2013年5月29日水曜日

舞姫もみじの挿木

前項で勉強したもみじの取り木法のメリットは
なんといっても、ある程度の太みのある素材を短期間のうちにゲットできることでしょう

それに比べて挿木からの素材作りは、ちょっとばかり年月がかかります
だがしかし、この方法にだって大量に生産できるというメリットがあるんですね

とにかく欲張りのプロにとっては、太さのある舞姫もみじも欲しいけれど、数も欲しい
数があればみなさんに廉価で頒布できるし、さまざまな樹形の素材に挑戦も可能です

ということで、今年の早春に舞姫もみじの挿木を行い
その結果がかなり良好だったので、自慢かたがたみなさんに成功のポイントをお伝えいたします


2013/3/15 挿木 9号のすり鉢型仕立て鉢 用土 微細赤玉土5:微細鹿沼土5

いかがですか、ご覧の通り活着率は95%以上、ほとんどつついています
見事なもんでしょ、これくらいの活率で活着すると張り合いがですますね

では、今回の成功のもとはいったいどのあたりにあったのでしょうか?
次回からの参考とするために、振り返って検証し成功のポイントを整理しておくとします

1 置き場所はビニールハウス内だったが、防寒トンネル内には入れず
  また湿度を保つためのビニールドームも使わなかった(凍結はしなかった)

2 ビニールハウス内でも地面に直接でなく
  約10cmほどの高いところに挿木鉢を置いた

3 ハウス内でも日の当たらない置き場所を選んだ
  
4 水やりはかなり控えめにした

5 葉水も最小限度にとどめ、鉢土が過湿に陥らないように心がけた

簡単ですが、しょうじき以上の5点くらいがみなさんに語るべきほどのことで
他には特別に変わった方法はやっていません

それなのにこの高結果です

そこで、私は過去の経験と今回のポイントから
今回の成功の要因を、推測も交えて次の3つに絞りました

1 冬芽が色づき始める直前(3/15)という時期がよかった
  
  ・この日付を忘れないこと

2 ハウスのトンネル内に取り込まず、しかも葉水も控えたので
  過湿にならなかった
 
  ・過湿になればべと病などのカビ菌の餌食になる

3 差し木鉢を直接地面に置かなかったので
  底穴から病原菌が進入しなかった

  ・地べたにはカビ菌やその他の細菌がうようよ
  ・だから次回からはもっと高い置き場所にするつもり
  ・それに、トップジン乳剤などで挿し床の消毒も有効だろう

つまり要約すると、挿木成功の秘訣は
「時期」と「病原菌対策」だということですね


ということで、今日(3/29)現在もビニールハウス内で培養中
ただし、ハウスのドアは開け放してあり、少々の直射日光にも当たってります

春の訪れとともに開いた冬芽が葉になり、ここで再び新芽が伸びてきました
これは挿し穂が発根した証拠で、おそらく地中では白根が急速に発達していると考えられます


念のために鉢底を確認してみましょう
ほら、ご覧なさい、鉢底から数本の白根が飛び出していますよ

そろそろ入梅が近づいてきましたから
曇りか雨の日を選んで外の棚に移動の予定です

そして、入梅が明けたころに
少々の肥料をやるつもりです

では

2013年5月28日火曜日

舞姫もみじの取り木

みなさん、あなたは取木をやったことありますか?

