2011年2月20日日曜日

けやき・根張り矯正(重要)

今日のつれづれ草はけやきの根さばきについて
ふだんは鉢の中に入っていて見えませんが、盆栽の健康の秘訣は根っ子にあります

また盆栽においては、足元の力強さや根張りのよさを求めるのが
基本中の基本なので、それらの発達を促すために重要な技術です

教材は、実生6年ほどの盆栽屋.comの販売コーナーにあるけやきの箒作り
理解の行きとどくように画像をたっぷり使いました

さあ、みなさんしっかり勉強してくださいね


雑木類の中では芽吹きが遅いけやきなので、作業の時期は3月の初旬ごろ
しっかりした保護室のある方は、もう始めてもいいでしょう

さて、これから始める根さばきの目的は

1 強すぎ根、絡み根、浮き根、下向き根、重なり根などを整理(切る)し、根張りが八方に向かい均等に発達するようにする

2 それにより、立ち上がり付近が逞しく、かつ平均に形よく発達する

3 根を密に分岐させることにより、徒長枝が防げる


除去した根がたくさん見えますね、赤矢印右から

1 浮き根
2 強すぎるし、また向かう方向もよくない根
3 同上
4 他の根をまたいだ強い根


他にも切りたい根がありました、赤矢印右から

1 向きの悪い強い根
2 浮きぎみな向きの悪い強い根
3 直線的な強い根

※ 3のような直線的な強い根を放置しておくと、枝に影響を及ぼし、徒長枝のもとになります
やわらかい枝先をつくるためには、やはり細い根が密集した状態を作り出さなければならないのです

ちなみに、白矢印は、下向きの根が発達しないように
根の底に敷いた鉢のかけらです


鉢から抜いて根をほぐす

細根がよく発達していますが、それでも足元にあれだけの不適切な根がある以上
将来のために根さばきを実行しましょう


根のほぐしをおわって、植え土もほとんど取り去りました
さあ、いよいよ本題に入ります


赤矢印で示した強すぎ根

怖がって数㎝も残すようでは、根さばきの意味がありません
白線のあたりからバッサリやります(元の数ミリだけ残す)


赤矢印で示した切り口、よろしいですか、数ミリだけ残すんですよ
根も枝と同じで、強い根を切られると、その切り口付近から新しく細い根が出てきます


赤矢印で示した左右の根の向きがよくないですね
真ん中の根を残して切り取りましょう


やはり、元に数ミリを残して切りましょう
もちろん真ん中の根も、先端は適度に切りつめます


根裏から見ると

赤矢印でしめした根は強すぎるうえに、二重に重なった不要根です
これも切ります


ご覧下さい
太い根の上側には適度な太さのいい根がありますね


残された根も先端を適度な長さに切りそろえられました
根の整理が終了です


根裏から見ましょう

下向きの太い根の切り口が2本ありますね
また、残された根は足元を中心にして放射状に伸びています


植え込みに際しての注意

1 水はけをよくするためのゴロ土をたっぷり
2 下向き根を制御するための鉢片を根底に敷く
3 鉢底からの針金での固定が難しいので、図のように紐を使ってしっかり固定する


植え込み完了です
術後は乾燥と冷たい風に注意し、春の芽だしまで保護室でしっかり管理します

付け加えること

1 根さばきは、根と足元作りのために、実生から7~8年くらいは毎年行うのが理想的
  この作業の連続により、毎年不要根は整理され、素性のいい根だけが残され
  教材のけやきのような素晴らしい立ち上がりが実現します
  (原則として、よい状態で持ち込まれた10年以上の古木には必要ありません)

2 ですから、術後の管理に自信のない方でも、1年おきくらいには実行していただきたい

3 しかし、これだけの根さばきには自信のないという方には
  手抜きの方法もないではない

4 ↓の図のように、鉢土をほぐす前の状態で、表面の用土をかきわけて根を露出させます
  その状態で見える限りの不要根の整理をします(残された根は引き抜かなくてもいい)

5 さらに、すっぽり鉢から抜いて、根の塊の下三分の一くらいを水平に切り取ります
  この場合、残された根の塊はほぐさないようにします

6 そのままわずかに大きめの鉢に植え直し、表面にも新しい用土を足してならしておく
  この二つの作業だけでも、根と足元作り、さらには根の制御にもなり、効果はありますからお勧めです
  


根の周囲をほぐさずに、表面だけややほぐしてから不要根を切る


周囲をほぐさずに、根の塊の下三分の一くらいを水平に切る

それでは!

