

三年目の春に根を切らずにほぐさないまま
現在の仕立て鉢にすっぽりと入れました

根を切らずほぐしもしなかった理由は、その時点ではまだ根が未熟なため
途中で根の成長にブレーキをかけない方がいいという判断からです


四年目を迎えたけやき実生苗
ずいぶんシッカリ感が出て、小枝もかなりほぐれてきました

上述のとおり、昨年の春には根を切らずにほぐしもしなかったので
おそらく根は太ってかなり徒長もしているでしょうから、今年は思い切って追込んで根作りに入ります


鉢から抜いてみます


ご覧のように鉢内を走った根が十分に太っています
できるだけ同じ高さからたさくんの根が四方に出ている箇所が将来の根張りとなります


将来の根張りを意識して検証
白線で示した根が1本だけ高い位置にあります


その根は切ります
その下の同じ高さの位置に4~5本の細い根がある箇所が、将来の根張り予定地点です


走った太い根の切り込み
怖がらずに短く追い込みます

この徒長根の役目はすでに終わりました
このまま放置すると幹や枝葉がバランスよく育つことを妨げるようになります

「木作りはまず根作りから」



走った根がもう1本ありました
これも短く切り詰めます

枝と同じように太い根を放置すると、そこに勢いが集中し過ぎ
根全体のバランスが崩れ、それが幹や枝葉の成長にも影響します


根の追込み後のようす
太い根は短く切り込まれ細いひげ根ばかりになりました


残った僅かな根を八方に伸ばして植え込みます
ずいぶん足元も太っていますね


根が少ないので深めにタップリと用土を入れます
ビニールの紐で揺れないようにしっかりと固定します(入梅ごろまで)

さて、ことし1年でどれほどの成長を見せてくれるでしょうか
楽しみですね

2009年3月12日木曜日

五葉松の取り木2

さてここで、傷口の処理作業を始める前に
盆栽用語の解説を一言

盆栽人は木を人間に例えた用語をよく使いますね
「この木は困っている」とか「疲れている」とかいうのは、まさに盆栽が弱っている状態をさします

前日私が使った「苦しむ」ということばも、文字通り盆栽が苦しむことを示しますが
用例としては意外に積極的な意味合いのときに使われます

つまり今度の取り木の場合、親木から早くに切り離されて一時は苦労するだろうが
自立するためには根をどんどん伸ばして必死にがんばるので、結果はかえっていい方向にいくでしょう

というように、植物の生命力を喚起する方法として
わざと苦しいめにあわせる、そんなときに使われることがおおいのです

さしずめ「かわいい子には旅をさせろ」でしょうね
はやく独立して一人前になってもらいたいという親心です

では、作業を続けます


取り木の方法は環状剥皮でなく、二重に針金を巻きつけた結束法
幹の上部をたどっていくと、一巻めの針金が現れました、もちろん取り外す


その下から二巻めの針金も姿を現しました、これももちろん除去
残った幹は針金で結束した箇所よりも深い位置までえぐり込みます


ぎりぎりの深さまでえぐり込みました


カットパスターで保護、カルスが盛り上がって治癒するのが理想
この切り口の色つやからして、必ず完治するでしょう


植え込む前の姿


鉢底にゴロを多めに入れて、水はけよく植え込みます
一日数回の霧水を励行、しばらくは風に当てないように管理します

むりやり早めに親から独立させられた子供は、当分は苦労しそうですが
旺盛な生命力を発揮して成長してもらいたい(取り木ではよくあることです)


後ろ姿

それでは

2009年3月11日水曜日

五葉松の取り木1



取り木中の五葉松

親しい友人が5年前に取り木をかけたもので、とっくに発根していますが
樹形の作りを優先させながら、さらに2年の歳月をかけて親木からの引き離しを実現する予定」です

つまり、今春に足元の水苔を取り除いて植替え用土と入替え、一年間は根の充実を図り
来年を待って正式に親木から切り離して独立させる、という計画です



注意深く足元から徐々に水苔を取り除いていきます
まだまだ発根した箇所、つまり将来の根張りの部分には至りません



さらに水苔を取り除いていきますと
将来の根張りの位置までは、もうあと僅かという感じがしてきました

ところがこのあたりまでくると、水苔を取り除いている感触で、思ったよりも根の状態がいいため
思い切って「切り離そう」という気持ちが強くなってきたのです

高価な木だし、早まってもし失敗したら!?

みなさんも経験があるでしょ
このように「イケイケ」になりかかったときの盆栽人の行動は誰もとめられませーん!!

というわけで、気がついたときには親子は既に切断され
思い切ったときの爽快感と、僅かな不安の念が残されていというわけです



ほれ、この通り親木の方は既にありません、もう後へは引けませんね
でも、このくらいの根があれば、ちょっとは苦しむでしょうがなんとか生き延びるはずです

さあ、次には切り離した切断面の処理をしっかりやらねばなりません



親から切り離したままの切断面
これから将来に備えての傷口の治療をしっかり行います

つづく

2009年3月5日木曜日

天草野梅改作

花物盆栽の王者といえばやっぱり梅

なかでも野梅は、凛とした清楚な花、枝打ちのよさ、皮肌の雅味
さらに切り込みに強く盆養によく耐える強壮な性質など、盆栽人が喜ぶ要素に満ちています

甲州野梅、天草野梅、房州野梅などと自生地名で呼ばれることが多く
自生する地方により性質がやや異なり、それぞれに優れた特徴を持っています

さて、盆栽人にとってさらにおもしろいのは、樹勢が強壮で大胆な改作が可能なため
出会った材料の優れた素質を見極めれば、いきなりビックリするほどの逸品に変貌させることもできるんです


九州の天草地方に産する天草野梅、実生から鉢の中で20年以上作りこんだ素材です
出会ったとたんにピリピリと感じるものがありました



1 根張りがよく、捻り気味の立ち上がりに力と動きがあります
2 腰元の強い一曲が魅力、そしてサバ状の部分も雅味いっぱいです
4 直感的に一の枝はこれだ、と感じました
  徒長気味ですが気にする必要はありません、呼び接ぎや芽接ぎで短縮は容易です
5 コンパクトな二曲目も緩みがなく最高です

以上秀逸な素質がいっぱい
野梅としては稀少な10cm以内のミニがゲットできそうです


一の枝の近くにある2本の立ち枝を切る
この場合、元を数cm残しておきます


切り残しの部分をヤットコで捻るようにむしり取る


古色感を見どころの第一に考える野梅には、生々しい傷口は似合いません
むしり取ってほうが、自然に朽ちたような古木感が出ます

他の雑木類と異なり、野梅はサバ幹は魅力の大切な要素
太い枝ほどむしり取って、朽ちたように演出しましょう


無駄枝をの除いていくと、ボディーの動きがさらにはっきりとしてきました


現状での改作はここまで、植替えて完了とします

こんごの計画

1 上の白点が新しい芯の予定地点
  胴吹き芽が吹かない場合は、呼び接ぎ(今年の夏)か芽接ぎ(来春)を実行する
2 一の枝も同じ施術によりコンパクトにする
3 下の白点には既に胴吹き芽があります



後ろ姿にも優雅な模様があります


赤点の箇所が接木予定の位置


完成予想図(樹高10cm以内)
3年くらいで基本の骨格は完成します

荒っぽい大改作の適期です
身の回りに梅の材料をさがしてみましょう

チャレンジ!!