わずかの期間で、ある程度の太さの素材がゲットできちゃうんですよ
取り木ってすっごくお得感ありますよね

そこで、今日は人気急騰中の舞姫もみじを教材にして
取り木の方法を解説するつもりです

まず、取り木の適期は入梅ごろって解説している盆栽の入門書が多いようですが
プロはもうちょっとばかり早くやるようにしていますよ

この時期が入梅時期よりも特別に発根率がいいわけではありません

早めにやる理由は、うまくすると入梅中に発根し、土用前、遅くとも秋口には切り離しが可能で
培養の前倒しができるからです

時期の目安としては、春に出た新葉が固まった5月中旬からです
ちなみに、葉が固まるというのは、手で触ってガサガサとこわばった感じで判断します

この表現は盆栽では案外使いますから(葉刈りの時期など)
覚えておいてくださいね


エンピツくらいの太さの舞姫もみじの頭の部分を
今年の春にあらかじめ1mmのニューム線で結束しておきました


葉で作られて根へ下るはずの養分が針金でせき止められ
上部に溜まってクビレができています

若木なので、クビレから下へ幹の直径の約2倍ほど環状に皮を剥きましたが
古木の場合は直径の1~1.5倍くらいで十分です


赤矢印で示した切り口(クビレの部分)の周囲が発根予定位置ですから
この部分はもういちど最後にきれいに削り直す必要があります

皮を剥いた部分には、やや青味がかった薄い膜のような「形成層」が露出しましから
この部分をナイフの刃で木質部までていねいに削り込みます

形成層とは、根から吸収され水分や葉で作られた養分の通り道なので
木質部に達するまでよく削り取り、上下を遮断しておきます

なお、下の切り口は発根する箇所ではないので、少々粗雑な切り口であっても影響はありません


上部の発根予定位置にはルートン(発根促進剤)を塗っておく
さらに1mmのニューム線を図のように巻きつけておく

この針金は、上部で形成されたカルスが発達し過ぎて下部にまで達すると
上下の形成層がくっついてしまうのを防ぐためです

ちなみに、上下の形成層がくっついてしまうと
発根せず取り木は失敗します


水苔をくるむかたちになるビニールは、円錐形に切るといい
半円形に切れば丸めると円錐形になりますから、水苔を入れてからホチキスで止めればOK


上部が開いた円錐形なら、水やりも楽
下部はつぼんだ形にすれば水持ちがいい


水に浸した水苔をたっぷり入れ込むことと
削った箇所のやや上まで覆うことがポイントです


ビニールと水苔がずれ落ちないように紐で縛って、作業完了です

今後の培養ポイント

1 置き場所は通常通りの日当たりにいい棚上がよい

2 水やりと肥料は従来通り

3 ビニール内への水苔は絶対乾かさないように

4 また、発根を確かめるために、水苔をめくって削った箇所を覗いてはいけません
  その箇所の発根が悪くなること必定ですよ

5 おおよそ1ヶ月ほどで発根します
  発根すればビニールを透かしてモヤシのような根が確認できます

6 若木であれば、その時点で親木から切り離してもいい
  切り離したら、水苔をほぐさずにそのまま仕立て鉢に仮植えして、来春に本植えする
  (仮植え後は1~2週間半日蔭に置く)

7 古木の場合は、秋口まで根が増えるのを待ってから切り離し仮植え
  来春に傷口をしっかり処理して本植えする

簡単ですよ
みなさん、取り木にチャレンジしてくださいね

それでは

2013年5月25日土曜日

くちなしの植え替え

2週間ほど前、新芽の先を止め古葉の半分ほどを軽く葉刈りしたクチナシ
そろそろ本格的に活動を始めたので、植え替えにかかります

前項の「杜松の植え替え」を参考に


圧倒的なたくましさのクチナシの古木
枝順や輪郭線など、盆栽として一応の完成度をみせているので

今後は、樹勢をキープしながらひたすら気長に培養し
盆栽としての樹格の向上を目指します


まだ水は通りますが、鉢土の表面の汚れ具合から、今年は植え替え時と判断していましたが
鉢から抜いて見ると、やっぱり上層部の土はほとんどご覧のように真っ黒けです

このような状態では、鉢土の乾き具合もわかりませんし
ゆくゆくは根腐れの原因にもなりかねません

来年まで我慢しなくてよかった!
でも、幸いなことに、肝心な下部の根はご覧のようにきれいで健康そのものです


このように鉢土の表層部の汚れが激しい場合は、まずそれらの汚れた土を削り取る作業から入りますが
作業前からやや乾かしぎみにしておき、まずは軽くはがすような要領が大切です

