2003年10月31日金曜日

山もみじ点検

この時期、盆栽はみな美しくなりますが、とくに雑木類の変身振りが楽しみです
芽出しの時期から、毎日、芽摘みよ葉刈りよと気にかけてきたわけですから
自分の子供の成長を半年振りに目の当たりにする親の心境です

気が早い人はそろそろ葉を切りとって裸の雑木の点検に入り
半年間の培養の総仕上げ(剪定)をするわけです
この時期から今年一杯くらいがその適期です

この時期がいい理由は、雑木類が休眠状態にあるからです
お正月頃になると、すでに根は活動を始めていて、切ると透明の樹液が流れ出します
樹液は人間の血液のようなものです

この時期をはずした人は、春彼岸頃に植替えと同時に剪定を行います
根を切れば樹液は流れません


まず目に付くのは鉢が小さいですね
培養上は水さえ届けば小さくともいいのですが、これではちょっと小さすぎますね
鑑賞上からは、もみじの大木を受け止めるには鉢の印象が弱いようです

いずれにしても来春は新しい鉢を物色して、男っぷりを上げてやりましょう
そうです、この木は男性的ですから、男っぷりですね

その他、根元、幹筋、枝順、古さなどは申し分なくできています
気になるのは、三分の一から芯にかけての枝が、下枝に比べてやや元気がよすぎることです


樹冠の部分は人間でいえば「顔」と考えてください
顔には表情がなければいけません

このもみじも樹冠の部分が込み入って、いていまいち表情がはっきりしません
枝と芽数を減らす作業を時間をかけてゆっくりと行います
急いではいけません

どっちの枝を切ろうか迷ったときには、しばし休憩です
無理をしてがむしゃらに進むと後で後悔しますよ

また剪定も大事ですが、もみじは生育期の管理
そうです、芽摘みや葉刈りの抑制策の方が影響が大きいのです
このもみじの場合、およそ二年間の丹精で全体の枝の勢いが同じようになってきます

2003年10月30日木曜日

東福寺複製品

平安東福寺の複製品です
出来栄えはなかなかです

関心のある方のために本歌(ほんもの)との違いを解説しましょう


釉薬ーかなりいい瑠璃色の発色ですが、艶が足りないようです
鋲ー本歌の鋲はこんなに尖っていません、もっと手つくりの柔らかい感じです


足ー三本の平足ですが、本歌だったらもう少し長目に、そしてボリューム感ももっとあるでしょう
落款ーぼやけていますね
土ー似ているようですがちょっと感じが違います
底の印象ー本歌の巧みな技にはかなわないようです

以上見分けのポイントです

2003年10月29日水曜日

作者不明

最近入手した小鉢ですが、作者がわかりません
落款は二つあるのですが、識別できないのです

向かって右は「手ひね○」と読めるので「手ひねり」なのでしょうが
左はまったく読めないのです

落款は読めなくとも作風から推定される場合も多いのですが
ちょっと思い浮かびません

かつて、関西のかの有名な収集家「福井良次氏」の所蔵品であり
またかなり以前の日本盆栽協同組合の売り立て写真帖に掲載されていたことは分かっているのですが
肝心の作者が不明です


ざっくりと手捻りで仕上げたいい味です
長年使い込んであります


二つの落款

2003年10月28日火曜日

市川苔州鉢

明治から戦前に活躍した鉢作家・市川苔州は、竹本隼人や平安東福寺とならんで
すでに盆栽史の古典作家となっています

是非知っていただきたい著名作家です

苔州作・辰砂釉木瓜式樹盆

茶褐色の鉄分の多い素朴な感じの土目
辰砂釉や鉄砂釉に優品が多い
丸が対外(木瓜式・八角など)には流し込みの型を用いている
無落款の作品が多い(半分以上と推定)

ちなみに意図的な贋物は見かけませんが、無落款のものが多いので
似た作風のものを「苔州鉢」と勘違いしている場合を見かけます

実際の作品の画像をお見せしながら徐々に解説していくことにします

2003年10月27日月曜日

根元の太り

昨日の続きです
大きな鉢が根元の発達を促すのではない例です

この山もみじは大きな鉢で育てたものをこの鉢に入れたのではありません
長年この鉢で育て上げたものです
いかがですか?

