2008年6月24日火曜日

作る・きんず

昨年に切り込みをご紹介したきんず模様木
もちろん元気にしていますよ

きんずは寒がりやで有名な樹種ですが
さすがに6月の末ともなれば荒療治をしてもいい季節です

植替えや切込みの時期の目安は
月間の平均気温が約20度に近くなる5月中旬から(関東南部)です

ところで、今日は教材のきんずをご紹介する前に
きんずの培養法のおさらいをしてみましょう

きんず培養の3ポイント

1 月間平均気温が15度を超す5月~10月(関東)は戸外の棚で培養
  11月~4月までは日当たりの良い軒下など(冬季はさらに厳重に保護)

2 植替えや剪定も5月を迎えてから行います 
  (水はけよく植える)
 
3 年間を通して、軒下などを利用し原則として雨には当てないように工夫します
  (多水により根が冷えて生育の妨げになる)

要するに、柑橘類は温暖で水はけのいい場所が大好きなんですね
その環境をしっかりと整えてやるのが盆栽人の務めです

きんずは培養法が難しい樹種といわれていますが
以上の3点をしっかり守れば、見違えるような成績を上げることができますよ



昨年の6月に切り込んだきんず
吹いた新芽をしっかり伸ばして勢いは充分です



昨年かけた針金も外しましょう



ポイントは白点で示した箇所になります

左の一の枝
右の手前がニの枝で奥の枝は裏枝です
一の枝の上に三の枝
上に向って強く伸びている枝が芯になります



きんずは春の芽の動きが極端に遅いので、
このきんずも今年の新芽がまだ吹いていません

そこで小枝の先端を摘み込みながら、葉を半分に切り込みます
そうです、刺激を与えて目を覚ましてやるんですね

これにより今年の新芽が動き出します



不要枝を詰めたり除いたりの剪定後、ニの枝と裏枝に針金をかけて作業は終了です



拡大図

1~3節くらいを残して切り込んでありますね
芯の部分がちょっと長く感じますが、安全を期して2芽を残しました

これで基本樹形は完成しました
今後は吹いた新芽に補助的に針金をかけながら小枝作りに励みます



後ろ姿



昨年切った太い枝の傷口、順調に肉巻きしてわずかに中心の部分を残すのみです


みなさん!培養の3ポイントをしっかり励行してください
守らないときんずがいつまでも元気が出ませんよ!

2008年6月19日木曜日

作る・出猩々もみじ

5/19に剪定と針金による整姿をした出猩々もみじ
その後の6/01に、針金がすでに食い込みはじめているのをKさんが発見しました

私はもうちょっとほっておいて、かっちりと癖がついてからとも思いましたが
几帳面なKさんが、傷跡が残るといけないからと強く主張するので外すことなりました

外した結果はKさんの主張が正解で、模様の癖はしっかりついており
針金の食い込みもギリギリの線で間に合い、グッドタイミングでした


剪定と針金をかけてから2週間で針金を外し、その後2週間と数日が経ちました(6/19撮影)
5/19のつれづれ草を参照して比べてください

真っ赤な葉が新しく吹いた芽です
たくさん吹いてますね


拡大してみましょう


白点の箇所が新しく吹いた芽

特に一番下の2点の芽がうれしいですね
将来の利き枝が欲しかった箇所で、理想的な位置に吹きましたよ

次の中段の2芽も大事です
これで枝と枝の間隔が空きすぎた欠点が一気に解消されたのです


枝の基本を作るにあたっては、もちろん自然が相手ですから時には妥協も必要ですが
その妥協が後々ずーっと尾を引いて悔やまれることのほうが多いですね

やはり名木といわれる盆栽は
妥協を極力避けて粘り強く信念を貫いて作り込まれているものです

今回は粘り勝ち!


余分な葉を消してボディーの主要部を見てみましょう
足元から芯まで筋が通り枝順も整ってきました

辛抱強く粘った甲斐があって
樹形の基本形の見通しがしっかりと立ちました

来年の今頃の姿を想像しただけで
嬉しくってゾクゾクしますね


後ろ姿

では

2008年6月14日土曜日

英国の水石愛好家(デイビット・サンプソン)