また、根の部分を持つ手指にあまり力を入れないこと
汚れた上部の土と健康な下部の土が団子状に混じってしまうからです


上部の汚れた土をはがし根さばばきが終ったら
底部と周囲の根をほぐしにかかります


底部の根の状態はきれいで健康そのもの
よく発達しているので、順序よくていねいにほぐします


鉢底の根を追い込みます

赤印の根は、まだ横に這っている状態ですね(切り口が楕円形)
これではまだ切り込みが浅いので、さらに短く切り詰める必要があります

青印のように、切り口が下を向いている状態が正解(切り口が円形)
竹箸で土をほぐしながら丁寧に行う作業です


根さばき完了


植え込みのにかかります

この段階でのポイントは、植えつけ角度を間違えないために
前後左右から何度も確かめることです

また、最低でも2ヶ所くらいは鉢底から針金を通し
木ぐらつかないように、しっかりと固定すること


植え付け角度が決まって固定されたクチナシ

なお、植え込みの具体的な方法は、過去のつれづれ草において
黒松を教材にして説明していますから参考にしてください

植え込みの実技     


植え込み完了

術後の培養管理のポイント

1 置き場所は一週間ほど半日蔭

2 水を絶対切らさないように(厳守)

3 施肥は一ヶ月以上経ってから(厳守)


では

2013年5月10日金曜日

きんず・葉刈りと剪定

私の手元へ来てから、たしかまるまる2年になるきんず(樹高約14cm)
昨秋に摘果しておいたので樹勢になんの影響もなく、濃いオレンジ色の実成り姿を楽しめました

冬越しの状態が順調であったことは
濃い緑色の葉の色つやをみていただければ一目瞭然ですね

さて、昨年から考えていたことですが、今年はやや大きめの鉢に入れ替え
数年根っ子に楽をさせて、木の太りと枝葉の吹き込みを促すつもりです

一日の平均気温も15℃を超え、やや20℃に近づいてきました
これからがきんずの手入れどきになります

きんず培養法のポイントはここから


ずいぶん遅い季節まで実をつけて眺めていました
ただし、樹勢のはかばかしくないものは、こんなことをしてはいけませんよ、早めに落とすのが本来です

寝ぼ助のきんずは春芽が動き出すのが遅く
ときによると入梅が明けて、真夏になってやっと新芽が吹き出すものさえあります


眠ったきんずに刺激をあたえる意味もこめて、すべての葉を刈ります
同時に小枝の剪定も実行して、姿を整えましょう


葉を刈って全体が見やすくなったところで、木姿の再検討を試みる
わずかですが、左に振った角度から見た方が足元が太いし、幹筋の流れも自然な感じです


新しく予定する正面からです

実を落とし葉も刈ったので、樹冠部がややさみしく見えますが
小枝をさらに密にするためには、避けて通れない道のりですね

さて、ここで葉刈り剪定が終りましたが、前項の杜松で勉強したように
きんずの場合もこのまましばらく植え替えを待つのがいいでしょう

おおよそ2~3週間くらいで、枝の各所にチクチクと芽が吹き始めます
それを確認してから、おもむろに植え替えにかかるのが最上の方法なのです

もし植えかえも同時に行うのであれば
屋内の陽だまりなどに置いて、寒さと乾燥対策をしっかりやっていtだきたい

それでは

2013年5月9日木曜日

杜松の植替え

樹種別の植替えの適期については、ほとんどが春の彼岸ごろ
つまり、冬芽が色づいてほころび始めるころとされています

したがって、春の芽出しの早いもみじなどの3月の中旬あたりから
やや遅めの松柏類などの4月初旬くらいまでが、ほとんどの樹種の植替えシーズンといえるでしょう

ところが、松柏類の中でも杜松や杉、さらに雑木類(実物花物を含む)の中のちりめん桂やきんず、くちなしなどは
暖かい気候を好む性質から、4月下旬ごろから5月いっぱいくらいが適期とされています

しかし、その時期にはやわらかい新芽の吹いた若葉の季節になっているわけで
彼岸前後の植替えとは方法がやや異なり、少々の工夫が必要になってきます


春の新芽が勢いよく伸び、一日の平均気温もやっと20℃近くになり
ようやく杜松の植替え適期が来ました

さて、植替えのコツですが、新芽をこのままにしていきjなり根をさばくと
柔らかい新芽に水が揚がらなくなり、場合によってはくったりしてしまいます

それを避けるためには
まず全体の新芽摘みを行います


新芽をすべて摘み取った状態です
しかし、このまますぐに植替え作業にはかかりません

2週間くらいすると、摘まれた新芽の近辺や今まで動かずにいた芽先などが動き出してきますから
それらを見極めてから、おもむろに本格的な植替えにかかるのです

この方法が杜松の植替えのコツで(古木の場合は特に)
つまり、芽摘みと根さばきに時間差をつけて別々に作業することです

何故このように二重の手間をかけるのでしょう?