山もみじや楓は地植えにすると数年で直径5cm
肥えた畑ですと10cmにも太りますが
鉢に入れると太りは極端に鈍くなります

そのかわり根元は太ります
ここにも盆栽向きの性質であることがわかります

小さな鉢で根の伸長が妨げられるため、根元が太るのです

根元は、盆栽の老木感を出すのに欠かせない要素ですから
この面からも、もみじや楓は盆栽に真向きの樹種といえます



2003年10月26日日曜日

古さを促す


山もみじの足元と木肌の縦縞

山もみじの根張りと縦縞の入った白い木肌は
細かく分岐した小枝とともに雑木盆栽の最大のみどころです

こんな根張りと木肌にすることができるのでしょうね

目に付くのは培養中のみなさんの盆栽が、やや大きめの鉢に植わっていることです
ちょっと考えると当たり前のように感じられますが
大きめの鉢では幹や枝先は太っても、根元は案外太りませんし
木が若くなり木肌を作るには適した方法とはいえません

ある程度全体の骨格が出来上がったものは
意識的に鉢を適当な大きさに締めてやりましょう

根先に行くはずの養分が溜まり根元の発達を促してくれますし
枝葉に比べて根の大きさを制限されているので、木も年をとるのが早まります

みなさんの盆栽は鉢が大きすぎませんか?
点検してください

2003年10月25日土曜日

小枝の魅力


楓の落葉後の姿

落葉にはまだ間がある季節ですが、盆栽人は気が短い
葉を切り取って一年間の培養の成果を見たくなりますね

この時期になれば培養上も差し支えありません

雑木の魅力の一つはやはり落葉後の寒樹の姿でしょう
葉をすっかり落とした雑木山を遠望すると、木々の梢が霞のようです

盆栽では小まめに手を入れた梢は一目でわかりますし
怠けた一年間もやはり一目で見破られます

怠けた人は、来春伸び過ぎた枝をやや強めに剪定し、やり直しです
その計画を建てるのがこの時期です

今から年内が剪定の時期です
一月になると気の早い雑木類は根の活動が始って
強く剪定すると樹液(人間では血液)が出て木が弱ります
今が休眠期

2003年10月24日金曜日

木々の生い立ち



名前のとおり富士山麓に自生する小輪の山桜です

切り込みに強く持ち込むにしたがって幹肌も荒れてきます
小枝が細いのでミニ盆栽としての適正をもっています

地元の方に聞くと
富士山麓の厳しい自然に耐えてたミニの素材は年々減少してるそうです

このミニの富士桜の見どころは、
親幹の根元から吹いた小さい芽が、逞しく育って樹形を形成しているところにあるでしょう
親幹は厳しい自然に風化し、いまはその根元に面影を見るだけです

盆栽を鑑賞する場合、現在の木姿だけでなく、
その木が背負っている生い立ちにも思いを向けてみたいものです

より一層の愛情が感じられます

2003年10月23日木曜日

超ミニの構図

樹高わずか5cmの超ミニの山もみじです
立ち上がりの幹の太さは小指ほどに太さで
切り返しで強い曲がついています

幹は次第に細くなり右に流れ、樹芯部で左に強く屈曲し
その部分から一枝が右に差し出されています

樹齢は20年ほどと推定され、幹肌はすでに出来上がっています
来春に今の仕立て鉢の直径半分くらいの化粧鉢に植えるつもりです

構図から見ると、まさに一枝の魅力です

故中村是好氏は、ミニ盆栽の木姿の理想を
役者が花道で「見得を切る」ときの姿に求めていました

一瞬静止したときの役者の姿は
ギリギリの極限まで変化を追いながら、微妙な安定感があります

このミニのもみじでいうと
差出された右の枝は、右に流れた幹筋をさらに右に力を流して不安定になる恐れが十分ですが
その力を微妙なところで釣り合いを取っているのが、左に向いた芯の部分です

動きの中に一瞬の静止した美しさを感じます


このように、ミニ盆栽の木姿は一枝の魅力により成り立っている美しい構図が大切です

変化と安定、簡略な木姿、そのあたりを目指してください

2003年10月22日水曜日

六角鉢正面1

丸鉢の正面は足を基準にすることの意味をわかっていただけましたね
さて六角鉢ですが、この場合も丸鉢に倣(なら)って足を正面にするのが定石です
やはり足が左右に開いた位置は、足の正面が見えませんね
「足の正面が鉢の正面」です

六角鉢の場合はこの角度ですと、角が正面にきてしまいますが
それを気にすることはありません
あくまで、足が正面から見える位置を鉢の正面にしていくのが、伝統に倣った作法です

