2006年4月23日日曜日

作る・出猩々もみじ

先日何気なく売店形式の盆栽園にふらっと寄り込んだとき目についたのが、この出猩々もみじ

木肌が真っ白で根張りもかなり
直感的に閃きました、「これはすごいミニが作れる」

顔見知りの店主に値段を聞くと
「それよっかったんだけどね、お客さんが持ち荒らしちゃって、ばらばらになっちゃったんだよね」

ばらばらなのは見ればわかるんだよ、早く値段を言えよ!
内心そう思った私です

そんな訳で、お客様から買い取った値段が1.8万円だそうな
ネギリマンの私としてはすかさず「1万円くらいだと思ったゼ、どうせ下取りだろ、1万円で売っときナ」とたたみかける

私としては1.8万円だって、「想定以上に安い価格」でしたが、いくらだって安いほうがいいですからね
ところが敵も然る者で、1.5万円でがんばりましたね

えっ、セコイですって
だって、「安いと思ったら絶対値切れ」って、盆栽屋の鉄則ですよ、「値切りのテクニック」読み直してよ

結局、1.5万円で交渉成立、とにかく超安値の堀り出し物でした

ともかく、いまどきこんなに立派な素質を持ち合わせた出猩々もみじの素材になんか
めったに出会えるもんじゃない、必ずミニの名品にしてみせるゾ



この出猩々もみじです

足元の直径は約5.0cm
癒合剤でよく確認できませんが一枝の脇の古傷は完治可能な範囲で大丈夫

一、二と枝も揃っていて幹のコケ順もよし
間違いなく、逸材です



足元から約6.0cmの位置にポッチリと赤い胴吹き芽が見えますね
事前に確かめておいたんです

この芽こそ「値千金」、将来重要な役目をしてくれますよ



3年がかりで作り込む計画です

1年目の今年は、図のように枝を追い込んでなるべく内側に胴吹き芽を出させます

さいわいなことに、葉は芽の色艶から見て根の状態はイイようですから(これが重要ポイント)
残された芽は順調に伸びるでしょうし、胴吹き芽も期待できます

2年目は芯と役枝の基本作り
3年目はおおよその輪郭ができあがるでしょう



将来「芯」となる胴吹き芽は白線内



後ろ姿

この出猩々もみじは「作る」という題で追跡取材をし、要所の経過を連続してみなさまにお伝えします
完成まで楽しみに見てくださいね、よろしく

2006年4月21日金曜日

もみじ稚児葉刈り3

さて、稚児葉刈りのあと
葉がやや固まった今の時期に、お勧めの手入れ法があります

もみじは6月に葉刈りをする
これが定番の手入れ法とされていますが

なかには、葉かりをするとうどん粉病が出てしまう、とか
あちこちから不定芽が吹いてしまいかえって枝先がごつくなってしまう

実際にそういう意見もあります
そんな方にはこの技術がお勧めです


今の時期の山もみじ
やや葉が固まって美しい形

注)稚児葉刈りを実行した場合は「片葉」の状態です


そのもみじの葉の指の部分をハサミで図のように切ります
ちょっと可愛そうな気がしますね

注)もう少し深めに切ってもよい


稚児葉刈りの後、葉切りを実行し10日ほど経った山もみじ
すると、フトコロで眠っていた芽に元気が出て、それらが伸び始めました


拡大図
新しくフトコロ芽が動き出したのが見えますね


もう一例の山もみじ
このもみじも稚児葉刈りの後、葉切りを実行し10日ほど経っています


同じようにフトコロ芽に元気が出て伸び始めました

さて、この技術の効用は次の通り

1 葉を小さくすることにより、枝の先端の勢いが制御されフトコロ芽が生きる
2 全面的な葉刈りに比べ不定芽が吹きにくいので、枝先がごつくなりにくい
3 湿度の高い入梅時期の葉刈りに比べ病気が出ない

みなさん、稚児葉刈り(ともちろん普通の芽摘み法とも)併用してお試し下さい
落葉後の寒樹の枝先を見ればその絶大な効能が確かめられますね

間違いないしです、実行ーッ!

注)この手入れを行ったもみじは入梅時期に葉刈りをする必要はありません
施術後に伸びた芽には「稚児葉刈り」と、今日勉強した「葉切り」を繰り返し行っていきます

2006年4月18日火曜日

黒松葉透かし2


作業前の姿


葉透かし作業後の姿

格段に葉数が減りました
これで枝の奥のフトコロ芽に日光と風が行き渡ります

フトコロの芽をよく観察してみましょう
作業終了後、1週間で効果が表われ、生き生きとしてくるのがわかりますよ


正面やや上方より

向こうが透けて見えますね
どんなに葉が密になった黒松でも、これくらいの要領で透かしてやるのです


後ろ姿

ていねいに作業するとかなりの手間が掛かりますが
黒松盆栽にとって必須の手入れです

がんばりましょう!

2006年4月17日月曜日

黒松葉透かし1

黒松の葉透かし、やってますか?