イングランドから友人のデイビットがやって来ました

明治神宮で開催されている「日本水石名品展」の見学し
日本の文化に触れながら、大好きな水石や盆栽の勉強に役立てるのが彼の目的です

この6年の間のデイビットの鑑賞眼と知識の進歩が
普段のメールのやり取りの内容や、会ったときの会話から強く実感できます

この3年間連続で来ているので、彼の来日はおそらく5度目でしょう
じつに熱心な趣味家です

過去のつれづれ草参照

そこで今回は、松戸市の水石愛好家浮ヶ谷勝利・弘子さんを訪問することにしました
浮ヶ谷家は近郊では数少ない専業農家で、農作業の合間にご夫婦そろって仲よく水石趣味を満喫しています

私としては、浮ヶ谷さんの収集品はもちろんですが、日本の伝統的な農業に従事するご夫婦の素朴で明るい人柄と
築60年という、昔ながらの農家作りの大きな平屋のたたずまいにも、日本文化に興味のあるデイビットに接してもらいたかったのです



左より  ウイル  デイビット  浮ヶ谷弘子  浮ヶ谷勝利  のみなさん

ウイルはデイビットの友人、アメリカ人で上智大学で江戸時代の文人画の研究をしている留学生
彼も水石や盆栽が大好きで、この3年間デイビットが来日するたびに通訳の役目もしてくれています

私を入れて5人、話題はもちろん水石や盆栽が中心ですが、日本家屋や日本庭園から
はては農業問題、食糧問題にまで及び、夕食をご馳走になりながら5時間も話が尽きませんでした

夜の9時、再開を約束して名残惜しく「バイバイ」

浮ヶ谷さん曰く

人間同士、人種や言葉も違っても、話あえば理解しあえますね
彼らは日本人以上に日本の伝統文化に興味が強く造詣も深いです
私らも、もっともっと自分たちの文化に誇りを持ち勉強しなければいけませんね、このままでは恥ずかしいです

デイビット曰く

今日は今まで知らなかった日本の農家の人々や生活とその空間に触れてみて、たいへん勉強になった
実物に接するのはなによりの勉強法で、日本の伝統文化に対する興味がますます強くなった

では

2008年6月13日金曜日

くちなしの保護

05/24に「盆栽つれづれ草」で刈り込みを紹介したくちなし
それをご覧になった愛好家さんから、売り物ですかとのお尋ねがありました

売り物ですが根の具合がいまいち満足できない、とお答えしましたが、
それでも是非とおっしゃるので、元気になるまで責任をもって管理することを条件に、お買い上げいただきました

さあ、それからが大変

自分の所有物ゆえ、一か八かの管理が許されるので
日当たりのいい棚において、一日に数回の霧水をやっていたのです

根に不安がなければ、植替え後はなるべく日に当てて早めの根の活動を促す
これが定石ですが

ただしこの方法は、根に不安がある場合はかなりの勝負手で
うまくいくと早めの回復が期待できますが、失敗の場合はかなりのダメージも覚悟しなくてはなりません

責任重大!
急遽安全第一主義の管理方法に変更することにしました



半透明のプラスチックの衣装箱に入れ、一日一回の霧水をやる
鉢の用土はほとんど乾かないのでやる必要はないほどです

置き場所は直射日光を避けます
蓋は閉めたまま湿度を保ち、細い小枝が乾燥しないようにします(ここが重要ポイント)



あれから3週間、ちょっと見は変りませんが



小枝の先がみずみずしい感じがしますね
根が少しずつ動き出し水が上がり始めた証拠です

よく観察すると枝先のあちらこちらに小さな芽吹きも見られます
さあ、もう一息です!

2008年6月12日木曜日

獅子頭の手入れ

ちょうど1ヵ月前に”芽摘みと葉透かし”を実行し、つれづれ草で紹介した獅子頭もみじ
その後の様子を見てみましょう


06/06撮影
あちこちと再び芽が吹いてきていますね


アップして細部の枝を見ましょう

小枝の先端に新しい芽が吹いて葉になりかかっています
ここで注意深く見ていただきたいのは、フトコロ部分の芽先
芽が出てほころびかけていますね
”芽摘みと葉透かし”作業の目的の一つは、このフトコロ芽の活性化にあるんです


この枝先でもフトコロ芽が動いているのがわかりますね

1 芽の先端の勢いを抑え、枝先の繊細さを促す
2 日当たりと風通しがよくなり、フトコロ芽の蒸れを防ぐ
3 眠っているフトコロ芽を活性化して芽数をふやす
以上を目的に行った作業の効能が達せられたわけです
さて、これから約1ヵ月もすると、今の新葉はかたまり、最初の作業前の状態に戻ります
そのときには同じように
そのときには同じように”芽摘みと葉透かし”を繰り返してください

では