1)薩摩香炉丸の鬼面足の部分

下の伊万里鉢の真ん中は丸鉢で、左右は六角鉢です

2)伊万里三態

これが正しい正面です

3)小糸泰山六角

この小糸もこの位置が正面です

4)市ノ倉石州六角

問題の六角鉢の六本足の場合も胴ではなく、足を基準にして正面を決めます
上が正しい正面

5)市ノ倉石州六角

足が4本見え、安定感と広がりを感じる角度ですが
ここは正面ではありません
みなさんが一番迷うところですが、自信を持って4)の角度を正面にしてください

もしここが正面とすると、丸鉢の「足の正面が鉢の正面」という基準が
他の形、すなわち輪花式や古鏡型において解決が付かなくなります
それらの形においてはすでに「足の正面が鉢の正面」という原則は盆栽界の常識として定着しているからです

わかっていただけましたか?

6)紫檀丸卓

以上の常識は卓台についても同じです
この丸卓も足を正面にするの定石です
足の形と細工がよく見える角度ですね

7)紫檀丸卓

この丸卓も五本足ですが、その一本の足の正面が卓台の正面です

8)紫檀丸卓

珍しい六角の卓台ですが、鉢に倣って足を正面にします

以上、著作権の問題もあって写真集からの引用はままならない現状なので
現時点ではこのすくないサンプルでご勘弁願います
1)、4)、5)以外は権威ある展示会の写真集より引用させて頂いてものです

また、六角鉢もしくは八角鉢については、足が角ではなく胴の中ほどについている例外もたまには見かけます
その場合も「足の正面が鉢の正面」という定石は守っていきましょう(この場合は胴が正面にきますね)

ですから、六角鉢は角が正面というより「足の正面が鉢の正面」という表現の方がより適切ですね
改めて訂正して確認しておきます

わかりやすいサンプルが手に入ればこの項は順次続けてお話していきます

2003年10月21日火曜日

黄実ピラカンサ

黄実のピラカンサ

ピラカンサは、いまではなくてはならない実物盆栽の人気樹種になりましたが
数十年前には園芸的な品種として、一段低い地位に置かれていたこともありました

やはり一つの樹種が盆栽樹種として盆栽界で評価を得るためには
一流の盆栽展示会へ作品が出品され、その樹種の魅力が認められることが一番ですが
ピラカンサは、人気が有りながらも、長い間盆栽人を納得させるだけの名品が存在しなかったために
低い地位に置かれていました

名木が少なかった理由の一つは
古い太幹ものを畑から鉢に入れて盆栽に仕立てようとしても
ピラカンサの根が粗く活着率が悪く、その上肌が荒れるまでにかなりの年月を要することが考えられます

いまでは培養技術の進歩などにより幾多の名木が存在し
実物盆栽として不動の地位を確保しています

さて、ピラカンサの実にも赤、橙、黄とあり
また同じ色でも微妙に色彩が異なります
品のいい色彩の実で、枝の性質が細かく、木肌の荒れやすい性質のものを選んで盆栽に仕立ててください

ピラカンサは実成りもよく性質も丈夫なので、初心者の方でも簡単にこなせる素材です

2003年10月20日月曜日

丸鉢の正面2

掲示板で六角鉢の正面についての活発な論議が交わされましたので
これを機会に改めて「鉢の正面」についてわかりやすく勉強してみましょう

とくに丸、六角、八角、輪花、古鏡等の形について順次検証していけば
いい結論、新しい発見にも出会えるでしょう


月香作
赤絵青磁釉丸型樹盆(あかえせいじゆうまるがたじゅぼん)

丸の鉄托型(てっぱつがた)の樹鉢で三本足です
各足を中心に窓が切ってあり三様の山水画が描かれています
この場合は↑のよに各足、各窓の箇所が正面です
(わかりやすい事例ですね)



この角度は正面ではありません



それではこのような足が切り足(平たい足)で絵付けのないもの場合はどうしましょう?
この場合も各足の部分が正面です
釉薬の景色のよいところを正面にします

絵がない場合は足が左右に見える角度が正面
という意見もあります
しかし盆栽界では「足」が正面から見える角度が正面
という認識が定着しています

香炉(薩摩焼)

その事例は香炉にも見られます
ここが正面です



例え絵がなくともこの角度は正面ではありません
鬼面足(きめんそく)の顔が横向きです



正面を決めるには足が重要視されます
鬼面足(きめんそく)が正面から見えますね
「足」が正面、これを忘れないで下さい

この考えに従い、足が切り足でも無地の鉢でも同様にします

よろしいですか?