もしかして、あなたは黒松は6月の短葉法、つまり芽切り時期まで黒松をいじらないのでは?
改めてご自分の黒松盆栽を点検してやってください



このように、去年の葉(1年葉)の元に一昨年の古葉がついたままの黒松はありませんか
これでは通風と採光が悪くなり、フトコロの芽が弱ってしまいます

よけいな古葉は取り除きましょう!



このように1年葉とその元の胴吹き芽だけを残し、古葉はすべて刈り取ります
この場合、ぜったいにハサミを使い、古葉のハカマの部分だけ残すこと

手やピンセットで引っ張ってはいけませんよ

何故って?
葉の元の「芽つぼ」を痛めると胴吹き芽が期待できなるからです



次に、1年葉を3対だけ残して図のように刈り取ります



こんな具合ですね
黒松盆栽の頭の方から順序良く作業を進めます

この作業の目的は?

もちろん、通風と日光の通りを良くし、フトコロの芽を保護すること
この作業を徹底することにより、黒松盆栽のフトコロ芽に元気が出て
徒長を防ぐための追い込み(切り込み)が容易になります

そく実行してください

2006年4月9日日曜日

もみじ稚児葉刈り2

ところで、新芽の先を早めに摘んだとしても

残された1節目は、予定の長さだけはしっかりと伸びてしまいます
だから、稚児葉かりをしても、3節くらい伸びてからハサミで新芽切りしても、1節目の伸びは同じなのです

このことを頭において下さいね

その上で今日の勉強です

稚児葉刈りは、新芽の伸びを抑えるというより、もっと他の効果を期待しているのです

それは

1 特定の強い枝先に集中しがちな樹勢(じゅせい)を、他の弱い新芽にも行きわたらせる
2 早めに葉数を半分にすることにより、採光と通風を良好にしフトコロ芽の保護をする

おわかりですか!

その上で、1節目の伸びを極端に制御する秘技をご紹介しましょう
この技こそ、秘伝中の秘伝ですゾ


芽鱗(がりん)と呼ばれる殻にしっかり守られた冬芽がほぐれ、稚児葉が伸び始めます
その先と片葉を摘み取るのが稚児葉刈り

元に残された芽鱗、これを普通私達はハカマとよんでいますね
このハカマを細いピンセットを使って取り除くんです

じつに根気の要る細かい作業なので
ミニ盆栽の場合は、ピンセットよりも針のようなもっと鋭利な道具を使ったほうがいいと思います


稚児葉の元のハカマ、芽鱗というだけに
ほんとに魚の鱗のようですね

冬芽を寒さや乾燥から防ぐための大切な防具なのです
これを1枚ずつていねいに剥がします


上向きの枝の元にはまだ開かない冬芽がありますね
稚児葉刈りの実行により、早めにほころんだ新芽の勢いが、このように眠ったままの芽に刺激を与えてくれるのです

横向きの芽のハカマはまだ完全には取りきれていません


すべて取り除きました


作業完了の図

稚児葉の片方を取り除かれた新芽
側芽(そくが)と呼ばれる長めのヘタの部分と芽鱗(はかま)

このハカマ取りにより、保護されていた新芽の元の細胞は急激に乾燥し固まります
よって、1節目の伸びがとまるという生理現象がおきるのです

効果は抜群で、この稚児葉刈りとハカマ取りを2年併用して続けると
見違えるような短く細かい枝先になること請け合いです

もちろん、稚児葉刈りだけでも効果あり
ともかく雑木作りの超秘伝の技、試してください

それにしても、根気の要るシンドイ作業!!

では

注)この項の執筆にあたり埼玉萬園・深野歩君より詳細情報をいただきました
アックン、ありがとう
小鉢のことは教えてやるからね

2006年4月2日日曜日

もみじ稚児葉刈り

雑木類の小枝の先を繊細にする方法は?
ほとんどのみなさんは、「芽摘み」と「葉刈」とお答えになるでしょうね

ピンポン!!
もちろんその答えは正解です

でも、雑木類の小枝の繊細さを極めるには、もっともっと深い知識と経験が要るんです
今日ご紹介する「稚児葉刈り」という技法です

文字通り、芽が吹いて葉が固まらないうちの「稚児葉」の段階で
早めに葉を摘み取るのです

この技術は昔から伝えられてきたものですが、ともかく手間が掛かかり
時間に制限があって鉢数の多い場合はやりきれないため

今では一部のベテラン愛好家さんが根気よく実践し、大切な技法を今に伝えている
そんな現状です


いっせいに芽吹いてきました
この頃からが施術の適期、葉が固まらないうちが勝負です

用意するもの
先の細いピンセンット(これは必須です)


ほころんきた芽先の元のヘタを取り除く


次に、先に伸びようとする芽を摘み取る


まだ固まらないので「稚児葉」と呼ぶ
ピンセットの先で摘むと簡単に刈れます


残された双葉の片方も摘み取る(これが大切)

なーんだ、簡単!
そう、簡単なことなんです

ただし、特別に伸ばす目的以外の小枝の先を、ぜーんぶ摘み取ってくださいね
残してはいけません

ほころびかけた芽はピンセットの先で開きます
枝によってほころぶ順番が違った場合は数日掛けて行います

さあ、まだ間に合います
葉が固まらないうちに、ソク実行です!

つづく