杜松は温暖な気候を好むため、冬芽が動き始める4月上旬ではまだ気温も低く
植替え後の樹勢回復までに時間がかかってしまいます

それで、一日の平均気温が20℃近くなる今頃まで待つわけですが
新芽はすでに伸びてしまっていますね

ですから、新芽をすっかり摘み込んでしまい
葉を新芽がそろそろ動き出すちょっと前の状態に戻してやるのです

摘まれた新芽は2週間もすると再び動き出します
そのころが植替えの適期となるわけですね

一日の平均気温が15℃を超え20℃に近くなったこれからの気候であれば
根さばきからの回復も早く、順調な生育をみせてくれます(関東地方標準)


さて、芽摘みが完了して植替えを待つ杜松の半懸崖ですが
以前よりの懸案であった植え付け角度の変更を敢行し、差し枝の利いた模様木として再出発したいと考えています

その節は新しい姿をまたみなさんにご紹介いたします

付記

以上のように事前に芽摘みや葉刈りを行い、その数週間後に再び芽が動き出すころを見計らって植替える方法は
ちりめん桂、くちなし、きんずなどの樹種においても実行していただきたい

では

2013年5月3日金曜日

舞姫と織姫の区別

昨年の春先に手に入れた舞姫もみじの種木は、大きな鉢に入れて伸ばし放題にしておいたので
根元の直径も7cmくらいに太って枝数もかなり増えました

この種木からは、すでに今年の春先には挿木の穂木を採取したし
入梅ごろには枝のあちこちに取り木をかける準備もしています

過去の舞姫もみじの記事


足元の直径は約7~8cmに太りました
子孫繁栄に多いな期待がかかっていますよ


今年の芽出しは順調で、ご覧のように葉数も増えています
葉数が多ければ、それに比例して根の働きも活発になり、樹勢(じゅせい)はますます順調な循環になります

ところで、よく似た小葉性もみじに「織姫もみじ」という品種がありますね
このあたりで、その織姫と舞姫の相違をはっきりさせておきましょう

というのは、この舞姫と織姫は兄弟実生といって、同じ親の種子から作出された兄弟らしく
一見したところでは、ほとんど見分けるのが難しいと言っていいでしょう

そこでまず、↑の舞姫の小枝を採って葉をじっくりと観察してみます


掌状に正しく五つに裂けています
葉形はもちろん葉柄に向かって深く切れ込んでいて、すっきりと細形です


最近、幸いにも、親しい同業者が昨年の入梅時に挿木をした「織姫」の苗を手に入れました
これらの葉を検証してみれば、お互いの相違点が見つかるかもしれません


見たところ七つに裂けている葉が大多数のようですね
しかし、じっくりと観察すると、中には五つの掌状のものも所々に交じっています

ちなみに、織姫がまだハウス内に置いてあり葉が固まっていないため
ここでは、葉の色彩について考慮しないこととします


それで、もういちど舞姫もみじの他の小枝を採取して観察してみましょう
すると、ほとんどが五つに裂けているのですが、中には七つの葉がないわけではない、のです


この小枝にも七つに裂けた葉が交っています
中には不規則に六つのもあるくらいですね

こりゃ、ややっこしいですね
どっちが舞姫で、どっちが織姫なの!?

ということで、業界ではその多くが五つに裂けている葉形のものを「舞姫」
そして同じく、七つのものを「織姫」として認識してお互いを区別しているのが現状です

名前の区別はわかったとしても
どうしてこうなっちゃうの!?

これはおそらく

これら2種が、同じ親から種子を採取した兄弟実生のために
自らの個性を持った異なった個体でありながら、親から受け継いだ共通の性質が時として双方に現れる

もしくは、先に見出されたどちらかの品種に裂け方の異なる枝変わりが現れ
その枝変わりを挿木などにより繁殖して異なる品種として命名した

ゆえに、お互いの親木が同一であるため、どちらも共通の性質が色濃く潜在していて
それらが時として双方に現れる

そのどちらかと思われます

いずれにしても、基本的に五つの掌状の葉形のものを「舞姫」
七つのものを「織姫」と覚えておいてくださいね

そして、この2種類は葉形の相違点を除いては
枝や芽の性質などについてはほとんど相違点はないようです

では