2003年10月19日日曜日

見えにくい欠点

盆栽鉢の欠点にはいろいろあります
ニュー(割れヒビ)
ホツ(欠け)
などが代表的です

しかしこれらは初心者でも簡単に見つけることができます
今日は、みたところではわかりにくい欠点の勉強をしておきましょう


上州勝山作・染付外縁長方樹盆

ざっと正面からみると欠点がなさそうですが
よく観察するといろいろ出てきます

①左右の足が接する真ん中の部分に縦に傷が入っていました!
その傷の部分をよく観察すると、傷は胴の部分へ2cmほど上がっています
いわゆる窯傷という奴です(画像では見えにくい)
この傷が大きくなることはめったにありませんが、とにかく欠点には違いありません

②これも画像では見えにくいのですが
鉢の表面の釉薬が(おそらく焼成りの温度の関係で)仕上がりがざらざらしています
これも気になる欠点です


③上部から観察すると前後の縁がたるんでいます
側面のようにきりっとした線ではありませんね
この場合、縁が内側にたるんでいるのが一番困ります
美的な面ももちろんですが、盆栽を植えるときに鉢の容積が小さくなってしまいます

案外に見落とす欠点です

2003年10月18日土曜日

土佐水木の花芽


土佐水木の花芽

夏の間は青々と繁った葉に隠れて見えにくかった丸い土佐水木の花芽も
秋も深まり葉の勢いが衰えるとともに、小枝の先端に目立つようになりってきました
土佐水木の魅力は白粉を塗ったような幹肌と丸い花芽をつけた落葉後の木姿です

盆栽向きの品種には土佐水木と伊予水木があります
伊予水木の方が葉、花芽ともに小さく小枝も細かいのですが
土佐水木の方がより多く仕立てられいます

性質は足元に芽が吹きやすいので株立ちに向いていますが
最近では単幹も見かけるようになりました
水も肥料も多めで管理します
夏場に水切れをさせないように注意します

花後に本格的な剪定を行います
春から入梅にかけては徒長枝以外の芽は摘みません
二番芽には花芽がつきにくいからです

2003年10月17日金曜日

姫こぶしの花芽



木々の落葉とともに、早春に咲く花木の花芽が目立つようになりました
半分ほどに葉の減った姫こぶしの枝の先端に、産毛で覆われた花芽が付いていますが
朝露に濡れたさまは、まるで子猫が水をかぶったようで少々痛々しい感じがします

秋から冬の盆栽鑑賞の楽しみの一つに、やや大きめの花芽をつけた落葉の姿があります
姫こぶし、土佐水木などが代表的な樹種です

盆栽愛好家の中には、落葉の姿を早く鑑賞したくて
自然の落葉時期まで待ちきれずに、葉を切り取る人さえいます
もちろん今頃になれば培養面からも差し支えありません

2003年10月16日木曜日

朝露



早朝小品盆栽の椿の葉に朝露が降りて玉っころのような花蕾もしっとりと濡れています
そろそろ里でも紅葉の季節ですね

紅葉をきれいに眺めたい方にお勧めの方法は
夜寝る前に葉水をやることです
葉にかかった水が夜気に冷えて紅葉を促してくれます

夜間盆栽を冷蔵庫に入れる方法もありますが、あまりお勧めできません

紅葉は最低気温が8℃ごろから始り、見ごろは5℃前後の時期といわれています

晴れた日の夜、2~3日連続で葉水をやって見てください
みごとに紅葉しますよ

大寺の 片戸さしけり 夕紅葉   一茶

2003年10月15日水曜日

再び六角鉢

三足の鉢や五つ足の円花台については、足の部分が正面ではなく、左右に見えるように飾るようにしています(これが普通だと思っています)

理由は2つ有り、一点目は、鑑賞者の正面に鉢の角や足が向かってくることは
、鑑賞の妨げになると考えているからです。

二点目は、鉢や花台は香炉などのように品格のある道具ではないから、三つ足香炉と同じように足を前に向けるのには、とても品格が足りないと思っているからです

以上は最近掲示板に投稿された原稿の抜粋です


この鉢は六本足ですが、足が正面では鑑賞の妨げになる、と考える投稿者の意見に従うと
この角度が正面になります


かたや、六角鉢では足が正面であるという私の意見


もちろん絵のテーマと構図も考慮に入れます

どちらがより美的でしょうか?
みなさんのご意見をぜひお寄せ下さい

2003年10月14日火曜日

丸鉢の正面

展示会で丸鉢や六角鉢で正面を間違えている場合をよく見かけます

よろしいですか
鉢は縁、胴、底、足の各部からできています
結論からいうと、丸鉢(六角鉢も)は一つの足が正面から見える箇所が、鉢全体の正面です
理由はこの箇所が足の形や模様が正しく見えいる位置だからです