2011年2月16日水曜日

スクール速報・山もみじ取り木その後

盆栽を始めてまだ未経験の山もみじの取り木に挑んだべーくん
一昨年に施術して、昨年に発根状態を調べたら、あまりかんばしくない結果でした(シュン)

そこで、ベテラン先輩のハシやんが患部を削りなおしたり、発根剤を塗ったりの手直しを指導し、1年が経過しました
ところが、今年こそはと意気込んであけてみると、やはり周囲の半分には発根がみられません(また当惑のベーくん)

やはり、発根しやすい樹種の山もみじでも、
古木の場合は発根が偏ってしまうことがよくあるんですね

しかし、ここでくじけてはいけませんぞ
災いを転じて福となすのが盆栽人の根性です

ということで、2月13日の盆栽フリースクールの当日
一挙に根接ぎに挑戦することのなりました

手順をご覧下さい

重ねて申しますが、ベーくんは盆栽歴数年で
取り木はもちろんでしたが、根接ぎも初体験です


土手を築いていた底網を外して、表面の水苔と赤玉土を取り除いてみる
幹の周囲の手前半分には発根なし

そこで、発根のない箇所に3本の根を接ぐことになり
さっそく施術開始!


幹径5~6ミリの山もみじの苗の太さにあわせ、親木の足元のあたる箇所に電動ドリルで穴を開けます
最初の1回目に私が手本を示すと、ベーくんびっくりしてました(ぼくのもみじクン、だいじょぶかな?)


図解するとこういうこと

親木の足元(裾)に○に近い溝を彫る(ドリルが便利)
その溝に苗をはめ込む感じ(溝が浅いと癒着せずにはじきだされてしまう)

事前に、苗は外側の根だけを残すように処理しておく
内側の根はじゃまになって親木と台木との接着を妨げます


何度も試して密着の具合を確かめます
成功の秘訣は、はめ込む溝の深さを十分にとること

溝の深さの目安は、少なくとも苗の半分以上が埋め込まれるくらい
↑の画像では、まだちょっと浅そうですね


3個の溝はおおよその見当がついたようです
ベーくんも飲み込めたようで、2個目3個目の溝はきっちりと仕上げました

次は、元の台木からの正式な切り離しと切り口の処理(ノコギリやノミなど大型刃物が必要)
独立した山もみじの根の底部は、しっかり削り込んで完全癒合(肉巻き)を目指します

カットパスターやオイルジンなどの癒合剤を必ず塗りましょう


ここまでくれば、作業の8割でしょう

ここでもう一つのポイントはすでに発根済の根の処理です

怖がって徒長根をそのままにせず、短めに切り込みましょう
また、幾重にも上下に重なった根は、高さを揃えてできるだけ一重にまとめます


しっかり溝にはめ込まれクッション付の釘で止めます
指で試してみて動くようだと失敗の可能性あり

なお、今回は、穂木(苗)の接着面を削って形成層を露出させてはいませんが
親木に溝を深く彫って、くわえ込むような施術法であるため、活着の成否にはなんら差し支えありません


部分拡大図


部分拡大図
苗は半分以上埋め込まれていますね(ここがポイント)


水はけのいいようにゴロ土をたっぷり入れて植え込めば作業終了

深めに植え込んだので、一、二の利き枝や立ち上がりが見えませんが
典型的な単幹模様木で将来大いに楽しみな逸材です

今後の管理

1 春までは他の盆栽と同じように冬囲いの中に置く(乾燥と冷たい風に注意)
2 接いだ苗は1年間徒長させるが、親木の木作りはどんどんやりましょう
3 肥料は根付きを確認後、5月ごろまで控えた方がいいでしょう
4 苗木の切り離しは、完全癒着を確認してから(おそらく来年の入梅ごろ

ベーくん、よくがんばりました
名木にしあげてくださーい!

