2020年8月26日水曜日

(名鉢鑑賞)青閑

柴崎青閑(しばざきせいかん)は明治44年に東京の生まれ。もともとは日本鉢の蒐集と研究で知られた人です。その後転じて自らが創作の道へ入り、世に知られた名作の数々を生み出しました。


青閑白釉反縁鹿図浮彫切足楕円

間口18.8×奥行き16.4×高さ5.5㎝

その作風はモチーフや技法において極めて奔放多彩であり、個性的な独特の世界となっています。特に浮き彫り彫刻による絵付け作品に見るべき優品が多いのが特徴です。


本作品は、青閑得意の浮き彫り技法による雄鹿の紋様がみられます。可憐で若々しい鹿の角や背中の海老茶色、さらにつぶらな青い瞳が印象的です。


反対正面は、雌鹿の躍動感あふれたこれまた可憐な肢体が描かれています。溌剌とした若さ溢れた姿ではありませんか。


雌鹿の若さ溢れた姿、可憐というほかはありません。


青閑の鉢は間口10㎝以内のミニ鉢が多く、このように20㎝に近い小品盆栽用の実用向鉢はめったにありません。青閑鉢としては最大級の大きさを誇る、観賞、実用の両用を満たしてくれる名品珍品です。


やや側面より。


鉢裏と鉢底の様子。


鉢裏と鉢底の様子。


鉢裏と鉢底の様子。ていねいにしっかりと使い込まれていますが、まったくの無傷。
しっかりとした堅牢な半磁器の胎土に、やや青味を帯びた美しい白磁の釉薬が施釉されています。奥行きもあって実用にも向くバランスです。


青閑新五(せいかんしんご)
青閑の本名は「柴崎新五郎」


足の様子


足の様子

使い込みの時代感抜群ですが、丁寧な使い込みにより無傷完品。
ごゆっくりご覧ください。

2020年8月9日日曜日

百日紅の季節

子供のころ育った家の近くの大きなお寺の本堂の裏庭に、池に向かって一本の百日紅の老木が身を乗り出すように植えられていました。今思い出すと、盆栽の半懸崖式のように池のかなり中央の方まで枝をせり出していたようです。
毎年入梅が明けて初夏の明るい太陽が輝くこの季節になると、その池の面に照り映えていた百日紅の鮮やかな紅い花を思いだします。


飴色の艶のある木肌は、名前の通り木登りの名人猿でさえ滑り落ちそうなほどツルツルです。まずこの美しい木肌と瀟洒な枝振りがさるすべりの最大の魅力でしょうね。
遊びに夢中になって何度も池に落ちそうになりながらも、不思議な枝振りのこの木の個性に何となく魅せられていたことを覚えています。


これは大人になって盆栽に親しむようになってから知ったことですが、百日紅の花には、紅、ピンク、紫、白などがあって、葉や小枝にも細かいのから粗く大き目のものまであるようです。もちろん、細かい方が盆栽として作りやすいのは当然です。

剪定は秋から春先にかけて行い、冬の寒さに弱いので冬囲いを忘れずにします。春の芽出し後に剪定をすると花芽が飛んでしまうので、要注意です。