足は焼き物では非常に大切な構成要素ですから
これを正しく正面から見せたいですね

三本あしの場合、二本のあしが両端にくるように正面を決めているのを見ますが
あれは間違いです

正面の図
佐野大助作絵付丸型樹盆

絵鉢の場合は絵のテーマと構図も正面を決める大切な要素として考慮されます
図柄は観月のテーマです
橋の上の二人の人物が月を観ていおり
向かって左の湖水に浮かんだ二艘の船上からも山の端に上がった月を仰いでいます

構図とテーマからもここが正面です


この角度を正面にするのは間違いです
足の正面が見えません
絵のテーマと構図の面からもむりがありあります



正面の図
これも佐野大助作の赤絵鉢です
さすが大助です
一つの足を正面にしてテーマである竜の構図を決めています
これが正解です


みなさん間違わないように

2003年10月13日月曜日

宮様楓の種子



宮様楓の種子
小枝の先端に一対ずつの種子がついています
プロペラの羽の付け根のふっくりふくらんだ箇所が種子です

一対の羽が一枚ずつに離れ、羽が風に乗ってプロペラのように回りながら遠くへ飛びます
自然界では植物の種の繁殖にみごとな創意の力を与えています

山もみじや唐楓の種子も同じような形をしています

来春に種子を蒔きたい場合は
種子を乾燥させないように冷暗に保存すること

2003年10月12日日曜日

今岡町直の記憶

今を去ること30年以上前、日本小品盆栽協会東京支部の定例の集いが
東京は洗足池の風致会館で開かれていました

この項でなんどもお話したように、そのリーダーは
いま思うと戦後のミニ盆栽史の残る名愛好家ばかり
中村是好・明官俊彦・佐野大助・田代与志・岡田晃・・・・・・・とにかく豪華キャスト

そして、当時の売れっ子小鉢作家今岡町直氏も参加していたのです
端正な顔立ちの静かなインテリ風の人でした



今岡氏は自作の豆鉢を持参して販売していて
価格は500円から高いもので5000円くらいだった記憶があります

青磁に辰砂釉を二度がけした最高の出来上がりのものでも5000円でしたから
今思えば安い買い物です
しかし思い切って買えなかったですね、若僧には
私はそれでも、500円から1000円くらいの豆鉢を数個買った記憶があります

町直氏の作品は東京の愛好家を中心に根強い人気があり
程よく制御の利いた作風はミニ盆栽の引き立て役として 貴重な存在です

また、その優れた色彩感覚ゆえ、使い込むほどに輝きを増してきます
胎土の堅ろうさと焼き成りの精度は立派なものがあります

2003年10月11日土曜日

審査への疑問に

作風展審査風景

ご無沙汰しております。
いつも楽しく拝見させていただいております。

つれづれ草に作風展の記事が書いてありましたが、
以前から疑問に思っていることがあります。

私が素人なのかもしれませんが、なぜ、○○○○殿
が作られた樹は、一度も賞にはいらないのですか?

今年はよく分かりませんが、以前、明らかにあの方が作られた樹が
一番素晴らしいと思ったことがありますが・・・。(私だけかもしれませんが)

古い、有名な樹が受賞するシステムですか?
作風展の審査の基準が素人目にはよく分かりません。

ご返事お願いします。

以上のご質問メールをいただきました
(○○○○殿は出品者名ですが、伏せさせていただきます)

さて、このご質問に対するご返事をするにあったって
率直にいって非常に困難を感じていますが
以下、ご質問の方が納得いくものに成っているかどうか、心配しながらお話します

○○○○殿の作品が授賞するには前提条件として
予備審査において各部門の3位以内に入らなければなりません

その作品が授賞に値するものであれば、3位以内に入らないことは考えにくい
なぜなら、予備審査員の持ち点は3点あり、トップにふさわしい作品を3ツ選べるからです

本審査は学者、芸術家、文化人、政治家など
各界からお招きした14名の名誉審査員によって公開にて行われます

本審査において、半数(7点)の点を得るものがないときは、1位2位で決戦投票が行われます
この段階でも○○○○殿の作品が授賞されない理由を見つけることは困難で
審査員の先生方は、お互いにお話しすることもなく粛々として審査に望んでいます