みんさんもイイ素材を探して取り木をかけましょう
不完全な発根でも、根接ぎというすばらしい矯正法がありますよ

2011年2月10日木曜日

寒明けの冬囲い

この冬は、日本海側を中心にして20年ぶりの大雪だそうで
関東でも例年にないほどの厳しい寒さが続いています

節分の寒が明けたあたりにいくらか寒さがゆるんだので
やっと寒さから解放されたかなと思いきや、今日あたりからまたまた寒さがぶり返してきましたね

ともかく気候だけは人間の力ではどうにもなりませんが
せめてできるだけの工夫をして、盆栽たちを春までしっかり管理していきましょう

そこで今日は
寒が明けた今ごろから春がやって来るまでの冬囲いについて、特に注意する要点を勉強してください

下のブルーシートで覆われた片屋根が私の冬ムロで
毎年12月の中旬から下旬ごろにかけて組み立てます


この片屋根式のムロのミソは全面を覆っているブルーシートです

さて、ブルーシートの役目はというと、寒さ除けだけではなく
主に日除けのためにとりつけているのです

というのは、閉めっぱなしであっても、12月から1月いっぱいくらいの寒い日には
雑木専用のムロであれば、晴れた日でも日射しが弱いために内部の温度が上がりません

しかし、節分を過ぎた今ごろの季節になると、けっこう日射しが強くなってきているので
閉めっぱなしではムロ内の温度がかなり高くなってしまいます

すると、ムロの中で静かに冬眠している盆栽たちを
せっかくの眠りから「叩き起こして」しまうことになるのです

それではなくとも、もみじや楓などはとくに目覚めが早いでからね

本格的な春の訪れの前に
ムロの中でモヤシみたいな新芽が伸びてしまったら困りますね

ですから、このブルーシートが大切な役目をしてくれるんです
ご理解いただけましたか?

ちなみに、両袖の板は脇からのすきま風を除けるために効果があります
案外にいい役目をしてくれるんですよ


ブルーシートの内側にはプチプチのビニールが扉の役目をしています

ですから、ビニールの扉の上からブルーシートを覆っておくと
これからの日中には内部の温度がかなり上昇していまいます

あまりに日射しが強くムロ内の温度が上がる場合は
ブルーシートもメクッテ、このように直接外気に触れさせます

外気温はせいぜい7~8度ですから
いくら日当たりといえど、盆栽たちを「叩き起こす」ことはありません

要は、夜間と日中の温度差をなるべく小さく保つことです
盆栽だって激しい温度差は応えるんですよ

ともかく、冬囲いで一番大切なことは、パルタ教育です


朝ムロを明けてみると、扉が一重でも二重であっても、このように土の表面は薄氷に覆われています
みなさん、冬囲いの条件はこのくらいがちょうどいいんですよ

それとご覧の通り、水がたっぷりやってあるのがわかりますね
ムロ内の事故は、凍るのを怖がっての水切れや乾燥がほとんどの原因です

凍るのを怖がっちゃいけません、どんどん水をやりましょう
乾いた盆栽は「飢えと寒さ」の両方で苦しむことになっちゃいますね

昨年の秋口や寒中に無理をして植替えしたものは、もちろん凍らないほうがいいのですが
昨年の春に植替えてある程度鉢内に根の廻っている盆栽は、このくらいの環境のほうがしっかり熟睡して間延びを防げるんです

凍らせたくない鉢は、ムロの奥のやや暖かい場所か
もしくは、鉢と表面を乾いた布で保護するなどの一工夫をしてやります


拡大してみましょう
凍っているのがわかりますね

愛情を持ちながらも
このように厳しいスパルタ教育の精神を忘れてはなりませんぞ

では、くれぐれも日中の温度の上昇と乾燥に気をつけて
春までがんばりましょう

2011年2月3日木曜日

もみじ・取り木から本格盆栽へ(続編)

前編では、山もみじの取り木素材の、ボディーと根の関係を調べることにより
はじめ双幹と予想されていた素材は、単幹の模様木として再出発することになりました

さて、いよいよ続編では、細部にわたる根さばきと植付けにはいるわけですが
やはり、当初お話しした次の5つのポイントを、しっかり頭に入れて、作業をはじめましょう

1 同じ箇所から何本も発芽して混みすぎている場合は
  適度な間隔に間引きます

2 上下に重なった根は同じ高さに揃えましょう

3 強すぎる根は除去するか短めに切り込み
  弱すぎる根は植え込みの後に、水苔などで乾かぬよう保護しましょう

4 方向が悪く他の枝と交叉する場合は、切るか方向を変えてやりましょう

5 幹の根元の廻り根は放置せずに除去します


前編の最後の画像です

根の具合を調べるまでは、てっきり双幹と思われていたのが
子幹の下方に約1㎝ほどの空間が現われたので、幹は枝となり単幹の模様木になりました


下方に向かった強い根は、こんごますます強くなり
樹勢や樹形のバランスを崩す原因になりますから、思い切り追い込みましょう

枝と同じで、根も切り込むことにより分岐を繰り返し
次第に密になっていくものです


前編で指摘された、赤点の2本の根の出ている位置はいいのですが、方向が気にくわない
隣の根と交叉して将来の姿が危ぶまれます

かといって、簡単には切れませんね
どうしてもこの位置には根張りが欲しい


方向を矯正できるかどうか、傷つけないように指で静かに試してみます
健康な根で弾力性もあるので、大丈夫そうです

さて、矯正する方法には一工夫が要りますよ

根に枝と同じように針金をかける人もいますし、針金で引っ張る人もいます
技術方法やには決して王道はありませんから、各人で創意工夫することが大切ですね


今回は竹串を使うことにしました

1 普通の植替えと同じ要領で、ゴロ土と植え土を入れる

2 山もみじを据える

3 ただし、根が少ないために、鉢穴から針金を通す従来の方法ではうまく固定できないので

4 外側から針金を廻して固定する、という暫定方法をとらざるを得ないので、ここもポイント

5 植え土を追加する前に、固定した山もみじの根を八方に配る


このように竹串の力で根の方向を変えようという作戦です
ここも大切なポイントですね


2本では心細いのでもう2本追加して補強


根の矯正が終わったら、おもむろに植え土を入れます
この順序が逆ですと失敗することがありますよ、注意してください

樹形はご覧の通り単幹ですね


植付け完了


後ろ姿

それではみなさん、よろしく!

2011年2月1日火曜日

山もみじ・取り木から本格盆栽へ

昨年の今ごろに取り木台木から外した山もみじを、入梅ごろに入手したもので
1年間は、軽く芽摘みや葉刈りを行うくらいで、特に芯の部分は徒長させっぱなしで培養管理しました

やはり、親木から外してしばらくは、枝葉の勢いを見ながら
培養方法を適宜に調整する必要があります

さて、これからが本格的盆栽へと歩み始めるのですが
樹形作りの基本となるボディーと根さばきを中心に大切なポイントをお話しします

ここで、ポイント

盆栽作りの基礎は、ボディーと根!

ただし、ここでいう根作りとは、必ずしも根張りだけとは限りませんよ
四方八方によく発達した健康な根っこ全体を意味します


ボディーの力はバッチリだし、傷っけはないし、微妙な模様もあって楽しみな素材です
左に子幹があるので、今の段階ですはおそらく双幹体になると思いますが、最終的には根張りの状態により樹形を決めます

樹勢からいうと、今年どうしても植替えしなければならない、ということはないけれど
盆栽としての出発点にあたっては、根の健康状態や根張りのなどを検証するために、植替えをします


まず根の健康状態ですが、ご覧のように健康そのもの
土の色も鮮やかな茶褐色だし、根もよく発達していて、切り口もみずみずしい

これならバッチリです


根も枝と同じで、植替え時にしっかり先端を切り込むことによって
強く徒長せずに細かく分岐してこのように密になります

次にはみなさんの関心が高い根張りを確認してみます
わかりやすく簡単なイラストで説明しましょう


好ましくない根張りのポイントです

1 同じ箇所から何本も発芽して混みすぎている場合は
  適度な間隔に間引きます

2 上下に重なった根は同じ高さに揃えましょう

3 強すぎる根は除去するか短めに切り込み
  弱すぎる根は植え込みの後に、水苔などで乾かぬよう保護しましょう

4 方向が悪く他の枝と交叉する場合は、切るか方向を変えてやりましょう

5 幹の根元の廻り根は放置せずに除去します


さて、実際に検証してみると、ありました、ありましたよ、上にあげた5つの悪い根の実例が!

まず下の矢印で示した太い根です
周囲の根よりも強すぎるし、走っている方向も悪い

ただ、発根している位置は根の欲しいところですから
短く切りつめて細い根の分岐を目指します

さらに、その上の赤点で示した3本の根が、矢印の箇所で交叉しています
ただ、正面の見つけの箇所なので、どうしてもここにも根張りがほしいところ

ですから、切らずに根の方向を矯正することにしました
その説明は、次の続編で


根の元を0.5㎝ほど残して短く切りつめました
若い根なので切り口付近から新しい根が分岐するでしょう(切り口にカットパスターを塗布)


1年前に親木から外したときの処理は万全で、順調に肉巻き進行中です


腐り込みを防ぐために再びカットパスターを塗布


いよいよ樹形です
つまり単幹の模様木か、双幹かの決定ですが

根をほぐす前には子幹と見えていたので、てっきり双幹と思っていたんですが
矢印で示した根張りと幹(枝)との間に1.0㎝ほどの距離がありました

ですから、ご覧のように予定を変更して単幹の模様木と決めました
つまり、子幹は枝として活用することになります

つづく