ここまできたら結果は神様仏様にお祈りするのみです

オリンピックにおいても、時間や距離や高さなどをきそう競技はわかりやすいですね
技の美しさや巧みさをきそう競技は、とかく疑義を持たれる場合があるし
観客の側からすると、エコヒイキを肯定するほうが逆に興味がわいてくるような風潮もあります

かつて、フィギアスケートの伊藤みどり選手と女王カタリーナ・ビットとどちらが演技がうまかったか?
女王ビットは伊藤みどり選手の三回転半のジャンプ演技をしのぐ
それ自体が芸術品と見まごうばかりの、たぐいまれな美貌とみごとな肢体を持っていました

二人の戦いには技術力だけでは解決つかない
「美」に対する人間の考え方、感じ方が表れていたと記憶しています

個人的なお付き合いはありませんが、○○○○殿はそれと知られた盆栽作家で
プロの間での評価はかなり高いものがあります

けれどもお人柄が地味ですね
その職人気質の人柄が自然に作風などに滲み出て
イザ本番の桧舞台で損をしているとも想像できます

これで作風展の審査への疑問はとけましたか?
同時に、「美」や「技」をきそうことは非常に難しいことだということも、知っていただけましたか?

みなさんのご意見もお寄せ下さい

冒頭のメールは一ファンからのものであり、○○○○殿はこの件に対して無関係です
その点ご了解下さいますようお願い申し上げます

2003年10月10日金曜日

姫りんご



同業者の棚にあったこの姫りんごを一目で気に入りました
木肌は古く、足元、幹模様、枝ぶりとも盆栽として十分に満足できる完成度です

ここでプロっぽく盆栽屋流にほめてみます
「らしさ」を持ち合わせていて、,姿はピリッと「焦点」があっていて「構え」がいい
おまけに「古い」

もっと短く言うと「ピリッとらしくって、構えがよくって、古い姫りんご、小愛嬌もいいですよ」
となる
これだけで通じるんです

この言葉の意味を、みなさんわかりますか?
かいつまんでご「翻訳」しておきます

「らしさ」とは盆栽らしい定石にかなっているという意味

「焦点」とは写真と同じく、ピントのこと
ピンぼけの写真のように姿のはっきりしない盆栽は感動がないですね

「構え」とはポーズがいいこと、絵になっていること
モデルがポスター用の写真を撮影するときのポーズを思い出してください
決まっていますね

以上プロっぽく姫りんごをほめてみました
それに加えて姫りんごの樹種から受ける印象
そうです、「愛嬌」、これも大切な要素です

「古さ」、これはわかりますね

2003年10月9日木曜日

紫式部と小紫

紫式部と小紫の区別わかりますか?
答えは簡単です
在来種と姫性(小さい性質)の違いです

小品盆栽界ではこの二つをしっかり区別しています
もちろん姫性の小紫の方が高価です

葉も実も小さく、節間も短いのが小紫です
ミニ盆栽に作るにはこの方が都合がいい
小さくすることが可能です



挿し木苗に曲をつけてやや10年経った小紫
木肌もそろそろ荒れてきました
このくらい小さな鉢に入れると、ミニ盆栽としての愛らしさはもちろん
風格さえも感じられます

このバランスをよく覚えてください
みなさんの盆栽は、ほとんど鉢が大きいですよ



秋の深まりとともに小紫の実は一層の輝きをましてきます

2003年10月8日水曜日

作風展審査2

応募のうちから最も優れた作品に与えられるが内閣総理大臣賞
毎年各部門で熾烈な戦いがあります

一回目の開票で過半数の点を得た作品がなければ一位と二位で決選投票です
内閣総理大臣賞は決選投票になりました


審査員の先生方も作品とにらめっこです
うーん、どっちにしようかな、私わかんなーい、なんて言わないでください
かなり迷っているみたいですね
うなり声が聞こえるみたい


今年の内閣総理大臣賞はこの真柏
盆栽界において真柏の名木としてかねてより知られた木です
みごとな舎利芸ですね
もちろん天然のジンです
樹齢?
わかりませーん
何百年なのは確かです


文部大臣賞に選ばれた黒松
これって、プロゴルファーのジャンボ尾崎さんの所蔵品なんです

ふつう有名人が盆栽展示会に出品してる場合は
正直言って「お名前拝借」のことが多いのですが、この人に限っては違います

ホンマニ盆栽大好き人間なんです
自分で剪定や植替え、針金掛けまでやるんですよ